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2013年10月

2013年10月19日 (土)

米国防総省が空自AWACSの近代化改修計画の概要を発表

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(上の写真は筆者の友人である「三菱F-2B@横須賀鎮守府所属」氏から提供を受けたE-767の写真、クリックで写真拡大)

1.はじめに

 時事通信が先月27日に米国防総省が「航空自衛隊の早期警戒管制機AWACS4機の近代化改修に必要な装備を計9億5000万ドル(約940億円)で日本に売却する用意があると米議会に通知した」旨を報じました。

「空自の早期警戒機、改修へ=電子支援装置など売却-米」(2013年09月27日(金)10:15*時事通信 リンク先はWebCiteによる魚拓)

 この早期警戒機改修は急に決まった話ではなく、平成25年度予算平成26年度予算の概算要求には盛り込まれています。

(下の画像は防衛省平成25年度予算から主要な航空機関連予算の一覧表、赤の下線と楕円は筆者によるもの、クリックで画像拡大)

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(下の画像は防衛省平成26年度予の算概算要求から主要な航空機関連予算の一覧表、赤の下線と楕円は筆者によるもの、クリックで画像拡大)

26gaisan4

2.早期警戒管制機改修の具体的内容

 改修に関しましては以前にも当ブログにて若干触れたことがあります。

「防衛省平成25年度予算概算要求が公表される」(2012年9月16日 (日))

 早期警戒管制機(E-767)の能力向上に関します「平成24年度政策評価書(事前の事業評価)」(PDF)には「中央計算装置等の換装、電子戦支援装置の搭載等を実施し、情報処理能力等を向上させる。」、「島嶼部等の狭い範囲に多数の航空機、艦艇等の混在が予想される事態等において、現有のE-767では脅威情報の判別等に必要な各種能力が十分ではないため、本事業による能力向上が必要である。」、「電子戦支援装置の搭載により、各種脅威の探知及び判別が可能となり、自機への脅威対処及び味方航空機への脅威情報の提供が可能となり、事態対処時の優位性が確保できる。」、「航跡処理能力の向上により、多数の航空機、艦艇等の混在が予想される狭い範囲に おいても適切な対処が可能となる。」との説明があります。また同資料の参考「早期警戒管制機(E-767)の情報処理能力等の向上概要」(PDF)では図解を見つけることが出来ました(クリックで図解拡大)。

E767_upgrade

 しかしこの「中央計算装置等の換装、電子戦支援装置の搭載等」が具体的に何であるかは不明でした。その詳細の一部が米国で公開されました。

3.DSCAによる議会への通知

 時事通信の報じる米国防総省による議会への通知とはDSCA(米国防安全保障協力局)による通知を指していると思われ、主要な武器輸出に関する事柄はDSCAの公式ホームページの「武器販売通知」のページで確認をする事が可能です。その中で確かに2013年9月26日(木)付けで日本にE-767の電子機器改修の関連機材を売却する可能性を議会に通知した旨の発表を見けることが出来ました。

Japan-Airborne Warning and Control System (AWACS) Mission Computing Upgrade (MCU) (「日本向け早期警戒管制機ミッション・コンピュータ改修」(PDF注意)

 下記にその本文の一部抜粋と翻訳を行います

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The Government of Japan has requested a possible sale of an E-767 Airborne Warning and Control System (AWACS) Mission Computing Upgrade (MCU) that includes 4 Electronic Support Measure (ESM) Systems, 8 AN/UPX-40 Next Generation Identify Friend or Foe (NGIFF), 8 AN/APX-119 IFF Transponder, and 4 KIV-77 Cryptographic Computers. Also included are design and kit production, support and test equipment, provisioning, spare and repair parts, personnel training and training equipment, publications and technical documentation, U.S. Government and contractor engineering and technical support, installation and checkout, and other related elements of program support. The estimated cost is $950 million.

日本政府は、4式の電子支援対策(ESM)システム、8式のAN/UPX-40次世代敵味方識別装置、8式のAN/APX-119 敵味方識別トランスポンダ、4式のKIV-77暗号化コンピュータを含むE-767早期警戒管制機(AWACS)の検討されているミッション・コンピュータ改修の販売を要請した。設計と道具生産、支援と試験装置、プロビジョニング、スペアと修理部品、要員訓練と訓練装置、出版物と技術文書、米国政府と受注業者による技術的支援、インストールと確認、及びその他の計画支援要素もまた含まれる。予想される金額は9億5000万ドルである。

This upgrade will allow Japan’s AWACS fleet to be more compatible with the U.S. Air Force AWACS fleet baseline and provide for greater interoperability.
この改修により日本のAWACS編隊は米空軍のものとより同等となり、さらなる相互運用性をもたらすであろう。

The principal contractor will be Boeing Integrated Defense Systems in Seattle, Washington.
元請業者はワシントン州シアトルのボーイング統合防衛システム社となるであろう。

Implementation of this proposed sale will require multiple trips to Japan involving U.S. Government and contractor representatives for modification kit installations, testing, technical reviews/support, and training over a period of eight years.
この販売提案の実施は8年間に亘る改修キットインストール、試験、技術的見直し/支援、そして訓練の為に米国政府要員と業者による複数回の日本への出張を要するであろう。

(引用及び翻訳終了)
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4.AN/UPX-40、AN/APX-119、KIV-77とは

 この米国防総省による公開により改修内容の概要が判明しましたので、具体的に名称が公開された器具に関しまして調べてみました。

(1).AN/UPX-40次世代敵味方識別装置
 これに関しましては比較的詳しい資料を見つけることが出来ました。メーカーのカタログであると思われます。

AN/UPX40V(PDF)

 このカタログからメーカーはニューヨークにあるTelephonics Corporationです。下記のような特徴を列挙しています。

・2000 target capacity(2,000ターゲットの容量)

・Probability of Detection(探知可能性): 99.9%以上

・False Target Reports(偽目標報告): 0.04%以下

・ Overall Multiple SSR Target Report(全般的複数航空用二次監視レーダ目標報告): 0.3%以下

・コード利用可能範囲: 98.5%以上

・コード正確性: 99.9%以上

・Positional Accuracy, Systematic Errors (位置正確性、系統エラー)

- Slant range bias(スラントレンジバイアス): 15メートル以下

- Azimuth bias(方位角バイアス): 0.022°以下

- Slant range gain error(スラントレンジゲインエラー): 1 m/nm以下

(2)AN/APX-119敵味方識別トランスポンダ

 これに関しましては詳細な情報は得られませんでした。しかしレイセオン製であることは分かりました。

APX-119 IFF Digital Transponder

(3)KIV-77暗号化コンピュータ

 こちらに関しましては残念ながら全く資料を得ることは出来ませんでした。

5.おわりに

 電子機器に関する情報が公になるのは極めて珍しいことと言えますので、今回の米国防総省の発表は極めて貴重なものと言えるでしょう。金額的には計9億5000万ドル(約940億円)であり、単純計算で一機あたり235億円の改修費用となり極めて高額です。そもそものE-767の単価は約550億円前後でしたので、そのことを考えますと日本政府が如何に早期警戒管制機の能力向上を重視しているかが分かります。その一方で平成25年度予算平成26年度予算の概算要求ではそれぞれ101億円と136億円の予算計上となっており、この差額はやや気になるところではあります。そうしますと日本政府は平成25年度予算平成26年度予算の概算要求以外の更なる改修を検討しているのでしょうか。

 また2013年10月 7日 (月)の当ブログ記事「防衛省平成26年度予算概算要求を読んで」でも触れましたが、「新たな早期警戒機の導入に向けた性能・運用方法等に関する検討を実施」し、「平成27年度予算に、新たな早期警戒機の導入に係る経費を計上することを目指して検討作業を本格化」すると防衛省平成26年度予算概算要求はしています。これとのバランスも注目されるところです。

(下の写真は筆者の友人である「三菱F-2B@横須賀鎮守府所属」氏から提供を受けたE-767の写真、クリックで写真拡大)

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2013年10月14日 (月)

機動戦闘車(試作車)が公開される

1.はじめに 

平成25年10月9日(水)、防衛省技術研究本部・陸上装備研究所(神奈川県相模原市で機動戦闘車(試作車)が公開されました。

(これは陸上自衛隊の公式公式アカウントにより投稿された機動戦闘車のYouTube動画

(これはdragoner JP氏により投稿された「防衛省技術研究本部陸上装備研究所にて公開された、機動戦闘車­の動作デモと記者会見の様子」のYouTube動画

この記者会見で私個人として興味深く感じたのは下記の二点です。

dragoner JP氏により投稿された動画の約2:45~2:50の前後で、開発が平成20年度から四段階に分けて実施され、先月末に最終形態の試作車輌が完成したこと。

dragoner JP氏により投稿された動画の約4:59~5:10の前後で、現時点で世界に於いて最高水準の105mm級の砲塔を搭載した装輪戦闘車輌であること

 この「現時点で世界に於いて最高水準の105mm級の砲塔を搭載した装輪戦闘車輌」とはどの観点を指して述べたものであるかは不明です(砲の威力、情報収集能力、生存性、機動性)。またその根拠も分かりません。

2.公式資料から分かる機動戦闘車の特色

 「平成19年度 事前の事業評価」の機動戦闘車に関する「本文」(PDF注意)では、下記のことが分かります。

(1)開発目的が「ゲリラや特殊部隊による攻撃、島嶼部に対する侵略事態などの多様な事態への対処にお いて、空輸性、路上機動性等に優れた機動力をもって迅速に展開するとともに、中距離域での直接照準射撃に より軽戦車を含む敵装甲戦闘車両等を撃破するために使用する」ものであること

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(上の画像は「平成19年度 事前の事業評価」の機動戦闘車に関する「参考」から、クリックで画像拡大)

(2)敵徒歩兵等が携行する主な火器等に抗たんできる防護力を有する

(3)「現有弾薬の適合性」がある(機動戦闘車の主砲は105mmであるから、74式戦車と弾薬を共有することが出来ることが分かる)

(4)「火砲の低反動化、射撃反動抑制、走行振動抑制」も重視されていること。(前述の陸上自衛隊の公式公式アカウントにより投稿された機動戦闘車のYouTube動画のラストの射撃場面でも非常に安定していることが分かる)

(5)「将来装輪戦闘車両」の研究成果の反映の可能性」、「将来装輪戦闘車両の研究試作、新戦車の開発等の技術・成果を活用」との文言がある。また機動戦闘車に関する「平成24年行政事業レビューシート」によると、「民生品の活用が可能な部分については部品レベル等まで既に活用しており、また過去の技術的成果を積極的に取り入れ、設計、製造を実施している」との文言があり、過去の装備品の技術や部品が活用されていると思われる。新戦車(10式)とはセンサーが酷似しているとの指摘がある。

参考:dragoner.ねっと様 「機動戦闘車のファーストインプレッション」(2013年10月10日木曜日) 「砲塔左に車長用パノラマサイト。10式のに似ている」、「10式にも見られたミサイル検知用と思しきセンサが砲塔左右正面にある」、「砲塔右には砲手用の固定サイト。これも10式と逆配置で、より小さい気がする」、「環境センサー。(中略)10式と同じタレス製のセンサー。」

3.機動戦闘車は戦車を代替し得るか

 機動戦闘車は防衛大綱に於ける戦車の定数枠内に含まれるか否かが一つの論点としましてありますが、私は含むべきではないとの立場です。その根拠は前項目の(1)の「軽戦車を含む敵装甲戦闘車両等を撃破」すること」を目的としているのであり主力戦車の撃破は想定していないこと、(2)の「敵徒歩兵等が携行する主な火器等に抗たんできる防護力」程度であり敵主力戦車の主砲に耐え得る防護力までは有していないと考えられることです。また海外ではBattle tank(戦車)とは"an enclosed armored military vehicle; has a cannon and moves on caterpillar treads."(装甲で囲まれた軍用車輌で、主砲があり装軌式で走行するもの)との定義が最も一般的な模様ですが、但しこの定義が誰によりいつどこで提唱されたかは不明でした。

 但し財政上や政治力学的な要素から、実際は最終的にどの様な扱いとなるかは現時点では不明です。

 因みに今回の発表会の機動戦闘車の乗員は偵察教導隊であったとのことでした。 (参考:dragoner.ねっと様 「機動戦闘車のファーストインプレッション」(2013年10月10日木曜日)

4.その他の装輪式装甲車輌との関係

 若干気になるのが現在計画中/開発中のその他の装輪式装甲車輌との関係です。可能であれば車体そのものを再活用したいところですが、必要とされる車体の規模もあり、またメーカーも異なることもあり(各メーカーのノウハウの部分もあり)困難でしょう。機動戦闘車は三菱重工製です。それに対して一般的に装輪式装甲車輌はわが国に於きましては小松製作所がプライムとなる傾向があります。

 相互のフィードバックがあり得るものとしましては、NBC偵察車(将来装輪戦闘車両の研究との部品及び構造の共通化等を実施)、今回の機動戦闘車、近接戦闘車、装輪装甲車(改)高射機関砲システム等を列挙することが可能でしょう。

 「平成19年度 事前の事業評価」の機動戦闘車に関する「本文」では「『将来装輪戦闘車両』の研究成果の反映」、「開発の途上で得られた設計成果を逐次に他の装輪戦闘車両へ適 応させる」との記述がありました。今回の発表会の機動戦闘車の乗員が偵察教導隊であったことを考慮しますと87式偵察警戒車の後継として検討されている可能性もあり、そうだとしますと近接戦闘車との関連が不明です。

 また防衛省平成26年度予算概算要求では装輪装甲車(改)の研究開発の予算も47億円が計上されており、近接戦闘車の位置付けがより不明確となってきています。

(下の画像は防衛省「平成22年度 事後の事業評価 評価書一覧」から近接戦闘車に関する「資料」の「運用構想図」、 クリックで画像拡大)

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5.さいごに

 今回の記事はtwitter上に於ける「1053式二脚走行型戦車男@最早末期」様との意見交換と資料提供により執筆しました。ここに感謝の意を表し、今回の記事を締めくくらせていただきます。

2013年10月 7日 (月)

防衛省平成26年度予算概算要求を読んで

1.はじめに

 8月30日(金)に防衛省の平成26年度予算概算要求がホームページ上に公開となりました。総額は4兆8928億円と昨年度と比較し前年比から3%の増加となっていますが、この増加率は円安により外国からの輸入コストが上昇した為でもあります。私がこの予算に注目するのは、検討中の新防衛大綱の方向性が反映されていると考えられるからです。

 今回の概算要求の概要の第1頁(PDFファイルの5枚目)では「『防衛力の在り方検討に関する中間報告』 に、現下の安全保障環境において南西地域をはじめとする我が国の防衛態勢を強化するための重要課題として例示された、警戒監視能力の強化、島嶼部に対する攻撃への対応、弾道ミサイル攻撃及びゲリラ・特殊部隊への対応、サイバー攻撃への対応、大規模災害等への対応、統合の強化、情報機能の強化、宇宙空間の利用の推進等を重視し、防衛力を整備。」とあります。この各項目の概要を述べているのが第3頁(PDFファイルの7枚目)です。

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(上の画像は防衛省の平成26年度予算概算要求より クリックで画像拡大 以下の画像は特に言及がない限り防衛省の平成26年度予算概算要求からとさせて頂きます

 今回はこれに関して私が興味深いと感じた各項目に関して論じたいと思います。

2.一部項目の検証
(1).警戒監視能力の強化(第4頁~第7頁、PDFファイル8枚目~11枚目)

 まず注目に値すると私が考えますのが、「新たな早期警戒機の導入に向けた性能・運用方法等に関する検討を実施」となっている点です。そして「平成27年度予算に、新たな早期警戒機の導入に係る経費を計上することを目指して検討作業を本格化」するとしています。もしそうだとしますと平成26年度中には新早期警戒機の機種が決定されることとなるでしょう。

E2d

 (上の写真は米海軍公式サイトからE2D Advanced Hawkeye, 著作権は米国政府の方針によりPublic Domain, クリックで写真拡大 下の写真は筆者が撮影したJA2012会場で撮影のボーイング737ベースのAEW&C機の模型 クリックで写真拡大 この2機種が有力候補であると考えられる)

E737

 上記に加えてに「概算要求の概要では「警戒航空隊を改編し、那覇基地に早期警戒機(E-2C)による『第2飛行警戒監視隊(仮称)』を新編」としています(クリックで画像拡大)。

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 しかしこれは以前から私は予測していました。それは昨年の「概算要求の概要」では第5頁(PDFファイル8枚目)に那覇基地における早期警戒機(E-2C)の整備基盤の整備(0.7億円)との項目があった為り、その項目には「南西地域においてE-2Cを常時継続的に運用し得る態勢を確保するため、那覇基地において使用する整備器材等を取得」と記載があった為です。それは一昨年でも同じでした。

 またそれ以外には、「平成27年度予算に、高高度滞空型無人機の取得に係る経費を計上することを目指して検討作業を本格化」と明記し2億円の予算を計上したことも注目に値します。

(2).島嶼部に対する攻撃への対応(第8頁~第13頁、PDFファイル12枚目~17枚目)

 ここで疑問に感じましたのは「水陸両用準備隊(仮称)の編成」の項目です。ここで平成26年度予算概算要求のイメージ図を見てみることとしましょう(クリックで画像拡大)。

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 この運用イメージでは「西方普通科連隊等と連携した運用研究等を実施」と明記されています。即ち現段階では西方普通科連隊とは別の部隊との扱いです。

 「艦艇の水陸両用戦能力の向上」では「水陸両用戦に係る輸送能力を強化するため、海上自衛隊の「おおすみ」型輸送艦を改修・26年度は、今後の大規模改修に向けた試設計等のほか、水陸両用車の収納に必要となるすべり止め塗料のLCAC甲板への塗布を実施」、「『いずも』型護衛艦の多目的区画への電子会議装置の整備等を実施」との記述があります。これらに関しましては事前に一部で報道されていました。

「海自輸送艦を大幅改修 4億円要求 離島防衛に本腰」(2013年8月24日 08:14 産経新聞*リンク先はWebCiteによる魚拓)

 ただ報道では「垂直離着陸輸送機オスプレイを搭載可能にする」としているのに対し、概算要求の概要ではそういった記述は見受けられませんでした。

 オスプレイに関しましては「平成27年度予算に、ティルトローター機の取得に係る経費を計上することを目指して検討作業を本格化」する旨の記述があり、事前の諸々の報道の通りに導入する方向で確定と言えるでしょう。

 「島嶼部に対する攻撃への対応」に関しましてはもう一点注目すべき項目がありますが、それに関しましては後述することとします。

(3).弾道ミサイル攻撃及びゲリラ・特殊部隊への対応(第14頁~第15頁、PDFファイル18枚目~19枚目)

 この項目は例年と比べましても大きく異なることはありませんが、防衛省敷地内にPAC-3の展開基盤を整備するとしており、それは結果として2020年東京オリンピックでの航空機自爆テロ警戒に役立つことにもなるでしょう。会場の85%は選手村から8km圏内にあります。

(下の地図は「地図に円を描く」から、防衛省から20km範囲内、クリックで画像拡大)

Mod20kmradius

3.主要な装備品等

(1).航空機関連(クリックで表拡大)

26gaisan4

 先ほど「『島嶼部に対する攻撃への対応』に関しましてはもう一点注目すべき項目がありますが、それに関しましては後述することとします」と述べました。それは「戦闘機(F-2)へのターゲティング・ポッド搭載試改修」との項目です。

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(上の写真はJA2012会場のLockheed Martin社のブースにて筆者が撮影のF-2Aの模型 クリックで写真拡大 エアインテーク下の向かって左にスナイパーポッドが搭載されている。 下は運用図イメージ、クリックで画像拡大)

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このターゲティング・ポッドとはLockheed Martin社製のスナイパーであり、「地上誘導員等」によるレーザー照射はElbit社製のDIRECTOR-Mではないかと言われています。スナイパーに関しましては2013年8月2日に航空自衛隊のホームページで正式に発表されていました。

「ターゲティング・ポッドの機種決定について」

(この動画Lockheed Martin社のYouTube公式アカウントよりSniperポッドの動画)

 少し前の話ですが防衛省・自衛隊:大臣会見概要 平成25年7月26日(11時21分~11時43分)に「敵基地攻撃能力の保有」に関して大臣と記者の間でやや興味深い質疑応答が行われていますので下記に引用します。

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Q:今回の中間報告の中で、自民党の提言にあった敵基地攻撃能力の保有については、直接的な文言が無いのですけれども、北朝鮮のミサイル対応を念頭にこの課題も今後検討していくということでよろしいのでしょうか。

A:このような策源地に対する打撃力については、憲法上も許される範囲ということが国会でも整理をされております。私どもとしましては、基本的には専守防衛をしっかりしていくということ、そして日本が様々な脅威に晒されたときには、我が国の防衛力を使ってしっかりそれを防ぐということでありますが、例えば、累次にわたる攻撃が繰り返されるような場合、これは自衛のためにその策源地を打撃力をもって攻撃をするということは当然、安全保障を預かる私どもとしては検討すべき内容だと思っております。ただ、これに関しては、特に日米同盟の中で今までも役割分担をしてまいりましたので、今後もやはり政府内、そしてまた日米間での議論が必要だと思っております。

Q:今の打撃力に関してなのですけれども、大臣が現時点で想定している打撃力に関する具体的な装備について、何かご所見があるのかということと、この打撃力についての検討をいつ頃までに結論を出したいというお考えなのかお聞かせ下さい。

A:打撃力の具体的な装備については、これはまずどのような能力を持つべきかという前提から始まりますので、具体的な装備を今のところ念頭に置いているわけではありません。ただ、いずれにしても、この議論というのは大変大きな議論になりますので、我が国がこの打撃力を持つことについては、まず能力の評価、そして周辺国、特に北朝鮮に対しての脅威の問題、そして日米同盟に対しての議論、そして周辺国にしっかりとした理解を得る、こういう様々な努力があっての能力構築だと思っておりますので、一つ一つそのようなことを検討する必要があると思っております。

Q:基本的なところなのですけれども、敵基地攻撃能力についてなのですけれども、専守防衛の概念との整理をどのようにつけられているのかという点と、先制攻撃との線引きについてご説明下さい。

A:私どもとしましては、専守防衛の基本姿勢は何ら変わっておりません。あくまでも我が国に攻撃があった場合、どのような形でしっかりとした防衛態勢がとれるか、そのいくつかの検討項目の中で今言った策源地に対しての打撃力という議論が出てくる内容だと思っています。現在の防衛態勢の中では、日本が言ってみれば防衛力に関しては盾の役割、そして策源地に対しての打撃力は、日米同盟の中の米国の役割ということで今まで整理がついておりますが、今後様々な安全保障環境の変化の中でこれは日米も含めた幅広い議論が必要だと思っております。先制攻撃ということは、これはもちろん私どもとしては想定しておりません。あくまでも我が国に対して明確な攻撃が行われる、そのような状態、すでに我が国に対して脅威となりうる事態が起きている、それをもって初めて私どもとしては策源地に対しての打撃力についての検討を行うということであります。

(引用終了)
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(2).艦船関連(クリックで表拡大)

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 海自関連に関しましては26年度護衛艦(5,000トン型)も興味深いですが、「たかなみ型護衛艦の短SAMシステムの機能向上(5隻分)」とありますので、「たかなみ型」が全てESSM対応となります。因みに平成24年度予算により「むらさめ」型もESSM搭載改修が9隻全て既に完了となりました

(3).誘導弾、火器・車両、BMD関連(クリックで表拡大)

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60mmmortar

 60mm迫撃砲(B)との項目が目に付きますが、これは60 mm COMMANDO MORTAR M6C-210ではないかと言われています。

この動画はYouTubeから60 mm COMMANDO MORTARの射撃動画

4.主な研究開発

26gaisan8

 研究開発に関しましても今後の防衛政策の方向性を考える上で興味深い項目が多数あると言えるでしょう(クリックで上の表拡大)。

 装輪装甲車(改)の開発や野外指揮・通信システム一体化、ステルス機対抗手段の開発など、方向性を示唆する予算が盛り込まれています。

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(上の画像は装輪装甲車(改)の運用構想及び開発構想より、クリックで画像を拡大、装輪装甲車(改)の政策評価書も興味深い)

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この動画Russia Today公式アカウントがYouTubeに投稿したPAK-FA T-50の編隊飛行

5.さいごに

 今年度中に改定された防衛大綱が策定されます。また安倍政権により集団的自衛権の解禁、日本版NSCの創設、秘密保全法案など日本の安全保障政策は大きく変わることとなるでしょう。冒頭でも述べましたが、この予算概算要求は今後の日本の防衛政策を分析する上で大変興味深いものです。

*筆者の多忙により長期間ブログを更新出来ませんでしたが、今後もこのブログは継続していきたいと考えていますので今後とも宜しくお願い申し上げます。

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