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2013年6月 5日 (水)

US-2飛行艇をインドはどのように運用するか

1.日印首脳が共同声明に署名し、US-2に関する合同作業部会を立ち上げへ 

インドのマンモハン・シン首相が2013年5月27日から30日まで公式実務訪問賓客として訪日し、29日には日印主脳会談で両首脳で共同声明に署名しました。

日印首脳会談 共同声明に署名(2013年5月29日 21時12分 NHK)

マンモハン・シン・インド首相の訪日(概要と評価)(平成25年5月30日 日本国外務省)

 その共同声明で「インドによる救難飛行艇US-2の導入に向け、合同作業部会を立ち上げること等につき一致した。」とのことです。具体的な内容は兎も角としまして、ほぼ内定と言って良いでしょう。

 インドへのUS-2飛行艇輸出解禁の動向に関する件は以前にも当ブログで執筆したことがありました。

「海自飛行艇を民間転用、インド輸出想定 防衛省承認へ」(2011年7月 6日 (水))
(この記事ではUS-2の主なスペックや輸出展望、そしてメンテナンス等のバックアップ体制が課題になる旨を執筆しました。)

(下の図は平成22年05月20日付けで新明和が防衛省に提出したと思われる資料「救難飛行艇US-2民間転用事業体制(案)と課題について」(防衛省ホームページよりダウンロード可能)の第9頁より クリックで拡大)

Us2_mod

「JA2012国際航空宇宙展に於ける各メーカー表明事項-後半-国内メーカー動向編」(2012年10月27日 (土))
(この記事では新明和がインドからの受注に自信を深めていること、2012年1月にインド政府は9機のSAR飛行艇導入の為の情報要請を発令しており、インドの必要数はやがて計18機まで増加する可能性があること等を執筆しました。)

2.合同作業部会で予想される検討内容、及びインドによるUS-2の予想される運用方法

 合同作業部会での予想される検討内容や、インドによるUS-2飛行艇の予想される運用に関しまして、2013年5月30日のDefense Newsの記事"India, Japan Discuss Cooperation on Amphibious Aircraft"(インドと日本が飛行艇に関し協力を協議へ」)に興味深い内容が記述されていますので、下記に記事本文の一部抜粋と翻訳を行います。

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India and Japan will establish a joint working group to explore cooperation on the US-2 amphibious aircraft made by Japan’s ShinMaywa.
日本の新明和により製造されたUS-2飛行艇に関する協力を模索する合同作業部会をインドと日本は設立する。

A ShinMaywa executive said the joint working group will decide terms of the cooperation, but said it could possibly include joint production, operation and training on the US-2 amphibious aircraft.
新明和の役員は合同作業部会が協力の条件を決定すると述べ、その上でUS-2飛行艇の共同生産、運用、及び訓練を含んだものになるかもしれないと話した。

The amphibious aircraft will be placed at the Andaman and Nicobar islands in the Indian Ocean, which is the base of India’s Tri-Command and meant to keep vigil on China. The aircraft would spearhead any littoral warfare operations in the Indian Ocean.
飛行艇はインドの三軍統合司令部の基地であり、中国の監視拠点であるインド洋のアンダマン・ニコバル諸島に配備されるであろう。インド洋に於ける如何なる沿岸戦作戦で同機は先鋒となる。

(下はGoogleマップよりインド洋のアンダマン・ニコバル諸島


大きな地図で見る

The aircraft will be used for maritime patrol, anti-surface warfare, electronic intelligence and search-and-rescue missions.
同機は海洋パトロール、対水上戦、電子情報収集、捜索救難作戦に投入されるであろう。

The Indian Navy requires the amphibious aircraft to be capable of 360-degree coverage so it can detect and track surface vessels, ships, submarine periscopes, and low flying aircraft and missiles.
洋上船舶、潜水艦の潜望鏡、低空飛行の航空機やミサイルを探知及び追跡する為に、インド海軍は飛行艇が全方位能力を有することを必須とする。

A Navy official said the US-2 has already been evaluated by them and the aircraft suits its requirements, as it can take off on a 250-meter strip and operate in rough seas.
US-2は既に彼等により評価され、250mの距離で離陸し荒れた海で運用が可能である為に、同機は要求に合致するとインド海軍関係者は述べた。

(引用及び翻訳終了)
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(下の写真は筆者がJA2012で撮影したUS-2の資料、複数のバリエーションが構想されている、クリックで写真拡大)

Dscf0421

 このDefense Newsの記事の内容が正しいと仮定した場合は、インドは救難任務よりもむしろより軍事的な任務に投入することとなります。US-2は引き込み式FLIRターレットを装備しており(以前はメーカー公式HPにその旨の記載がありましたが現在は削除されています)、現状でも一定のISR(情報・監視・偵察)能力を有すると考えられますが、インド軍の運用に合致する為には更なる改造が必要であり、そのことからも新明和役員による「共同生産」との発言が出たのかもしれません。

 また同記事はUS-2はアンダマン・ニコバル諸島に配備されるであろうとしています。その場合の行動半径を1500km~2000kmとして地図に描いた場合は下記のとおりです(下の地図は「地図に円を描く」で製作、青が1500km、赤が2000km, クリックで拡大)

Andaman_nicobar

既に今年の4月の時点でインドがUS-2を導入する目的は救難ではなく、軍事目的が主要ではないかと分析も一部に散見されました。

「インドはUS-2を救難なんかに使わない」(2013年4月 3日 (水) 数多久遠のブログ シミュレーション小説と防衛雑感)
「インドがUS-2を買う本音が、100%海賊対処やPSI(拡散に対する安全保障構想)対処に使うつもりだろうと予想するためです。」、「海自のP-3Cが海賊対処で活躍していることと同様に、空から高速で広範囲を捜索することができます。」、「その上、不審な船舶に対しては、着水して水上艦と同様に臨検を行なう事が可能です。」

 こうしてみますと、こういった分析は正しかった可能性が高いかもしれません。

3.インドは何機のUS-2を導入するか

 まだ具体的には日印間で公式合意には至っておらず、またこれに関しましては複数の情報があり不明です。

 Flightglobalの2012年10月09日(火)10:32の記事"ShinMaywa looks to India for US-2 amphibian sales"(「新明和がUS-2飛行艇販売でインドに注目」)では"In January 2012, New Delhi issued a request for information for nine amphibious SAR aircraft. India's requirement could eventually be expanded to total 18 aircraft."(「2012年1月にインド政府は9機のSAR飛行艇導入の為の情報要請を発令した。インドの必要数はやがて計18機まで増加する可能性がある。」)と報じていました。

 一方インド側の一部情報(インドの防衛・航空関係ジャーナリストであるShiv Aroor氏の2013年05月29日22:41:43のつぶやき)によりますと日本は2機のUS-2をインドに販売することに同意したとなっています。

 それ以外には2013年5月27日の日経新聞が「インド政府は少なくとも15機調達する意向で、両国政府は年内の合意を目指す。」と報じていました。

4.さいごに

 日本の兵器はガラパゴスとの批判が散見されますが、今回のインドへのUS-2輸出は、こういった他国には同等品がほぼ皆無な特殊な国産装備品の開発が世界からも評価されつつあることの証左であると言えます。逆に言えば、こういったマーケットを開拓する事が日本の防衛産業の成功の鍵を握るのかもしれません。今後はどの様にインドによる運用をサポートしていくかが課題となりますが、期待して動向を注視していきたいと考えます。

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軍事」カテゴリの記事

コメント

アンダマンは驚きですね。
今後増えれば、他の方面にも配備されるのでしょうが、これほど対中国が鮮明な配備もないですね。

もしかすると、ディッピングソナーを備えるなんて可能性もあるかもしれません。

アシナガバチ様

ご無沙汰しております。

東インド洋のど真ん中にあるアンダマン諸島に、哨戒機を配備するのは理解できるのですが、なぜ高価な飛行艇なのか?着水してSARという任務はともあれ、哨戒に使うというのはどういうことなのでしょう?

というわけで、アンダマン・ニコバル諸島をグーグルマップで見てみました。

まずその範囲は南北600 km(奄美大島から与論島までくらい)。全体に非常に未開で、空港が少ない。カール・ニコバル島に空軍基地、大ニコバル島に小さな空港、そしてアンダマン島にそこそこの国際空港と小さな空港一つ。見落としはあるかもしれませんが、多くの島々には、アクセスするには現状では船か大型ヘリコプター(航続力が必要)しかない。しかし、島々には、入り組んだ沢山の入り江があり、US2なら余裕で着水できそうです。

思いつく任務は以下です。
1:US2以外にも哨戒機を配備するが、その事故に備えたSAR(日本でのUS2の運用と同じ)
2:哨戒ポイントを島々に設置し飛行艇で支援する(哨戒艇じゃダメな理由は?=緊急対応とか?)
3:諸島内への侵入者を発見し、上陸して対応できるようにする

ただ何よりも、島々の交通の便が良くなりそうです。US2が小笠原から急患輸送をしているように、原住民たちの支えになることで良好な関係を築き、島の「実効支配」を強めることこそ、有効なのかもしれません。空港を沢山作るような人口ではなさそうなので、どこでも着水できる飛行艇は便利に使えそうです。

ところで、対水上戦闘って何をするのでしょうね。レーダー哨戒だけでも十分、対水上戦闘に寄与しますが、小型舟艇が相手なら機関砲で対応可能。ミサイルや機銃を搭載するように改装するのでしょうか?(なお、この海域は、海賊は少ないようです。(see IMB Piracy & Armed Robbery Map 2012))

数多久遠様

 「共同生産」の可能性が触れられていることも注目点であると私は考えます。もし「共同開発」となれば、武器輸出新三原則で輸出可能となる技術が大幅に緩和されますので、哨戒機的な使用も開発されるかもしれません。

ドナルド様
インド海軍は従来より水陸両用の装備を重視してきた傾向がある模様です。特に2004年度のスマトラ島沖地震からその傾向が顕著となりました。
また2008年のムンバイ同時多発テロ以降は無人島にテロ組織や海賊の構成員が潜伏していないかのパトロールも重視されています。
それ以外にもドナルド氏のご指摘の通りの利便性の向上、また洋上で重要部材の補給、緊急展開任務などの任務も検討課題だそうです。
http://articles.economictimes.indiatimes.com/2011-02-06/news/28428464_1_p-8i-nicobar-islands
対水上戦闘に関しましては数多久遠様がトラックバック先記事で海賊に威嚇射撃を行う可能性を指摘されています。
http://kuon-amata.cocolog-nifty.com/blog/2013/04/us-2-4496.html

当面はIFF等を外せば武器ではないと言う解釈なんでしょう。
ソナーの後付けも資源探査目的なら感知しないと言えますね(笑)。
この分なら、F-2は無理としても、P-1なら輸出できそうですか。

報道を見ますとUS-2の次の注目株としてはC-2が中心で、P-1の輸出については官民ともそれほど期待もしていなければ意欲的でもないように思います。

名無し様
C-2は民間カーゴタイプが開発(?)されているみたいなので、当然民生機として輸出できるでしょうね。
P-2は対潜哨戒として導入したい国(例えばインド)があると思います。US-2が可能なら・・・という妄想です。

P-2はP-1の誤りです。

>しょーちゃん様

インド海軍は既にP-8の導入を開始しています。
いまさら別機種に乗り換えるメリットは低いでしょう(あの国の装備のごった煮具合を見ると完全に可能性0とも言い切れないような気もするのがなんともですが・・・)

インド以外についても果たしてP-1が選定される余地があるかどうか・・・
低空飛行能力とミサイル搭載量はP-8よりも高いのですが、P-8が全世界で運用されているベストセラー機B737を母体としていることの運用上のメリットは、他国にしてみればエンジンすら日本国内限定品のP-1とは隔絶していると思われるのです。
日本にとってはいい機体なんですけどね。XF5と共通コアの純国産エンジンを機当たり4発も生産できて、その分IHIの技術力を高めることができ、そしておそらくはそれが将来の戦闘機用ハイパワースリムエンジンへと繋がるわけですから。フランスがA400MへのM88コアの採用に拘ったのと、順序は違えど理屈は同じです。
可能性があるとすれば、日本からの部品供給を速やかに行うことのできる近隣諸国でしょうか。しかし韓国海軍はP-3Cの中古の次はバイキングの中古を買う可能性が濃厚ですし、なにより同国の国民感情の反日(およびその感情に対する政府の多感症)っぷりから考えて日本製兵器を購入できるとは思えません。台湾・ベトナムは経済的にそこそこ発展していますがP-1サイズの哨戒機を買うにはいまだ力不足です。フィリピンはいわずもがな。将来的に、上に挙げた国々のうち韓国を除いた諸国の経済がさらに発展すれば(あるいは多少経済的に無理をしてでも軍事力を拡充する必要に迫られる事態に及べば)あるいはP-1が輸出されることもあるのかもしれません。

名無し様 ありがとうございました

新明和と言えば、会長とゆかりのあった企業でしたな。
ワシが会長と言えば誰だか解ると思いますが。

しょーちゃん様、名無し様
C-2に関しましては具体的に有力な引き合いが一件ある模様ですが、それが実現するかはわかりません。
P-1は四発エンジンということもあり、民間機型はコスト面でネックとなりそうです。

紙の穴総帥様
申し訳ありませんが失念してしまいました。帝愛の兵頭会長でしょうか?

辛坊氏らの救難活動はUS-2の優秀さを世間に知らしめたと言っても過言ではありませんね。不謹慎ながら、いい宣伝になったのではないでしょうか?何時もは、人知れず救難活動をしていた訳ですが、今回は著名人だっただけに、クローズアップされ、ニュース映像でも流れ世間一般の人にはどういった航空機であるか、また、US-2の導入を考えている国に対しても皮肉にもアピールする結果になってしまいましたね。

キンタ様
私も今回の救出劇はUS-2の能力を結果として実証したものと考えます。海外でも報道されている模様ですので、世界市場でもアピール材料となるのかもしれません

アシナガバチで検索していてたどり着きました。
アシナガバチが巣を作り、もう少し大きくなっているので、
どうしたものかと悩んでいましたが、プロフィールを呼んでこのままにして置く事に決めました。

どこのページを読んでも、危ないから壊した方が良い・・・が圧倒的でしたのに、
ありがとう御座います。

冬になったら、巣をなくしても大丈夫でしょうか。
巣の中で冬を越すなら、またまた悩む所ですが。

ベランダなので少し怖さもありますが、
頑張ってみます。

ありがとう御座いました。

tae様
秋になりますとお母さん蜂(女王蜂)が亡くなります。そうしますと残りの蜂(全て女の子)が男の子を産み、婚活します。婚活に成功した女の子だけが冬を越します。
秋から冬になりますと巣は自然解散です。誰もいなくなります。その時に巣を外しても大丈夫ですよ^^
また来年に同じ場所に巣を作ると感慨深いものがあります。

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