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2012年1月

2012年1月29日 (日)

2013年度米国防予算が日本に与える影響

Hrs_120126dtt977326d(上の写真は2012年1月26日に記者会見を行うパネッタ国防長官とデンプシー統合参謀本部議長 米国海軍Chad J. McNeeley三等曹長により撮影 米国防総省のPrivacy Policyにより配布自由 クリックで拡大)米国の2013年度の国防予算案の概要が各新聞社により報じられ始めました。

「米国防予算 5年で20兆円削減 F35、179機の調達を先送り」 (2012年1月27日(金)7時55分配信 産経新聞)

「米地上部隊9万人削減 国防費5年で20兆円圧縮方針」 (2012年1月27日12時13分 朝日新聞)
「 調達が計画されていた423機のうち179機が先送りされる見通しだ。今後数年間の生産数が減れば、日本向け価格が高くなる可能性もある。」(F-35に関して)

 各報道によりニュアンスに若干の差異があることが分かります(何を重視しているかが分かりやすい)。特にF-35に関しましては各マスコミも日本の調達に影響が出るとの認識です。この事は防衛大臣の記者会見でも指摘されました。Sdd_f35testa_120(上の写真はJSF milより夜間飛行試験を実施したF-35A 米国政府の方針により配布自由 クリックで拡大)

防衛大臣記者会見 平成24年1月27日(09時38分~09時44分)
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Q:F-35なんですけれども、アメリカ側が国防費の削減で、調達スケジュールを遅らせるという話があるんですが、日本側として決めた調達のスケジュールについては、どのようなお考えでいらっしゃいますでしょうか。それについて、パネッタさんと何か。

A:私の理解ですが、一切変更なしということでございます。予算の内容については、詳細、精査をし、整理をして参りたいと思いますが、また、事務方から報告をさせたいと思います。

Q:大臣の方から電話会談でF-35について、パネッタさんに「遅れないように」とか要請したというようなことはありますでしょうか。

A:少し話題にはなりましたけれども、詳細は失礼させていただきます。

Q:肝心な納期のことについては、パネッタ長官の方で「間に合う」という確認はされたのでしょうか。

A:私の印象では、変更はないと感じました。

(中略)

Q:確認なのですけれども、F-35については、パネッタ長官の方から明確に「納期を守ります」とかいう話は、今日はなかったということでよろしいですか。

A:ちょっと会談の内容については、今、お話を申し上げるところではございませんし、神風政務官が、訪米することになっております。詳細については、また訪米したときに更なる確認は取れるのではないかと思います。

(引用終了)
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 また日経新聞の2012年1月27日 23:34の報道「空幕長、米F35調達遅れ『影響ない』」によりますと岩崎茂航空幕僚長は27日の記者会見で、「『価格や納入期限に影響はない』と複数から聞いている」と述べたとしており、「(納期と価格を確約した)誓約書が、近く空幕長あてに提出されるとの見通しも明らかにした。」となっています。

 その一方で毎日新聞の2012年1月27日(金)19時5分配信の「<F35調達先送り>日本政府、懸念強める 状況確認へ」では同じ問題に関し、「日本政府の懸念が強まっている」、「神風英男政務官が2月に米国を訪問し、開発状況の確認を急ぐ」、「(誓約書の提出が)まだ実現していない」と否定的に報じているのです。

 それではどの認識が正しいのでしょうか。日米両政府間で如何なる交渉が行われているかを検証することは無論出来ません。しかし今回の米国防総省の2013年度予算案でF-35に関してどの様に言及されているかは確認することは可能です。 米国防総省の公式ホームページ2012年1月26日(米国時間)の記事"Panetta Announces Fiscal 2013 Budget Priorities"(「パネッタ長官が2013年度予算優先事項を発表」)には概要に関しまして下記の通りに発表されています。内容を抜粋し、翻訳します。
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The Pentagon’s budget topline request is set at $525 billion for fiscal 2013 with an additional $88.4 billion for overseas contingency operations -- mostly in Afghanistan. This is down from $531 billion and $115 billion, respectively, in this fiscal year.
国防総省の2013年度の予算要求額は5250億ドルとなっており、それに加えてアフガニスタンを大半とする海外での突発的事態に備え884億ドルを計上している。これは今年度の5310億ドルと1150億ドルからそれぞれ削減となっている。

The budget seeks to minimize the impact of cuts on personnel accounts. Service members will receive their full pay raises in fiscal 2013 and 2014, Panetta said. “We will achieve some cost savings by providing more limited pay raises beginning in 2015,” he added.
予算は人的勘定の削減の影響が最小限となるよう模索する。軍人は2013年度から2014年度に亘り完全な昇給を受けるであろうとパネッタ長官は述べた。「我々は2015年度より昇給幅をより削減することによりコスト削減を達成することとする。」と彼は付け加えた。

Changes to health care will not affect active duty personnel or their families, Panetta said.
健康保証制度の変更は現役の人員や彼等の家族に影響を及ぼさないであろうとパネッタ長官は述べた。

Increasing the number of special operations forces is key to the plan, Panetta said, and special operators will begin to shift back to their traditional pre-9/11 mission of instructing local forces.
特殊部隊の増強が計画の鍵であるとパネッタ国防長官は述べ、特殊部隊の隊員は9.11以前の伝統的な地元の軍の教育にシフトが戻り始めるであろう。

The request puts the Army on a path to drop to 490,000 soldiers and the Marine Corps to 182,000 Marines over five years. Currently, the two services have 562,000 and 202,000 active-duty members, respectively. The secretary noted this is still higher than the numbers on 9/11.
要求は陸軍を49万人規模、海兵隊を18万2千人規模まで5年間で削減する方向となる。現在は、陸軍と海兵隊には56万2千人と20万2千人の現役をそれぞれ有している。国防長官はそれでも9.11時の数値より高いと喚起した。

The budget maintains the current U.S. focus in the Central Command region and increases American commitment to the Pacific Command area of operations. The request looks to maintain the Navy’s current 11 aircraft carriers and 10 carrier air wings, Panetta said. It will also maintain the current Marine and Army posture in the Asia-Pacific region, and will base littoral combat ships in Singapore and Bahrain.
予算は中央軍司令部地域の現状維持と太平洋軍地域での作戦の米国の関与を増強する。要求は現行の空母11隻と10の空母航空団体制を維持するとパネッタ長官は述べた。予算はアジア太平洋地域に於ける現状の海兵隊と陸軍の体制を維持し、LCSをシンガポールとバーレーンに常駐させる。

The budget will eliminate two forward-based Army heavy brigades in Europe.
予算は欧州に於ける陸軍の前線基地の2個の重旅団を削減する。

The budget sinks more money into technologies to prevail in an anti-access, aerial-denial scenario and will fund the next-generation bomber and modernization of the submarine fleet.
予算は接近阻止、領域拒否シナリオでの勝利を目指す技術に費用を更に費やし、次世代爆撃機と潜水艦部隊の近代化に資金を提供する。

The F-35 joint strike fighter is key to maintaining domain superiority, and the military remains committed to the program, Panetta said. “But in this budget, we have slowed procurement to complete more testing and allow for developmental changes before buying in significant quantities,” he added.
F-35JSFは支配優越を維持する鍵であり、軍は計画を推進するとパネッタ長官は述べた。「しかしこの予算では、大口購入をする前に、試験を完了し開発変更が可能とする為に我々は発注ペースを減らすこととした。」とパネッタ長官は述べた。

(引用終了)
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 こうしてみますと、まず福利厚生への影響を短期的には最小限にする配慮が見られるということ、そして全般的に当ブログでも2012年1月 7日 (土)に記事を執筆しました米国の新国防戦略の具現化と見ることと出来ます(欧州地域の削減、中東の現状維持、アジア太平洋地域の増強、接近阻止/領域拒否への対策=新型爆撃機の開発)。LCSのシンガポールへの配備は以前から決定事項でした(「米、シンガポールに最新鋭戦闘艦 中国軍牽制する狙い」2011年6月4日13時3分 朝日新聞)。
(下の写真はWikipedia英語版よりLCS 著作権はPublic Domain クリックで画像拡大)Uss_independence_lcs2_at_pierce_cro F-35に関しましては現状はパネッタ国防長官の会見以上のことを読み取ることは困難です。研究開発段階での調達機数ペースを減らすとは述べていますが、それに伴い単価や納期に変更があるのかも分かりません。このまたパネッタ国防長官の会見以外でも"Defense Budget Priorities and Choices"との予算に関する書面が国防総省によりPDF国防総省発表の同記事より配布されています。そこには下記のようにあります。
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Joint Strike Fighter- committed to the JSF program of record that includes all three variants, but slowed procurement to complete more testing and make developmental changes to minimize concurrency issues before buying in significant quantities
JSF-3機種全てを含むJSF計画を推進するが、 大口発注をする前に同時進行問題を最小化する為に、更なる試験を完了し発展変更を行う為に発注ペースを落とすものとする。
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 これもパネッタ長官の会見内容と変わりません。同時進行に伴う問題とは以前にこのブログでも二回ほど記事にしましたが、開発・飛行試験と機体の導入を同時並行で実施することです。

NHKによる「FX候補のF35 機体に不具合」との奇妙な報道に思うこと 2011年12月 4日(日)

産経新聞による一連のF-35批判記事を検証する 2011年12月29日 (木)

 飛行試験と同時に生産型機を製造してしまった為に、飛行試験中に判明した不具合に対する対策を既に納入済み/生産中の機体にも組み込まなくてはならなくなったのが最大の問題点となっているのです。それではそれに伴いまして納期が遅れるのかに関しては未だに確定的な情報が入ってきません。産経新聞による一連のF-35批判記事を検証するの記事にFXウオッチャー氏より2012年1月 1日 (日) 12時26分のコメントにソースに基づいた興味深い情報提供を頂いておりますが、これを確認する情報も否定する事実も現段階ではありません。

 しかし日本の防衛政策に影響を及ぼしそうな記述がもう一点この"Defense Budget Priorities and Choices(PDF)"に見受けられます。それはGlobal Hawk Block30の生産終了です。Global Hawk Block30の生産中止理由に関しまして同文書は下記の通り説明しています。
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When we initially invested in the Global Hawk Block 30 program, it held the promise of providing essentially the same capability as the U-2 manned aircraft for significantly less money to both buy and operate. As the program has matured, these cost savings have not materialized and, at best, we project the future cost of Global Hawk Block 30 operations to be comparable with the U-2. In this five-year budget, the cost of the Global Hawk program would significantly exceed the cost of the U-2 so we cancelled Global Hawk Block30 and extended the U-2program.
我々が当初Global Hawk Block 30プログラムに投資した時は、U-2有人機よりも遥かに少ない導入予算と運用予算で実質的に同等の能力を提供する見込みであった。しかし計画が成熟するにつれ、コスト削減とはならず、そして最も楽観的に見ても、Global Hawk Block 30の将来的なコストはU-2相当である。この5年間の予算では、Global HawkプログラムのコストがU-2のコストを著しく超過するであろう為に我々はGlobal Hawk Block 30をキャンセルし、U-2プログラムを延長するものとする。
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日本は今までGlobal Hawkの導入を検討課題としてきました。その旨はこのブログでも執筆したことがありました。

米国製無人偵察機、3機導入へ 中国や北朝鮮想定 2010年10月 9日 (土)

東日本大震災で米空軍のグローバルホークが偵察活動 2011年3月20日 (日)

その一方でGlobal Hawk Block40は生産中止となりません。米空軍の公式ホームページによりますとBlock40のIOCは2014年度の予定です(下の写真は米空軍公式ホームページより。Operation Tomodachiの際に参考資料としてNichelle Anderson空軍兵長により撮影された。米空軍の方針により配布自由 クリックで画像拡大)。101007f9899a315しかし2010年08月16日のFlightglobalの記事によりますとBlock30とBlock40では任務が異なるとしています。
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"There's the Block 30 and the U-2, and there we're looking at a big I [for intelligence], a little S and a big R for reconnaissance," he says. "But when you're talking about Block 40, that's big I, big S, little R.
「Block30とU-2はI(intelligence)に重点をおき、Sにはそれ程重点はなく、偵察であるRに 重きをおく」と彼(Northlop社Walby氏)は述べる。「しかしBlock40ということであれば、Iに重点とSに重点と、Rはほぼない」
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日本がどの様な運用構想を考えていたのかは余り明確ではありません。しかし防衛省「高高度無人機システムの研究」政策評価書(要旨-PDF)には「高高度に長時間滞空して、常続的に我が国周辺の情報収集、偵察及び警戒監視等の任務」、「類似手段としては外国製無人機の導入等が候補として考えられるが、我が国の国情を鑑み、周辺空域から広域を監視することのできる高高度滞空型無人機としては必ずしも最適でない」としています。もしGlobal Hawk Block40では要求に合致しないと判断するならば、国産による高高度無人機の開発が本格化することとなるでしょう。
(下の画像は防衛省「高高度無人機システムの研究」政策評価書(要旨-PDF)より高高度無人機の運用構想例 クリックで拡大)Photo

2012年1月22日 (日)

米海軍が文書でF/A-18E/F後継に言及

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(上の写真は英語版WikipediaよりEA-18G 著作権はPublic Domain 画像クリックで拡大)

 2012年01月18日21:14:09 ESTのNavy Timesの記事"Navy document plans future of carrier air wings"(「海軍の文書が空母艦載機の将来を計画」)に米海軍がF/A-18E/Fの後継を計画しているとの非常に興味深い報道が掲載されました。下記にその記事の内容抜粋と翻訳を行います。
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By 2032, the Navy’s fleet of F/A-18E/F Super Hornets fighters and new EA-18G Growler electronic attack jets will have begun to be replaced by new types, a new document called Naval Aviation Vision 2012 reads.
2032迄に海軍のF/A-18E/F Super Hornet戦闘機とEA-18G Growler新型電子攻撃機が新型機により置き換えられると"Naval Aviation Vision 2012"と呼ばれる新たな文書に記載されている。

The Navy will consider manned, unmanned and optionally manned aircraft to replace the long serving Rhino, as the F/A-18E/F is known to carrier deck crews. The Super Hornet will begin to reach the end of its service life around 2025 and must be replaced. The document says a competitive fly-off will be held at some point in the future.
空母デッキ乗員にはF/A-18E/Fとして知られる、長期間に亘り運用されてきたライノの後継として海軍は有人機、無人機、そして有人機ともなる無人機を考慮するであろう。Super Hornetは2025年前後に寿命の終焉に達し始める予測であり置き換えられなくてはならない。文書は競争的な性能比較飛行試験が将来的に実施されるであろうとしている。

The Super Hornet-derived EA-18G will also start being replaced by a new aircraft, but the document offers no further details.
Super Hornetの派生型であるEA-18Gも新たな機体により置き換えられるとしているが、文書は更に具体的なことは言及していない。

(引用及び翻訳終了)
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 この記事のおおもとのソースは記事にもあります通り海軍の文書"Naval Aviation Vision 2012"(PDF)です。この文書には米海軍/海兵隊の各航空機の後継機が図解されています。

(下の各画像はその文書より、クリックで拡大)Replacement_for_fa18ef

Replacement_for_ea18g

Replacement_for_av8b_2 

(UCLASSとは"Unmanned Carrier Launched Surveillance and Strike"の略で無人航空母艦発艦偵察攻撃機とでも訳すべきでしょうか-2018年頃に配備予定-Navy Timesの記事ではX-47Bの技術が応用されるのではないかとしています。 MAGTFとは"Marine airground task force"の略で海兵空陸任務部隊と日本では訳されている。下の動画はYoutubeに投稿されたX-47B飛行の様子)

この文書には各後継機の具体的な仕様の記述がありません。しかしF-35と無人機、そして第六世代機の混成となるでしょう。第六世代機に関しましては以前も当ブログで執筆したことはありました。

「第六世代戦闘機日米共同開発の可能性について」 2011年2月24日 (木)

 この記事でも述べましたが、まだ第六世代機の概念は確定していません。しかし第六世代機に関しては各メーカーで計画されています。最近も新たな動きがありました。Lockheed Martin社がジャーナリスト等にメールで配布しました2012年度のカレンダーの2月にLockheed Martin社が想像するF-22戦闘機の後継となる第六世代戦闘機の画像が掲載されていた模様です。その旨はFlightglobalの2012年01月04日9:22の記事(画像あり)に掲載されています。FlightglobalがLockheed martin社に取材しましたところ、Eメールで下記の返信があったとの事です。

"Greatly increased speed, longer range, extended loiter times, multi-spectral stealth, ubiquitous situation awareness, and self-healing structures and systems are some of the possible technologies we envision for the next generation of fighter aircraft. "
速度の大幅な向上、航続距離延伸、ロイター飛行時間の延長、マルチスペクトルステルス性(レーダーだけだはなく視覚、聴覚に対してもステルス性があること)、ユビキタスなsituation awareness、自己修復構造及びシステムが次世代戦闘機の機体に我々が想定する幾つかの考えられる技術である。

 日本も将来的に第六世代戦闘機の開発に着手する可能性は非常に高いと考えられます。その方向性を考える上でもこれらの動向は非常に興味深いと思われます。今後も我が国を取り巻く安全保障環境は厳しくなることが予想されます。

尖閣「核心的利益」と中国 日本政府、影響を注視 (2012年01月21日 20:03 共同通信)

2012年1月15日 (日)

野田改造内閣発足と田中新防衛大臣起用に思うこと

 
上の動画はTBSによりYouTubeに投稿された野田改造内閣発足を伝えるニュース
 既にご存じのとおり、野田改造内閣が2012年1月13日に発足しました。

野田改造内閣の閣僚名簿発表…藤村官房長官 (2012年1月13日11時56分  読売新聞)

岡田副総理大臣の起用が今回の内閣改造の目玉人事と言えるでしょう。今回の内閣改造で、その賛否は兎も角としまして消費税増税が日本政府としては確定事項となります。その旨は野田総理と岡田副総理の記者会見での発言でも明確です。

「消費増税に不退転で臨む姿勢…首相、会見で強調」(2012年1月13日18時34分  読売新聞)
野田総理(東日本大震災からの復旧・復興や、税・社会保障の一体改革などの重要課題を挙げた上で)「やらなければならない、逃げることのできない、先送りすることのできない課題を確実に推進するための最善かつ最強の布陣を作るための改造だった」

「この内閣は未来に大きな責任」初会見で岡田氏」 (2012年1月13日20時32分  読売新聞)
岡田副総理(社会保障・税一体改革と行政改革について)「この内閣は未来に対し、極めて大きな責任を負っている。しっかりと改革の実が上がるよう努力していきたい」

 消費税増税路線に関しましては経済界からは歓迎の声が多い模様です。

「一体改革、国民理解へ始動…野田改造内閣」(2012年1月14日  読売新聞)
「税財政と社会保障の一体改革など、重要政策を迅速かつ強力に進める体制がようやく整えられた」(米倉弘昌・経団連会長)、「内閣の財政再建路線への決意を改めて示した」(SMBC日興証券の阪上亮太氏)

 しかしその一方で最も重要なファクターである有権者からは強い支持を得るには至っていません。

内閣支持率37%に下落…岡田氏「評価」52%(2012年1月14日23時11分  読売新聞)
岡田副総理兼一体改革相の起用を「評価する」は52%で、「評価しない」35%を上回った。消費税増税に関しては「賛成」は39%で、「反対」55%を下回った。

上記の世論調査では矛盾する結果が出ています。岡田副総理は実質的に消費税増税担当です。起用を評価する声が過半数を超えていますが、逆に消費税増税に関しましては反対との意見が過半数を超過する結果となっています。これをどう解釈するかは難しいところです。

そしてその岡田副総理の起用を含め、小沢派からは今回の内閣改造に対して反発の声が上がっています。

内閣改造、小沢系は冷ややか…結束維持に苦慮か(2012年1月13日22時23分  読売新聞)

 今回の内閣改造では田中直紀・新防衛相の起用も含めて小沢派に一定の配慮をしたと見られる部分も見られます。しかし小沢派と政権の対立は今後も続くでしょう。陸山会裁判の結果次第ではこの対立も自然消滅すると私は考えますが。

 今回のこの記事では田中新防衛相に関しましても執筆したいと考えました。しかし新防衛相の外交・安全保障に関する見解を検証する材料が皆無なのです。Wikipediaの項目でも新防衛相の経歴には言及がありますが、政策に関しては全く情報がありません(2012年1月15日(日)21:00現在)。そこで田中直紀氏の公式ホームページを見てみましたが、ここにも外交・安全保障に関する政策には全く言及がありませんでした。政策に関する言及は下記5点のみで、内容も非常に抽象的です。コメントのしようがありません。Photo(上の画像は田中直紀氏の公式ホームページより クリックで画像拡大)

 それでは海外では新防衛相に関してどの様に見ているのでしょうか。少なくともDefense Newsにも2012年1月15(日)21:30現在(日本時間)では全く記事がありません。その一方で中国の第二位の国営通信社である「中国新闻网」には下記の様な記事が見られました。

日议员热议新任防卫相 称有利改善日中军事关系 (2012年01月13日 12:56)

 この記事をベースに日本の時事通信が下記の記事を書いています。

田中角栄氏の娘婿に注目=中国通信社、「軍事関係」改善も-内閣改造 (2012年01月13日(金)18:41)

 日本の与党議員(誰でしょう?)のコメントを引用して希望的観測を述べているのです。実際に小沢氏は現在は親中派であり、新防衛相の夫人である田中眞紀子氏は親中派として知られています。実際は本人がどうであるかは分かりませんが、中国側は上記の記事からも分かる様にそういった希望を抱いている模様です。

現在のところ不明点が多く、何とも言い難いのが現状ですが、早くも不安材料が散見されます。

田中防衛相は「踏み込み過ぎ」…年内着工に言及 (2012年1月15日18時20分  読売新聞)

テレビで防衛相「素人ぶり」露呈 武器使用と輸出を混同 (2012年01月15日(日) 16:50 共同通信)

 私は沖縄県の米軍普天間飛行場(宜野湾市)の名護市辺野古への移設に関する発言は既定路線を明言しただけであり、武器使用と輸出の混同は純粋に質問をよく聞いていなかっただけではないかと考えますが(これ自体が問題かもしれませんが)、問題は国会や世論がどう解釈するかです。前述の読売新聞の記事の世論調査でも新防衛相起用を「評価する」との世論は19%に留まっています。この世論の低い評価は党内力学の重視と、必ずしも安全保障政策に通じているとは言えない田中氏を起用したことへの批判ではないでしょうか。今回の新防衛大臣の人事は野田改造内閣の不安定材料となるかもしれません。

2012年1月 9日 (月)

米国の新国防戦略に記載された「新型ステルス爆撃機」とは

B2_leading_valiant_shield

(上の画像はwikipediaフランス語版より米国機動部隊の上を飛行するB-2ステルス爆撃機 著作権はPublic Domain クリックで画像拡大 中国は対艦弾道ミサイル等により接近阻止/領域拒否戦略を図っている。新型ステルス爆撃機は対抗策となるか

 前の記事「米国防総省の新戦略を読む」で、中国やイランによる接近阻止/領域拒否に対抗手段の柱の一つとして米国が新型ステルス爆撃機の開発に言及している旨を述べました。それではこの新型ステルス爆撃機とはどの様なものなのでしょか。Wikipedia英語版に情報が詳細に纏められています。Wikipediaは誰でも編集が可能であり、記事の信憑性や情報の正確性に疑問があることもありますので、可能な限り1次ソースで確認しながら、今回の記事ではこの新型ステルス爆撃機に関して執筆することとしました。

1.経緯

  この新型ステルス爆撃機ですが、"2018 Bomber"(以前は2018年の配備を目標としていた為)やNext Generation BomberないしはB-3とも呼称されています。英語版Wikipediaによりますと、今まで国防総省でもその具体像(有人機か無人機か、極超音速か亜音速か-結局のところ予算面での制約から無人機としての運用も可能な有人機で亜音速となる方向-)やその計画の存続自体も含めて紆余曲折があったとのことです。

 具体的な動きがあったのは2008年1月で、UPI通信が"Boeing, Lockheed to work on new bomber"(「Boeing社Lockheed社が新型爆撃機を手掛ける」と2008年1月25日に報じています。Boeing社とLockheed社が共同で新型爆撃機を開発するとの発表でした。その旨はBoeing社の公式ホームページの2008年01月25日のプレスリリース"Boeing and Lockheed Martin Team for Next Generation Bomber Program"(「Boeing社とLockheed Martin社が次世代爆撃機計画で共同作業」)でも確認することが出来ます。そしてその同社の公式発表には下記の記述が見受けられます。(しかしこのBoeing社とLockheed Martin社の提携は2010年03月01日に解除されました(Defense News 2010年03月01日記事"Boeing, Lockheed Put Bomber Partnership on Ice")。)
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This collaborative effort for a long-range strike program will include work in advanced sensors and future electronic warfare solutions
この長距離攻撃計画の共同努力は先進センサー及び電子戦ソリューションを含むであろう。
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 その時に公開されたBoeing社とLockheed社共同開発案の想像図(著作権がある可能性があるのでリンクのみとします)

 また上記以外にはNorthrop Grumman社が2008年に20億ドルの極秘プロジェクトを受注しています。これがNext Generation Bomber関連であることは確実視されているとのことです。これを受けて想像図がスケッチされています。

Northrop Grumman社 Next Generation Bomber案(著作権がある可能性があるのでリンクのみに留めます)

  上記の様にプロジェクトが進み始めましたが、ゲーツ長官(当時)は2009年4月15日(水)に次世代爆撃機を含む複数の構想に関して見直しに言及し(ロイター 2009年4月15日(水)"Gates sees more changes to U.S. weapons in 2011")、2018年の配備は延期され、今日に至っています。

2.具体的仕様

 ゲーツ国防長官(当時)は次世代爆撃機に関しまして2011年01月06日(木)のペンタゴンでの演説にて下記の通りに述べていました。
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Finally, a major area of investment for the Air Force will be a new long-range, nuclear-capable penetrating bomber.  This aircraft – which will have the option of being piloted remotely – will be designed and developed using proven technologies, an approach that should make it possible to deliver this capability on schedule and in quantity.  It is important that we begin this project now to ensure that a new bomber can be ready before the current aging fleet goes out of service.  The follow on bomber represents a key component of a joint portfolio of conventional deep-strike capabilities – an area that should be a high priority for future defense investment given the anti-access challenges our military faces.
最後に、空軍の主要な投資分野は新たな長距離で、核兵器運用可能な侵入爆撃機である。この機体は-遠隔操作のオプションがあるが-実証された技術を用いて設計され開発される為に、スケジュール通りに纏まった機数で納入されることを可能にするであろう。現在の老朽化しつつある爆撃機編隊が退役となる前に新たな爆撃機が準備されている事を確実にする為にも、我々はこの計画を今から開始することが重要である。後継となる爆撃機は通常兵器による深攻作戦-我が軍が接近阻止の挑戦を受ける中で将来の国防投資に於ける最優先課題とされる領域であるが-の主要要素の包括の象徴となるであろう。
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また2011年02月15日(火)8:07:23 ESTのAir Force Timesの記事"Budget shrinks; acquisition programs outlined"(「予算縮減;調達計画概要」)にはこの様にあります。
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the “centerpiece” of which is a long range, stealthy, penetrating, nuclear-capable optionally manned bomber.
目玉は長距離ステルス侵入核兵器運用可能有人機にもなる爆撃機

The Air Force hopes the new bomber will be operational by the “mid-2020s,” said Pentagon Comptroller Robert Hale.
国防総省の会計監査官Robert Hale氏は空軍が2020年代半ばまでに新型爆撃機が実戦配備されることを望むと述べた。

the Long Range Strike Family of Systems should include not just a bomber, but Intelligence, Surveillance, Reconnaissance (ISR), Electronic Attack (EA), and communication portions of the program, said Maj. Gen. Alfred Flowers, the Air Force’s deputy assistant secretary for budget. He added that there would be one type of airframe, but with different missions depending upon the payload.
長距離攻撃システムは爆撃のみならず、インテリジェンス、監視、偵察(ISR)電子攻撃(EA)通信のプログラム部分を含まなくてはならないと空軍の予算副補佐官であるAlfred Flowers少将は述べた。彼は機体は一種類だけであるが、ペイロードにより異なる作戦を遂行することを付け加えた。
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 新型爆撃機の核兵器運用能力に関しましては2011年11月02(水)にノートン・シュワルツ空軍参謀総長が議会に次の様に証言しました(2011年11月02(水)19:13:10 EDT Defense News記事"Schwartz: New bomber not nuke-capable at first"「シュワルツ:新型爆撃機は当初核運用能力はなし」)。
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The Air Force’s top uniformed officer said the service’s new long-range strike bomber will be built with nuclear capability but will operate as a conventional strike aircraft initially.
空軍制服組のトップは空軍の長距離攻撃爆撃機は核兵器運用能力を有するかたちで製造されるが、しかし通常兵器攻撃機として始めは運用されるだろうと述べた。
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つまりこれらの関係者の話から見えるのはただの爆撃機ではなく、マルチロール機となりそうです。無人機のX-47Bの大型拡張版の様な気もします。
(下の画像はWikipediaよりX-47B 著作権はPublic Domain 拡大によりクリック)582pxx47b_over_sea

 しかしここで思い出すのが2011年12月上旬に発生しましたイランによるRQ-170米国無人機の奪取です。原因は今のところは判明していません。しかし無人機やステルス機の脆弱性が明らかになった/今後の中国やロシアによる解析で対抗手段が開発される虞があります。長時間の滞空により出現する脅威を直ちに攻撃する為に無人機とする意味合いは分かりますが、当面は有人機を原則とした方法が無難と言えるのではないでしょうか。

2012年1月 7日 (土)

米国防総省の新戦略を読む

(上の動画はWhite House公式ホームページより新国防戦略を発表するオバマ大統領 音声は全て英語 下の動画は米国防総省公式ホームページよりパネッタ長官)

私は2011年06月12日(日)に「ゲーツ国防長官とパネッタ次期国防長官の同盟や予算に関する発言に思うこと」との記事を執筆し、ゲーツ国防長官(当時)がNATO諸国の力量や心構えに対して不満を抱いている事、そしてそしてパネッタ国防長官が今後10年間で国防関連予算から4000億ドルの削減を計画しているが、国防支出を抑制しつつ世界最強の軍事力を維持出来ると述べたことを紹介しました。このことから恐らく今後の米軍予算は「選択と集中」となり、また同盟国に一定の役割の負担を要求してくると予測しました。

 そして米国時間2012年01月05(木)に米国政府は今後10年間で4500億ドル(日本円にして約35兆円)規模の国防費削減を達成する為の新国防戦略を発表しました。そのことは日本の各メディアも報じています。

「米新国防戦略 アジア太平洋で強化」(2012年1月6日 7時16分 NHK)

「対中国でアジア重視=「2正面作戦」を転換-国防費削減で新戦略公表・米大統領」(2012年01月06日01:35 時事)

 これらの記事によりますと新方針の趣旨としましては

1. 陸軍と海兵隊の削減

2. 中国とイランを名指しし、アジア太平洋地域での展開力は強化し、重要な地域への国防費削減の影響はない

3. 二つの大規模地域紛争に同時に対処可能との方針を削除するが、「朝鮮半島での陸上戦争を行いながらホルムズ海峡でのイランの脅威と戦い、双方で勝利することができる」(パネッタ長官)

4.  「同盟国が自国の領土や国益を守るための能力を強化する」(パネッタ国防長官)

というものです。即ち今後予想される脅威の重点を中国とイランを念頭に、予算や部隊の配分にメリハリをつけるものと言って良いでしょう。米国防総省ホームページからPDFにて新国防総省方針"SUSTAINING U.S. GLOBAL LEADERSHIP: PRIORITIES FOR 21st CENTURY DEFENSE"(「米国リーダシップの維持:21世紀国防の優先課題)でその全文を閲覧可能です。この文章は7頁目から本文が始まっています。その概要とそして幾つか私個人としまして重要と感じた部分(赤文字で強調)を下記に抜粋し、翻訳します。
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A Challenging Global Security Environment
挑戦的なグローバルな安全保障環境

(テロとの戦いに関して)
The demise of Osama bin Laden and the capturing or killing of many other senior al-Qa’’ida leaders have rendered the group far less capable. However, al-Qa’’ida and its affiliates remain active in Pakistan, Afghanistan, Yemen, Somalia, and elsewhere.
オサマ ビン ラディンの死亡とその他のアルカイダ上層部の多数の拘束と殺害は勢力を弱体化させた。しかしアルカイダとその分派はパキスタン、アフガニスタン、イエメン、ソマリア、そしてその他の地域でまだ活発である。

For the foreseeable future, the United States will continue to take an active approach to countering these threats by monitoring the activities of non-state threats worldwide, working with allies and partners to establish control over ungoverned territories, and directly striking the most dangerous groups and individuals when necessary.
非対称脅威を世界規模で監視し、無法地帯をコントロールする為に同盟国やパートナーと協調し、そして必要であれば最も危険な組織や個人を直接的に攻撃することにより当面の間は米国は積極的な手法でこれらの脅威に対抗し続けるであろう。

(アジア太平洋地域に関し)
Accordingly, while the U.S. military will continue to contribute to security globally, we will of necessity rebalance toward the Asia-Pacific region. Our relationships with Asian allies and key partners are critical to the future stability and growth of the region.
それに伴い、世界的な安全保障に米軍が貢献を続けると同時に、我々はアジア太平洋地域に再編する必要がある。アジア同盟諸国とパートナーとの我々の関係は地域の安定性と発展に必須である。

The United States is also investing in a long-term strategic partnership with India to support its ability to serve as a regional economic anchor and provider of security in the broader Indian Ocean region.
広大なインド洋地域に於ける地域の経済的要と安全の提供者としての役割を支援する為に、米国はインドとの長期間の戦略的パートナーシップにも投資している。

Over the long term, China’’s emergence as a regional power will have the potential to affect the U.S. economy and our security in a variety of ways.
長期的には、中国の地域大国としての出現は米国の経済と安全保障に多岐に亘り影響を及ぼす潜在性がある。

However, the growth of China’’s military power must be accompanied by greater clarity of its strategic intentions in order to avoid causing friction in the region.
しかしながら中国の軍事力増強は地位での摩擦発生を避ける為に戦略的意図に関しより透明性が伴っていなくてはならない。

(中東地域に関して)
Of particular concern are the proliferation of ballistic missiles and weapons of mass destruction(WMD). U.S. policy will emphasize Gulf security, in collaboration with Gulf Cooperation Council countries when appropriate, to prevent Iran’’s development of a nuclear weapon capability and counter its destabilizing policies.
特に注意を要する点として弾道ミサイルと大量破壊兵器(WMD)の拡散がある。米国の方針としては湾岸地域の安全に重点をおき、必要とあれば湾岸協力会議の参加国との協調で、イランの核兵器能力の発展を防ぎ不安定方針に対抗する

To support these objectives, the United States will continue to place a premium on U.S. and allied military presence in –– and support of –– partner nations in and around this region.
これらの目標を支持する為に米国は、この地域内と周囲のパートナー諸国の支援を受けつつ米国及び同盟国の軍事プレゼンスにプレミアムを引き続きおくものとする。

(欧州に関して)
Most European countries are now producers of security rather than consumers of it. Combined with the drawdown in Iraq and Afghanistan, this has created a strategic opportunity to rebalance the U.S. military investment in Europe, moving from a focus on current conflicts toward a focus on future capabilities.
殆どの欧州諸国は安全保障の消費者ではなく創作者である。イラクとアフガニスタンからの撤退も併せて、これは欧州に於ける米軍の投資を再編する戦略的機会を創造した。

Primary Missions of the U.S. Armed Forces
米軍の基礎任務

・Counter Terrorism and Irregular Warfare
対テロと非正規戦

・Deter and Defeat Aggression
侵略の抑止と阻止
Our planning envisages forces that are able to fully deny a capable state’’s aggressive objectives in one region by conducting a combined arms campaign across all domains –– land, air, maritime, space, and cyberspace.
我々が計画する心に描く軍は全ての領域に亘る束ねた軍事作戦を実施することにより、一つの地域で能力を有する国家の侵略目標を拒否する事が出来る-陸、空、海、宇宙、そしてサイバー空間である。

Even when U.S. forces are committed to a large-scale operation in one region, they will be capable of denying the objectives of –– or imposing unacceptable costs on –– an opportunistic aggressor in a second region.
一つの地域で大規模な作戦に米軍が従事していたとしても、彼等は第二の地域で機会に乗じた侵略者の目的を拒否するか、受け入れがたい代償を課すことが出来る。

・Project Power Despite Anti-Access/Area Denial Challenges
接近阻止/領域拒否に関わらず軍事力の投射
In these areas, sophisticated adversaries will use asymmetric capabilities, to include electronic and cyber warfare, ballistic and cruise missiles, advanced air defenses, mining, and other methods, to complicate our operational calculus. States such as China and Iran will continue to pursue asymmetric means to counter our power projection capabilities, while the proliferation of sophisticated weapons and technology will extend to non-state actors as well. Accordingly, the U.S.military will invest as required to ensure its ability to operate effectively in anti-access and area denial (A2/AD) environments. This will include implementing the Joint Operational Access Concept, sustaining our undersea capabilities, developing a new stealth bomber, improving missile defenses, and continuing efforts to enhance the resiliency and effectiveness of critical space-based capabilities.
これらの領域では、複雑化した敵勢力は、我々の作戦計画を困難なものとする為に電子戦とサイバー戦、弾道ミサイルと巡航ミサイル、先進的な防空、地雷、その他を含む非対称能力を使用するであろう。非国家にも同様に複雑化した兵器と技術が拡散し続ける中で、中国とイランの様な国家は我々の軍事力投射に対抗する為の非対称手段を追求し続けるであろう。それに伴い、接近阻止/領域拒否(A2/AD)でも有効的に作戦を遂行する能力を確実なものとする為に、必要に応じて米軍は投資するであろう。これは統合作戦接近概念の実行、海中能力の維持、新型ステルス爆撃機の開発、ミサイル防衛の向上、そして重大な宇宙基盤能力の弾力性と有効性の拡充する継続的な努力が含まれる。

・Counter Weapons of Mass Destruction
大量破壊兵器への対抗

・Operate Effectively in Cyberspace and Space
サイバー空間と宇宙で有効に作戦遂行

・Maintain a Safe, Secure, and Effective Nuclear Deterrent
安全で確実な、そして有効な核抑止力
It is possible that our deterrence goals can be achieved with a smaller nuclear force, which would reduce the number of nuclear weapons in our inventory as well as their role in U.S. national security strategy.
より少ない核戦力であっても抑止目標達成は可能であり、核兵器の在庫数と米国安全保障戦略での役割を減らす。

・Defend the Homeland and Provide Support to Civil Authorities
本土防衛と文官当局者への支援提供

・Provide a Stabilizing Presence
安定したプレゼンスの提供
However, with reduced resources, thoughtful choices will need to be made regarding the location and frequency of these operations.
しかしながら、削減された予算では、位置と作戦の頻度に関し熟考した選択が必要となる。

・Conduct Stability and Counterinsurgency Operations
安定化及び対ゲリラ作戦の遂行
U.S. forces will nevertheless be ready to conduct limited counterinsurgency and other stability operations if required, operating alongside coalition forces wherever possible. However, U.S. forces will no longer be sized to conduct large-scale, prolonged stability operations.
米軍は、可能であれば多国籍軍とともに、それでも限定的な対ゲリラ及び安定化作戦を必要とあれば実施する準備がある。しかしながら、米軍はもはや大規模で長期の安定化作戦を実施する規模はない。

・Conduct Humanitarian, Disaster Relief, and Other Operations
人道上、災害救援、その他の作戦の遂行
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 テロとの戦いの次の項目にアジア太平洋地域を列挙しています。2011年11月に発表されました豪州ダーウィンへの米国海兵隊駐留もその一環であると言えるでしょう。その他には中国とイランを何度も名指ししていることも大きな特徴です。外交的な配慮がなく、極めて大胆な表明と言えるでしょう。欧州に関しましては「ゲーツ国防長官とパネッタ次期国防長官の同盟や予算に関する発言に思うこと」の記事の延長線上にあると言えます。この新たな戦略に対し、英国が早くも憂慮している模様です。

Defense News 2012年01月05日 London "U.K. Defense Chief Urges U.S. To Maintain Tight NATO Ties"(「英国防相が米国にNATOとの緊密な絆を維持する様に呼び掛け」)

 また新型ステルス爆撃機の開発導入にも言及がありますが、これは2018 Bomberとの呼称もあります。

The 2018 Bomber (Northlop Grumman 2008年8月発表資料 PDF)

2012年01月09日(月)追記:新記事執筆「米国の新国防戦力に記載された「新型ステルス爆撃機」とは

 この新国防戦略は概略と概念のみであり、まだ具体論は不明です。今後に僅かながら明らかになっていくと思われます。しかし同盟諸国にも一定の負担を求めていく方針であることが分かるもので、日本も少なからず影響を受けるかもしれません。今からでも防衛費の増額を検討するべきではないでしょうか。

2012年1月 2日 (月)

防衛省が攻撃を逆探知し無力化する対サイバー兵器を開発 

  2012年1月1日の読売新聞に「防衛省が対サイバー兵器、攻撃を逆探知し無力化」との興味深い記事が掲載されました。

 この記事から分かることは技術研究本部で開発に当たっており、08年度、「ネットワークセキュリティ分析装置の研究試作」事業として発注し、富士通が1億7850万円で落札しているとのことです。

 そこで上記の情報をヒントに公式資料を検索しましたところ防衛省のPDFファイルで二件見付ける事が出来ました。

1. 「防衛省におけるサイバー攻撃対処について」 平成23年度6月23日 運用企画局情報通信・研究課
(第4頁 「3 サイバー攻撃対処に関する防衛省の施策」の⑥に「最新技術の研究」とあり、その名称が「ネットワークセキュリティ分析装置の研究試作等」となっています。下の図がその頁です。クリックで拡大します。

Photo
2. 事業番号 0391 平成23年度行政事業レビューシート ( 防 衛 省 )
この2つめの資料に詳細が記載されていました。事業開始・終了(予定)年度が平成20年度(西暦2008年)~平成22年度、一般競争入札により富士通(株)1億7900万円で受注、事業概要は「サイバー攻撃等監視・分析及びアクティブ防御を行うネットワークセキュリティ分析装置を試作し、ネットワークを模擬した模擬環境部を用いて検証することにより、サイバー攻撃に対処するためのネットワークセキュリティ技術資料を得る。」としています。更に「点検結果」の「1. 必要性」では「従来の予防的対策に加え、実際に攻撃を受けた時に、内部ネットワークに進入した攻撃元や踏み台を探索、無力化し被害を局限化する技術を確立する必要がある。」としており、読売新聞の今回の記事の内容そのものとなっています。

 ただ読売新聞の記事では「ウイルス」となっており、「現在は閉鎖されたネットワーク環境の下で試験的に運用」としているのに対し、事業番号 0391 平成23年度行政事業レビューシート ( 防 衛 省 )では「ネットワークを模擬した模擬環境部を用いて検証する」としています。

 しかし実際にこの様なことが技術的に可能なのでしょうか?「踏み台」は特定が可能だとしましても、しかし踏み台から先の本体を特定し、本体を攻撃することが可能だとしますと、昨年問題が発覚しました日本に対するサイバー攻撃問題の実行犯もある程度は特定可能な技術を日本は有していることとなります。尤も今回の技術は恐らく防衛省のネットワークに対するサイバー攻撃であり、その他の官公庁や民間のインフラに関するものではないと思われます。これらの防衛省以外のネットワークもどの様に防衛していくかも今後の検討課題と言えるでしょう。

衆議院にサイバー攻撃 2011年10月31日 (月)

三菱重工に対するサイバー攻撃に思うこと 2011年9月22日 (木)

日本国警察庁に対するサイバー攻撃に思うこと 2011年7月18日 (月)

 またこの読売新聞の記事は実際に運用する際には新たな法解釈が必要となる旨も課題として述べられています。具体的には読売新聞の別の記事「サイバー攻撃「新たな戦争」…武力攻撃認定が課題」(2012年1月1日21時21分)では「最大の課題は、自衛権の発動をめぐる憲法9条との論点整理だ。政府は現在、武力攻撃事態について、〈1〉着上陸侵攻〈2〉ゲリラ・特殊部隊による攻撃〈3〉弾道ミサイル攻撃〈4〉航空機による攻撃――の4類型を想定している。これにサイバー攻撃をどう加え、どの時点で認定するのか、新たな考え方をまとめなければならない。」としています。

 また当然のことですが、攻撃は海外の端末から攻撃を仕掛けていると推測されますから、もしその海外にある端末を日本が無力化(攻撃)した場合は、一種の敵基地攻撃とも言えるのです。

 しかし私は、あくまで個人的見解ですが、「我が国土に対し、誘導弾等による攻撃が行われた場合、座して自滅を待つべしというのが憲法の趣旨とは考えられない。」(1956年2月29日 鳩山一郎首相)と同じ理論でも構わないと考えています。原理は工作員によるサボタージュやインフラに対するミサイル攻撃と同じであると考えるからです。ミサイルや工作員ではなく、ウイルスという新しい手段になっただけだと私は考えます。

 今後はサイバースペースが新たな戦場となります。米国はサイバー攻撃が戦争の一形態として解釈する方針であることは当ブログでも触れたことがあります。

Lockheed Martin社に対するハッキング事件と米国の反応に思うこと 2011年6月 5日 (日)

サイバー空間の問題は2011年度「日米安全保障協議委員会」(2プラス2)でも議題の一つとなっており、今回のこの動向はこれらの動向を受けた物とも言えるでしょう。

 *明けましておめでとうございます。本年も宜しくお願い申し上げます。今年が皆様にとって幸多き一年となることを心からお祈り申し上げます。

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