バードカフェ謹製おせち商品相違問題に思うこと
年末年始に実にお粗末な騒動が起きました。多くの方が報道等で既にご存知のことと思いますが、ネットで注文したお節が見本の写真と全く異なっていた問題です。
ネット注文おせち「見本と違う」…納品遅れも
問題のお節は「バードカフェ謹製おせち」でお節33品・3段・7寸(4人分)」(定価2 万1000円)を、半額の1万500円で販売していました。ところが、実際に届いた品物は25品程しかなく中身がスカスカだったとのことです。またクール便で送られてくるはずが通常便で送られてきており、しかもその一部は腐っていたという報道も散見されます。この問題で(株)外食文化研究所(バードカフェ)は全額返金し代表の水口憲治社長が辞任をすることにより責任を取るとしています。それはそれで一つの対処の仕方であると言えるでしょう。しかし私はこれが根本的な解決に繋がるとは考えないのです。
クレームとはなんでしょうか。クレームとは企業が提供した商品やサービスのレベルが顧客の期待したレベルを著しく下回ったことにより生じるものです。クレームがチャンスと言われるのは、それが企業にとり顧客の満足レベルがどこにあるのかを知る良い機会でもあるからなのです。通常の場合は顧客、特に一般消費者が企業側に対してクレームを付けることは余りありません。例えば料理が不味い、出すのが遅い、そういった苦情を直接レストランに主張する人はそういないでしょう。しかしその顧客はもう二度とその店には行きません。しかもその顧客は自分の家族や知人にそれを話すでしょう。ここが非常に恐ろしい所なのです。
ところが今回のケースでは苦情が殺到し、全国紙の記事となる程の問題となりました。今回の(株)食文化研究所(バードカフェ)側の提供した商品が顧客側の期待値を大幅に下回ったことの明白な証拠と言えるでしょう。そもそも商品の写真と実際に届いた商品に若干の差異があることは一般的に有り得ることであり、その差異が常識の範疇であればそれは消費者の許容範囲内と言えるでしょう。尤もこの「常識の範疇」というのがまた難しいところで、個人差があります。シビアな評価基準の方もいらっしゃれば、大らかな方もいらっしゃります。しかし今回のケースは誰が見ても明らかに納期遅れ/数量不足/不良品と言えるでしょう。お節は正月に食するのが当然であり、だとしますと最悪でも大晦日必着でなくてはなりません。それが届かないというのでは話になりません。昨年のゆうパックの遅延で誕生日にケーキが届かないというケースもありましたが、それと同様の問題と言えるでしょう。更に33品が26品しかないというのでは、明らかな数量不足です。しかも腐っていたとの一部顧客からの申し立てが事実であれば、それは食品として最低限の機能を到底果たし得ないのであり、最悪の場合は健康被害が発生する虞もあったのであり、不良品以外の何ものでもありません。そして今回クレームが殺到し、ネット上で所謂「炎上」となり、全国紙で取り上げられる程の騒動となったことは、(株)食文化研究所(バードカフェ)の提供した商品が世間一般常識から著しくかけ離れているサービスの提供であったことを何よりも明白に物語っています。
しかし一体何故こういった不良品の出荷が起きてしまったのでしょう、水口憲治社長のブログによりますと 「500セットの調理と詰め込みに予想以上の時間がかかり納品が遅れるという事態が発生してしまいました」と述べています。確かにこれが直接的な原因なのかもしれません。しかし、誰が見ても不適切であることが一目瞭然であるのにも拘わらず、それが出荷されてしまうところに問題があるのです。此処まで見本と実際の商品に差異があるのでは確信犯的とも言えます。今まで(株)外食文化研究所はどういった検査基準で商品を出荷していたのでしょうか。メーカーで言うところのQC工程表の様な物や記録表はあるのでしょうか。
この水口憲治氏のブログや会社のホームページ には何ら再発防止策が提示されていません。今後こういった不祥事が起きない様にどういった再発防止策を講じるのかに関して具体的な言及がない限り、消費者側は今後安心して発注が出来ません。社長辞任と返金で幕引きにする問題ではないのです。繰り返しになりますが具体的な原因と対策が何ら発表がないことに最大の問題点であると私は考えます。万が一市場からの信頼が取り戻せければ、最悪の場合は正社員28名、アルバイトスタッフ120名 が路頭に迷うことにもなりかねません。
私は日本の製造業と海外の製造業の違いは日本人の品質に対するこだわりであると考えています。そこが例えば中国等諸外国との違いなのです。昨今では実際に製品を製造するのはロボットであるので、一部精密機器の品質は日本国内での製造と遜色がなくなりつつある分野が出始めています。しかしその一方で日本人と中国人で品質管理に関して認識に大きな齟齬があるとの話は製造業では良く耳にする話ではあります。今回の問題は食品ですのでサービス業ですが、それと同時に物を作る製造業とも言えます。(株)外食文化研究所のホームページには「健全な企業活動を通じて顧客さま、メンバー、協力業者さま、すべての人々を大切にしよう。」と書かれています。是非ともその原点に立ち戻って欲しいものです。
*皆様明けましておめでとうございます。今年度もアシナガバチを宜しくお願い申し上げます。
2011年01月05日(水)追記:水口社長ブログ「衛生面につきましても、店内全体を冷やしキャップ、マスク、手袋、調理用衣類等を着用で調理から詰め込みまでを行っております。」→実際の調理現場の写真
2011年01月08日(土)追記:おせち苦情、外食文化研究所とグルーポン聴取へ (2011年1月8日07時54分 読売新聞) 消費者庁が事情を聞き景品表示法違反にあたるかどうかを調べる。
2011年02月11日(金)追記「スカスカおせち」消費者庁が措置命令へ (2011年2月10日10時05分 読売新聞)
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