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2012年3月14日 (水)

新多用途ヘリコプター(UH-X)の開発企業が川崎重工に決定か

 陸上自衛隊の次期多用途ヘリコプター(UHX)の開発企業を防衛省が川崎重工業と決めた旨が東京新聞により報じられました。

「多用途ヘリ 川重に決定 防衛省」(2012年3月7日 東京新聞 朝刊)

2012年03月13日(火)現在では防衛省より公式なアナウンスはありません。その一方で以前より同様の報道はありました。2010年08月20日14:16:12に航空新聞社WINGがTwitterにて「防衛省はこのほど陸上自衛隊の次期多用途ヘリコプターについて、国内開発する方針を固めた。2011年度の概算要求に盛り込むと見られる」と報じています。実際に「我が国の防衛と予算 平成23年度予算の概要」(PDF)の第10頁、第28頁にUH-1Jの後継と後継となる新多用途ヘリコプターの開発に着手する旨に言及がありました。この東京新聞の記事は「近く契約することが分かった」としていますので、事実であればやがて公式発表があるものと思われます。また日経新聞や日刊工業新聞にもやがて記事が掲載されるでしょう。

 「新多用途ヘリコプター」に関しましては防衛省の「平成22年度 事前の事業評価 評価書一覧)」に「新多用途ヘリコプター」に関する項目があり、その中の本文(PDF)に詳細が記述されています。要点は下記の4点です。

1.現有装備のUH-1Jは、エンジンが単発であるなど、超低空域・洋上での安全性が不十分であり、かつ、島嶼間を往復するための航続距離も不足している。

2.UH-60はUH-1Jの取得経費の実績と比較すると高価であることから、UH-60を必要な数量取得することは不適当

3.現有機と同等以下の価格で、現有機より高性能(現有機以上の搭載能力を確保した上で、高温・高標高領域での超低空飛行及び長距離洋上飛行での安全性、速度性能、航続性能等の大幅な向上)な装備を取得する

4.所要経費は約46億円(平成23年度概算要求額。後年度負担額を含む。総経費約284億円)で平成23年度から平成27年度にかけて試作を実施し、平成24年度から平成29年度にかけて試験を実施する予定

(下の画像は「新多用途ヘリコプター(参考-PDF)」より クリックで拡大)Photo
具体像はこれだけでは分かりません。しかしながらこれらの資料からはUH-1Jのスペックを凌駕する仕様を目指す(現有機以上の搭載能力を確保した上で、高温・高標高領域での超低空飛行及び長距離洋上飛行での安全性、速度性能、航続性能等の大幅な向上)としていますので、陸上自衛隊の公式ホームページに掲載されていますUH-1Jの性能の一部を下記に抜粋します。

乗員 2人+11人
エンジン出力 1,134SHP(連続)×1
最大全備重量 4,763kg
巡航速度 216km/h
航続距離 約480km
実用上昇限度 5,334m(最大全備重量時)

これらの数値を凌駕する上で最も重要となるのはエンジンです。新多用途ヘリコプターをOH-1ベースとするのであれば、OH-1のエンジンであるTS1の改良拡大型であるXTS2エンジンを搭載することになるでしょう。XTS2は研究開発が平成18年度よりTRDIにて行われています。

「ヘリコプター用エンジン(TS1出力増大型)(XTS2)の研究概要」(PDF)

(下の画像二件は同資料より クリックで画像拡大)Xts2_4

Xts2_6

 この資料からTS1の共通部品とスケールアップ部品で85%を占めることが分かります。また940KWでありますから約1300shp弱と換算が可能です。これは前述のUH-1Jの1,134SHPを上回っています。またUH-1JとAH-1SはT53-K-703エンジンです。即ちこのことはエンジン面ではAH-1Sレベルと同等以上の対戦車ヘリコプター/戦闘ヘリコプターを日本が開発可能であることを物語っています。AH-64DJPの調達が実質的に破たんした現状では、厳しい財政事情も踏まえた上で、新たな戦闘ヘリ(AH-X)の調達も考える必要があり、今回の決定はその良い機会となるでしょう。

2012年04月11日(水)追記
新多用途ヘリコプター(UH-X)を受注(2012年03月28日 川崎重工プレスリリース)

「陸自の新多用途ヘリ 川崎重工業が受注 OH―1を母機に開発」(2012年04月05日 朝雲新聞)
「UHXは防衛省が総経費279億円を投入して27年度までに試作、29年度まで技術・実用試験を実施、その後、量産」
「技本によるとUHXは重量約5トンで、最高速度140ノット(約260キロ)以上、行動半径230キロ以上」

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軍事」カテゴリの記事

コメント

久しぶりにコメントさせて頂きます

国産機に頑張って欲しい自分としては川重に決定してくれて嬉しかったですね。
UH-1とAH-1の関係のように、OH-1のコンポーネントを流用するようですし。

富士に決まっていたら素直にUH-1Yをライセンス生産した方が良いと思ってました。

XTS-2はなかなかの物ですね。
さすがにAH-64DのT700にはかないませんが、A129のロールスロイス Gemを超えて、ティーガーのMTR390とほぼ同等ですからね。

国産エンジンもここまできたんだなと感慨深いです。


性能面では特に不安な部分は内容に思えますが問題は価格がいくら位になるかだと思います。
UH-1後継となれば数をそろえる事が必要だと思うので、ユニットコスト・運用コスト共にどれだけ抑えられるかが重要ではないでしょうか。


これが成功すればAOH-1?への道も見えてくるのかなと
ロケットとガンとATM-6搭載で・・・

サル沢氏
お久しぶりです。コメント有難うございます。
OH-1自体が非常に素晴しいヘリコプターであると私は考えています。実際に見たことのある人なら分かると思いますが、音も非常に静かです。実績のある既存の技術を改良して最低限のリスクで国産ヘリを順調に開発出来ると良いですね。あとは価格だけですよね。

UH-60の後続も兼ねるとしても、現在の汎用ヘリの保有数と同じ機数を揃えられのか不安です・・・。低価格を実現して現在の保有数から倍増するくらい調達してほしいです。戦車を減らして動的防衛力の話はどこへ向かうのでしょうか・・・。

>戦車

全体の予算が増えていないのですから、機動力を上げようと思えば正面装備を削るぐらいしか方法がないということでしょう
「軽い部隊ほど足が長い」は軍事戦略の第一原則です
その意味では、戦車定数の削減はアンバーさんが懸念されるUHX調達数に対してはむしろ好材料かと

OH-1の後継に攻撃能力を付与する試験は随分前から話題がありましたけども、この主旨は観測機に攻撃能力を付与出来るようにしてマルチロール化をはかるということなんですかね?

それとも、ベース機体を統一することで、F-35のように使用目的の異なる観測機のロットと攻撃機のロットを分けて製造してもコストが下がるのようにするのが狙いなんでしょうかね?

これまでの報道では、機種を減らしてOH-1の後継に統一することでコストを減らすという点が目立ちますので一見すると後者のように見えてしまいます。
前者なら、加えて調達数が減っても作戦のバリエーションを減らさずに済みますよね。

CPUの情報処理能力が対数的に増加する一方で、コストが下がってきている今日、例えばマルチロール化がはかられることになれば、(まぁ、そうじゃないにしてもw)OH-1の後継のアビオニクスがどの程度の能力を付与されるのか大変興味深いですね。
車両よりも俊敏に展開出来るヘリが、偵察任務をこなしながらデータリンクの集積所として機能するなら、高層ビル群や森林や山間部といったGPSが乱れ易い地上の戦況を素早く精確(目標をピンポイントで周囲に知らせるという意味で)に把握出来るようになりますし。

Ah-1zとUH-1Yが一部部品の共通(確か、テイルローター付近と排気口)によってコストダウンをしている例があるので、新型ヘリとOH-1にもその様なことを期待したいです。
 
記事をみると、新型ヘリは双発エンジンになりそうですが、そうすると海自のヘリにも使えるのではないかと考えてしまいます。新型ヘリを各自衛隊に合った機種に作りコストダウンする…なんて事、可能ですかね?
出来れば、警察、海保、消防など日本の公的機関でも使われるヘリになって欲しいです。

アンバー氏
こんにちは。初めまして。防衛省はUH-60がUH-1とは運用が異なるとしており、UH-XがUH-60の後継も兼ねるとは考えていないと解釈出来ます。
戦車はむしろ離島防衛には不向きな場合もあるかもしれません。しかし私は戦車が陸戦の王者であると確信しており、定数削減に関しましては消極的です。

名無し氏
問題はUH-Xの単価ですね。数が揃えられるだけの単価に抑えられれば良いのですが。UH-1より安価でそれでいてUH-1Jより高性能であることを要求していますが、メーカーにとり矛盾した非常にハードル的に高い要求ではあります。

sub.氏
大変お久しぶりです。
後者であると私は解釈しています。戦闘ヘリコプター、汎用ヘリコプター、偵察ヘリコプターで共通部材を可能な限り増やし、量産化によりコストを下げるという構想を描いているのではないかと分析します。戦闘ヘリコプターには是非とも高度なデータリンクを付与して欲しいものですね。

フラケ氏
初めまして。今後とも宜しくお願い申し上げます。
UH-Xは確かに双発を目指していますが、スペック的にはUH-60とUH-1の中間的なものになるのではないかと考えています。もしそうだとしますとSHの後継とはなるのは難しいと思われるのです。ただ是非とも警察、海保、消防にも使われるヘリコプターとなって欲しいですね。それが実現出来ますと民間型や海外輸出型も視野に入ります。

実は報道が行われるだいぶ前に川崎重工の工場内で開発決定のアナウンスが流れてましたよ 恐らく決定自体は結構前にされていたんでしょうね

名無し様
情報提供有難うございます。内々定は関係者に伝えられていたことは間違いないでしょうね。

おばんでやす

今度のUHXが、OH1の拡張発展型―なんて、動力はど~すんの? と、思ってたら、ちゃんと目処が立ってたのね。先ずは安心しました(^_^;)
対地攻撃に兵員輸送、欲張ってハインドみたいにならなきゃいいですが(^_^;) まぁ、予算というかコストというか―で、有り得んでしょうが(-.-;) 何気にハインドもベストセラーですなぁ(^O^)
ローコストハイスペック…我が国の技術力が試されてますなぁ。
動的防衛力!? そんなモン防衛予算を削る為の言葉遊びだよ(-"-;)

アシナガバチさん、戦車の定数削減に消極的なのは勿論ですが、それ以上に、対人地雷やクラスター爆弾の使用を禁止した条約を破棄出来ないモンですかねぇ(-"-;) 海岸線が長い我が国の防衛上、面を制圧する兵器は必須です。非人道的兵器云々言って、我が国の防衛を縛った政治家は万死に値しますなぁ。
我が国を侵略して来る軍隊のどの辺が人道的? ってツッコミたいですなぁ(-"-;) ま、社共には人民解放軍は、人道的軍隊らしい?

土方氏
>ハインド化
あくまで汎用ヘリですし、武装を搭載しますと最大ペイロードや航続距離が減少しますし、価格の高騰も招きますのでそれは行わないと考えて良いと思います。

>対人地雷、クラスター
その条約を締結したのは自民党政権時代なのですが・・・。(小渕内閣、安倍内閣)

初めまして
UH-X ですが、個人的にはBK117 C-2をベースにワイド化・ロング化した上で、OH-1系の要素技術を取り込んでいって欲しいな、と。
BK117 C-2はUH-72Aのベース機体だし、全くの0からこのクラスの機体を開発するより楽かなと。XTS2の双発になれば出力比で
7割UPになりますし、難易度はそんなに高くないと思います。
問題はお金と時間ですかねw

二年ほど前某所で聞いた話では、OH-1→UH→AOHという構想があるらしく、今回のUH-XはAOH-1への布石なのかなと思っています
OH-1はただの観測ヘリで終わらせるには惜しい機体ですし

UH-1/UH-XとUH-60は同じ多用途ヘリでもグレードが違う(UH-60JAはUHというよりMHに近い)ので、UH-Xの実用化後も並行して調達・運用されるんではないかと・・・
場合によってはCRFなどに集中配備される可能性もあるかなと(AH-64Dのときにそんな話があったそうです)

ssk氏
初めまして。今後も宜しくお願い申し上げます。防衛省や川崎重工から具体的な要求事項や仕様が発表されていませんが、要求仕様を満たせるのであれば既存の機体の発展型であれば低リスクで開発が可能であり、面白いアイデアかもしれませんね。

2S19氏
もともとOH-1、UH-X, A(O)Hと共有の技術を使用する構想がAviation Weekでも何度か報じられていましたね。私もAH-64DJPとUH-60はCRFで集中運用するしかないと考えています。

公式情報が出ました
http://www.khi.co.jp/news/detail/20120328_2.html
この流れだとAH-1後継も構想通りKHIが受注しそうですねえ・・・

AH-64Dは中期防で一応部隊として運用できる最低限の機数は確保できそうなので、早かれ遅かれUH-60とともにCRFに移管されるんではないかと思います
12Bの空中機動旅団化も結果的には中途半端に終わってしまいましたし、ヘリの機数が増えないようならCH-47、UH-60、AH-64DはCRFに集約して「使える」部隊にするべきかなと
12Bは戦車部隊を復活させるという話も聞きますし

2S19氏
>公式情報
イメージ図も発表されていますね。開発が進展するにつれて、より具体的な仕様が公開されてくると思われます。

>12Bは戦車部隊を復活させる
興味深い情報を大変有り難うございます。今後とも宜しくお願い申し上げます。

最近、自衛隊内でAH-Xを13機のアパッチを除きすべて純減するのではないかという噂が聞かれるようになっているのですが、どう思います? 出所不明の噂にすぎませんがあり得ない話ではないと思うのですがどうでしょう?

あとザ掲示板のころから定期的に見てますけどよくこんな内容の濃い文を毎回書けますね

イーグル氏
お早うございます。恐らくそれは「戦闘ヘリ不要論」に関連していると思います。戦闘ヘリは単価が戦闘機程もしますが、イラク戦争では防空コンプレックスにより大損害を受けました。そういった経緯から一部により「戦闘ヘリ不要論」が強く主張されているのはイーグル氏も熟知されていると思います。
内容が濃いとはとんでもございません。まだまだ修行の身です。

F-Xの国産化が(当面)望むべくもないので、UH-Xでせめて憂さを晴らせればよいのですが。
ところで、世界的にはX2やC3のような高速ヘリの開発が行われていますが、V-22なんかより運用面やコスパも優れているように思えます。
このUH-Xシリーズの中でそのような実験機・実証機が出てくると面白いと思います。可能性は無いのでしょうか?

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