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2011年12月

2011年12月29日 (木)

産経新聞による一連のF-35批判記事を検証する

Sdd_f35testa_037_2上の写真はjsf.mil(米国政府公式F-35サイト)よりF-35A 米国政府の方針により配布自由 "Information presented on www.jsf.mil is considered public information and may be distributed or copied."クリックで拡大)

 この記事は以前に私が執筆しました二つの記事の補足のような内容となります。

「NHKによる「FX候補のF35 機体に不具合」との奇妙な報道に思うこと」(2011年12月04日 (日)執筆)

「空自次期主力戦闘機がF35に決定」(2011年12月13日 (火)執筆)

 この後者の記事のコメント欄でF-35の不具合状態に関しまして議論がありました。特に議論のたたき台となったのは産経新聞によるF-35の不具合に関する報道でした。

「F35 開発2年延長 米国防総省方針 日本2016年導入困難」(2011年12月13日02:05)-1頁目-

「F35 開発2年延長 米国防総省方針 日本2016年導入困難」(2011年12月13日02:05)-2頁目-

この産経新聞の記事の要旨は下記の三点です。

1.「F35に多数の亀裂が見つかったのを受け、米国防総省がF35の開発調達計画を2年間遅らせる見通しとなった。」
2.「同省の諮問機関「国防調達委員会(DAB)」が来年1月の会合で延長を決める方針。」
3.「調達費が「3倍近くになる」」

 これら三点の問題ですが、少なくとも私はそのおおもととなる報道を見つける事が出来ませんでした。Defense News, Air Force Times, Flightglobal, Aviation Week、Defense Industry, Defense Techのいずれにも出ていません(2011年12月29日現在)。今のところ、この三点を報じているのは日本の産経新聞のみなのです。

 その一方で、F-35の開発計画に若干の変更が検討されていることは事実の模様です。それに関しましては上記の産経新聞報道より後の日に掲載されましたFlightglobalの2011年12月15日02:30の記事"IN FOCUS: F-35 concurrency reaches turning point"(「焦点:F-35の同時並行が転換点に」)に詳細な内容が掲載されていましたので、下記に一部内容抜粋と翻訳を行います。

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Finding structural cracks in military aircraft is not uncommon during fatigue tests. But the F-35 was supposed to be different. It was the first combat aircraft launched after a revolution in digital design and simulation tools.
疲労試験中に軍用機で構造上の亀裂が露呈するのは珍しいことではない。しかしF-35は異なる筈であった。デジタル設計とシミュレーション機器の革命後に開発される初の戦闘機だった。

So the DoD adopted a strategy that called for Lockheed to deliver hundreds of F-35s concurrently during the flight test phase. Lockheed's workers would shift from assembling flight test aircraft right into early production jets, with no inefficient work stoppage or slowdown between the two phases. Then, production would escalate at a steady clip, rising by 150-200% every year to achieve the most efficient learning curve.
従って国防総省は飛行試験段階で同時並行でLockheed社に数百機のF-35を納入するように要求する戦略を採用した。Lockheed社の従業員は飛行試験の機体から直ちに初期生産の機体の製造に、この二段階の間に非効率な作業停止や減産なしに、移行するものとした。そして生産は堅実な速度で増加し、最も効率的な学習曲線を達成する為に毎年150~200%の間の上昇となる。

But now, with 58 F-35s ordered so far and another 485 planned before testing ends in fiscal year 2017, DoD officials are having second thoughts, according to a leaked "quick look review" (QLR) on the programme's concurrency risks by a five-member panel of acquisition experts.
現段階で58機のF-35が発注済みであり2017年度の試験終了前に485機の発注が計画されているが、しかし今になって、流出した五人の調達専門家委員会による計画の同時並行リスクに関する「簡易見直し」(QLR)によると、国防総省関係者は再考している。

After examining multiple assessment reports over a two-week period in late October and early November, the QLR team recommended that the DoD freeze orders at the 2010 level, excluding foreign sales, of 30 aircraft until Lockheed demonstrates that the F-35's design is mature.
10月下旬から11月上旬にかけて2週間以上に亘り複数の評価報告書を検討した後に、QLRチームは、海外輸出分を除き、Lockheed社がF-35の設計が成熟したことを立証する迄の間は、国防総省が2010年水準の30機の発注を維持するように提言した。

The panel concluded that the F-35 in fact faces no technical issue that would trigger a recommendation to halt all new production. Instead, it recommends that the DoD continue building production aircraft as flight-testing continues, albeit at a reduced level.
F-35は新たな生産を中止するように勧告するようなきっかけとなる技術的問題に実際のところ直面していないと委員会は結論付けた。それどころかそれはたとえ減産してでも飛行試験の継続中に生産型機を製造し続けるように国防総省に勧告した。

So far, none of the structural cracks have required Lockheed to make major design changes that would affect the entire aircraft.
現段階ではどの構造上の亀裂もLockheed社に機体全体に影響を及ぼす大幅な設計変更を強いるものとなっていない。

But no other fighter programme has faced the cost of modifying hundreds of production fighters as flight tests reveal new problems over an 11-year period. Even if the changes are relatively minor, the cumulative cost to make the changes could be prohibitive.
しかし11年間に亘る飛行試験で新たな不具合が発生する度に、数百機の生産型機を改造するという予算に未だかつて他の戦闘機プログラムは直面したことがない。たとえ変更が小さなものだとしても、変更に要する累計コストは法外なものとなるかもしれない。

The programme's internal estimates of this "concurrency cost" for the F-35 have not been revealed.
計画のこのF-35「同時並行コスト」に関する内部推定は公開されていない。

(抜粋及び翻訳終了)
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 この記事を見ますとF-35はむしろ大きな技術的な問題に直面しておらず、納期の問題には言及がなく、むしろやはりコストの問題であると思われるのです。 言及があるのは同時並行時の生産型機の減産だけとなっています。

 上の記事にもあります通りに飛行試験と同時に生産型機を製造してしまった為に、飛行試験中に判明した不具合に対する対策を既に納入済み/生産中の機体にも組み込まなくてはならなくなったのが最大の問題点となっているのです。しかし同時並行方式は継続し、かつ海外輸出分は別枠となっています。

 この内容は産経新聞の前述の報道とやや相容れないものです。産経新聞は「F35の開発調達計画を2年間遅らせる見通し」としています。産経新聞は何を根拠にこの報道をしたのでしょう。どちらの報道が正しいのかは一介のマニアにしか過ぎない私には判断が出来ません。しかしF-35の納期が遅れると報道しているのは私が知る限りは海外には見当たらないのが事実なのです。

 そして「国防総省内には調達費が「3倍近くになる」(関係者)との見方がある。」との産経新聞の報道ですが、 この具体的な根拠も不明です。上記のFlightglobalの記事でも報告書にはコストが明らかにされていない旨の記述があります。またコスト試算も各関係者により異なる旨も言及があります。またこれはあくまで私の素朴な疑問ですが、産経新聞の報道が低率初期生産を指しているのか、本格量産型を言っているのか、日本の防衛産業が製造に一部関与した機体に関してなのかも不明です。それぞれコストが大幅に異なる可能性があります。

 結局のところ「NHKによる「FX候補のF35 機体に不具合」との奇妙な報道に思うこと」(2011年12月04日 (日)執筆)の記事で紹介しましたヴェンレット海軍中将のインタビューにもあります通り、「問題は何機でどの程度のペースかである。私は最終的な保有数を疑問視していない。私は我々とパートナーの生産を増強するペースを考えており、我々がそれを負担出来るかなのである」の一言に尽きる気がします。

 また産経新聞の記事に『F35開発遅延、日本側が懸念 米に納期確証求める』(2011年12月19日 08:35)との報道もありました。「大使館側が米政府に、2016年度とする納期順守の確証を求める内容だ。」、「「提案者の米政府として、FXに関する防衛省の質問に十分な責任を保証するという回答を至急、送り返してほしい」」とこの記事は報じています。これに関しましては防衛省が公開している事実と同一のものかもしれません。

航空自衛隊の次期戦闘機の機種決定について-PDF-(平成23年12月20日 防衛省)

このPDFの経緯説明の第18頁によりますと「選定された提案者に対しては、選定の条件として、選定の通知を受けた後速やかに、提案内容を将来にわたり厳守すること等を確約する誓約書」を岩崎茂航空幕僚長に提出するように求めたとあります。 因みにこの経緯説明には幾つか興味深い点が散見されます。得点配分は不明ですが、航空阻止能力もある程度は重視していることがおぼろげながら窺えるのです。これはKeenedge氏が述べたように「今回のF-X選定では、単純にFIの選定ということではないということですね。」、「空自の任務変化、空自の空(海)軍化というべきか。」との背景があるのかもしれません。
(下の画像はWikipediaよりF-35の爆装 著作権はPublic Domain クリックで画像拡大)

F35ctolstores 恐らくこの記事が今年度最後の記事となるでしょう。本年は大変お世話になりました。来年もアシナガバチを宜しくお願い申し上げます。

2012年01月09日(月)追記:F-35のブロック分類(最新版-配布自由)

F35_master_plan

2011年12月26日 (月)

日本政府が武器輸出三原則を緩和へ

 日本政府が武器輸出三原則を緩和する方針である旨を複数の報道が伝えました。

武器輸出緩和へ新基準 人道目的や共同開発は「例外」 ( 2011年12月11日3時10分 朝日新聞 )

武器輸出:三原則緩和、年内決定 27日にも ( 2011年12月23日 08時40分 毎日新聞 )

武器輸出三原則、緩和決定へ=官房長官談話で27日公表 ( 12月23日(金)12時6分配信 時事通信 )

 複数のマスコミがほぼ同じ内容で報じており、ほぼ間違いがないと思われます。これらの報道を一纏めにしますと内容は下記の三点です。

(1)装備品の海外移転は平和構築や人道目的に限定(巡視艇やヘルメット、防弾チョッキなど、人を直接殺傷する可能性が低いものに限定)

(2)国際共同開発・生産の対象国は同盟国の米国と北大西洋条約機構(NATO)加盟国などの友好国に限定(戦闘機などの国際共同開発・生産への参加)

(3)共同開発の相手国との間で第三国移転の基準と態勢を整備

その一方で朝日新聞の同報道は「民主党内外で議論を呼びそうな三原則自体の見直しや、輸出禁止の対象となる「武器」の定義の変更には踏み込まない。」としています。この方針は2011年12月27日の安全保障会議で決定され、官房長官談話として発表される見通しです。

 そもそも武器輸出三原則とは何でしょうか。前述の毎日新聞の報道では下記の様に説明しています。

「1967年に佐藤栄作首相が国会で(1)共産圏諸国(2)国連決議による武器禁輸国(3)紛争当事国−−への武器輸出を認めないと表明。76年には三木内閣が政府統一見解で、その他の国にも輸出を「慎む」と決めて全面禁輸政策となった。」、「官房長官談話を発表する形で個別に例外を設けてきた。」

 それでは佐藤栄作首相が国会で表明しましたの三原則表明とは如何なるものだったのでしょうか。その経緯は国会図書館の記録「第055回国会 決算委員会 第5号 昭和42年4月21日(金曜日)午前10時16分開議 」にて見ることが出来ます。当時の佐藤内閣総理大臣が社会党の華山 親義 衆議院議員の武器輸出禁止を求める質問に対して下記の様に答えています。
-------------------------------------------------------------------
「防衛的な武器等については、これは外国が輸出してくれといえば、それを断わるようなことはないのだろうと思います。」

「私は、一切武器を送ってはならぬ、こうきめてしまうのは、産業そのものから申しましても、やや当を得ないのじゃないか。ことに防衛のために必要な、安全確保のために必要な自衛力を整備する、こういう観点に立つと、一がいに何もかも輸出しちゃいかぬ、こういうふうにはいかぬと私は思います。」

「輸出貿易管理令で特に制限をして、こういう場合は送ってはならぬという場合があります。それはいま申し上げましたように、戦争をしている国、あるいはまた共産国向けの場合、あるいは国連決議により武器等の輸出の禁止がされている国向けの場合、それとただいま国際紛争中の当事国またはそのおそれのある国向け、こういうのは輸出してはならない。」

「日本の武器は、たびたび説明しておるように、他国を脅威するような武器ではございません。」、「日本の武器そのものは、外国へ行きましても、日本で攻撃的な機能を持たないのですから、外国へ行っても、やはり攻撃的な機能は持たないのです。」
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 こうしてみますと、佐藤総理は輸出が原則であり、例外的に輸出が認められない場合として「三原則」を提示したことが分かります。(またこの時に華山議員が反対論を展開する際に「経団連が、輸出をさせろ、そしてその輸出によった利益というものを、自国の防衛機器産業のコストを下げるようなことには使わないでくれ、こういうえてかってなことを言っている。」との主張をしているのが興味深い )

 武器輸出が原則として禁止となったのは三木内閣当時です。これも国会図書館の記録「第18号 昭和51年2月27日第077回国会 予算委員会 第18号(金曜日) 午前10時02分開議」で閲覧する事が出来ます。 質問をしたのは社会党の安宅 常彦議員と公明党の正木 良明議員です。安宅議員は「武器の定義というものはきちっとして政府統一見解を出しなさいと言ったんです。」と述べ「武器」の定義を質問し(この時にC-1輸送機の輸出論が問題となっているのは興味深い)、正木議員は武器輸出に関しての政府の見解に関して問いただしています。それらの質問に対して三木総理が内閣の方針を読み上げました。

一、政府の方針
(一) 三原則対象地域については、「武器」の輸出を認めない。
(二) 三原則対象地域以外の地域については、憲法及び外国為替及び外国貿易管理法の精神にのっとり、「武器」の輸出を慎むものとする。
(三) 武器製造関連設備(輸出貿易管理令別表第一の第百九の項など)の輸出については、「武器」に準じて取り扱うものとする。

二、武器の定義
(一) 武器輸出三原則における「武器」とは、「軍隊が使用するものであって、直接戦闘の用に供されるもの」をいい、具体的には、輸出貿易管理令別表第一の第百九十七の項から第二百五の項までに掲げるもののうちこの定義に相当するもの
(二) 自衛隊法上の「武器」については、「火器、火薬類、刀剣類その他直接人を殺傷し、又は武力闘争の手段として物を破壊することを目的とする機械、器具、装置等」であると解している。

(下の写真は某所にて筆者が撮影のC-1輸送機 クリックで拡大)C1 これ以降の日本政府は武器輸出を原則として認めない方針となりました。この国是を特に最近になって変更する必要が生じましたのは兵器のハイテク化に伴いまして、価格が急騰しており、特に戦闘機などで国際共同開発がトレンドとなりつつあることがあります。また現在日米開発中のSM-3 Block IIAの地上配備型が欧州に於けるMD構想に組み込まれることになっており、日本が緩和をしない場合はその構想に大きな影響が及びます。その旨は何度か当ブログにても執筆したことがありました。

菅政権の社民党との連携強化と武器輸出三原則緩和見送りに思うこと( 2010年12月 9日 (木)執筆)

日本がSM-3 Block IIAミサイル輸出を前向きに検討 ( 2011年5月29日 (日) )

国際共同開発を今回の緩和に盛り込んだのはこのSM-3 Block IIAの問題もあった為だと思われます。そしてもしこの国際共同開発に戦闘機の国際共同開発も盛り込むのであれば、それは「国際共同開発」が「人道目的」や「武器は輸出しない」との原則よりも優先する原則となる事を意味するのです。US-2やC-2の輸出が検討されていることは当ブログでも以前に執筆したことがあります。
(下の画像は川崎重工が2006年度にファンボローで公開したCX民間型 クリックで拡大)Cx菅政権の「武器輸出三原則」緩和問題に関する一考察 ( 2010年10月20日(水) )

海自飛行艇を民間転用、インド輸出想定 防衛省承認へ ( 2011年07月06日(水) ) Us2_3(上の画像は筆者が某所である時に撮影したUS-2の模型 クリックで拡大)

C-2やUS-2が直接的に人を殺傷することは考えにくいのですが、もし戦闘機の国際共同開発となりますと、意味合いが若干変わってきます。それにも関らず戦闘機の共同開発まで検討しているとすれば、それはやはり厳しさを増す安全保障環境と深刻さを増す財政事情があるのでしょう。また航空機の開発は極めて高度な技術が要求され、求められる安全性も自動車の100倍です(自動車は1000万時間無事故であることが求められるが、航空機はその100倍の10億時間無事故であることが要求される-参考文献 「飛翔」 財団法人 経済産業調査会 ISBN978-4-8065-2810-4)こういった技術に直接触れることが出来るのも大きな利点ではあるでしょう。また以前にも執筆したことがありますが、Lockheed Martin社は日本をF-35戦闘機のアウトソース先とすることも考えている模様です。

 その一方で課題となりますのは日本が武器を輸出した際や外国と武器の共同開発を行った際に、その武器や技術が第三国に流出しないことです。これらの技術が第三国に流出した場合は回り回って日本の安全保障を脅かすのでは意味がありません。

 また日本が武器輸出を事実上禁じているからこそ、日本から第三国に武器/技術流出の心配がなく、日本に武器を安心して輸出出来るとの声もあります。例えば今回の空自FX選定に於きましても、ユーロファイター・タイフーン陣営より2007年5月13日のロイター通信のインタビューで「その国是があるからこそユーロファイターの機密保持ができ、情報の他国への漏えいにはつながらないと理解している」(BAE社Nigel Whitehead氏)との発言がありました。 それが今回の空自FX選定にて日本のユーロファイター・タイフーンのライセンス生産比率95%との高い割合をBAE社が提示した一因かもしれません。 これらの外国からの信頼をどの様に維持するかも課題です。

 更に>「海自飛行艇を民間転用、インド輸出想定 防衛省承認へ 」でも触れましたが、 海外に輸出した際の海外顧客へのきめ細やかなバックアップ体制(教育やメンテナンス)の構築も課題です。

 こうして今までの経緯を見ますと、佐藤内閣当時や三木内閣当時の賛否両論は今日でも通用することが多々あります。しかし厳しい財政事情、兵器のハイテク化と価格高騰等、当時とはまた異なった状況が多々生じつつあるのも現実です。それらが今回の結論を出す原動力となったのでしょう。

この動画はYouTubeに投稿された2009年10月27日の海上自衛隊のイージス護衛艦みょうこうによるSM-3 Block IA迎撃実験の様子。最後にSM-3 Block IIAに関し若干の解説がある。)

2011年12月28日(水)追記 「防衛装備品等の海外移転に関する基準」についての内閣官房長官談話 ( 平成23年12月27日 )

2011年12月20日 (火)

金正日国防委員長が死亡

この動画はYouTubeに投稿された金正日国防委員長の死亡を伝える朝鮮中央放送の発表)

 複数のメディアの報道により既に皆様はご存知のことと思いますが、北朝鮮の金正日国防委員長が死亡した模様です。

「北朝鮮の金正日総書記死去 朝鮮中央放送報じる」 (2011年12月19日12時7分 朝日新聞)

正恩同志に忠実に…金総書記死去の発表要旨 (2011年12月19日22時48分  読売新聞)

 朝鮮中央放送が「特別放送」で報じていることから事実関係に間違いはないものと思われます。上記の朝日新聞の報道によりますと「17日午前8時30分、現地指導に向かう途中、重なる精神的、肉体的な過労により、列車内で死亡した」との事です。

 後継者としまして以前より金正恩氏が内定しています。上記の朝鮮中央放送読売新聞に掲載されたその要旨にも「全ての党員と人民軍将兵、人民は、金正恩同志の領導を忠実に奉じ、党と軍隊と人民の一心団結をしっかりと守護して一層鉄桶(てっとう)のように固めていくべきである。」との文言が見受けられることから、北朝鮮政府中枢ではその方針は揺るぎがないと考えて良いでしょう。

朝鮮中央通信が金正恩氏を「偉大なる後継者」と表現 (12月19日(月)16時33分配信 CNN)

 しかし彼の若さを考えましても、また引継ぎが完了していない事からも、今後の北朝鮮の体制が不安定となる事も予想されます。その為に金正恩氏は軍に依存せざるを得なくなり、軍からの支持を得る為とカリスマ性を高める為に強硬な対応に出ることも考えられます。今までも北朝鮮は軍事的挑発をエスカレートさせつつあります。2010年11月23日(火)に発生しました延坪島に対する砲撃事件も記憶に新しいところです。(この動画はYouTubeに投稿された当時のNHK報道)

不測の事態に備えて韓国軍も非常警戒態勢に入っています。

<金総書記死去>韓国軍が非常警戒態勢に突入 監視強化 (12月19日(月)13時14分配信 聯合ニュース)

また日本政府も一定の情報収集と警戒態勢を整えました。

防衛相「北朝鮮軍の動きない」、海保は警戒強化 (2011年12月19日16時58分  読売新聞)

自衛隊が警戒強化…北の電波傍受・航空機発進 (2011年12月19日18時53分  読売新聞)

しかしその一方で金正恩氏が後継者であることは既定路線であり、短期的には大きな波乱は無いものと私個人は考えます。そして北朝鮮の最大の関心事は金王朝の維持です。それを危うくするような南進などは可能性が低いのではないでしょうか(ただこれは逆を言えば南進しなくては金王朝の維持が危ぶまれる事態になれば、その危険性が高まるとも言えます)。現時点では情報が少なく、金王朝の新たな後継者がどの様な外交方針で臨むかも不明です。現段階ではわが国としましては、警戒態勢を維持しつつ、情報を収集し、先方の出方を待つのが最善と言えるでしょう。

金総書記、波乱の生涯…結婚3回、内縁妻も複数 (2011年12月19日(月) ZAKZAK 社会)

(下の画像は英語版Wikipediaより 2011年08月24日撮影の故・金正日国防委員長(左)とメドベージェフ露大統領(右) ソースはクレムリンより)Dmitry_medvedev_and_kim_jongil_201

総書記専用列車、平壌にいた…視察中の死に疑念(2011年12月21日14時21分 読売新聞)

2011年12月13日 (火)

空自次期主力戦闘機がF35に決定

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(上の写真はjsf.mil(米国政府公式F-35サイト)よりF-35A 米国政府の方針により配布自由 "Information presented on www.jsf.mil is considered public information and may be distributed or copied."クリックで拡大)

F-35公式ホームページ (要注意:重いです Proxyからはアクセス不可?)

F-35公式Twitterアカウント

F-35の性能を説明したYouTube動画
 当初から空自FXの最有力候補とされていたF-35が防衛省により選定されたと読売新聞が報じました。

F35、次期主力戦闘機に…最新ステルス機 (2011年12月13日03時04分 読売新聞)

政府/防衛省やLockheed Martin社からは公式発表がありませんが、その他の内外のマスコミが相次いで報じており、間違いがないものと思われます。F-35が選定されました背景には上記の読売新聞の報道2011年12月13日(火)の日経新聞「次期戦闘機、米国製F35最有力 16日に決定」の分析によりますと下記の様なものがあります。

全方位の最新のステルス性に加え、地上レーダーやイージス艦などの情報を統合し、パイロットに伝えるネットワーク力候補機種の中で唯一の第五世代戦闘機であったこと(また余談ではあるがコンピュータの処理能力は軍事アナリスト 小川和久氏の2011年12月04日のTwitterでのつぶやきによると、「第4世代機の10倍、第5世代機でもF22の4倍、海自イージス艦の1.5倍。」とのこと。)Kazuhisa_ogawa20111204_2
以前に空自F-15がF-22にDACTを挑んだ際に空自側が惨敗であったこと。またそれにより「F22に次ぐ高ステルス性を持つF35への待望論が高まった」

中露が独自の第五世代戦闘機開発を進めていること

日本の国内防衛産業が製造に一定の関与をすることが認められる見通しとなったこと

 上記以外としましては、あくまで私の個人的な推測ですが、空自にとって最も馴染み深いUSAFの機体であったことも大きな要素であったのではないかと思います。わざわざUSNや欧州製を採用し、従来の窓口と異なる/バックアップが受け難い機体を導入することに躊躇いがあったのかもしれません。また数多久遠氏がこの記事で指摘しましたとおりに、運用機種が増え過ぎること、第五世代機の導入の機会を逃すことに対する懸念も背景にあったのではないかと思われます。

数多久遠氏「F-15延命プランは、FXへのF-35選定圧力を高める」 2011年11月29日 (火)

 これにより2004年から続いた長い空自FX選定レースが終了することとなります。この記事ではこの選定レースで今まで私が最も疑問に感じてきた点を執筆したいと思っています。その為に長くはなりますが今までの経緯を振り返ることとします。

 今回の次期戦闘機選定問題は、F-2の調達が打ち切られ、F-4戦闘機の後継が必要となったことがそもそものことの始まりです。それまでF-2はF-4の後継の最有力候補でした。
(下の写真はWikipediaより空対空フル装備のF-2戦闘機 Jerry Gunner氏が撮影 クリックで拡大)1024pxf2a_538535_at_tsuiki

 F-2の調達中止を受けまして、2004年12月10日閣議決定の中期防衛力整備計画(平成17年度~平成21年度)の「III 新たな脅威や多様な事態への実効的な対応」の「(4)周辺海空域の警戒監視及び領空侵犯対処や武装工作船等への対応」の項目の中で「現有の戦闘機(F-4)の後継機として、新たな戦闘機を整備する」旨が発表されました。

 一連の日本政府の動向から、日本政府はF-22導入を防衛政策上の最優先課題としていたと考えられます。日本政府が米国に対しF-22に関する情報提供や輸出解禁を要請したことは幾度も報道されました。特に安倍内閣当時の久間防衛相が米国にF-22の情報提供を要請したことや、2007年04月の日米首脳会談で安倍総理(当時)がブッシュ大統領(当時)にF-22の情報提供を要請したことは周知の事実です。
(下の写真はWikipediaより2007年4月の日米首脳会談 著作権はPublic Domain クリックで拡大)Laura_akie_abe_bush

このことは日本の各報道機関の新聞サイトでは既にリンク切れとなっており、今では2chの掲示板の過去記事に記録が残る程度となっています。

久間防衛相、日米防衛相会談でF22ラプターの情報提供を要請する方針(2007年04月06日)

安倍首相 首脳会談でブッシュ大統領に、戦闘機F22Aに関する情報提供を直接求めていたことが明らかに(2007年07月07日)

しかし海外の報道サイトではまだ掲載されているものを見つけることが出来ました(余談ですが海外のマスコミの方が資料を見つけられやすく、日本の報道機関各社ではデッドリンクとなっている事が全般的に多いです。日本のことなのにも関らず何故なのでしょう。)
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2007年05月05日22:10 Asia Times記事"Japan fired up over US fighter"(日本が米国製戦闘機に沸騰)
Japan needs the fighter available to defend against the Chinese Su-27 and Su-30s.
日本は中国製Su-27及びSu-30に対して防衛可能な戦闘機を必要としている。


Japanese Defense Minister Fumio Kyuma has already requested more information from the Pentagon on the F-22 to study the capabilities of the aircraft and begin serious dialogue for a potential purchase.
日本の防衛相である久間章生はF-22の能力を研究する為と導入の為の真剣な討議を開始する為に、既にペンタゴンにF-22に関する更なる情報提供を要請した。
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2007年12月07日9:28AM USA TODAY紙記事"Japan may hold key to F-22's future, thousands of jobs"(日本がF-22の将来と数千の雇用の鍵を握る)

During a summit with President Bush in April, Prime Minister Shinzo Abe brought up the F-22 issue, according to Japanese media reports.
日本のメディアの報道によると、四月のブッシュ大統領との首脳会談で、安倍総理はF-22問題を提起した。
-------------------------------------------------------------------752pxf22_raptor__100202f7443p551(上の写真はWikipediaよりF-22 著作権はPublic Domain クリックで拡大)
これらの日本の一連の努力も空しく、ブッシュ大統領が首を縦に振ることは最後までありませんでした。ましてや米議会が日本にF-22の輸出を解禁することもありませんでした。これ以降も日本政府は米国政府に幾度もF-22に関する情報提供と輸出解禁を要請しています。しかしその努力も実を結ぶことはありませんでした。そしてF-22の生産中止を受けまして、日本がF-22導入を断念したのは麻生内閣当時です。防衛省としましてはその段階でも未だにF-22は候補機種としての認識を示していましたが、日本政府の公式意思表示としましては河村官房長官(当時)による記者会見でのF-22導入断念が正式なものと考えるのが妥当と思われます。

2009年07月22日(水)Washington Post紙記事"Senate Votes to End Production of Controversial F-22 Fighter"「上院が論争の的のF-22戦闘機の生産中止を議決」
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2009年08月01日(土)Japan Times紙記事"Japan still keen on F-22 despite U.S. obstacles"「日本が米国障害にも関わらず未だF-22を切望」

Chief Cabinet Secretary Takeo Kawamura said earlier in the day that Tokyo should consider "an alternative plan,"
河村建夫官房長官はその日の前の時間に日本政府は「代替(案)を考えていかなければならない」と述べた。
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 それでは日本政府はF-22の導入をここまで切望していたのは何故でしょう。それは2007年05月05日22:10のAsia Timesの先述の記事にもあります通り「日本は中国製Su-27及びSu-30に対して防衛可能な戦闘機を必要」としていたのです。フランカーシリーズに対して圧倒的な性能差で航空優性を確保可能な機体はF-22だけと言えたでしょう。日本政府がF-22の導入を安全保障政策の最優先課題としたのは当然の帰結なのです。F-22のライセンス生産はほぼ不可能であったであろうと考えられていたにも係わらずです。今回も大きな論点の一つとなっていた戦闘機の生産技術基盤の維持をどうするかとの観点は、この時は殆ど考慮されていない様にも見えました。
(下の写真は英語版WikipediaよりJ-11 著作権はPublic Domain クリックで拡大)1024pxchinese_su27

 その後日本では2009年度総選挙で自民党から民主党に政権交代となりました。政権交代後に空自FX問題が大きく動き出したのは2010年6月に菅政権が発足した後でした。立て続けに二つの矛盾した報道があり、それらに関しましては当ブログでも記事にしました。

次期戦闘機の予算計上へ 来年度防衛費、数機分 2010年6月28日 (月)
「候補機種は当初の六機種から、米国のF35(ロッキード・マーチン社)、FA18E/F(ボーイング社)、欧州共同開発のユーロファイター(BAEシステムズ)の三機種に絞り込まれた。」(東京新聞*2010年6月26日 朝刊)

F2戦闘機を追加調達 FX選定難航で防衛省検討 中国脅威に防空を穴埋め 2010年7月19日 (月)
「次期主力戦闘機(FX)の機種選定の遅れを受け、防衛省がF2戦闘機の追加調達を検討していることが18日、分かった。」、「 防衛省はF35を有力視するが、開発・運用試験の段階で、量産は早くても28年ごろからと見積もられている。」(産経新聞*2010年7月19日 00:52)

 結局のところ平成23年度防衛予算概算要求には次期戦闘機の予算もF2戦闘機の追加調達予算も計上されず、この二つの報道は誤報であることが判明しました。しかしその一方で候補機種がF-35、F/A-18E/F、ユーロファイターの三機種に絞り込まれたとの部分には間違いはありませんでした。
(下の画像は次期戦闘機の候補三機種 我が国の防衛と予算-平成24年度概算要求の概要-(PDF:3.4MB)より クリックで拡大)Fx そして2010年夏頃に新たな情報が散見されるようになりました。それは今まで泡沫候補であったF/A-18Eが有力候補となりつつあるというものでした。
(下の写真はWikipeda英語版よりF/A-18E/F 著作権はPublic Domain クリックで拡大)1024pxf18s_are_refueled_in_afghanis

その話を私が一番初めに知ったのはKeenedge氏のブログ「keenedgeの湯治場」の2010年08月頃からの複数の記事です。

【真夏の怪談】次期戦闘機にF/A-18Eが有力のナゾ 2010年8月 6日 (金)
「中の方から、F-X選定に関して実はF/A-18Eが結構良い線行っているとの話が伝わってきます。」

【真夏の怪談】次期戦闘機にF/A-18Eが有力のナゾ(その2) 2010年8月24日 (火)
「これはF-35の裏返しです。性能的には満足できないが、高取得性と高稼働率を求めるならば、非常に良い選択となり得ます。」

The Strike Fighter Evolutionであります。2010年8月30日 (月)
「今回のF-X選定では、単純にFIの選定ということではないということですね。」、「空自の任務変化、空自の空(海)軍化というべきか。

 これが事実であるとするならば大きな状況変化と言えるでしょう。「日本は中国製Su-27及びSu-30に対して防衛可能な戦闘機を必要」との考えから、「空自の任務変化、空自の空(海)軍化というべきか。」との思考に変わったのです。この変化は一連の中国海軍の動向(2010年4月に沖ノ鳥島西方海域で中国海軍の艦艇10隻が活動、警戒中の海自護衛艦にヘリコプターを急接近させる)と無関係ではないと思われます。Boeing社も日本側へのセールスプロモーションを強化し、2010年10月1日に都内のホテルで次世代コクピット・シミュレーターを米国外では初公開し、そして88頁にも登る日本語版パンフレット(PDF)をホームページ上で公開しています(下の画像はそのパンフレットより クリックで拡大 離島防衛に投入されれば優れた性能を発揮していたと思われる)。Fa18e
 しかし2010年年末から2011年1月に事態を再び転換させる出来事がありました。それが中国第五世代戦闘機の登場でした。それに関しましては当ブログでも記事を執筆したことがありました(下の絵はWikipediaよりJ-20。Alexandr Chechin氏作品 クリックで拡大)1024pxj20_impside_art中国第五世代戦闘機と思われる機体の画像がネットに掲載 2010年12月31日 (金)

中国ステルス戦闘機J-20プロトタイプが初飛行 2011年1月12日 (水)

この動画は2011年6月に撮影されたJ-20の飛行試験の模様)

J-20の初飛行はゲーツ米国防長官(当時)の北京訪問時に実施されました。この事態を受けてゲーツ長官はマスコミのインタビューに対し下記の通り述べています。
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Japan, is considering purchasing its next generation of fighter aircraft. "And I might have a few suggestions for them," Gates said.
日本が次世代戦闘機の導入を検討している。「(その事に関して日本に対し)私から幾つかの提案をさせて頂くかもしれない」とゲーツ氏は述べた。

“And so that would give Japan the opportunity - if they bought the right airplane - to have a fifth-generation capability. ”、“Fifth-generation fighters are equipped with stealth and radar-evading equipment. The F-35 - which is still under development - would meet that requirement.”
「(日本が現在FX選定を行っていることは)日本に第五世代の能力を有する戦闘機を導入する機会が与えられている-もし正しい機体を導入すればだが-。」、「第五世代戦闘機はステルス性とレーダーを避ける機器を有している。現在開発中のF-35は要求に合致するであろう」
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これが一つの大きな要素となったのではないかと私は考えます。それ以降に外務省と防衛省がF-35を導入する方向で動き始めます。

「日本政府 F-35を導入する方向か」 2011年1月21日 (金)

 一連のFX選定レースで最も私が気になったのは、防衛省/空自のドクトリンが見えなかったことです。序盤はF-22導入のみを目指していたのは間違いないでしょうし、その動機も「中国製Su-27及びSu-30に対して防衛可能な戦闘機」と明確でした。しかしF-22導入が叶わぬ夢となった後は、どういった構想で選定をしていたのかが今一つ見えてきませんでした。だからこそ各方面でどの機体が何に優れているという議論が繰り広がれ、人により重視する性能も異なり、論者の議論が噛合わないことが多々見受けられました。尤もそれは防衛省のRfPに要求仕様が掲載されており、それを分析すれば運用思想や重視している能力が判明するかもしれません。しかしRfPの内容は公開されることは恐らくないでしょう。

 今回のF-4EJ後継機としてのFX決定ですが、もう一つ個人的に気になるのはRF-4EとRF-4EJの後継をどうするのかです。
(下の写真は某所にて筆者撮影のRF-4E クリックで拡大)Dscf0052 そもそもRF-4Eの後継にはF-15 Pre-MSIP機に偵察ポッドを搭載した機体を充当する予定でした。しかし東芝が防衛省の要求仕様に合致した偵察ポッドを開発出来なかったことから、防衛省は契約を解除しています。

「F-15偵察機化試改修事業に係る契約の納期猶予不承認について」 防衛省 平成22年10月1日

そしてこの問題は国と東芝の間で訴訟に発展しており、双方の主張は完全に平行線です。

F15偵察用カメラ訴訟、国が請求棄却求める (2011年11月25日23時39分 読売新聞)

国側「東芝が製造した機器は契約上の仕様を満たしておらず、契約解除は不当ではない」
東芝側「防衛省が非協力的な上、非現実的な要求を繰り返した」
国側「既存の技術のみで完成し得るもので、非現実的な要求をした事実もない」

 以前にも何度か言及しましたが、F-35のセンサーの一つであるEOTSはこの動画からも判るとおりに高度の偵察能力を有するものです。RF-4の後継も目処が立たなくなってしまった今、F-35をその任に宛てがうことを検討しても良いのではないでしょうか。



 更に忘れてはならないのが東日本大震災で失われたF-2Bです。F-35には複座機がありませんので、津波で回復不能となったF-2Bを補填することは出来ません。これは今後の検討課題となるでしょう。

 いずれにしましても第五世代戦闘機の導入で航空自衛隊の能力は大幅に向上することは間違いないでしょう。F-35には従来の戦闘機にはない特徴を多く有する最新鋭機です。またカウンターステルスを研究する上でも、そして将来的に第六世代戦闘機を開発する足がかりとする為にも貴重な一歩となるでしょう。

2011年12月24(土)追記 次期戦闘機「F35」決定、42機配備へ (2011年12月20日14時12分 読売新聞)

2011年12月28日(水)追記 航空自衛隊の次期戦闘機の機種決定について 平成23年12月20日 防衛省

2011年12月11日 (日)

イランによる米軍最新鋭ステルス無人偵察機確保から分かるUAVとステルス機の限界

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(上の画像はWikipediaよりRQ-170の模型 Truthdowser氏作品 クリックで拡大)
既に様々なメディアにより報道されているのでご存じのことと思いますが、イランが何らかの手段により米国最新鋭ステルス無人偵察機RQ-170をほぼ無傷の状態で確保しました。そのニュースが報じられたのはほぼ一週間前程度でした。イラン国営通信とイラン革命防衛隊に近いとされるファルス通信が第一報を報じました。そのニュースを世界各国のメディアも採り上げています。そのうちの一つが2011年12月04日(土)18:47分 アルジャジーラ報道 Iran military 'downs US drone' ( イラン軍が「米無人機を撃墜」 ) です。以下に内容の一部抜粋と翻訳を行います。
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"Iran's military has downed an intruding RQ-170 American drone in eastern Iran," Iran's Arabic-language Al Alam state television network quoted an unnamed source as saying on Sunday.
イランのアラビア語のアル アラム国営テレビネットワークが日曜日の匿名筋による「イラン軍が侵入したRQ-170米国無人機をイラン東部で撃墜した」との発言を引用した。

The state news agency IRNA and the the semiofficial Fars news agency reported that the plane is now in the possession of Iran's armed forces. The Fars news agency is close to the powerful Revolutionary Guard.
国営のIRNAニュース局と半官のファルスニュース局は機体が現在イラン軍の手中にあると報じた。ファルスニュース局は強力な革命防衛隊に近い。

Fars reported that the drone had been brought down through a combined effort by Iran's armed forces, air defence forces and its electronic warfare unit after the plane briefly violated the country's airspace at its eastern border.
ファルスの報道によると無人機は機体が短時間イランの東側領空を侵犯した後にイランの軍、防空軍そして電子戦部隊の統合した努力により撃墜された。

The drone "was downed with slight damage. It is now under the control of our forces," Fars reported, quoting an unnamed military source.
無人機は「ほぼ無傷の状態で撃墜された。それは現在我が軍の管理下にある。」とファルスが匿名の軍事筋を引用し報じた。

(抜粋及び翻訳終了)
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 これに関して世界各国の情報は暫く錯綜しました。中にはイラン側のこの主張に懐疑的ないしは楽観的な分析も報じられています。その一つが2011年12月06日16:57のDefense Newsの記事"Analysts: Lost USAF UAV Likely Malfunctioned"(分析:行方不明の米空軍無人機は故障発生の可能性が高い)です。この記事も一部抜粋と翻訳を行います。
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Iran's claims to have brought down one of the U.S. Air Force's stealthy unmanned RQ-170 Sentinel reconnaissance aircraft are highly dubious, analysts and Pentagon officials said.
イラン側による米空軍のRQ-170 Sentinelステルス無人偵察機を撃墜したとの主張は非常に疑わしいと専門家とペンタゴン筋は述べた。

Later, government officials claimed that it had used an electronic or cyber attack to bring down the bat-winged drone and that the aircraft was recovered largely intact.
後に(イラン)政府筋は蝙蝠型の翼を有する無人機を迎撃するのに電子戦ないしはサイバー攻撃を使用し、機体はほぼ無傷で回収されたと主張した。

Pentagon spokesman U.S. Navy Capt. John Kirby added that there is no evidence to that suggests any kind of hostile activity was involved in bringing down the aircraft.
国防総省の報道官である米海軍のJohn Kirby大佐は機体撃墜に如何なる敵対的行動があったことを示す証拠がないことを付け加えた。

Loren Thompson, an analyst at the Lexington Institute, Arlington, Va., said that the Iranians have no way to detect or engage the stealthy Sentinel. "It would be almost impossible for Iran to shoot down an RQ-170 because it is stealthy; therefore, the Iranian air defenses can't see it," Thompson said. "Partly for the same reason, it is exceedingly unlikely that they used a cyber attack to bring down the aircraft."
バージニア州アーリントンにあるレキシントン研究所の分析官であるLoren Thompson氏はイランにはステルス性のSentinelを探知する手段も攻撃する手段もないと述べた。「ステルス機であるのでイランにとってRQ-170を撃墜することはほぼ不可能であろう。従ってイランの防空には見えない」とThompson氏は発言した。「同じ様な理由で彼等が撃墜するのにサイバー攻撃を用いたということはまずあり得ない。」

Thompson said the most likely scenario with the crash is a malfunction with the aircraft. If the plane crashed due to a hardware or software glitch, Iran is likely sitting on practically useless wreckage with little intelligence value, he said.
Thompson氏は機体の故障による墜落が最も考えられるシナリオであると述べた。もし機体がハードウェアないしはソフトウェアの故障により墜落したとすれば、イランは実質的に殆どインテリジェンス上の価値がない残骸に座っていると氏は述べた。

"The RQ-170 has a RTB [Return to Base] feature," Thompson said. "In the event of a loss of the command link, the aircraft will automatically return to its point of origin and land itself."
「RQ-170はRTB(基地帰還)性質がある」とThompson氏は言った。「指令リンクが失われた場合、機体は自動的に出撃地に戻り自身で着陸する。」

(抜粋及び翻訳終了)
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ところがこれらの楽観論は見事に打ち砕かれました。2011年12月08日にイランは撃墜したとするほぼ無傷のRQ-170の画像を公開したのです。

2011年12月09日(金) 9時49分ロイター通信 「イランが「米ステルス偵察機」の映像公開、機体に損傷見られず」

そしてこのYoutube動画はイランが公開したものです。

こうなってきますと当然のことですが技術流出の虞があります。そのことに関しまして2011年12月09日 10:09のDefense Newsの記事"Iran's Captured RQ-170?: How Bad Is the Damage"( イランがRQ-170を捕獲:損害はどの程度か )との記事が出ました。以下に抜粋と翻訳を行います。
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"There is the potential for reverse engineering, clearly," said Air Force Chief Gen. Norton Schwartz. "Ideally, one would want to maintain the American advantage. That certainly is in our minds."
「リバースエンジニアリングの危険性が明らかにある」とノートン・シュワルツ空軍大将は述べた。「米国の優位性を維持したいと理想的に考えるだろう。それは想定している」

One source said the aircraft in the footage was definitely the Sentinel, a subsonic, high-altitude reconnaissance aircraft built by Lockheed Martin.
情報源の一つは機体は間違いなくLockheed Martin社製の亜音速、高高度偵察機のSentinelであると述べた。

Dan Goure, an analyst at the Lexington Institute in Arlington, Va., compared it to the Soviet shoot-down of Francis Gary Powers' U-2 spy plane, a tactical and strategic disaster for the U.S.
バージニア州アーリントンにあるレキシントン研究所の分析官であるDan Goure氏は今回の出来事を米国にとり戦術上及び戦略的な大損害であったソ連によるフランシス・ゲーリー・パワーズのU-2スパイ機撃墜と比較した。

The capture of the Sentinel calls into question the viability of the very concept of stealthy unmanned aircraft penetrating enemy airspace, Goure said.
Sentinelの捕獲は敵国空域にステルス無人機を侵入させる根本的概念の実行可能性に疑問を投げかけるものであるとGoure氏は述べた。

"It kind of undermines the whole argument for replacing manned aircraft with unmanned systems," he said. "Unless you want to use it as a one-way missile."
「有人機を無人機で置き換えるとのそもそもの議論を覆すものである。」と彼は述べた。「使い捨てのミサイルとして使うのでなければ」

The captured aircraft will help adversaries copy U.S. stealth design techniques, coating materials, engine technology, and UAV command-and-control systems, he said. It will also help them develop countermeasures against stealthy U.S. aircraft.
捕獲された機体は敵国が米国のステルス設計、コーティング材質、エンジン技術、UAV指令及びコントロールシステムを模倣する助けとなるであろうと彼は述べた。それは米のステルス機に対する対抗手段を開発することにも助けとなる。

Teal Group analyst Richard Aboulafia was more measured in his response.
Tealグループ分析官のRichard Aboulafiaのコメントはより緻密であった。

The Iranians will undoubtedly share the technology or even the crashed aircraft with other nations, he said - and Iranian news site Nasim reported Dec. 8 that Russian and Chinese experts were already on their way to visit. But the manufacturing know-how to build such aircraft can't be duplicated from a captured machine, he said.
イランは疑いなく外国に技術ないしは機体そのものすらを共有するであろうと彼は述べた。-イランのニュースサイトであるNasimは12月8日にロシアと中国の専門家が既に向かったと報じた。しかしその様な機体を製造するノウハウは捕獲された機械からは複製出来ないと彼は述べた。

"From a secrecy standpoint, it's like dropping a Ferrari into an ox-cart technology culture," Aboulafia said. "But I'm sure they can sell it to someone who can get some kind of information out of it. But the mission systems are likely to be too encrypted to be of use to anyone."
「機密上の観点からすると、フェラーリを牛車技術文化に落とす様なものである」とAboulafia氏は述べた。「しかし私は彼等がそこから何らかの情報を得る事が出来る誰かに売ることが出来ると確信している。しかしミッションシステムは誰にも利用できない程に高度に暗号化されているであろう」

Still unknown is how Iran captured the stealthy aircraft in the first place. Tehran claims to have used cyberwarfare to hack the drone's systems.
まだ不明な点はそもそもどの様にしてイランがステルス機を捕獲したかである。イラン政府は無人機のシステムにハッキングするのにサイバー戦を使ったと主張する。

Aboulafia pronounced himself flummoxed that the RQ-170 was not programmed to self-destruct. "I would really hope they'd have a kill switch. Is the world really that poorly run?" he said.
Aboulafia氏はRQ-170が自爆プログラムを有していないことに絶望したとしている。「キルスイッチを持っていると望む。そんなに適当なものなのか?」と彼は言った。

(抜粋及び引用終了)
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 もしイラン側の主張が事実だとしますと、このDefense Newsの記事にもありますがイランがどの様に高度のステルス性を有するRQ-170無人偵察機を補足したのか、そしてそれを如何なる方法でほぼ無傷で確保したのかです。

 技術流出に関しましてはこの機体にどの程度の技術が使われていたかにもよります。それを両当事者が開示することは今後も無いと思われますので、その点は評価不能です。ただ米側はRQ-170に用いられた技術が全て流出したとの前提で対策を講じるでしょう。

 このDefense Newsの記事でAboulafia氏の"Is the world really that poorly run?"とのコメントが紹介されていますが、これが実は今回の米国の失態の本質を突いていると私は思います。それは前述しましたもう一つのDefense Newsの記事"Analysts: Lost USAF UAV Likely Malfunctioned"(分析:行方不明の米空軍無人機は故障発生の可能性が高い)で私が赤文字で強調した部分にも共通します。イランにはステルス性のSentinelを探知する手段も攻撃する手段もない」、「ステルス機であるので(中略)、従ってイランの防空には見えない」とあります。実はそうではないのです。このブログでもステルス機の優位性に関して賛否両論から読者の間で議論はありました。ステルス機はレーダーに映らないのではないのです。映り難い/映り難いように欺瞞をしているだけなのです。twitterでも議論されていましたが、例えればステルス機とは透明人間ではなく、迷彩服を着用して隠れている歩兵なのです。従いましてデータを蓄積された場合や戦術を誤れば見えます。そのことを以前にも指摘した識者は複数います。

シベリアンジョーク集積所2010年03月06日記事「ステルスの話を少し」

 もう一つの点ですがもし本当にECMやサイバー攻撃で無人機を乗っ取ったとしますと(それが技術的に可能であるかどうかは私には判断が難しいのですが、それは兎も角として本当の理由は不明ですが、ほぼ無傷のままでイラン側に機体が渡った/着陸したことは間違いありません)、前述のDefense Newsの記事でも少し言及がありますが今後の無人機の運用に根本的な課題を残したこととなります。第五世代戦闘機の次は無人戦闘機になるとの説も散見されますが、電子戦やサイバー攻撃で無人機の乗っ取りが可能となりますと、今後は無人機に頼ることは危険となります。
(下の画像は防衛省資料「将来の戦闘機に関する研究開発ビジョン」(PDF)より クリックで拡大)Photo

 そもそもこれが有人偵察機であれば、搭乗員は機密保持の為に破壊しなくてはならない電子機器を熟知していますから、不時着の前後にそれらの機器をハード上、ソフト上で破壊します。例えば2001年度に発生しました「海南島事件」では米海軍のEP3Eの搭乗員が中国側に拘束される前に15分間に亘り機器やデータを破壊しています。無人機の操縦者が遠隔操作でそれを行い得る場合であれば別かもしれませんが、無人機そのものはそういったことは現代の技術では自分で判断しません。

 今回の事件はステルス性、無人機という二つの現代戦のトレンドに冷や水を浴びせるものと言えます。まさしくステルス機や無人機の限界が露呈した事件と言えるでしょう。

2011年12月10日 (土)

ロシアとシリアの「同盟」に思うこと

Dmitry_medvedev_21_august_20081(上の写真はWikipedia英語版よりロシアのメドベージェフ大統領(左)とシリアのアサド大統領(右) 2008年08月21日にロシア政府により撮影)

 シリア政府による反政府運動弾圧の死者数が4000人を超過することが国連の調査で判明しました。これに対して国際社会からシリアのアサド政権に対する批判が高まっています。

シリア反体制派デモ弾圧による死者4000人超(2011年12月2日00時47分 読売新聞)

 その一方でシリアを擁護しているのがロシアです。ロシアは軍事的にシリアを支援する動きを見せています。Defense Newsにより二つの興味深い記事が掲載されましたので当ブログで紹介します。

 まず一つ目が2011年11月28日 11:51(モスクワ発) Russia To Send Warships to Syria in 2012: Report ( ロシアが軍艦を2012年にシリアに派遣 )との報道です。下記に一部抜粋と翻訳を行います。
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Russia will send a flotilla of warships led by its only aircraft carrier to its naval base in Syria for a port call next year amid tensions with the West over the Syrian crisis, a report said Nov. 28.
11月28日の報道によると、シリア危機で西側諸国と緊張が生じている真っ只中に、ロシアは唯一の空母により率いられた軍艦の小艦隊をシリア国内の海軍基地に寄航させる。

The ships, headed by the Admiral Kuznetsov aircraft carrier, will dock at the little-utilized Russian base in the Syrian port of Tartus in spring 2012, the Izvestia daily said, quoting the Russian navy.
ロシア海軍発表を引用したイズベスチア紙が報じたところによると、空母アドミラル・クズネツォフにより率いられた艦隊は、2012年の春にシリアのタルトゥース港の殆ど使用されていないロシア海軍基地に寄航する。

A naval spokesman confirmed the plan to send the ships but insisted it had nothing to do with the deadly violence in Syria between forces loyal to President Bashar al-Assad and the opposition.
海軍の報道官は艦隊を派遣する計画を認めたが、シリアに於けるアサド大統領派と反体制派の衝突とは無関係であると主張した。

"This was planned already in 2010 when there were no such events there. There has been active preparation and there is no need to cancel this," added the spokesman.
「これはその様な出来事がなかった2010年度に既に計画されていた。活発な準備が行われていたのであり見送る理由はない」と報道官は付け加えた。

Russia and the West have become deeply split over the situation in Syria, with Moscow insisting that sanctions and pressure against the Assad regime are not the way to solve the crisis.
ロシアと西側はシリア情勢に関して意見の隔たりが大きく、ロシア政府はアサド体制に対する制裁と圧力は危機を解決する道ではないと主張している。

It would also carry around a dozen aircraft.
空母は12機前後の航空機を搭載するであろう。

(抜粋及び翻訳終了)
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(下の画像はGoogle Earthよりタルトゥース港の位置)


大きな地図で見る

(下の写真はWikipediaよりロシア海軍「アドミラル・クズネツォフ」 配布自由 クリックで拡大)__2010_2

 確かに今回の空母派遣は以前より計画されていたものなのかもしれません。また今回の寄航は「燃料、水、食料などを補給した後、艦隊はロシアへの帰途につく」のであり、また「シリアでの水兵の上陸およびセレモニーなどは予定されていない」としています(2011年12月06日 13:53 「ロシアの声」報道)。従いまして軍事的な意味合いは余りありません。しかしその一方で一部から「内戦状態」(12月7日(水)1時10分配信 毎日新聞)とも評されている、ここまで政情不安定となっている国に「見送る理由はない」としてロシア海軍唯一の空母を一時的にせよ派遣することは、やはり世界第二位の軍事大国であるロシアの意思表示なのかもしれません。たとえロシアにその意図がないとしましても、国際社会がどの様に受け止めるかは別問題です。少なくともアサド大統領が政権を維持することがロシア側の前提となっていると考えて良いでしょう。

 因みにタルトゥースのロシア海軍基地は拡張され、ロシア海軍の恒久基地となる計画があります。

RIAノーボスチ通信社 2010年08月02日16:21報道 Russian Navy to base warships at Syrian port after 2012(2012年後にロシア海軍が軍艦をシリアの港に駐留へ)
Russia's naval supply and maintenance site near Syria's Mediterranean port of Tartus will be modernized to accommodate heavy warships after 2012, the Russian Navy chief said on Monday.
シリアの地中海に面したタルトゥースのロシア海軍の補給及びメンテナンス拠点は2012年以降に近代化され大型戦艦を収容可能となるであろうとロシア海軍の長は月曜日に述べた。
According to Navy experts, the facility is being renovated to serve as a foothold for a permanent Russian naval presence in the Mediterranean.
海軍専門家によると、この施設は地中海に於ける恒久的なロシア海軍のプレゼンスの拠点となる為に近代化されている。

 そして次の報道はより軍事的意味合いが強いものです。2011年12月01日 12:38 (モスクワ発) Russia Delivers Missiles to Syria: Report( ロシアがシリアにミサイルを納入)です。 下記に抜粋と翻訳を行います。
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"The Yakhont supersonic anti-ship cruise missiles have been delivered to Syria," a military source told the Interfax news agency without disclosing when the shipment was made.
いつ出荷されたかは言及しなかったが、軍の関係筋がインテルフアックス通信に「ヤホント超音速対艦巡航ミサイルがシリアに納入された。」と述べた。

Reports said Russia intended to deliver 72 of the missiles to Syria in all.
報道によるとロシアは全て合わせて72発のミサイルをシリアに納入することを意図した。

It was not immediately clear how many of the missiles Russia has delivered to Syria so far.
現時点でシリアにロシアが何発のミサイルを納入したかは不明である。

(抜粋及び翻訳終了)
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(下の写真はWikipediaよりYakhont クリックで拡大)Yakhont

Yakhontは飛翔速度がマッハ2.5、最大射程距離が300Km、弾頭が250Kg通常HEです。詳しい解説は下記サイトでも見ることが可能です。

Weapons School-ヤホント

また下の画像はヤホントがシリア沿岸部やレバノン南部から発射された場合の最大射程の範囲を表したものです。この地図はこのサイトで作成しました。

「地図に円を描く」

レバノン南部からであればイスラエルの沿岸部全てを射程範囲内に収めることがわかります。クリックで拡大します。Yakhontsyrialebanon

 武器輸出に対する批判にロシア側はあくまで強気の姿勢を崩していません。

ロシア シリアへの兵器供給を停止せず(2011年12月02日 19:35ロシアの声)

イワノフ第一副首相「それは禁止されているのか?」

 ロシアは2008年度にシリアとの間でMiG-29SMT、 Pantsir-S1防空システム、イスカンダル戦術ミサイル、Yak-130、Amur-1650潜水艦の多数の最新鋭兵器売却契約を締結しています。

2008年09月29日18:19 UPI通信社報道 Russia defends arms sales to Syria(ロシアがシリアへの武器輸出を擁護)

(下の写真は英語版WikipediaよりPantsir-S1防空システム 作者はUMKH77R氏 クリックで拡大)

1024pxpantsirs1weapons 私はロシアのシリアに対する武器輸出の賛否に関して論じる意図はありません。またシリアでの反政府運動の是非に関しても私には難しすぎて分かりません。今回の運動がアサド体制打倒との目的では一致していても、その後にどの様な統治機構を樹立するのかが全く見えない為です。しかし一つだけ言えることはあります。大国の軍事的プレゼンスや大国との軍事同盟は外国からの軍事介入を躊躇わせる大きな抑止力なのです。武力による国民弾圧が国際社会から許容されなくなりつつあり、リビアでは多国籍軍による空爆に繋がり、カダフィ体制が崩壊したのは記憶に新しいところです。しかしシリアに関しましてはロシア等の強い反発があり、ケースがやや異なるかもしれません。ましてやもしタルトゥースにロシア海軍が常駐することとなりますと、シリアに対する軍事制裁はより困難なものとなるでしょう。

 しかしその一方でロシアではプーチン首相の大統領職への復帰はロシア国民から不信感を招き、選挙戦での与党の不振や、一部による反政府運動となっていることは広く知られているところです。ロシアでも今後は何らかの大きな政治的混乱が発生するかもしれません。

ロシア 下院選巡り批判強まる12月8日 6時31分 NHK報道 Photo余談ですが今回の記事は当ブログ100件目の記事となります(本当は現在執筆中の某記事を100件目にしたかったのですが・・・。勘の良い方は何の記事か察しがついているかもしれませんが・・・。)上の画像はそれを記念して。今までのご愛読御礼申し上げますとともに、今後とも宜しくお願い申し上げます。

2011年12月 4日 (日)

NHKによる「FX候補のF35 機体に不具合」との奇妙な報道に思うこと

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上の写真は米国防総省のCherie Cullen氏が2009年08月31日にFort Worth, TexasにあるLockheed Martin社工場で撮影した飛行中のF-35戦闘機 クリックで拡大 国防総省のPrivacy Policyにより配布自由 "Information presented on this website is considered public information and may be distributed or copied unless otherwise specified.")

 当ブログの読者の方々であればご存じのことと思いますが、2011年NHK12月3日 5時9分の報道で「FX候補のF35 機体に不具合」と報じられました。この報道の主旨は下記の3点であり、日本のFX選定に影響を及ぼすのではないかとしています。
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・F35の計画責任者であるヴェンレット海軍中将が軍事専門誌とのインタビューで、「ここ1年の金属疲労のテストで、F35の機体に多数の亀裂や不具合が見つかった。そのほとんどは小さいものだが、まとまれば大きな問題だ」、「今後数年間は生産のペースを落とすべきだ」と述べた。

・国防総省の広報担当者はNHKに対して、「開発試験は2016年に終了する予定だ」と述べており、日本のFX選定には影響を及ぼさないとの認識を示した。

・しかし今までも開発に遅れが生じており、日本のFX選定に影響を及ぼす可能性もある。
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 このNHKの報道から一般の視聴者が受ける第一印象は「亀裂が多数あり、安全性に問題がある」、「開発自体が難航しており、安全性にも疑問があるのではないか」、「納期が遅れるのではないか」というものではないでしょうか。私もその様な印象を受けました。

 上記NHKの報道以外に2011年12月03日02:32の日経新聞記事『「F-35に不具合、減産を」米国防総省幹部』に於きましても同様の報道が見られました。この日経新聞の報道から「軍事専門誌のインタビュー」とは"AOL Defense"であることが分かります。そこでその大もとの2011年12月01日付けの記事"JSF's Build And Test Was 'Miscalculation,' Adm. Venlet Says; Production Must Slow"(JSFの製造と試験は「計算間違い」ヴェンレット海軍中将が生産を減速しなくてはと述べる)を読むこととしました。下記に本文抜粋と翻訳を行います。
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Fatigue testing and analysis are turning up so many potential cracks and "hot spots" in the Joint Strike Fighter's airframe that the production rate of the F-35 should be slowed further over the next few years, the program's head declared in an interview.
「疲労試験と分析により多数の潜在的な亀裂と「不安箇所」がJSFの機体に見つかり、F-35の生産ペースを今後数年間の間は更に減速するべきである」と計画責任者がインタビューで述べた。

Most of them are little ones, but when you bundle them all up and package them and look at where they are in the airplane and how hard they are to get at after you buy the jet, the cost burden of that is what sucks the wind out of your lungs. I believe it's wise to sort of temper production for a while here until we get some of these heavy years of learning under our belt and get that managed right.
大半は微々たるものであるが、包括して、そして機体の何処にあるかを見て、機体を導入した後に届きにくい場所である事から、コスト負担は驚愕に値する。難しい数年の間は研究で経験を積み適切な管理となるまで生産を暫くの間はここで調整するのが賢明であると考える。

Venlet also took aim at a fundamental assumption of the JSF business model: concurrency. The JSF program was originally structured with a high rate of concurrency -- building production model aircraft while finishing ground and flight testing
ヴェンレット中将はJSFビジネスモデルの根本的な仮定も批判した。「同時並行」である。JSFプログラムは高率の同時並行の構造である。-生産モデルを製造しつつ地上と飛行の試験を実施するものである。
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まずここまでが記事の前半ですが、ここまではほぼ前述の日本国内の各報道の通りです。しかしNHKの報道では「大きな問題」となっていたのが、原文を見てみますと「コスト負担」と具体的になっています。そして下記からがこの大もととなった記事の後半部分となります。
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I have the duty to navigate this program through concurrency.
私には同時並行によりこの計画を誘導する義務がある。

But slowing production would help reduce the cost of replacing parts in jets that are being built before testing is complete, Venlet said. Although fatigue testing has barely begun -- along with "refined analysis" -- it's already turned up enough parts that need to be redesigned and replaced in jets already built that the changes may add $3 million to $5 million to each plane's cost.
生産ペースを落とすことは、試験完了前に製造された機体の交換が必要となる部材のコスト削減となるだろうとヴェンレット中将は述べた。疲労試験はやっと開始されたばかりであるが、-詳細な分析結果とともに‐既に生産された機体に再設計と交換の必要がある多数の部材が判明しており、その変更によりそれぞれの機体単価に300万ドルから500万ドルの加算となるかもしれない。

The required changes to the aircraft aren't a matter of safety or of the F-35's ability to perform its missions, Venlet said. They're necessary, though, to make sure the plane's structural parts last the 8,000 hours of service life required.
機体の必要とされる変更は安全性の問題ではなく、F-35の任務遂行能力でもないとヴェンレット中将は述べた。機体の構造部品が必要とされる8000時間の寿命の継続となることを確実にする為にも、しかしそれらは必須である。

"It's a fighter made out of metal and composites. You always find some hot spots and cracks and you have to go make fixes. That's normal. This airplane was maybe thought to be a little bit better, wouldn't have so much discovery. Well, no. It's more like standard fighters."
「金属と複合素材で製造された戦闘機である。不安要因と亀裂は付き物であり修正しなくてはならない。ごくありふれたことだ。この機体は少し優良でそれ程の問題発覚はないだろうと思われた。そうではなかった。通常の戦闘機だ」

"Slowing down the test program would be probably the most damaging thing anybody could do to the program," Venlet said. "The test program must proceed as fast as possible."
「試験計画を遅らせることは恐らく計画への最大の打撃となるであろう」とヴェンレット中将は述べた。「試験計画は可能な限り最短で遂行しなくてはならない」

"The question for me is not: 'F-35 or not?'" Venlet said. "The question is, how many and how fast? I'm not questioning the ultimate inventory numbers, I'm questioning the pace that we ramp up production for us and the partners, and can we afford it?"
「私にとっての疑念はF-35を継続するか否かではない」とヴェンレット中将は述べた。「問題は何機でどの程度の速さかである。私は最終的な保有数を疑問視していない。私は我々とパートナーの生産を増強するペースを考えており、我々がそれを負担出来るかなのである」

(抜粋及び翻訳終了)
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 最後まで読み終えますと大もとの記事は前述の各報道と若干ニュアンスが異なることが分かります。少なくとも開発自体はスケジュール通りであり、試験中に生産する機体数を減らすということなのです。また今回の亀裂は安全性とも関連性が薄いとも述べられています。従いまして国防総省の「日本での納入スケジュールに問題ないとの見方」は当然となります。

 安全性の問題ではなく、納期に若干の影響を及ぼすかもしれないが、むしろそれよりもコストの問題であることが分かるのです。即ち生産機数が増加しますと、量産効果により一機当たりの単価は下がります。しかし今回は交換及び改良の必要がある部品が多数判明したので、開発・試験中に生産される機体数を削減することにより、必要とされる部材の調達数を減らし(運用中のメンテナンスコストを下げる)、総合的に費用を最低限度にしようというものです。試験のペースそのものは落とすことは考えていないと明言もしています。開発終了後の調達機数には疑問がないとも述べていますそしてその結果として一機当たりのコストが300万ドルから500万ドル上昇する可能性もあるとしています。Lockheed Martin社周辺が明言していた単価は6500万ドルでした。

「クリントン国務長官がインドにF-35を破格の値段で提案か」2011年8月6日(土)執筆

「F-35単価が6500万ドルとの見積を検証する」2011年9月15日 (木)

 またこの直後にもう一つF-35戦闘機開発に関連して大きな動きが報じられました。それはF35のエンジンであるF135のライバルとして、GEとロールスロイス社が独自に開発を進めていたF136エンジンの開発を断念するとのことでした。これは米国防総省がエンジンの開発をF135に一つに絞る方針を以前より固めていた為です。これにより15年間に亘るPratt and Whitney社のF135とGE ・ロールスロイス陣営のF136エンジンの開発競争はF135の勝利に終わることとなります。Sdd_f136_006(写真は英語版WikipediaよりF136エンジン クリックで拡大 著作権はPublic Domain)
Defense News 2011年12月2日(金) 12:52"GE, Rolls Royce Stop Funding F-35 Alt Engine"(GEとロールスロイス社がF-35代替エンジンの支出を止める) 

 ただこの二つの動向は米国の財政事情の悪化に伴う処置であることは間違いがありません。いずれにしましてもF-35の開発はまだまだ前途多難であることは間違いないものと思われます。F-35の開発は成功すればLockheed Martin社にとっては今後数十年のビジネスチャンスとなるでしょう。最後に余談ですがLockheed Martin社はC-130の改良型計画を発表しました。詳細なことはまだ分かりませんが、C-130XJ(海外市場向けの輸出版でXはexpandableの略で拡張性があり、C-130J同等まで拡張が可能)とC-130NG(2020年以降のC-130Hの後継で、ウイングレットと機種と尾翼形状の改修が大きな外観上の違い)との事です。C-130は既に57年以上の実績があります。

Flight Global 2011年12月2日 6:36 PM "Lockheed unveils two future C-130 variants"(ロッキード社がC-130発展型二機種を公開)

Lockheed Martin社はF-35でもC-130と同じ様な成功を収めることが出来るでしょうか。

因みに石川潤一氏の12月1日のtweetによりますとFX選定レースに関連し、12/6の週にBoeing社が東京で記者会見を実施するとの事です。

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