米国防総省の新戦略を読む
(上の動画はWhite House公式ホームページより新国防戦略を発表するオバマ大統領 音声は全て英語 下の動画は米国防総省公式ホームページよりパネッタ長官)
私は2011年06月12日(日)に「ゲーツ国防長官とパネッタ次期国防長官の同盟や予算に関する発言に思うこと」との記事を執筆し、ゲーツ国防長官(当時)がNATO諸国の力量や心構えに対して不満を抱いている事、そしてそしてパネッタ国防長官が今後10年間で国防関連予算から4000億ドルの削減を計画しているが、国防支出を抑制しつつ世界最強の軍事力を維持出来ると述べたことを紹介しました。このことから恐らく今後の米軍予算は「選択と集中」となり、また同盟国に一定の役割の負担を要求してくると予測しました。
そして米国時間2012年01月05(木)に米国政府は今後10年間で4500億ドル(日本円にして約35兆円)規模の国防費削減を達成する為の新国防戦略を発表しました。そのことは日本の各メディアも報じています。
「米新国防戦略 アジア太平洋で強化」(2012年1月6日 7時16分 NHK)
「対中国でアジア重視=「2正面作戦」を転換-国防費削減で新戦略公表・米大統領」(2012年01月06日01:35 時事)
これらの記事によりますと新方針の趣旨としましては
1. 陸軍と海兵隊の削減
2. 中国とイランを名指しし、アジア太平洋地域での展開力は強化し、重要な地域への国防費削減の影響はない
3. 二つの大規模地域紛争に同時に対処可能との方針を削除するが、「朝鮮半島での陸上戦争を行いながらホルムズ海峡でのイランの脅威と戦い、双方で勝利することができる」(パネッタ長官)
4. 「同盟国が自国の領土や国益を守るための能力を強化する」(パネッタ国防長官)
というものです。即ち今後予想される脅威の重点を中国とイランを念頭に、予算や部隊の配分にメリハリをつけるものと言って良いでしょう。米国防総省ホームページからPDFにて新国防総省方針"SUSTAINING U.S. GLOBAL LEADERSHIP: PRIORITIES FOR 21st CENTURY DEFENSE"(「米国リーダシップの維持:21世紀国防の優先課題)でその全文を閲覧可能です。この文章は7頁目から本文が始まっています。その概要とそして幾つか私個人としまして重要と感じた部分(赤文字で強調)を下記に抜粋し、翻訳します。
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A Challenging Global Security Environment
挑戦的なグローバルな安全保障環境
(テロとの戦いに関して)
The demise of Osama bin Laden and the capturing or killing of many other senior al-Qa’ida leaders have rendered the group far less capable. However, al-Qa’ida and its affiliates remain active in Pakistan, Afghanistan, Yemen, Somalia, and elsewhere.
オサマ ビン ラディンの死亡とその他のアルカイダ上層部の多数の拘束と殺害は勢力を弱体化させた。しかしアルカイダとその分派はパキスタン、アフガニスタン、イエメン、ソマリア、そしてその他の地域でまだ活発である。
For the foreseeable future, the United States will continue to take an active approach to countering these threats by monitoring the activities of non-state threats worldwide, working with allies and partners to establish control over ungoverned territories, and directly striking the most dangerous groups and individuals when necessary.
非対称脅威を世界規模で監視し、無法地帯をコントロールする為に同盟国やパートナーと協調し、そして必要であれば最も危険な組織や個人を直接的に攻撃することにより当面の間は米国は積極的な手法でこれらの脅威に対抗し続けるであろう。
(アジア太平洋地域に関し)
Accordingly, while the U.S. military will continue to contribute to security globally, we will of necessity rebalance toward the Asia-Pacific region. Our relationships with Asian allies and key partners are critical to the future stability and growth of the region.
それに伴い、世界的な安全保障に米軍が貢献を続けると同時に、我々はアジア太平洋地域に再編する必要がある。アジア同盟諸国とパートナーとの我々の関係は地域の安定性と発展に必須である。
The United States is also investing in a long-term strategic partnership with India to support its ability to serve as a regional economic anchor and provider of security in the broader Indian Ocean region.
広大なインド洋地域に於ける地域の経済的要と安全の提供者としての役割を支援する為に、米国はインドとの長期間の戦略的パートナーシップにも投資している。
Over the long term, China’s emergence as a regional power will have the potential to affect the U.S. economy and our security in a variety of ways.
長期的には、中国の地域大国としての出現は米国の経済と安全保障に多岐に亘り影響を及ぼす潜在性がある。
However, the growth of China’s military power must be accompanied by greater clarity of its strategic intentions in order to avoid causing friction in the region.
しかしながら中国の軍事力増強は地位での摩擦発生を避ける為に戦略的意図に関しより透明性が伴っていなくてはならない。
(中東地域に関して)
Of particular concern are the proliferation of ballistic missiles and weapons of mass destruction(WMD). U.S. policy will emphasize Gulf security, in collaboration with Gulf Cooperation Council countries when appropriate, to prevent Iran’s development of a nuclear weapon capability and counter its destabilizing policies.
特に注意を要する点として弾道ミサイルと大量破壊兵器(WMD)の拡散がある。米国の方針としては湾岸地域の安全に重点をおき、必要とあれば湾岸協力会議の参加国との協調で、イランの核兵器能力の発展を防ぎ不安定方針に対抗する。
To support these objectives, the United States will continue to place a premium on U.S. and allied military presence in – and support of – partner nations in and around this region.
これらの目標を支持する為に米国は、この地域内と周囲のパートナー諸国の支援を受けつつ米国及び同盟国の軍事プレゼンスにプレミアムを引き続きおくものとする。
(欧州に関して)
Most European countries are now producers of security rather than consumers of it. Combined with the drawdown in Iraq and Afghanistan, this has created a strategic opportunity to rebalance the U.S. military investment in Europe, moving from a focus on current conflicts toward a focus on future capabilities.
殆どの欧州諸国は安全保障の消費者ではなく創作者である。イラクとアフガニスタンからの撤退も併せて、これは欧州に於ける米軍の投資を再編する戦略的機会を創造した。
Primary Missions of the U.S. Armed Forces
米軍の基礎任務
・Counter Terrorism and Irregular Warfare
対テロと非正規戦
・Deter and Defeat Aggression
侵略の抑止と阻止
Our planning envisages forces that are able to fully deny a capable state’s aggressive objectives in one region by conducting a combined arms campaign across all domains – land, air, maritime, space, and cyberspace.
我々が計画する心に描く軍は全ての領域に亘る束ねた軍事作戦を実施することにより、一つの地域で能力を有する国家の侵略目標を拒否する事が出来る-陸、空、海、宇宙、そしてサイバー空間である。
Even when U.S. forces are committed to a large-scale operation in one region, they will be capable of denying the objectives of – or imposing unacceptable costs on – an opportunistic aggressor in a second region.
一つの地域で大規模な作戦に米軍が従事していたとしても、彼等は第二の地域で機会に乗じた侵略者の目的を拒否するか、受け入れがたい代償を課すことが出来る。
・Project Power Despite Anti-Access/Area Denial Challenges
接近阻止/領域拒否に関わらず軍事力の投射
In these areas, sophisticated adversaries will use asymmetric capabilities, to include electronic and cyber warfare, ballistic and cruise missiles, advanced air defenses, mining, and other methods, to complicate our operational calculus. States such as China and Iran will continue to pursue asymmetric means to counter our power projection capabilities, while the proliferation of sophisticated weapons and technology will extend to non-state actors as well. Accordingly, the U.S.military will invest as required to ensure its ability to operate effectively in anti-access and area denial (A2/AD) environments. This will include implementing the Joint Operational Access Concept, sustaining our undersea capabilities, developing a new stealth bomber, improving missile defenses, and continuing efforts to enhance the resiliency and effectiveness of critical space-based capabilities.
これらの領域では、複雑化した敵勢力は、我々の作戦計画を困難なものとする為に電子戦とサイバー戦、弾道ミサイルと巡航ミサイル、先進的な防空、地雷、その他を含む非対称能力を使用するであろう。非国家にも同様に複雑化した兵器と技術が拡散し続ける中で、中国とイランの様な国家は我々の軍事力投射に対抗する為の非対称手段を追求し続けるであろう。それに伴い、接近阻止/領域拒否(A2/AD)でも有効的に作戦を遂行する能力を確実なものとする為に、必要に応じて米軍は投資するであろう。これは統合作戦接近概念の実行、海中能力の維持、新型ステルス爆撃機の開発、ミサイル防衛の向上、そして重大な宇宙基盤能力の弾力性と有効性の拡充する継続的な努力が含まれる。
・Counter Weapons of Mass Destruction
大量破壊兵器への対抗
・Operate Effectively in Cyberspace and Space
サイバー空間と宇宙で有効に作戦遂行
・Maintain a Safe, Secure, and Effective Nuclear Deterrent
安全で確実な、そして有効な核抑止力
It is possible that our deterrence goals can be achieved with a smaller nuclear force, which would reduce the number of nuclear weapons in our inventory as well as their role in U.S. national security strategy.
より少ない核戦力であっても抑止目標達成は可能であり、核兵器の在庫数と米国安全保障戦略での役割を減らす。
・Defend the Homeland and Provide Support to Civil Authorities
本土防衛と文官当局者への支援提供
・Provide a Stabilizing Presence
安定したプレゼンスの提供
However, with reduced resources, thoughtful choices will need to be made regarding the location and frequency of these operations.
しかしながら、削減された予算では、位置と作戦の頻度に関し熟考した選択が必要となる。
・Conduct Stability and Counterinsurgency Operations
安定化及び対ゲリラ作戦の遂行
U.S. forces will nevertheless be ready to conduct limited counterinsurgency and other stability operations if required, operating alongside coalition forces wherever possible. However, U.S. forces will no longer be sized to conduct large-scale, prolonged stability operations.
米軍は、可能であれば多国籍軍とともに、それでも限定的な対ゲリラ及び安定化作戦を必要とあれば実施する準備がある。しかしながら、米軍はもはや大規模で長期の安定化作戦を実施する規模はない。
・Conduct Humanitarian, Disaster Relief, and Other Operations
人道上、災害救援、その他の作戦の遂行
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テロとの戦いの次の項目にアジア太平洋地域を列挙しています。2011年11月に発表されました豪州ダーウィンへの米国海兵隊駐留もその一環であると言えるでしょう。その他には中国とイランを何度も名指ししていることも大きな特徴です。外交的な配慮がなく、極めて大胆な表明と言えるでしょう。欧州に関しましては「ゲーツ国防長官とパネッタ次期国防長官の同盟や予算に関する発言に思うこと」の記事の延長線上にあると言えます。この新たな戦略に対し、英国が早くも憂慮している模様です。
また新型ステルス爆撃機の開発導入にも言及がありますが、これは2018 Bomberとの呼称もあります。
The 2018 Bomber (Northlop Grumman 2008年8月発表資料 PDF)
2012年01月09日(月)追記:新記事執筆「米国の新国防戦力に記載された「新型ステルス爆撃機」とは」
この新国防戦略は概略と概念のみであり、まだ具体論は不明です。今後に僅かながら明らかになっていくと思われます。しかし同盟諸国にも一定の負担を求めていく方針であることが分かるもので、日本も少なからず影響を受けるかもしれません。今からでも防衛費の増額を検討するべきではないでしょうか。
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次の標的はイランかと思いますね。
投稿: キンタ | 2012年1月 7日 (土) 17時58分
キンタ氏
こんばんは。アフガニスタンとイラクから撤退したばかりの米国がイランと全面戦争をするのは困難だと思われます。
むしろ抑止力強化で牽制しつつ包囲し、経済制裁で兵糧責めにし、核武装を諦めさせることを目標にしていると思われます。万が一の場合でも限定的な空爆やサイバー戦により打撃を与える方針ではないでしょうか。もはや長期間に亘り占領するだけの能力は米国自身も述べているようにないのですから。
投稿: アシナガバチ | 2012年1月 7日 (土) 20時38分
キンタ氏
私も米国が全面戦争に踏み切るのは無理だと思います。
理由は大統領選です。
オバマ氏は戦争を終わらせた大統領として選挙戦に臨もうとしています。
この時点でイランと戦端を開くというのは、票を大量に失う可能性があります。
失業率(経済)さえ回復すれば、オバマ氏の再選が濃厚でしょう。
こういう状況ではイランの包囲網を敷くのが精いっぱいでしょう。
もちろん、これには例外があります。
それはイランの方から攻撃してきた場合です。
アメリカ国民は戦時の大統領はあまり換えたがらないですから、リメンバーパールハーバー並に火のつく可能性もあります。
しかし、これはまずないでしょう。イラン国内でそこまで不満が溜まっているとは思えません。
あるとしたら(ホルムズ海峡の封鎖にいらだった)イスラエルの単独での空爆くらいではないでしょうか。
ただイスラエルも(アメリカの)大統領選の結果待ちだろう、と思っています。
投稿: みやとん | 2012年1月 8日 (日) 17時42分
自分も、外科手術みたいな、核施設や海軍艦艇などを狙った攻撃になるのではと思っています。トマホークやディエゴガルシア島からの爆撃機による攻撃になるのかなと。あと、サイバー攻撃ですか。今年は大統領選挙ですから、下手な失敗はできませんからね。イスラエルによるバビロニア作戦みたいな攻撃は、無理があるかなと思っています。
投稿: キンタ | 2012年1月 8日 (日) 21時49分
ホルムズ海峡封鎖なら軍事行動も…米国防長官
http://www.webcitation.org/64Yz8REXS
(2012年1月9日20時48分 読売新聞)
チキンゲームですね・・・。
投稿: アシナガバチ | 2012年1月 9日 (月) 22時08分
この種の話が出る度に、米国が同盟国その他への「応分の負担」を求める姿勢が鮮明となりますね・・・まあ適性な範囲なら仕方ないのかなと思うトコロと・・・あなたに着いては行くけど・・弾避けになって下さいね・・・というのも日本の立派な戦略と思います(つまらない大国主義や見栄は不要です)。
>イラン情勢
一気にきな臭くなって来ました・・・本当にホルムズ海峡が封鎖となれば・・米国も国連安保理で一気に武力措置を提議しそうで・・流石に日本も海自を中心に派遣せざろ得ないでしょう。野田政権の性質からして、護衛隊群と掃海隊群の派遣が驚くべき短期間で行われる可能性があるでしょう。
>バビロン再び
先日、サウジへの最新のF15リリースのニュースが出ましたが、公式には対イランのためと伝えられましたが、あれはイスラエルへの抑えと見ることもできるとは思います。元々米国がサウジにF15を供給したのは、制御の効くアラブ国家に同等の戦闘機を配備してイスラエルとのバランスをとるためという側面があります。
今回はイスラエルがイランに対して航空作戦が簡単に出来ないように間の壁として機能できるよう最新のイーグルを供給した可能性があります。
投稿: エンリステッド | 2012年1月10日 (火) 22時03分
エンリステッド氏
>「つまらない大国主義や見栄は不要です」
私もそう思います。実に果敢な主張が散見される事が時折ありますが、それはわが国の国情や「自衛隊に何が出来て何が出来ないか」を無視した非現実的なものだと考えます。
その一方で今回の米国の新国防戦略はアジア太平洋方面の抑止に重きをおくものですから、日本は直接的な利害関係者となります。
>イラン情勢
まず欧米諸国は当然の事ですがイランの核武装は受け入れられません。従いまして米国はイラン中央銀行と取引のある各国の金融機関に制裁を課す方針ですが、こうなりますとイランは石油輸出が出来ませんのでイラン側が受け入れられないのは当然です(国家の存続に関わる)。従ってホルムズ海峡の封鎖に言及しますが、当然のことですが、国際社会はこれを受け入れられません。
お互い受け入れられない局面になりつつありますが、米側の圧倒的な軍事力であれば排除は容易でしょうし、またイラン側もそれは認識している筈です。イラン側がプライドを捨てて、何処まで譲歩するか(若しくは現状維持か)です。
>サウジアラビア
大変興味深い分析であると思います。
ただイスラエルがイランを空爆する場合はイラクをも領空侵犯しなくてはならず、また距離も長く、困難を伴うのではないかと思います。
投稿: アシナガバチ | 2012年1月12日 (木) 06時09分
>イスラエルによるイラン攻撃
行わないのが普通の国ですが・・・イスラエルは普通じゃありません。
ハードでは空中給油機・ストライクイーグル・バンカーバスターと一通り揃い・・
ソフトでは諜報機関モサドが恐らくイラン国内で核施設に関する情報収集に当たり(敵対国であるシリアでヒズボラ幹部の爆殺事件が起こるトコロ見ると様々な国に浸透して工作をしているとみて間違いない)・・・
また何よりホンの4年前にシリアの核施設を爆撃した位ですから彼等の姿勢はまったく変わっておりません。
投稿: エンリステッド | 2012年1月13日 (金) 22時42分
エンリステッド氏の言うとおりイスラエルは普通の国じゃありません。
ここで問題なのがイランはペルシャであって、アラブ(アラビア)ではないという事なのです。
イラン・イラク戦争があれだけ長引き、しかも、アラブ諸国の支持をある程度までフセインが得られたのもそれが原因でしょう。
もし、イランがホルムズ海峡を封鎖したとすると、アラブ諸国はイスラエルの空爆を許すかもしれません。
イラクの通過も黙認するのではないでしょうか。もちろん口では文句をいうでしょうけれど、やったもん勝ちでしょう。
そんな事になって欲しくはありませんが、そういう危険もあると考えています。
投稿: みやとん | 2012年1月14日 (土) 12時48分
エンリステッド氏、みやとん氏
こんにちは。私もイランの核開発を阻止する為にイスラエルは手段を選ばないと考えます。最近もイランの核科学者が何者かに暗殺されましたね。
イラン核科学者、車に爆弾投げ込まれ死亡
http://www.webcitation.org/64gJzp4Og
(2012年1月11日22時48分 読売新聞)
ただ問題は実際に空爆をどの様に行うかです。
まず地理的な問題があります。イスラエルからイランまで飛行する場合はシリアかヨルダンを超えて、更にイラク上空も横切る必要があります。
何れの国にも領空侵犯を察知されずにイランまでたどり着けるかどうかがまず問題です。ただイラクの防空網が現状どの程度まで復旧しているかはわかりませんが・・・。
更にイランに無事にたどり着いたとしましても、イランは核関連施設を分散している可能性が高いと考えます。そうだとしますとシリアや旧フセイン政権下のイラクの様に一カ所のみの空爆では十分な結果が達成出来ないかもしれません。
これらの制約があるからこそ、何者かによる核科学者の暗殺が続いており、またStuxnetによるサボタージュが行われたのではないでしょうか(サイバー戦の利点は生身の工作員を危険に晒さない、遠く離れた地域も自国内から攻撃が可能)。
投稿: アシナガバチ | 2012年1月14日 (土) 18時04分
横から失礼します
イラクの防空網ですが、現在イラク空軍は現在戦闘用航空機を保有しておらず(F-16の導入計画はありますが)、陸軍も高射部隊が皆無に等しいなど防空用の兵器を全くと言っていいほど有していない模様です
治安作戦の主力となる陸軍や治安部隊などは装備の近代化が進んでいますが、現在のイラクの経済力から考えればそれで手一杯で、高価な空軍の装備まで整備するのはしばらくの間は厳しいかと・・・
湾岸・イラク戦争で破壊されたレーダー・指揮通信システムもあまり復旧できていないのではないでしょうか?
装備・練度共に一流のイスラエル空軍相手にイラク軍単独での防空作戦はほぼ不可能だと考えます
仮に発見できたとしても、阻止する手段が無いわけですから
アシナガバチ氏の仰る通り、空爆でどれほどの効果が期待できるかは怪しい気もしますが、「空爆」というオプション自体は十分実行可能だと思います
投稿: 2S19 | 2012年1月14日 (土) 18時55分
2S19氏
こんばんは。貴重な情報のご提供ありがとうございます。
そうだとしますとイスラエルとしましてはイラクの防空網が復旧する前に作戦を実施することが成功率を高めますね。ただイラクにF-16が納入されて、更に作戦遂行能力を獲得するには数年は必要でしょうから、まだ暫くチャンスはあるということも言えますね。
投稿: アシナガバチ | 2012年1月16日 (月) 01時12分