町村元官房長官の訪米、米国防次官補らとの会談に思うこと
2011年1月26日17時29分の読売新聞の報道によりますと、自民党の町村元官房長官がグレグソン米国防次官補やジョン・ハムレ戦略国際問題研究所(CSIS)所長と会談し、今春に策定予定の共通戦略目標で「中国の軍事力近代化と北朝鮮の核開発への対応がポイント」との認識で一致し、町村元官房長官は記者会見で「今後の日米協議では日本の防衛費のレベルが問題になるとの考えを示した。」とのことです。
この報道で不明なのは何故に町村元官房長官なのか、どの様な立場で訪米したのかです。2011年1月29日(土)午前10時現在で今回の町村氏訪米に関する詳細は自民党のホームページにも町村氏の公式ブログにも掲載されていません。従いましてどの様な経緯でどういった立場で国防次官補という公職にある立場の人物と会見したのかが現段階では全く分かりません。尤も安倍元首相もフロノイ米国防次官とグレグソン次官補と会見したことがありますし、CSISは保守系シンクタンクですし、グレグソン米国防次官補は今年の4月頃には辞任する予定ではあります。
しかし今回の町村氏の「今後の日米協議では日本の防衛費のレベルが問題になる 」との認識は何が根拠なのでしょう。この会談でそういった心証を抱いた事は確かではあるのですが、米側からそういったコメントがあったのでしょうか。こういった米側の要望は以前にもありました。具体例としましては2008年5月20日にトーマス・シーファー駐日大使(当時)が日本の防衛費増額を提唱しています。 しかし日本は新防衛大綱を策定したばかりであり、今後5年間は大きく日本の防衛政策が変更する事はありません。
しかし今回の件で不甲斐ないのは民主党がこういった外交を殆ど展開していないことなのです。本来は例えば安倍元首相が2010年10月に訪米しフロノイ次官とグレグソン次官補と会談した際に「尖閣諸島が中国に占領・掌握されても日米安保条約の対象となる」等の重要な言質を取るなどは与党の仕事なのではないでしょうか。民主党が今の政権与党なのです。野党の行う外交には自ずと限界があります。例えば「谷垣氏、アポとれず訪米断念」( 2010年12月23日 日本経済新聞朝刊)は当然の話なのです。米国政権中枢が外国の野党党首と会談を行うことはほぼありません。何故ならばそれを行えばその外国政府に対して米国政府が不支持を表明したこととなり、その外国政府に対し著しく非礼な対応となるからです。
しかし、それにも関らず昨年の安倍元総理の例や今回の件の様に日本の安全保障の根幹に関わるトピックに関して野党に対しても重要な見解表明がなされるのは何故なのでしょう。外交はオールジャパン体制でと言えば聞こえが良いのかもしれませんが・・・。
それは兎も角、もし「今後の日米協議では日本の防衛費のレベルが問題になる 」ということが事実であれば、米側が日本側に対して防衛力の強化を求めてくる可能性があります。米国側が中国のJ-20等のステルス機開発、空母保有に向けて邁進していること、対艦弾道ミサイルの開発など急激な軍備増強に懸念を抱いていることは間違いがありません。そしてそれは米国のみの課題ではなく、日本にとっても大きな脅威であることは間違いがないのです。
2011年02月08日追記:町村信孝オフイシャルホームページに今回の訪米に関する記事2011年02月01日付けで掲載されました。
2011年02月11日追記:中国に懸念…米軍、日韓と軍事協力関係強化方針(2011年2月9日11時53分 読売新聞) マレン米統合参謀本部議長「今後数十年、北東アジアで強力な軍事的プレゼンス(存在)を維持する」
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