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2011年6月

2011年6月25日 (土)

2011年度「日米安全保障協議委員会」(2プラス2)と中国空母ワリヤーグ最新動向

上の動画は米国国務省提供の「日米安全保障協議委員会」(2プラス2)の動画 。43分間の動画です。) 
 日米両政府の外務、防衛担当閣僚による「日米安全保障協議委員会」(2プラス2)が米国時間2011年06月21日午前(日本時間21日夜)、ワシントンの米国務省で開かれました。内容に関しましては各報道機関で報じられている通りです。

2プラス2・日米共同発表要旨(2011年06月22日(水)00:01 時事通信)

2プラス2・日米共同発表骨子(2011年06月22日(水)00:02 時事通信)

また防衛省の公式ホームページに「共同発表:日米安全保障協議委員会(「2+2」)が掲載されています。今回の2プラス2の主旨ですが、簡単に言いますと「『中国は脅威』日米が宣言したも同然…政府筋」(2011年6月22日09時15分  読売新聞)なのです。 それでは今回の2プラス2の私なりの主な注目点を防衛省発表の資料をベースに見ていきたいと思います。

Photo_2

(上の写真は防衛省 数年前に筆者が撮影 クリックにて拡大)
共同発表:日米安全保障協議委員会(「2+2」)Ⅱ.共通の戦略目標」に関して
 まず「オーストラリア、韓国とそれぞれ3カ国安保・防衛協力を強化」との項目がありますが、この点に関しましてはこのブログの以前の記事「豪首相が日本との安保関係強化を希望」にて豪首相が日本と防衛協力の強化を希望している旨を触れました。今回の2プラス2でそれが更に推進されるでしょう。米国は以前より対中国を念頭に豪州との連携を強化する構想を検討していました。これらの一連の動向は全て関連していたと言えるでしょう。また上記以外にもASEANやインドとの協力関係強化も打ち出しています。

 また共同発表では中国に対し「国際的な行動規範の順守」と軍事力増強に関する透明性を要求しています。これは国際社会に於いて特に中国が権利は主張するが義務を負うことは避ける傾向が顕著であること、また過去20年間以上に亘り中国が国防費を概ね二桁の伸び率で増強しながら、その一方でその内訳を一切公開しないことに対する日米側の懸念を表明しているものです(下のグラフは1988年から2010年までの中国国防費総額と伸び率 2010年度防衛白書より クリックにて拡大)。Photo_3

 更に日米両国は「航行の自由の原則を守ることにより海上交通の安全及び海洋における安全保障を維持する」ことや、「宇宙及びサイバー空間の保護並びにそれらへのアクセスに関する日米の協力を維持する。情報及び宇宙のシステムの安全を含む,死活的に重要なインフラの抗堪性を促進する。」としています。これは中国が海洋権益を巡りアジア諸国との対立をエスカレートさせていることや、以前の記事「Lockheed Martin社に対するハッキング事件と米国の反応に思うこと」にて執筆しましたが、中国国内のIPアドレスから米国の重要施設や一部企業に対するハッキング事件が幾度も発生していることが念頭にあると思われます。こういった動向に対処する為に米国は2011年06月04日に「南シナ海の自由航行権など海洋の安全保障を守る」意思を表明し、そしてシンガポールに新型艦艇「沿海域戦闘艦」(LCS)を配備する方針も示しています。

 上記二点以外では「エネルギー及びレア・アースを含む死活的に重要な資源及び原料の供給の多様化についての対話を促進する。」との文脈がありますが、これは2010年09月08日に発生しました中国漁船衝突事件後に伴い生じました一連の日中間の外交上の緊張関係に於きまして、中国側がレアアースの対日輸出を一時的に禁じたことを受けたものであると考えられます。

共同発表:日米安全保障協議委員会(「2+2」)Ⅲ. 日米同盟の安全保障及び防衛協力の強化」に関して
まず冒頭で「核技術及び戦域弾道ミサイルの拡散,アクセス拒否/エリア拒否能力並びに宇宙,公海及びサイバー空間などに対するその他の変化する脅威といった課題に対処」する方策を講じるとしています。ここでも名指しは避けていますが、北朝鮮は勿論こと、中国の対艦弾道ミサイル、ステルス戦闘機開発相次ぐサイバー空間上でのハッキング行為空母建造衛星破壊実験を指していると思われます。800pxj20_impside_art

(上の画像はWikipediaよりJ20 作者はAlexandr Chechin氏 クリックにて拡大)
 それらに対する日米の具体的な対応の一つとして「情報共有や共同の情報収集・警戒監視・偵察(ISR)活動の拡大といった協力を促進」するとしています。このISRの強化はこのブログの過去記事「空自新戦闘機に偵察能力付与を検討か」にて触れたことがあります。海上自衛隊の哨戒機を活用し、また航空自衛隊の新戦闘機(FX)に偵察能力を付与することが検討されているとの事でした。ただFXに偵察能力を付与するとの報道は、その記事でも私は述べましたが、主語がありませんでしたのでどのレベルで検討されているかは不明です。その後に関しても特に続報はありません。いずれにしましても偵察能力付与に関しましては航空自衛隊次期戦闘機の候補となっている三機種のいずれでも対応可能です。特にF-35に関しましてはポッドを搭載せずとも偵察任務に転用が可能です。最近公開となったF-35の新公式ホームページのISRの項目で下記の通り記述されています(下記抜粋と翻訳)。
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With speed, stealth and integrated sensors, the F-35 can fly critical intelligence, surveillance and reconnaissance (ISR) missions with more sophisticated data capture than any previous fighter aircraft.
速度、ステルス性、そしてセンサー統合により、F-35は過去の如何なる戦闘機よりもより詳細なデータを捕獲し重要ISR任務に当たることが出来る。

Information gathered by F-35 sensors can be immediately shared with commanders at sea, in the air or on the ground, providing an instantaneous, high-fidelity view of ongoing operations.
F-35のセンサー類で収集された情報は直ちに海上、空、又は地上の司令官に共有が可能であり、遂行中の作戦の瞬時で正確な状況を提供する。
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F-35の情報収集能力に関しましては当ブログの過去記事「次期戦闘機選定で防衛省が要求書交付」も参照願います(EOTS(Electro-Optical Targeting System、電子・光学式照準システム=IRST、CCD-TVカメラ、レーザーの融合装置)による撮影動画があります)。

 また以前より課題となっていたSM-3ブロックⅡAの第三国への輸出に関しましては「当該移転が日本の安全保障に資する場合や国際の平和及び安定に資する場合であって,かつ,当該第三国がSM-3ブロックⅡAの更なる移転を防ぐための十分な政策を有しているときには,米国に対する武器及び武器技術の供与に関する2006年6月23日の交換公文に従い,認められ得る。」として道を事実上開きました。そして更に注目するべき事ですが、今回の共同発表では「先進諸国が国際共同開発・生産を通じて,装備品の高性能化を実現しつつ,コストの高騰に対応している中,日本政府はそのような流れに対応するために現在行っている検討を促進する。米国政府は,この日本政府の努力を奨励する」ことが盛り込まれており、これは日本が将来的な武器の国際共同開発への参加を検討する旨を表明したことを意味します。

在日米軍の再編の進展」について 
 そして長年に亘り日米間の懸案であり続けた普天間基地移設問題に関しましては、「代替の施設はキャンプ・シュワブ辺野古崎地区及びこれに隣接する水域に設置」し、「海面の埋立てを主要な工法として,専門家会合によって記されたようなV字型に配置される2本の滑走路を有するものとすることを決定」しました。即ち現行案の遂行が両国閣僚により再確認されたのです。日米両国の各方面で様々な代替案が検討されていますが、実務者レベルではあくまで現行案に則った形で進めることとなります。これは国防長官がパネッタ氏に交代しても変わりません。政策には継続性があるのです。それを無視したのが鳩山前総理であり、それが一因となって辞任に追い込まれたのは記憶に新しいところです。選択肢は最早「普天間固定化」か現行案の履行の二つに一つしかないと言えます。
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ここまで「日米安全保障協議委員会」(2プラス2)に関して見てきました。前述しましたが中国に対するけん制の色合いが極めて強いものと言えるでしょう。
その中国側の動向ですが、2011年06月21日のDefense NewsにChina's First Aircraft Carrier To Begin Sea Trials (中国初の空母が海上海上公試運転開始)との興味深い記事が掲載されました。下記に一部内容の抜粋と翻訳を行います。
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China's first aircraft carrier - a remodeled Soviet-era vessel - will go on sea trials next week, a report said June 21, amid escalating tensions in the South China Sea.
旧ソ連時代を改装した船舶である中国初の空母は南シナ海での緊張が高まる中で来週にも海上公試運転を開始すると6月21日に報じられた。

The Hong Kong Commercial Daily, which broke the story of the vessel's confirmation, quoted unnamed military sources saying the carrier will go on sea trials on July 1 but will not be officially launched until October 2012.
その船舶の確認に関する話題を報じた香港商報によると、匿名の軍関係者の話として公試運転は7月1日に行われるが公式には2012年10月まで進水しないであろうとした。

The sources said the test has been expedited in view of rising tensions in the South China Sea
情報源は公試は南シナ海での高まりつつある緊張に合わせて促進されたと述べた。

China's military "hopes it will show the strength of the Chinese maritime forces to deter other nations, which are eyeing the South China Sea, in order to calm tensions," the sources said.
中国軍は「緊張を安定化させる為に南シナ海を狙っているその他の国々を抑止する目的で中国海軍の強さを示すことを望んでいる」と情報源は述べた。

They added that the sea trial date was also picked to celebrate the 90th anniversary of the Chinese Communist Party but noted that factors such as weather could affect the planned test run.
公試日程は中国共産党90周年を記念して選ばれたが天候などの要素で公試計画日程の変更が有り得ることも彼等は付け加えた。
--------------------------------------------------------------------Usnwc_varyag02 (上記写真はWikipediaよりワリヤーグ 著作権はPublic Domain クリックにて拡大)
興味深いことにこのDefense Newsの記事はAFP通信をソースとしています。当ブログでもワリヤーグに関する記事を以前に二回執筆しましたが、その一つ「「中国が空母5隻建造へ 初の空母は2015年に行動」と中国網がAFP報道を引用し報じる 」もAFPが関連していました。この報道は事実かどうかは分かりません。中国がベトナムやフィリピンを恫喝する目的で意図的にリークし、ブラフをかけている可能性もあります。
もしこの報道が事実であるならば、この様な恫喝は中国包囲網を強化させる結果しか生じさせない事を中国は認識するべきです。

豪空軍と共同訓練へ=米国以外とは初-空自(2011年06月22日(水) 時事通信)

Vietnam Says to Hold Joint Naval Drill with U.S. (ベトナムが米国と共同で海軍演習を実施と発表-Defense News 2011年06月23日記事)

U.S., Philippine Navies to Train Near Disputed Waters(米国とフィリピン海軍が紛争地近くの海上で共同演習へ-Defense News 2011年06月24日記事)

また空母を保有するのであれば数隻体制でなくては意味はなく、潜水艦に対する備えとAEW機配備は必須です。そして現状では中国はまだそこまでは到達していない様に私には思えます。むしろ本当の脅威はサイバー戦にあるのかもしれません。だとしますと、今回の2プラス2がそれにも言及しているのは現実的な対応だと言えるでしょう。Js_sry1 (上の写真はWikipediaより海上自衛隊「そうりゅう」級潜水艦 転載自由 クリックにて拡大)

Nsm_pict0001 (上の写真はWikipediaよりNSM 派生形のJSM対艦ミサイルがF-35戦闘機のウエポンベイに搭載可能 メーカーはKongsberg社 Pibwl氏撮影 クリックにて拡大)

2011年07月02日(土)追記:
自衛隊、馬毛島に集結拠点…南西地域の防衛強化(2011年7月2日15時24分  読売新聞)

修復中の中国空母、試験航行延期か「技術的問題見つかる」 香港紙(2011年06月29日 13:05 産経新聞)

2011年6月19日 (日)

V-22の安全性実績と騒音数値データから普天間基地配備反対論を検証する

  V22_osprey_tiltrotor_aircraft_2

(上記写真はWikipediaよりV-22 著作権はPublic Domain)
NHKの2011年6月18日(土)11時56分の報道によりますと、米国海兵隊が来年と再来年の10月にそれぞれ12機ずつの予定で、計24機のV-22オスプレイを普天間基地に配備することを明らかにしました。上記NHK報道以外でもこの1~2週間で米国海兵隊による沖縄県へのV-22配備の動きが本格的に始動し始めた旨の報道が散見されました。

オスプレー来年後半沖縄配備=普天間飛行場、事前通知準備-米国防総省(2011年06月07日09:27 時事通信)

 この米側の動きに対し、主に県や市からは安全性や騒音の観点から懸念を表明する意見も見られます。

それではこのV-22とはどの様な機体なのでしょうか。最大の特徴はローターの角度を垂直にしてヘリコプターの様に垂直に離陸し、その後はローターを水平にして通常のターボプロップ機として飛行が可能なことです。ここにYoutubeのV-22垂直飛行の動画があります。

そしてこれがV-22の飛行の様子を撮影しましたYoutube動画です。機動性も非常に高いことが分かります。

まず基礎的なデータを確認する必要がありますので、メーカーであるボーイング社のホームページで仕様を確認しました(V-22製造元はベル ヘリコプター社とボーイング社)。ボーイング社のV-22に関する説明書(PDF)によりますと仕様は下記の通りです。
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推力: ロールスロイス社製AE1107C×2基, それぞれ6,150 shp (4,586 kW)
長さ: 機体: 57.3 ft. (17.48.20 m); 折りたたみ時: 63.0 ft. (19.20 m)
ローター回転時幅: 84.6 ft. (25.78 m); 折りたたみ時: 18.4 ft. (5.61 m)
高さ: ナセル垂直時: 22.1 ft. (6.73 m); 垂直尾翼: 17.9 ft. (5.46 m)
ローター直径: 38.1 ft (11.6 m)
垂直離陸最大総重量: 52,600 lbs. (23,859 kg)
最大巡航速度: 275 kts (443 km/h) SL
作戦行動半径: 430 nm (796 km) - MV-22 24名の兵士搭乗, ランプに武装装備, SL STD, ロイター飛行時間 15分
コクピット - 乗員: MV 2名 / CV 3名

The Osprey can carry 24 combat troops, or up to 20,000 pounds of internal cargo or 15,000 pounds of external cargo, at twice the speed of a helicopter. It features a cross-coupled drive system so either engine can power the rotors if one engine fails.
オスプレイは24名の戦闘員か、20,000ポンドの貨物か、又は機外に15,000ポンドの貨物を搭載しつつヘリコプターの二倍の速度で飛行が可能である。交差結合ドライブシステムを有しており、一つのエンジンに不具合が発生してももう片方のエンジンがローターに動力を供給可能である。

In Feb. 2011, the worldwide operational Osprey fleet surpassed 100,000 total program flight hours during an MV-22 combat mission in Afghanistan.
2011年02月には世界各国で実戦配備されたオスプレイ飛行隊はアフガニスタンンでの戦闘作戦中にMV-22が100,000飛行時間を上回った。
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寸法に関しましては下記の画像も参照願います(画像はWikipediaより。著作権はPublic Domain クリックで拡大)。

V22_drawing_2

最大作戦行動半径に関しましては約370nm(685km)とする分析も一部にはあります。)
この100,000飛行時間達成の事実は2011年03月02日のボーイング社プレスリリースでも発表されています。そのプレスリリースには下記の様に記述されています。
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According to Naval Safety Center records, the MV-22 has had the lowest Class A mishap rate of any rotorcraft in the Marine Corps during the past decade. The aircraft’s reduced susceptibility, lower vulnerability and advanced crashworthiness have made it the most survivable military rotorcraft ever introduced.
米海軍安全センターの記録によると、MV-22は海兵隊に於いて過去10年で回転翼機の中では最も低いAクラス事故発生率であった。この機体の低減された感受性、低められた脆弱性、高度な耐衝撃性は導入された軍用回転翼機の中で最も生存性の高いものにした。

“At 100,000 flight hours, safety, survivability and mission efficiency have become hallmarks of the operational fleet,” said Mitch Snyder, deputy program director for the Bell Boeing V-22 Program.
「100,000の飛行時間達成で安全性、生存性、そして作戦効率性はこの作戦航空隊の特徴とした」とBell Boeing V-22計画のMitch Snyderプログラム副部長は述べた。
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 参考までにですが、Aクラス事故とは$1,000,000以上の損害額で且つ/又は航空機の全損を含み/又は死亡事故と/又は生涯の完全な後遺症が残る事故を指します。確かにV-22は開発中に二回、低率初期生産段階で二回大事故が発生しています。しかしこれらはあくまで開発中及び低率初期生産段階での事故であって、事故の度に対策と改良が加えられ、現段階では上記の様に性能が安定していることに着目する必要があります。航空機は開発段階や配備されたばかりの時点に於きましては、様々な不具合が発生することはしばしばあることなのです。その中でもオスプレイは事故率が低いことはCH-46と比較しましても数値上データでも裏付けられています。2011年6月15日01時02分の読売新聞報道によりますと「飛行10万時間当たりの損害額200万ドル超の事故数で比較すると、普天間に現在配備されているCH46中型輸送ヘリが1・37なのに対し、オスプレイ(02年5月の飛行試験再開以降)は1・28。海兵隊全体の平均の2・46も下回っているという。また、海兵隊のオスプレイは飛行試験再開からこれまでの7万時間以上の飛行で、死亡事故はないとした。」となっています。

 騒音に関しましても米国海軍省が2009年10月に発行した環境影響報告書Volume 2 - Chapters 6-12(PDF)の第87頁では下記の通りです。CH-46Eと比較しましても全般的に騒音は低減されています(クリックにて拡大)。Comparison_of_ch46e_and_mv22_sound_

(尚、上記以外の2009年度に発行されましたMV-22に関します環境影響報告書はこちらで見る事が出来ます。)
これらの数値から判断しましても、CH-46と比較しましても安全性は高まり騒音も低減するのですから、MV-22普天間基地配備に対して安全性や騒音の観点から反対するのは拙論であると言わざるを得ません。

2011年6月12日 (日)

ゲーツ国防長官とパネッタ次期国防長官の同盟や予算に関する発言に思うこと

 以前の記事「Lockheed Martin社に対するハッキング事件と米国の反応に思うこと」にて米国が対中包囲網を構築する方向性であることは述べました。その一方で米国の方針が同盟国に一定の役割分担や負担を以前にも増して求めるものになりつつある可能性もあります。

 ゲーツ米国防長官長官がブリュッセルで実に興味深いスピーチを行いました。Defense Newsの2011年06月10日の記事"Gates Laments NATO's Military, Political Flaws"(ゲーツ氏がNATOの軍事的、政治的欠点に苦言を呈す)によりますと、ゲーツ長官がNATOの能力不足と覚悟の度合いを批判したとのことです。このゲーツ氏のNATOに対する批判は日本にもそのまま当てはまるものも多く感じられました。そうだとしますと、米国が日本に対しても同様の不満を抱いている可能性はあります。この報道を抜粋し翻訳します。
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Gates cited helicopters, transport aircraft, surveillance and reconnaissance, and intelligence as areas where NATO has struggled. Gates added that "similar shortcomings in capability and political will had the potential to jeopardize the NATO air and sea campaign in Libya."
ゲーツ氏はヘリコプター、輸送機、監視と偵察、そして情報収集能力をNATOが未熟であったとして列挙した。ゲーツ氏は同様の能力不足と政治的意思の欠如がリビアに於けるNATOの空及び海での作戦を水泡に帰す虞を生じさせかねなかったと付け加えた。

Although NATO has achieved its initial objectives of grounding Libya's air force and reducing Moammar Gadhafi's ability to attack civilian populations, Gates said fewer than one-third of NATO allies had taken part in airstrike missions. "In the Libya operation, many allies are running short of munitions, requiring the U.S. to make up the deficit," he added.
NATOはリビア空軍の強制着陸との当初の目的を達成しカダフィの民間人攻撃能力を減らしたが、ゲーツ氏はNATO同盟国の1/3以下が空爆作戦に参加したと述べた。「リビア作戦では、多くの同盟国が装備品不足となり、米国が不足分を補うこととなった」とゲーツ氏は付け加えた。

Gates also said the emergence of a "two-tier alliance" of peacekeepers and those doing the hard combat missions is unacceptable.
ゲーツ氏は「平和維持のみの国と困難な戦闘任務を遂行する国との『二層構造の同盟』の出現は受け入れられない」とも述べた。

Describing himself as the last senior leader to be a product of the Cold War, Gates issued a stark warning to European leaders: "The emotional and historical attachment U.S. leaders had with allies is ageing out. Decisions and choices [in the future] will be made more on what is in the best interests of the U.S.
ゲーツ長官は自らを冷戦の遺物として最後の閣僚であると述べ、NATO指導者に「米国指導者が同盟国に有していた心情的及び歴史的好感は時代遅れとなりつつある。(未来の)決定と選択は米国の最大の国益は何かということに基づいて行われるであろう」と警鐘を鳴らした。

Gates also noted that only five of the 28 NATO allies currently exceeded the agreed NATO benchmark of spending 2 percent of GDP on defense.
ゲーツ氏はNATOの28の加盟国中5ヶ国のみが現在NATOで同意された水準であるGDPの2%以上を国防に費やしていると言及した。

Gates also said the U.S. government was looking at dramatic cuts in a wide range of programs. "Defense will have to bear some of that burden," he said.
ゲーツ氏は米国政府はが幅広い分野で大幅な支出削減を計画しているとも述べた。「国防もある程度それを受け入れなくてはならないであろう」とゲーツ氏は言った。

(引用終了)
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(上の写真はWikipediaよりゲーツ国防長官 著作権はPublic Domain) 
ゲーツ国防長官のNATOに対する上記の苦言は、我が国の防衛政策を色々と想起させる部分があります。米国がNATOに対してこの様な不満を抱いているとするならば、日本に対しても同様の不満を抱いている可能性があることは想像に難しくありません。

 それでは米国政府支出削減によって、米国の国防予算はどの様な影響を受けるのでしょうか。それに関する報道をやはりDefense Newsで見付けることが出来ました。2011年6月9日のDefense Newsの記事"Panetta: $400B Cut Won't Harm U.S. Security"(パネッタ氏:4000億ドルの削減は米国の安全を害さない)です。下記に抜粋し、翻訳します。

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Leon Panetta, nominated to become the next U.S. defense secretary, told the Senate Armed Services Committee on June 9 that the government does not need to choose between fiscal discipline and a strong national defense.
次期国防長官に指名されたレオン パネッタ氏は6月9日の上院軍事委員会で政府は財政規律と強固な国防の二者選択をする必要はないと述べた。

The $400 billion cut to the security budget over 10 years called for by President Barack Obama will not pose a risk to national security, he said during his confirmation hearing.
今後10年間で安全保障関連予算から4000億ドルの削減とのバラク オバマ大統領の要求は国家の安全に危険を引き起こすものではないとパネッタ氏は確認聴聞で述べた。

He acknowledged that some tough choices would have to be made, but Panetta said the country could maintain the strongest military in the world while also reining in defense spending.
パネッタ氏は幾つかの難しい選択をしなくてはならないことを認めたが、パネッタ氏は国防支出を抑制しつつ世界最強の軍事力を維持出来ると述べた。

Panetta said he did not know how much of the $400 billion would come from the Pentagon.The security budget includes funding for the State Department, the intelligence community, the Department of Homeland Security, the Department of Veterans Affairs, the U.S. Agency for International Development and the nuclear weapons activities of the Department of Energy.
パネッタ氏は4000億ドルのうちどの程度が国防総省に振り分けられるか知らないと述べた。安全保障関連予算は国務省、諜報部門、国土安全保障省、退役軍人省、エネルギー省の国際開発及び核兵器動向庁も含む。

Panetta, a former Democratic congressman from California, was director of the Office of Management and Budget (OMB) during the Clinton administration. He is now director of the CIA.
カリフォルニア州選出の民主党議員であったパネッタ氏はクリントン政権時代に米国行政管理予算局(OMB)の局長だった。パネッタ氏は現在CIAの長官である。

(引用終了)
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(上の写真はWikipediaよりパネッタCIA長官/次期国防長官  
上記記事から考えましても、米国の安全保障関連の予算は大幅に削減される方向性です。パネッタ氏が次期国防長官として指名されたのは、米国行政管理予算局(OMB)の局長を務めた経験も考慮された可能性があります。この記事にもあります様に、4000億ドル全てが国防総省予算から削減される訳ではありませんが、米国の軍事力や紛争介入時にある程度の影響を及ぼすことは避けられません。このことから同盟国に一層の負担を求めてくる可能性があります。ゲーツ長官はこういったことからNATO諸国に警告を発したと思われます。

 その一方で前の記事でも述べましたが米国として中国包囲網を構築する方針である旨をゲーツ長官が6月4日にシンガポールにて述べています。また上記の記事では触れられていませんが、6月9日の上院軍事委員会公聴会にてパネッタ次期国防長官も中国を念頭に空・海両軍が統合して敵軍を撃破する「エア・シーバトル(空・海戦闘)構想」の重要性を強調しました(2011年06月10日(金) 産経新聞)。しかしこの予算削減と抑止力強化は両立しないかもしれません。日本は厳しい財政事情を受けて防衛予算の削減が続いています。下の各図表は2009年度防衛白書からです(クリックにて拡大)。

Photo

21

2007_3 上の各図表から見て頂きましても防衛費の削減傾向が続いており、また防衛費の半額近くが人件費であり、世界各国と比較しましてもGDP比率は極めて低い事が分かると思います。これに対して中国の国防費推移は2010年度防衛白書によりますと下記の図表の通りです(クリックにて拡大)。Photo_2

1989年より継続して二桁の伸び率で推移しています(2010年度は約9.8%)。またこの白書にて述べられていますが、「中国が国防費として公表している額は、中国が実際に軍事目的に支出している額の一部にすぎないとみられていること留意する必要」があります(研究開発費などは含まれていない)。

 既に各報道で皆様もご存じのことと思いますが、平成23年度6月8日の統合幕僚監部の発表によりますと、中国海軍のソブレメンヌイ級ミサイル駆逐艦3隻を含む艦隊計8隻が宮古島の北東約100kmの海域を東シナ海から太平洋に向けて南東進しました。更に6月9日にはフリゲート艦3隻が同様のルートを通行しました。
(下の写真は海上自衛隊撮影の中国海軍ソブレメンヌイ級ミサイル駆逐艦3隻中1隻 平成23年度6月8日の統合幕僚監部の発表より クリックにて拡大)Photo_3

 日本の防衛費の増強も喫緊の課題となりつつあります。国家の最大の使命は国民の生命、領土、財産を守る事なのです。それでは具体的に如何に行うかです。それをに関しましてはtwitter上でfj197099氏が2011年06月11日に興味深い提案をしています。日本は防衛費を東アジアの平均1.4%程度まで引き上げるべきであること、またそれは消費税にして1%程度であることを指摘しています(fj197099氏の根拠はMilitary Balanceと子供手当に関する議論で消費税1%増税で2兆円の税収となるとの主張から)。Fj197099tweet1

Fj197099tweet2

 政府は社会保障と税の一体改革で、消費税率引き上げと同時に税制全体を抜本的に見直す一方、日本企業の国際競争力を維持するため、地方税を含む法人実効税率は引き下げる方針ですが、こういった防衛政策の観点も議論に含めるべきでしょう。

2011年6月 5日 (日)

Lockheed Martin社に対するハッキング事件と米国の反応に思うこと

Hi390060 (上の写真は某イベントでのLockheed Martin社のブース ある時期に筆者にて撮影 クリックで拡大) 
Lockheed Martin社が米国現地時間の2011年5月21日(土)に何者かによりハッキング攻撃を受けました。そのハッキング攻撃に対して同社が直ちに自衛手段を講じ、特に被害はなかったことが同社の公式発表で確認できます。下記に2011年05月28日(土)の同社の発表を抜粋し、翻訳します。
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Lockheed Martin Customer, Program And Employee Data Secure
Lockheed Martin社顧客、プログラム、従業員データは安全

Swift, Deliberate Response Thwarts IT Breach
迅速で思慮深い対応がIT侵入を阻止する。

On Saturday, May 21, Lockheed Martin detected a significant and tenacious attack on its information systems network. The company’s information security team detected the attack almost immediately, and took aggressive actions to protect all systems and data. As a result of the swift and deliberate actions taken to protect the network and increase IT security, our systems remain secure; no customer, program or employee personal data has been compromised.
5月21日(土)にLockheed Martin社は同社の情報システムネットワークに重大で執拗な攻撃を探知した。同社の情報セキュリティーチームが攻撃をほぼ直ちに察知し、全てのシステムとデータを保護する為に活発な行動をとった。ネットワーク保護の為にとった迅速で思慮深い行動とITセキュリティーの増強により、弊社のシステムは安全なままである;顧客、プログラム、または従業員データに漏洩はなかった。

Throughout the ongoing investigation, Lockheed Martin has continued to keep the appropriate U.S. government agencies informed of our actions. The team continues to work around the clock to restore employee access to the network, while maintaining the highest level of security.
現在進行中の調査を通じてLockheed Martin社は適切な米国政府機関に我々の行動を継続的に報告している。チームは最高度の警戒態勢を維持しつつ、24時間体制で従業員のネットワークへのアクセスを復旧している。
(引用終了)
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 このLockheed Martin社の発表ではサイバー攻撃の性質や攻撃元など具体的な内容は全く開示されていません。しかし私はこの話を聞いた時に過去の類似の事例を思い出しました。2009年04月21日のWSJ紙の"Computer Spies Breach Fighter-Jet Project"(コンピュータスパイが戦闘機プロジェクトに侵入)との報道です。WSJ社のこの報道によりますと、航空自衛隊FX選定の有力候補でもあるF35戦闘機の開発プロジェクトのデータをハッカーが盗んだというものでした。盗まれたデータは数テラバイトものF35の機体と電子システムに関するものでした。800pxf35a_threeview

(上の画像はF-35戦闘機 Wikipediaより 著作権はPublic Domain)
この時は最も機密度の高い情報はネットに接続されていないコンピュータに保存されており、被害はありませんでした。この2009年当時のWSJの報道はハッカー侵入が少なくとも2007年度から発生していた可能性を指摘しました。またこの事件の説明を受けた関係者が流出元はLockheed Martin社、Northrop Grumman 社、BAEシステムズ社のいずれかであるとWSJ社に語っています。この2009年度のWSJ紙報道でF-35戦闘機データハッキング事件「容疑者」として名指しされたのは中国でした。"Investigators traced the penetrations back with a "high level of certainty" to known Chinese Internet protocol, or IP, addresses and digital fingerprints that had been used for attacks in the past, said a person briefed on the matter."(この問題で説明を受けた人物によると調査関係者は侵入を中国のインターネットプロトコルないしはIPまで高い確実性で逆探知しており、アドレスとデジタル指紋は過去の攻撃にも使われたものだったとしている。)またこの時は米空軍の航空管制システムも侵入されたことが報じられています。

 今年の今回のLockheed Martin社への侵入は具体的に何者による如何なる行為であったのか2011年05月28日(土)のLockheed Martin社発表では明らかにされていません。従いまして上記2009年の事例を連想させるものでしたが、私は暫く推移を見守っていました。しかし今回のハッカー事件でも再び中国の関与が疑われ始めました。ロイター通信の2011年06月02日(木)の報道"China under suspicion in U.S. for Lockheed hacking "(Lockheed Martin社ハッキングで中国に米国内で嫌疑」によりますと、"But a U.S. official familiar with progress on the investigation said there was increasing suspicion the Lockheed hack originated with "someone in China."(調査の進捗に詳しい米政府関係者はLockheedハッキングの攻撃元が中国国内の何者かによるものとの疑惑が深まっていると述べた)としています。

 Lockheed Martin社に対するハッキング攻撃以外に、Google社のGメールにも中国からと見られるハッキング攻撃が判明しています。攻撃対象の中には、米政府高官や韓国などアジアの高官、ジャーナリスト、中国の政治活動家などが含まれるとのことです(2011年6月2日10時08分  読売新聞報道)

 犯人が誰であるかに関わらず、これらのハッキング攻撃が近年に於ける安全保障上の脅威となりつつあるのは衆目の一致するところです。そういったことから米国国防総省は報告書で"Major Cyber Attack Is Act of War: Pentagon Report"(重大なサイバー攻撃は戦争行為である:国防総省報告書)としています。この記事は2011年05月30日にDefense Newsに掲載されていますので下記に抜粋し、翻訳します。
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The Pentagon has adopted a new strategy that will classify major cyber attacks as acts of war, paving the way for possible military retaliation, the Wall Street Journal reported on May 31.
国防総省は重大なサイバー攻撃を戦争行為として分類する新たな戦略を採用し、軍事報復の可能性に道を開くとWSJ紙は5月31日に報じた。

The newspaper said the Pentagon plans to unveil its first-ever strategy regarding cyber warfare next month, in part as a warning to foes that may try to sabotage the country's electricity grid, subways or pipelines.
同紙によると米国の電力網、地下鉄、パイプラインの破壊工作を試みるかもしれない敵国に警告する目的も兼ねて、ペンタゴンはサイバー戦争に関する初の戦略を来月公開する。

"If you shut down our power grid, maybe we will put a missile down one of your smokestacks," it quoted a military official as saying.
「もし貴国が我々の電力網をシャットダウンしたならば、我々は貴国の煙突の一つにミサイルを撃ち込むかもしれない」と軍関係者の発言をWSJ紙は引用した。

(引用終了)
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 不思議なことに、日本の防衛省や防衛産業に対する重大なサイバー攻撃があったとの報道はあまり目にしません。中国からと思わしきウイルスメールが防衛省関係者に送信されてくるとの新聞報道は過去に読んだことがあります。しかし機密情報が漏えいした、重大な施設のネットワークに侵入されたとの報道はありません。全くないのか、あることはあるのですが官公庁が公表していないのか、それとも気が付いていないのかは分かりません。しかし日本も強固な対策を講じるべきだと言えるでしょう。それは安全保障上の理由だけではなく、武器をの共同開発に参加する上でも必須条件とも言えます。
 上記の国防総省のサイバー戦に関する報告書は特定の国を名指ししていませんが、明らかに中国も念頭にあると考えて差し支えがないと思われます。サイバー上でも中国との冷戦が開始されつつあると言えるでしょう。
 ゲーツ国防長官は6月4日(土)に訪問先のシンガポールでアジア地域諸国による対中包囲網の構築を進める意向を表明しました。シンガポールにも新型艦艇「沿海域戦闘艦」(LCS)を配備する方針も示しています。

米国:南シナ海安保 多国間で中国包囲網を…ゲーツ長官2011年6月4日(土) 17時24分 毎日新聞)

以前も幾度か執筆しましたが、日本も選択を迫られる時が近づいてきていると言えるでしょう。
下の写真は「沿海域戦闘艦」(LCS) Wikipediaより 著作権はPublic Domain)

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2011年6月 4日 (土)

菅「ゾンビ」政権に対する不信任案否決に思うこと

 

Photo (上の写真は筆者がある時期に撮影の首相官邸 クリックで拡大)
 自民、公明、たちあがれ日本の3党が提出しました内閣不信任決議案が6月2日(木)午後に反対多数で否決されました。6月1日(水)の夜の段階では民主党内部の対立激化により、不信任案可決の可能性も十分ありました。特に小沢グループの集会には71人が集結し、民主党分裂の危機とも言えました。

 それが一転して状況が変わったのは6月2日(木)午前の菅総理と鳩山前総理の会談でした。その会談で菅首相は震災や原発事故対応で一定のめどがついた段階で首相を辞任すると約束したと鳩山前総理は述べています。鳩山前総理は数日前まで退陣を菅総理に要求し不信任案にも賛成する方針でした。そして6月2日(木)午後の民主党代議士会でも菅総理は「大震災への取り組みに一定のメドがついた段階で、若い世代に責任を引き継いでいきたい」と述べました。また鳩山前総理は菅総理と三項目の覚書を交わした事を明らかにしました。この流れを受けて小沢元代表も「今までなかったことを引き出したんだから、自主的判断でいいだろう」と述べ、また鳩山前総理も不信任案決議を結束して否決するよう呼び掛け、不信任案が否決されることがこの時点でほぼ確実となりました。菅総理の退陣の時期に関しまして鳩山前総理は6月中との認識を示しました

 この菅総理と鳩山前総理の合意内容ですが、全く退陣時期が明記されておらず、いかにも解釈が可能な内容でした。案の定、菅総理は不信任案否決後の6月2日(木)夜の記者会見で「退陣時期としては、(原発)事故の収束に向けた政府と東京電力の工程表で、今年10月中旬から来年1月中旬終了をメドとした「ステップ2」が完了し、「放射性物質がほぼ出なくなるまでもっていくために全力を挙げ、一刻も早い実現を目指すのが私の責任だ」と説明し続投の意欲を表明しました。鳩山前総理はこれに関して「不信任案が出る直前には『辞める』と言い、否決されたら『辞めない』と言う。こんなペテン師まがいのことを、時の首相がしてはいけない。不信任案に賛成しておくべきだった」と述べて怒りをあらわにしましたが、後悔先に立たずです。今回のこの事態は鳩山前総理が招いたとも言えます。鳩山前総理は以前より言動が変遷する/人によって言うことが異なる傾向があります。小沢氏もそもそも菅総理に震災対策や原発事故対処を任せられないと述べていたにも関わらず、菅総理が震災・原発事故対処の目処がたった時点で辞職する旨を表明するやいなや小沢グループを自主投票にするのですから、ただ単に菅総理を辞めさせるだけが小沢氏の目的だったことを物語っています。

 その一方で今回の事態は実は3月11日の東日本大震災前の政局の延長線上なのです。私は2月19日(土)の時点で「菅内閣末期に思うこと」との記事を執筆していました。支持率低迷、小沢派との内紛、予算関連法案不成立の危機、統一地方選、普天間移設問題で遅かれ早かれ菅政権は終焉を迎えるというのが私の予測でした。更にこれに加えて外国人からの違法献金疑惑が3月11日の朝日新聞によりスクープ報道されました。その約一週間前には前原氏が外務大臣を在日韓国人からの違法献金疑惑問題で辞職しており、菅政権にとっては致命傷となる可能性がありました。この時点で既に死に体だったのです。やや不適切な表現かもしれませんが「ゾンビ」だったのです。それが3月11日の東日本大震災で一時的に「時間が止まって」いた状態だったのです。そして菅総理は将来的な退陣を今回表明しました。これにより菅総理は急速に求心力を失いレームダック化が更に進むことは間違いがありません。この非常事態時にレームダック化した総理の下で有効な震災復興計画推進と原発事故対処が可能な訳がないのです。レームダック化しているのですから、リーダーシップを発揮出来る訳がありません。党内抗争は更に激化し、次の総理の座を巡る闘争も始まります。そうしますと復興計画や原発事故対処は更に遅れることとなります。こうなってしまった以上は、菅総理の早期退陣と新総理大臣の選出、そして衆参両院で最低でも過半数の議席を有する政策が一致した勢力による連立政権樹立が喫緊の課題と言えるでしょう。

(下の写真は筆者にてある時期に撮影した国会議事堂 クリックにて拡大)

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