2010年度の菅政権の外交に思うこと
日米・日中・日露まで…菅外交「八方ふさがり」
ロシアのメドベージェフ大統領が1日、日本側の中止要請を無視して北方領土訪問を強行したことで、外交面での民主党政権の危うさが改めて浮き彫りになった。
沖縄の米軍普天間基地移転問題で日米同盟が揺らぎ、尖閣諸島問題で日中関係が悪化する中、日露関係でも新たな障害が持ち上がった形で、菅政権の外交は「八方ふさがり」との指摘も出ている。
1日に緊急召集された自民党の外交部会では、前日まで菅首相、前原外相らが出席していたハノイでの東南アジア諸国連合(ASEAN)関連会議にメドベージェフ大統領、ラブロフ外相らロシア側も出席していたことを踏まえ、「なぜハノイで会談し、北方領土訪問への懸念を伝えなかったのか」などして、政府の対応を批判する声が相次いだ。自民党の小野寺五典外交部会長は終了後、記者団に「日本の尖閣問題での弱腰姿勢を見て、ロシアは強硬な対応に移った」と指摘した。
民主党政権下、日本外交を取り巻く状況は急速に悪化している。鳩山前政権では、既定路線だった県内移設を否定して唐突に県外移転を打ち上げたあげくに迷走、普天間基地移設問題は暗礁に乗り上げた。日米関係を悪化させた鳩山前首相は米紙から「ルーピー(愚か)」とまで批判された。日米同盟のきしみを見透かしたように、中国は尖閣諸島沖での中国漁船衝突事件で強硬姿勢をみせている。
今後、菅首相は、13日から横浜市で開かれるアジア太平洋経済協力会議(APEC)首脳会議で来日するオバマ大統領との日米首脳会談などを契機として日米同盟を立て直し、中国やロシアには冷静な対話による問題解決を働きかけることで関係改善を模索する意向だ。
ただ、日米間で懸案の普天間基地移設問題に進展はない。今月末に予定される沖縄県知事選の結果次第では、問題解決がさらに遠のく可能性があり、「一度傷ついた日米同盟の立て直しは簡単にはいかない」(外務省関係者)との見方が出ている。
(2010年11月1日21時24分 読売新聞)
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ソ連時代を含め、ロシア側は国家元首級の北方領土訪問を見合わせてきました。ロシアのメドベージェフ大統領が何故、今この時期に北方領土の国後島を訪問したのか、その意図が分かりません。一つ思い当たる事と言えば、今年9月26日より三日間にわたり行われた中露首脳会談があります。この中露首脳会談の共同声明の中で「国家の主権や統一、領土保全にかかわる核心的利益を互いに支持することが戦略的協力関係の重要な内容」と、中露両国が領土に関して言及しています。
日本の外交・安全保障は大きな岐路に立たされていると言えるのではないでしょうか。領土は国民の生命や財産と並ぶ、国家の主権の要なのです。北方領土に関しましては現実問題としてロシアが実効支配しており、なかなか対応の難しい問題ではあります。しかしその一方で尖閣問題に関しては日本政府が対応さえ誤らなければ有利に展開出来ると考えています。
中国の海洋調査船の派遣やレアアース輸出制限、フジタ社員逮捕等の一連の中国の強硬手段は、日本の国内世論だけではなく、国際世論に於ける中国脅威論を高めることとなりました。日本では政府レベルだけに止まらず、民間レベルでもレアアースの代替調達ルートを模索させる動きが生まれました。
更に10月27日に行われた日米外相会談でクリントン国務長官が共同記者会見で尖閣諸島が日米安保条約5条(共同防衛)の「適用範囲」となると明言した事は非常に大きな意味合いがあります。共同記者会見で国務長官が明言したことは、実質的に国際公約となるからです。またこの外相会談でもレアアース調達ルートの多角化が議題となりました。この日米外相会談以前にも、安倍元総理らが10月18日に米国を訪問してフロノイ米国防次官と国防総省で会談した際に、尖閣諸島が中国に軍事的に占領された場合でも、「(対日防衛義務を定めた)日米安全保障条約5条の規定により、日本を助ける」との言質をとれたのも大きな成果だったと言えます。これらの米国政府高官の発言を踏まえますと、日本は尖閣諸島に関しましては多少は強気な対応をしても問題はないと思われます。少なくとも中国にしてみれば、自衛隊というただでさえ強力な抑止力に加えて 、更に有事の際には米軍の介入も招くということになりますと、中国側は冒険主義的な行為に踏み切れません。
日本側は毅然とした態度で、且つ冷静に正当性を主張していけば良いのではないでしょうか。中国漁船衝突ビデオも客観的な証拠となります。 それを11月1日の公開では一部議員への衝突場面の視聴のみに留めているのは理解し難いところではあります。政府は査中の資料であることを根拠に公開に消極的です。確かに刑事訴訟法第47条は「訴訟に関する書類は、公判の開廷前には、これを公にしてはならない。但し、公益上の必要その他の事由があつて、相当と認められる場合は、この限りでない。」と規定しています。しかし中国人船長が帰国してしまった今となっては、公判が開廷する可能性はほぼ皆無であり、また但し書きに「公益上の必要その他の事由があって」と例外が認められる場合もあることを法は想定しているのです。あくまでも個人的な見解ですが、私は今回は公益上の理由が有るのではないかと考えています。全面的な一般公開をしないことにより、日本側の正当性を立証出来ないばかりか( 中国国内のネット上では日本の巡視船が中国漁船に衝突してきたとの主張がなされています )日本国内でも「日本の巡視船の乗組員が何らかの弾みに落ちたのを、中国の漁船(の漁師)がモリで突いている」( 石原都知事が関係者から聞いた話として2010年10月24日放送 フジテレビ「新報道2001」にて )、「逃走中に中国人船長が中指を立てた」などと内容に関して真偽不明の様々な噂が流れています。これは日中両国にとって極めて不幸な事でもあります。
中国は一連の強硬手段が何ら自国の利益にならないことを理解するべきではないでしょうか。最近も首脳会談を突然キャンセルするなど、常軌を逸した行為が目立ちます。日中間に意見の相違が大きいからこそ、むしろ尚更各レベルでの協議が必要と言えるのではないでしょうか。その一方で今回の一連の問題は日本の意思の弱さから来ているようにも思えるのです。上記の米側の尖閣諸島が日米安保の対象になる旨の明言も、日本側の強い信念がなくては意味を為しません。ビデオも公開できない、官房長官が日本の中国「属国化」発言をしたのが事実であれば、到底この国の主権を守っていこうとの気概が現政権から感じられません。今回の日中首脳会談のキャンセルは中国側が前原外相を狙い撃ちにしたのではないかとの観測もあります。もしそれが事実だとすれば、中国は日本側の強硬姿勢や日米連携を恐れているとも言えるのです。全ては日本側の対応に掛かっているのです。
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