日本政府 F-35を導入する方向か
日本政府がF-35を導入する方向で本格的に動き出した兆候が18日に見られました。まず外務省の動向ですが前原外務大臣とジョン・ルース駐日米国大使の間で,「日本国とアメリカ合衆国との間の相互防衛援助協定に基づきアメリカ合衆国政府により日本国政府に対し提供される統合攻撃戦闘機F-35航空システム及び関連附属任務機器に関連する秘密情報の秘密保持及び保護に関する書簡」の交換が行われました(平成23年度01月18日 外務省プレスリリースより)。
更に同じ18日に北澤防衛大臣がFX選定に関し記者会見を行い、「第五世代機」と言及があり、その直後に「F-35の場合は米国から相当な資料を調達するように予算計上をしましたから、今年中に結論を出して、再来年度要求する予算へ調達の経費を計上するという予定にしています。」と非常に踏み込んだ発言をしています。(防衛省 大臣臨時会見概要 平成23年1月18日(16時59分~17時01分))
ただ某カリスマブローガーによりますと自衛隊は世間一般とは全く異なった語彙を使用することがあり、「第五世代機」とは「航空自衛隊にとって五番目の戦闘機(セイバー、マルヨン、ファントム、イーグルの次)という意味で第五世代」と述べている可能性もあるとの事です。その一方でJ-20の初飛行を受けて、結局はF-35を導入する以外にないとも述べています。
F-35がカタログスペック通りの性能を発揮するのであれば、素晴しい戦闘機となるでしょう。しかし国防総省の最近の報告書では今まで明らかにされてこなかった不具合が多数判明しています。(Defense Newsの2011年01月18日の報道より)
“The F-35 Lightning II strike fighter has previously undisclosed problems with its handling, avionics, afterburner and helmet-mounted display, according to a report by the Pentagon's Director of Operational Test and Evaluation.”「F-35 lightning II 攻撃機は国防総省運用試験評価局の報告書によると取り扱い、アビオニクス、アフターバーナー、HMD(helmet-mounted display)に以前に明らかにされていない不具合がある。」
“Both the U.S. Air Force F-35A variant and U.S. Marine Corps F-35B model experienced transonic wing roll-off, [and] greater than expected sideslip during medium angle-of-attack testing,the report said.” 「報告書によるとUSAFのF-35AとUSMCのF-35Bで遷音速時の機体の横転と、中間AOA(迎え角)試験(*注)の際に予測以上の横転を経験した。」
“Pratt and Whitney F-135 engine has encountered an afterburner "screech," in which airflow disruptions cause severe vibrations, preventing the engine from reaching maximum power.”「プラット・アンド・ホイットニー F135エンジンは気流の途絶が深刻な振動を引き起こす「アフターバーナースクリーチ」(騒音)に遭遇し、最高出力を出せなくなっている。」
“Further, the report indicates problems with the aircraft's helmet-mounted display (HMD).”「更に報告書によると機体のヘッドマウントディスプレイ(HMD)に不具合があることを示している。」“The report does not elaborate on the nature of the problems, but says they must be solved before the Block 2 mission systems software can be tested. ”「報告書は不具合の内容に関して詳述はさけたがBlock 2ミッションのソフトウェアが試験される前に解決されなくてはならないとしている。」
(写真はF-35のHMD。必要な情報がこのヘルメットのバイザーに表示される。そのことによりF-35は従来の戦闘機にあったHUDを廃止している)
“The report also calls for the aircraft's On-Board Inert Gas Generations System, which generates inert gases to prevent oxygen building up inside the fuel tanks, to be redesigned.”「報告書は燃料タンク内に酸素が溜まるのを防止する為に不活性ガスを発生する機内の不活性ガス発生装置の再設計も求めた。」“The OBIGGS system fails to inert the fuel tank ullage spaces throughout the combat flight envelopes evaluated," the report says”「戦闘フライト・エンベロープ評価を通じて不活性ガス発生装置は燃料タンク目減りスペースを不活性化することに失敗したと報告書はしている。」
上記の様な状態を鑑みますと、F-35計画はまだ不安定要因が少なからずあります。無論遅かれ早かれ日本はF-35を導入するでしょう。しかしそれが今回のFX選定に相応しい機体かどうかは判断が難しいところです。日本の国内生産基盤維持の観点からも今回はF-15FXやF/A-18E等の第4.5世代機を採用し様子を見るか、またはハイ・ローミックスとする選択肢が無難な気がします。その場合はライセンス生産が望ましく、だとすれば合理性からもある程度のまとまった機数の受注が必要となり、そうしますとやはりこの観点からも戦闘機の定数増強が必要と個人的には考えます。
また今後はF-15後継機やF-2後継機も必要となるのであり、それらは中国のJ-20戦闘機初飛行に対抗する意味でも第六世代戦闘機であることが望ましく、そう考えますと日本単独でそれらを開発するのは困難であると思われます。このことからも戦闘機の国際共同開発への参加を可能とする武器輸出三原則の緩和が必要ではないでしょうか。
angle of attack (AOA、迎え角)
「翼と、それに向かってくる空気流 (相対風) との角度のことです。迎え角は航空機が進む方向に対するものであって、翼が水平線との間に作る角度ではありません。一般に、迎え角が増大するにつれて、翼が生み出す揚力も増大します。ただし、"臨界迎え角" と呼ばれる特定の角度に達すると、翼に向かって流れる空気は、翼面形状に追従できなくなり、乱流になります。臨海迎え角を超え、揚力が突然失われることを "失速" といいます。」
http://www.s-f-x.net/FSWeb/LearningCenter/Glossary.htm
2011年01月22日(土)追記:F35、日本の開発参加を調査=ロッキード社の接触承認-米国防総省(2011年01月22日 時事通信) 「▽日本仕様の部品のライセンス生産▽最終的な機体組み立て▽完成品の検査」等が検討されているそうです。1月18日付けのWALL STREET JOURNALでもLockheed Martin社のF-35プログラム事業部長のコメントとしまして“U.S. government has asked Lockheed to provide preliminary information on how it could build the Joint Strike Fighter with Japanese industrial input, building either major subcomponents or completing final assembly in Japan.”「日本国内での主要部品の製造ないしは最終アセンブリーでどの様に日本の業界とJSFを製造できるか関してロッキード社に米国政府が情報提供を要請した」とありました。
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