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2013年3月31日 (日)

中国国営テレビ「中国がロシアから戦闘機と潜水艦購入」報道の怪

Vladimir Putin and Xi Jinping made press statements following the talks.

(上の写真はクレムリン公式ホームページより、2013年3月22日中露首脳会談の写真を公式リンクより埋め込み)

1.問題の報道
既に各報道でご存じのことと思いますが、「スホイ35」24機と、「ラーダ型」潜水艦4隻を中国がロシアから購入する契約を中露間で交わしたと、中国国営の中国中央テレビが報じました。

「中国がロシアから戦闘機と潜水艦購入」(2013年3月25日 16時34分 NHK)
「契約は今月22日から行われた習近平国家主席のロシア訪問前に交わされました。」、「契約金額はおよそ30億ドル(日本円にして2800億円余り)と推定されていて、中国中央テレビによりますと、ロシアから購入する装備の規模としては、過去10年で最大だということです。」 、「地対空ミサイルや空中給油機などの技術協力でも、中ロの間で近く合意する見通しだということです。」

 2013年3月25日(月)のDefense Newsの記事"China To Buy Russian Fighters, Subs(中国がロシア製戦闘機と潜水艦を購入へ)"前述のNHKの報道とほぼ同じ内容で報じています。しかしより詳しい記述がありますので、その部分を下記に抜粋し翻訳します。
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Two of the submarines will be built in Russia, with the other two to be built in China.
潜水艦2隻はロシアで建造され、残り2隻は中国で建造される。

China and Russia are expected to cooperate further in developing military technology, the report said, including that for S-400 long-range anti-aircraft missiles, 117S large thrust engines, Il-476 large transport aircraft and Il-78 aerial tankers.
中国とロシアは軍事技術の開発で更なる協力が予想され、S-400長距離対空ミサイル、117S高排出エンジン、IL-476大型輸送機、そしてIl-78空中給油機を含む。

(引用及び翻訳終了)
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 中国国営の中国中央テレビや、それを引用するかたちで人民日報も伝えており、中国政府の公式発表と言えるでしょう。

 Su-35のロシアから中国への輸出に関する報道は以前から何度も浮かんでは消えを繰り返しており、以前も当ブログで執筆したことがありました。

「ロシア Su-35の対中輸出を検討へ」2010年11月19日 (金)

 しかも「ラーダ型」潜水艦4隻のうち2隻を中国が建造するとの報道が事実であれば、それは将来的に中国の潜水艦建造技術の向上に繋がるものであり、わが国を含む周辺諸国にとり大きな脅威となり得ると言わざるを得ません。

B585_sanktpeterburg_in_2010
(上の写真はWikipediaよりラーダ型潜水艦 クリックで写真拡大 Морозов Л.Н.氏撮影)

2.中国による報道をロシア側は否定

 しかしこの中国側の報道はロシア側の報道により否定されました。この否定に関する報道もDefense Newsに掲載されています。下は2013年3月25日(月)に掲載されました"Russia: No Deal on Sale of Fighters, Subs to China(ロシア:戦闘機、潜水艦の中国への販売に関し取引はなし)"の一部抜粋と翻訳です。

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Russia is denying Chinese media claims that Moscow and Beijing have signed agreements to sell Russian-made arms and military technology to China, including 24 Su-35 multirole fighter jets and four Amur-class diesel submarines.
24機のSu-35マルチロール戦闘機と4隻のアムール級ディーゼル潜水艦を含むロシア製兵器と軍事技術を中国に売却する合意に、ロシア政府と中国政府が署名したとの中国側の報道をロシアは否定している。

During a recent visit by Chinese President Xi Jinping to Moscow from Friday to Sunday, no discussions took place regarding "military-technical cooperation" issues, the ITAR-TASS news agency reported Monday.
金曜日から日曜日までの習近平中国国家主席による最近のモスクワ訪問の間に、軍事技術協力問題に関する議論はなかったとイタルタス通信社が月曜日に報じた。

"The Kremlin is officially denying even discussing arms trade during Xi's visit," said Vasiliy Kashin, a China military specialist at the Moscow-based Centre for Analysis of Strategies and Technologies (CAST)."In Russia-China relations, specific arms trade contracts are almost never discussed by the top leaders, just the general approaches."
「習主席訪問の間に武器輸出を議論したことすらクレムリンは公式に否定している。」とモスクワにある戦略技術分析センター(CAST)の中国軍事専門家のVasiliy Kashin氏は述べた。「中露間では、首脳間で特定の武器取引契約が議論されることはまずなく、一般的な段取りだけである。」

China intentionally violated intellectual property right (IPR) agreements when it copied and manufactured Russia's Su-27 fighter as the J-11B, according to Russia.
ロシアによると、ロシアのSu-27戦闘機をJ-11Bとして複製し製造した時に、中国は故意に知的財産権(IPR)合意に違反した。

There are strong suspicions China will procure the technological know-how of the Su-35 and Amur and simply produce an indigenous version.
中国がSu-35とアムールの技術ノウハウを発注し単純に海賊版を製造する強い不信感がある。

There also are concerns China wants access to the Su-35's Saturn AL-117S engine, which is outfitted on the T-50, a prototype of Russia's fifth-generation Sukhoi PAK FA stealth fighter.
またロシア第五世代スホイPAK FAステルス戦闘機のプロトタイプであるT-50にも搭載されているSu-35のSaturn AL-117Sエンジンへのアクセスを中国が欲しがっている懸念もある。

(引用及び翻訳終了)
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 イタルタス通信社はロシアの国営通信であり、そのイタルタス通信社がこの中国側の報道を否定したことは少なくとも首脳会談で議論をしたという認識はロシア側にはないと言えます。

3.日本の動き
 ところが、この否定と矛盾する動きがその一方であります。日本の小野寺防衛大臣とロシアのアファナシエフ駐日大使との会談がそれです。

その会談の予定は防衛省の公式ホームページでも確認することが出来ます。

「駐日ロシア連邦特命全権大使の当省訪問について」(平成25年3月25日 防衛省)
1 訪問者 駐日ロシア連邦特命全権大使 アファナシエフ, エヴゲーニー・ウラジミロヴィッチ 閣下
2 訪問日時及び訪問先 平成25年3月26日(火)15:20- 大臣

「防衛相 中国の戦闘機購入を懸念」(2013年3月26日 20時51分)
「小野寺大臣は中国がロシアから新型の戦闘機と潜水艦を購入する契約を交わしたことが明らかになったことを取り上げ、「中国はこの10年で、国防費が4倍近くに増えており、日本を含めた周辺諸国は心配している。契約については日本としても注視している」と述べ、懸念を伝えました。これに対し、アファナシエフ大使は「中国との防衛協力は従来から行っており、国際ルールに基づいている」と述べました。」

4.どう解釈するべきなのか 
会談のごく一部しか報道されていませんので詳しいことは分かりませんが、このNHKの報道から分かることは、日本政府はこの契約は事実であると見ており、そしてロシア側はそれを否定をしておらず、従いまして現段階では何が真実なのかは分かりません。しかしその一方で各報道を見直しますと、おぼろげに見えてくるものもあります。

「中国がロシアから戦闘機と潜水艦購入」(2013年3月25日 16時34分 NHK)
「契約は今月22日から行われた習近平国家主席のロシア訪問前に交わされました。」

China To Buy Russian Fighters, Subs(2013年3月25日(月) Defense News)
"The agreement to buy the 24 Su-35 fighters and four Lada-class submarines was signed just before President Xi Jinping's weekend visit to Russia, said the People's Daily, citing state television.
24機のSu-35戦闘機と4隻のラーダ級潜水艦を購入する同意書は習近平国家主席の週末のロシア訪問直前に署名された

Russia: No Deal on Sale of Fighters, Subs to China(2013年3月25日(月) Defense News)
During a recent visit by Chinese President Xi Jinping to Moscow from Friday to Sunday, no discussions took place regarding "military-technical cooperation" issues, the ITAR-TASS news agency reported Monday.
金曜日から日曜日までの習近平中国国家主席による最近のモスクワ訪問の間、軍事技術協力問題に関する議論はなかったとイタルタス通信社が月曜日に報じた。
"The Kremlin is officially denying even discussing arms trade during Xi's visit,"
習主席訪問の間に武器輸出を議論したことすらクレムリンは公式に否定している。」

 このことからもし中露間で何らかの合意があったとするならば、それは習近平国家主席の訪ロ前であり、首脳会談ではそのことに関しては議論をしなかったとの解釈が可能です。しかしロシア側からどちらかと言えばネガティブな報道が出ているのは、中露間の信頼関係がまだ完全なものではなく、特に信頼関係の構築と技術移転に関する詳細な取り決めが課題となっているのかもしれません。

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コメント

習近平の思惑とは裏腹に、プーチンが冷淡で、会談は実質的に何の成果ももたらさなかったので、会談時に商談がまとまったということにしておきたかったのでしょう。

(参考)

http://gendai.ismedia.jp/articles/-/35268

myu5様
ロシアは日本と中国を天秤にかけている気配があります。
しかし問題はこういった武器輸出入契約自体は成立した可能性が高いという事ですね。
日露首脳会談がやがてはあると思われますが、その時に如何に連携を強め日本側に引き寄せられるかが勝負です。

中露の何れが嘘を吐いているかは別にして、中国が海軍力の質的向上を進めている、或いは進めたいということの現われでしょう。
空母も米のように大洋に展開するのでなければ、さほど必要では無い気がします。むしろ我が国にとっては(中国にとっても)、潜水艦のような艦種のほうが戦略的には有効なのだろうと思います。
我が国もそうりゅう型で大きく性能が向上しましたが、やはり最終的には原潜が必要だろうと思います。最近開発が進んでいる国産技術の4S炉などは、船舶用原子炉として最適だと思いますので、是非実用化して欲しいと思います。

しょーちゃん様
別の記事のコメント欄にもコメントをさせて頂きましたが、原子力協定により核関連物質の利用は平和目的に限られていますので原潜の保有は難しいと思われます

お疲れ様です。

虚虚実実の情報,まるで三国誌の時代ですね。それなりに面白かったと思います。

政治体制の相違,時代の古今,洋の東西を問わず,人間は自分の聞きたいことを受け入れ,或いは大衆が聞きたいことを吹聴する癖があります。とくに軍事や外交に関する話題になると,情報が感情に撹乱されるのです。
大衆向けの商業化社会では,なおさらにこの傾向が強いのです。

今回の中央テレビは,大失態でした。それも商業化が進み,ニュースの事前の政治審査が弛んで来たのが主因だったと思います。大衆にスクープを吹き込み,喜ばせたかったのでしょう。

文字を大量生産して生計を立てる佐藤優氏なども同じです。

主要国のメディアを見渡しても,感情や商業的利益に左右されないのは,NHK一家のみです。

中ロ首脳が軍事契約のサインした!ということはありえないのです。
あったとしても,報道してはならないのです。

一国の首脳は,兵器商売の契約のサインをすることは,首脳のイメージを下げることになるのです。双方の首脳にとっても,こんな馬鹿なことをするはずはありません。

西側の市場や投資を期待するロシアは,真っ先に否定するのは正解でした。中央テレビの担当者は後に共産党に怒られたのでしょう。

兵器の売買は,実務担当者の間でやればよいのです。
これまでの中ロ兵器交渉はしばしば,マラソン談判といわれたほど,互いにしたたかに行われていました。西側の警戒心を回避するために,なるべく公表せず,控えめにするのが双方のマナーでした。

原子力協定については、締結相手国からのサービスを受けられなくなるということになりますから、国産技術が無ければ軍事転用できないことになります。
しかし、濃縮・再処理・炉建設など我が国の技術レベルで国産化できないということはないでしょう。
問題はウラン鉱石の手当てくらいだと思いますが、軍事利用が含まれるとしても協力してくれる国が皆無ということでもないでしょうし、プルトニウムなら売るほど貯まっています。
国内的な法律や原則の変更は、それこそ国民の決断次第ということではないでしょうか。

中国人様
お久しぶりです。素晴らしい分析だと思います。
>「大衆が聞きたいことを吹聴する癖」
特に権威主義的国家の国営テレビではそういった嫌いがあるかもしれませんね。或いは勇ましい報道に頼らなくてはならない程に国内で不満が溜まっているのかもしれません。
日本も一部に勇ましい報道や先走った記事、論説が散見されます(私自身も含めて)。

しょーちゃん様
「問題はウラン鉱石の手当てくらいだと思いますが、軍事利用が含まれるとしても協力してくれる国が皆無」
どんな国ですか?しかもその場合は日本が条約違反国になってしまいます。

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