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2013年2月 6日 (水)

F-35Aは防衛省の要求性能を満たさないか、製造関与が武器輸出三原則に抵触するか

1.はじめに

 今年に入りまして日本がF-35Aを導入する事に関しまして二つの大きな論点が浮上しました。日本に納入される最初の四機のF-35Aの性能が防衛省の要求を満たさないのではないかとの報道と、日本国内で製造したF-35Aの部品を海外に輸出することは武器輸出三原則に抵触するのではないかとの指摘を受けたものです。今回はその論点・経緯・政府の対応を論じたいと思います。

2.日本に納入される最初の四機のF-35Aの性能は防衛省の要求を満たさないか

(1)産経新聞等の報道とこの問題に関する識者の見解
一つは初期納入の四機が防衛省の要求性能を満たさないとされる点です。

「F35、実戦配備不可能に 初期納入4機 防衛省性能満たさず」(2013年1月27日(日)7時55分配信 産経新聞)

産経新聞のこの記事の主旨は下記の三点です。

① F35Aが搭載予定の最新ソフトウエア「ブロック3」には、最大高度5万フィート(約1万5千メートル)で短射程空対空ミサイルなどを装備できる最終型のF型と、短射程空対空ミサイルが搭載できないI型の2種類がある。

② 国防総省試験評価局(DOT&E)が1月中旬に米議会に報告した12年の年次報告書によると、日本へ引き渡す機種に搭載されるソフトウエアは、「ブロック3I」である。

③ それに対して日本の防衛省が要求していたのはブロック3のF型である。

上記のBlock毎の仕様の差を非常に分かりやすく図解したものが2012年1月3日のFlightglobalの記事に掲載されています。(クリックで画像拡大、配布自由)

F35_master_plan

 灰色に着色された部分が2B/3Iです。この表からは確かにI型が短射程空対空ミサイルを搭載できないことが判ります。しかし中距離空対空ミサイルであるAIM-120CやJDAM類は搭載が可能です。産経新聞は「実戦配備不可能」と報じていますが、この「実戦配備」の定義をどの様に解するかにより、産経新聞の報道に対する評価が分かれる一つのポイントとなるでしょう。

「F-35戦闘機がアラート任務に就く時期とブロック3ソフトウェアの書き換え」(2013年02月01日 JSF様執筆 週刊オブイェクト)

「F-35の短射程ミサイル搭載等について」(2013年2月 3日 (日) 数多久遠様執筆 数多久遠のブログ シミュレーション小説と防衛雑感)

(2)事実の概要:日本に引き渡されるロットとブロックはどれか
 国防総省試験評価局(DOT&E)が1月中旬に米議会に報告した12年の年次報告書の第34頁(F-35に関する部分~PDF第8/18枚目)のによりますと3iに該当するロットはLot6からLot8であることが分かります。そこには下記のように記述されていました。

-------------------------------------------------------------------
Block 3i. Block 3i is Block 2A capability re-hosted on an improved integrated core processor for Lots 6 through 8.
Block 3i. Block 3iとは第6ロットから第8ロットまででBlock 2A能力の改良された統合型コアプロセッサをリホストしたものである。

(引用及び翻訳終了)
-------------------------------------------------------------------
そしてこの下の画像はLockheed Martin社が2011年度に公表・配布しているF-35の開発スケジュールです(クリックで画像拡大、配布自由)。

F35_master_schedule

 日本がF-35Aの導入の決定をしたのは2011年12月13日(火)で、平成24年度防衛予算で4機のF-35Aの導入予算が計上されました。このことから上の表と対比しますと日本が導入するのはLRIP7~LRIP8であり、即ちBlock 3iであることは間違いがありません。

 因みにF-35Aは平成29年に青森県の三沢基地に配備する方針を防衛省が固めました。

「F35 青森・三沢基地に配備へ」(2013年1月29日 18時9分 NHK)

(3)日本政府の対応
 時事通信の2013年02月02日15:49の記事「F35、短距離ミサイル装備不能=17年3月末までに日本納入の4機」によりますと、「4機は納入後、日本にすぐに配備されず、訓練のため米国に1年程度、とどまる見通し。さらに、部隊としての運用に必要な機数の調達を終え、4機を含むF35が日本で実戦配備に就くのは18年以降になる。この間にソフトウエアをブロック3Fに書き換えれば事実上、運用に支障は出ないため、政府は、無償で書き換えができることを米国との間で確認したい」と報じました。

3.日本国内で製造したF-35Aの部品を海外に輸出することは武器輸出三原則に抵触するか

(1)産経新聞の報道と問題の概要
 もう一つの問題は武器輸出3原則の規定の関係で、F-35の国内部品の製造が難しくなっているのではないかとの報道でした。

「F35部品製造に暗雲…武器輸出三原則が障壁、イスラエル購入計画で」(2013年1月29日(火)7時55分配信 産経新聞)

 この産経新聞の報道内容の趣旨は下記の三点です。

① 日米両政府は日本国内に部品製造と修理の拠点を設ける方向で検討中であるが、日本の関連企業が在日米軍や他国軍の機体を修理することも想定しており、日本はF35の「部品製造・修理拠点」となっている。

② イスラエルもF35を購入する契約を締結しているが、イスラエルはイスラム原理主義組織ハマスや核開発を進めるイランを攻撃する可能性がある。

③ 日本の武器輸出三原則では「国際紛争の当事国かその恐れのある国」への輸出を禁じており、イスラエルに国内で製造・修理する部品を提供することは「武器輸出三原則」に抵触する虞がある。

 この問題は平成25年1月29日(10時38分~10時42分)の防衛大臣記者会見に於ける質疑応答でも取り上げられていました。

-------------------------------------------------------------------
Q:一部報道で、F-35に関して、武器輸出3原則の規定の関係で、国内部品の製造が難しくなっているという報道がありましたが、事実関係を確認させて下さい。

A:これは、今回F-35、例えばイスラエルのような国にも、やはり日本で製造した部品が、明確に日本の部品がイスラエルに行くF-35に組み入れられるか分かりませんが、そういう可能性があるかもしれないという御指摘は、私どもは従前から知っております。今、武器輸出3原則と、内容としてどのような精査ができるか、整理をしているところであります。

Q:国内部品製造が難しくなっていくという段階には至っていないという。

A:そこまでには至っていませんが、私どもとしては武器輸出3原則とどのような整理ができるかということ、これをしっかり精査していくということだと思っています。国内で生産できないということになりますと、生産拠点がアジアではもしかしたら韓国に移るかもしれない、そういう一部報道も出ておりますので、私どもとしては、しっかり従来の方針通りできるように精査をしていきたいと思っています。

Q:F-35の関係なのですけれども、武器輸出3原則を新たに官房長官談話だとか、その対応としてはどういう対応をするのかというのは検討されていらっしゃるのでしょうか。

A:いずれにしても、今、どのような形で整理できるか、検討する時点だと思っています。

(引用終了)
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(2)日本の関連企業がF-35Aの部品輸出や他国軍の機体を修理することに関する今までの経緯

 日本の関連企業が在日米軍や他国軍の機体を修理することも想定しており、日本はF35の「部品製造・修理拠点」となっていることを私は2011年11月19日(金)の日本経済新聞の記事『空自FXでロッキード社長「日本企業の関与拡大も」』で初めて知りました。その記事によりますと「F35の日本での組み立てが始まれば、米、イタリアに次ぐ3つ目の組み立て拠点となる」、「武器輸出三原則が緩和された場合、日本で組み立てられたF35が他国に納入されることもあり得る」とLockheed Martin社のChristopher E. Kubasik社長(肩書きは当時であり、昨年11月に女性問題で事実上解任となった)が日経新聞のインタビューで答えたとのことです。その旨を当ブログでも執筆したことがありました。

「Lockheed Martin社長インタビューに思うこと」2011年11月20日 (日)

 そしてこの続報が2012年10月13日0:30の日経新聞の報道「米ロッキード、日本で「F35」修理へ 三菱重工のライン活用」です。この記事によりますとLockheed Martin社が「在日米軍向けの修理・維持整備に関しても」、「機体を分解しての修理・整備で、三菱重工業の最終組み立てラインを活用する計画。東アジア地域の米軍だけでも250機程度のF35が配備されるとみられ、国内防衛産業への波及効果」があり、「一部部品のライセンス国産が始まれば、日本企業が製造した部品などを供給してもらうことも視野に」あり、「アジア地域に展開する米軍機の修理・維持整備にも日本がかかわることになれば、部品製造や実際の整備作業にかかわる国内の防衛産業の仕事も大きく増える。」としています。この件に関しましても当ブログで記事を以前に執筆しました。

「JA2012国際航空宇宙展に於ける各メーカー表明事項-後半-国内メーカー動向編」(2012年10月27日 (土))

 そして実際に「我が国の防衛と予算-平成25年度予算案の概要」(PDF:3.3MB)の第8頁、PDFファイルの第11枚目には国内企業参画に伴う初度費として830億円が計上されています。

(3)武器輸出三原則に照らし合わせた場合

 「防衛装備品等の海外移転に関する基準」についての内閣官房長官談話 ( 平成23年12月27日 )によりますと、防衛装備品等の海外への移転が可能となるのは①平和貢献・国際協力に伴う案件、②防衛装備品等の国際共同開発・生産に関する案件です。①や②の場合であっても目的外の使用や第三国移転の場合は我が国の事前の同意が必要としています。また③上記①と②のケース以外では「国際紛争等を助長することを回避するという平和国家としての基本理念」に基づき慎重に対処するとしているのです。

 F-35Aの修理・維持整備や部品製造と輸出を武器輸出三原則に当てはめた場合は①は間違いなく該当しませんし、②のケースに関しましては日本は共同開発に途中から参加したとは言い難いと思われますが、生産は唯一該当すると言えるかもしれません。しかしその場合であっても「事前の同意」や③「国際紛争等を助長することを回避する」との基本理念にイスラエルはそぐわない可能性があるとは言えます。

(4)日本政府の対応と私の見解

 しかしここにきまして、日本国内で製造したF-35Aの部品の輸出を、武器輸出三原則の例外措置として認める方針を日本政府が固めた旨を複数のマスメディアが報じました。

「F35、三原則例外に=部品提供で談話発表へ-政府」(2013年02月04日(月)10:00 時事通信)

「F35、三原則「例外」容認へ 紛争地輸出の恐れ」(2013年2月4日(月)10時28分配信 朝日新聞)

 もしF-35Aを三原則の例外とするのであれば、合理的な理由/根拠または例外とするケースの明確な基準は何であるか政府は説明が求められることとなるでしょう。

 私個人としてはF-35Aを例外とすることは賛成です。それは前述の防衛大臣の記者会見でもありましたが「国内で生産できないということになりますと、生産拠点がアジアではもしかしたら韓国に移る」可能性があった為です。そうなってしまいますと、F-35Aを国内生産するメリットが半減すると言ってもいい状態となります。

5.さいごに

 フィリピンが「先進国から戦闘機を導入する」との報道が以前よりあり、その件に関しまして当ブログにて執筆しました。

「フィリピンが日本から巡視船を10隻、先進国から新戦闘機導入検討か」(2012年5月20日 (日))

 フィリピンの新戦闘機は韓国のT-50練習機の発展型であるF/A-50にほぼ確定した模様です。

"KAI, Philippines to enter final negotiations for 12 FA-50s"(「KAI社とフィリピンが12機のFA-50の最終交渉に入る」)(2013年1月31日 04:36 Flightglobal)にその旨が報じられていますので、下記に一部抜粋と翻訳を行います。

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A source close to the deal tells Flightglobal that negotiations will commence in February. The source expects negotiations to last for six months. If discussions are successful, Manila could receive its first FA-50s in 2015.
取引に近い情報提供者がFlightglobal紙に述べたところよると、交渉は2月に始まる。その情報提供者は交渉が6ヶ月間に亘ると予測する。交渉が成功した場合は、フィリピンはFA-50の第一陣を2015年に受領するであろう。

The source's comments came after Philippine media reports quoted presidential spokesman Edwin Lacierda as saying that Manila will move forward with negotiations for the 12 aircraft.
大統領府のEdwin Lacierda報道官が同機種12機の交渉をフィリピン政府が推進する旨をフィリピンのメディア報道が引用した後に情報提供者はコメントした。

Lacierda reportedly said that the aircraft will be used "primarily for training, interdiction and disaster response".
Lacierda氏は同機種が基本的に練習機、攻撃機、災害対応に使用されると述べたと報じられた。

Seoul's FA-50s will have the Link 16 tactical data link, as well as an Elta Systems EL/M-2032 pulse doppler radar.
韓国のFA-50はEltaシステムズEL/M-2032パルスドップラーレーダーと同様にLink 16戦術データリンクを有する。

The FA-50 also has a radar warning receiver and a night vision imaging system. It is capable of carrying 4,500kg (9,920lb) of weapons, including the Boeing Joint Direct Attack Munition and Textron CBU-97 Sensor Fused Weapon. The FA-50 also has a 20mm cannon and can carry air-to-air missiles.
FA-50はレーダ探知機と暗視画像システムも装備している。同機種はボーイング社のJDAMやTextron社のCBU-97センサー信管兵器を含む4,500kg(9,920lb)の兵装を搭載することが可能である。FA-50は20mm機関砲も有し、空対空ミサイルも装備が可能である。

(引用及び翻訳終了)
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 韓国は世界各国に戦闘機を輸出しており、一定の制限は必要ですが、日本もその商機を逃すべきではないと言えるでしょう。F-35の国内製造は日本が武器輸出を再開する上で第一歩となると思います。

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コメント

私も色々調べてて3iになるって話を聞いたときにはホッとしました。
以前の記事では、リホスト前の機体を渡されるのではないかとビクビクしてましたがw

機体強度の増強で機体重量が増した分を、非常時の生存性を向上させるような装置を取っ払って軽量化するなんて話も出てるんですが、今後もロット間でのハード変更はあるでしょうから、現段階のF-35が未熟であることには変わりないのでしょうけども。。。

後は、日本でのF-35用のミサイル運用について誰も何も言わないので、これも武器三原則みたいになし崩しで輸入されるんですかね。

FA-50は、米の手が借りられるアジア版グリペンみたいな感じでしょうから、戦闘機を保有していない/保有数の少ない国が手を出しやすい機体かと思います。
米から直接買うとどこかの国が文句を言うので、名目上も買われやすい条件はそろっていると言えますね。
日本人が(多分ほかの国も)もつような偏見無しで見れば、パフォーマンスそのものも、コストパフォーマンスを採っても、グリペンより良い機体のように思います。

失礼、パフォーマンスそのものがグリペンより良い機体というのはちょっと言いすぎですね。

>F-35のミサイル
AMRAAMに加えておそらくはSRAAM(AIM-9XかASRAAMでしょうか?さすがにIRIS-Tは無いかな?)も買わざるを得ませんしね
しかもGUNも空自戦闘機初の25ミリです(一応陸のRCVが搭載しているKBAと同規格ですがこっちもイレギュラーな存在ですし・・・)

兵站面の負担は小さくない気がするんですが・・・
個人的にはこっちのほうが(運用に影響でないか)心配です


余談ですが、スパホが有力候補だった理由の一つに「スパローとサイドワインダーがそのまま使える」があったそうです・・・

sub.様
>「非常時の生存性を向上させるような装置を取っ払って」
復活の話があり、未だに確定ではない模様です。

>FA-50
韓国のT-50はLockheed Martin社との共同プロジェクトですから、米の理解も得やすいと思います。
http://www.lockheedmartin.com/us/products/t50.html

sub.様、2S19様
>AAM
AAM-4が運用可能な改修されたF-15はAMRAAMも運用可能な模様です(その逆は不可) 。
そもそもAMRAAMは導入しないとの確約によりAAM-4の予算を確保した経緯がありますので、どう理論構成するのか興味深く見守っています。

産経はこの種の誤報の多さは常識ですから。
導入=実戦配備ではないのは常識なんですがね。

キンタ様
>「導入=実戦配備ではない」
全くその通りだと思いますが、その一方で「実戦配備」とは何か、その時期に支障を来さないかをしっかりと見守ることは大事ではありますね。

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