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2011年5月21日 (土)

米「F35」計画遅延か 空自FX選定に影響

 読売新聞の2011年5月20日01時15分の報道によりますと、米国防総省のマイケル・ギルモア運用試験・評価局長が19日に上院軍事委員会の公聴会に提出した証言書面で、「任務に就く能力を持った機体の初期運用試験・評価が始まるのは2017年の春だ」としているとのことです。 またこの報道でもう一点興味深いことは「日本が4月に出したFXの提案要求書(RFP)では16年の1号機納入などを条件」としているとの部分です。これは私の勉強不足によるものかもしれませんが、私が今まで知らなかった情報でした。以前の記事「次期戦闘機選定で防衛省が要求書交付」でも様々な報道をリストアップしてみましたが、少なくともこれらの報道の中ではこの情報は触れられていませんでした。

 WingNewsの2011年05月10日(火)のtwitter上でのつぶやきによりますと、米空軍にF-35ライトニングII量産初号機であるAF-7を納入したことをLockheed Martin社が発表したとありました(下はAF-7 のフェリーフライトの動画)。
Lockheed Martin社の公式ホームページの2011年5月9日付プレスリリースの記事"Lockheed Martin Delivers First USAF Production F-35 Lightning II "(「Lockheed Martin社が最初の量産型F-35をUSAFに納入」)にてその発表を読むことが出来ます。
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"The U.S. Air Force has accepted into its fleet the first of a planned 1,763 production-model Lockheed Martin F-35 Lightning II stealth fighters."
米空軍は自らの戦闘機部隊に1,763機製造予定のLockheed Martin社F-35 Lightning IIステルス戦闘機初号機を受領した。

"The jet flew to Edwards Air Force Base, Calif., on Friday to begin its flight testing program."
その機体は飛行試験プログラムを開始する為に金曜日にカリフォルニア州エドワーズ空軍基地に飛行した。
(引用終了)
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 また2011年5月16日のLockheed Martin社の発表では"Second F-35A Production Jet Arrives at Edwards AFB"(「F-35生産型第二号機がエドワーズ空軍基地に到着」)としています。
 
 
そこで調べてみましたが、これらの低率初期生産機はソフトウェアがブロック0.5形態にある機体である模様です。2010年6月13日のAviationWeekの記事"Flight Tests Of Next F-35 Block Underway"(「F-35の次期ブロックの飛行試験が進行中」)の第二頁によりますと、"The first two low-rate initial-production lots will be delivered with Block 0.5, Block 1 coming in with the third batch." 「低率初期生産の最初の二機はBlock 0.5で納入され、Block 1は第三ロットの予定である。」としています。このAviationWeekの報道が事実だとしますと、今回米空軍に納入された最初の二機はBlock 0.5であると思われます。完成型はBlock3です。

 以前に
このブログの記事「日本政府 F-35導入の方向か」でも紹介しましたDefense  Newsの2011年01月18日の記事"Report Reveals Undisclosed F-35 Problems"(「報告書で非公開とされたF-35不具合が明らかに」には"Currently, the program is testing preliminary Block 0.5 and Block 1 mission systems software. Block 2 would incrementally increase the aircraft's capabilities and would be followed by the fully mission-capable Block 3 software."(現状プログラムはブロック0.5及びブロック1ミッションシステムソフトウェアで準備的に試験している。ブロック2にて機体の能力は飛躍的に向上し、完全に作戦遂行可能なブロック3ソフトウェアが後に続くであろう」との記述が見られます。今回米国防総省のマイケル・ギルモア運用試験・評価局長が言及したのはBlock3仕様の機体であると思われます。それではBlock0.5、Block1、Block2、Block3の違いとは何でしょう。その違いに具体的に言及したソースを一つだけ見つけることが出来ました。それは韓国の中央日報の2011年02月20日09時41分の記事『「金正日に脅威を」」…急げば“高くて低性能”のF-35初期型購入することに』です。その記事にはこう書かれています。
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米会計分析局の資料によると、「ブロック0.5」は基本訓練用機で戦闘任務に投じることはできない初期型だ。以後「ブロック1.0」「ブロック2.0」「ブロック3.0」に進化する。2016年に初歩的機能の「ブロック1.0」が米空軍に最初に配置され、「ブロック2.0」になって攻勢的対空任務、航空遮断、近接航空支援など一部戦闘任務を遂行することができる。「ブロック3.0」でようやく敵陣深くに浸透して防空網を除去する任務と防衛的制空作戦などほとんどの主要任務を遂行できるようになる。
(引用終了)
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この記事をヒントにGAOの古い資料(2006年03月)を発見することが出来ました。その資料にはPage19(PDFファイルの23/40)で下の図が掲載されていました(クリックで拡大)。

Planned_jsf_blocks

この中央日報の記事の結論『「すなわち2017年以後に「ブロック3.0」を購入してこそ本当の戦闘機という話だ。』は正論であると言えるでしょう。もし日本がF-35を導入するとするならば、Block3が導入可能となるまで待つべきであると私も考えます。F-4の後継はF/A-18E/F改良型かユーロファイタータイフーンのどちらかを選定するのが無難と言えると思います。
(下はF/A-18E メーカー日本語版PDFカタログより)Fa18e

2011年05月22日(日)11:30追記「次期主力戦闘機、F35絶望的に 米国の開発間に合わず」(2011年05月20日 12:51分 中日新聞) 「F35は機種選定から事実上外れる可能性が濃厚となった。」「防衛省は米軍との連携を重視しており、FA18が最有力候補に急浮上しそうだ。」

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コメント

ブロック0.5や1、2からブロック3へのアップデートにかかる費用はどれぐらいのものなのでしょう
いかに米軍とはいえ、実質戦闘に耐えない未完成機を多数抱え続けるほどの余力はない(一部は訓練専用機として使われ続けるでしょうが)以上、なんらかの形で初期型もB3への改修が可能なのではと思えるのですが

名無し様
はじめまして。今後とも宜しくお願いします。
>アップデートにかかる費用
大変申し訳ございません。私の勉強/調査不足により、情報を有していません。
しかし機体本体(ハードウェア)を改修するという事ではなく、ソフトウェアの問題ですので、後日インストールをする事は可能だと考えます。
F-35はセンサーフュージョン、電子戦能力、そしてデータリンクが従来の戦闘機より遥かに進んだ機体です。従いましてソフトウェアが正常に作動するか慎重な検証が必要となります。それを確認する為に段階的に試験を実施しています。これがブロックを分けている理由です。
しかし最大の問題点は通常こういったソフトウェアの開発はスケジュール/予算から逸脱することが多いことです。特にF-35の様な先進的な機体であれば予算超過や納期遅れは充分に予想可能です。そしてその予算超過や納期遅れを許容出来るかがどうかが問題となります。
日本のFX選定レースとの関連で言えば、納期面での要求に合致しなくなりつつあるのが現状です。

これではF18以外の選択肢が無いじゃありませんか。

F2の再生産、もしくはF15(改じゃなくても)の採用の方が余程いいと思うのですけどね。
訓練や補給を考えると、新規の機体で一から訓練を始める余裕やそれ程の利点があるのでしょうか?

とりあえず、F2やF15の数を増やして時間を稼いだ方が良い、と思うのは私だけでしょうか。

しかし、民主党政権では日本のために効果的な選択は無理なのでしょうねぇ。

みやとん氏
そもそもF-2の調達を打ち切ったのは、自民党の小泉政権時代に石破茂防衛庁長官(当時)が単発機である為に発展性がなく、費用対効果が少ないという理由だったからです。そしてそれが今回のFX選定が必要となった要因の一つでもあります(あの当時はF-4後継はF-2が最有力候補でした)。
その方針を変えてF-2を再調達するのであれば、それなりの理由が必要です。
更に言えばF-2が日米共同生産であることも忘れてはなりません(日本側が6割、米側が4割製造)。日本側だけで決められる問題ではないのです。Lockheed Martin社はF-2の追加調達には消極的です。
F-15のA/B/C/Dモデルに関しては生産ラインが閉じられているので、再調達は不能です。唯一Eモデルの生産ラインが輸出向けで継続していますが、ボーイング社や日本の防衛産業の意向(以前にも何度かみやとん氏には説明したと思います。)、そして防衛省が興味を示していない(基本設計が古い、パイロットが一機に付き二名必要)のでF-15もありません。

いやいや、それは解ってます。単なる愚痴ですよ。

第一、予算面からしたらF35の値段が上昇しすぎて数をそろえるのは難しいでしょう。

また、時間がかかり過ぎるでしょうから、F18かタイフーンでしょうね。
ただ、今回の地震でもわかったように、米軍と共同作戦をとるとしたら、F18しかないでしょう。

まともな人間ならF18を選ぶしかないでしょうけど、とにかく早くして欲しいですね。

みやとん氏
FX選定は本当に長い道程でしたね。しかしその結論はいよいよ今年度末には出ます。

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