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2013年11月

2013年11月25日 (月)

F-15JをF-15MJへ改修検討報道の謎

Dscf0353

F15j

(上の写真二枚は筆者がJA2012会場で撮影のF-15J改良構想模型 クリックで写真拡大)

1.はじめに

 航空自衛隊の関係者が航空自衛隊のF-15Jをさらに改良し、F-15MJ仕様に改修するとの一部報道がありました。

"Japan mulls F-15MJ upgrade for Eagle fighters(「イーグル戦闘機のF-15MJ改修を日本は熟考」)"(2013年11月12日 IHS Jane's*リンク先はwebciteによる魚拓)

 今回はその記事を検証することとしました。

2.記事の内容とその検証
(1)記事の内容

 下にIHS Jane'sのその記事の一部抜粋と翻訳を行います。
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The Japanese Air Self-Defense Force (JASDF) is to decide whether to upgrade its Boeing- Mitsubishi F-15J Eagle fighter aircraft to the improved F-15MJ standard, a service official said on 13 November.
航空自衛隊(JASDF)はF-15Jイーグル戦闘機を能力向上型のF-15MJ基準に改修するかどうかを決める方針であると隊員が11月13日に述べた。

Speaking at the IQPC Fighter Conference in London, JASDF spokesperson Colonel Koji Imaki disclosed that the decision will be reached "in the coming months".
ロンドンに於けるIQPC戦闘機会議での発言で、航空自衛隊の報道官であるイマキ コオジ一佐は決定が「数か月以内に」行われることを発表した。

Separate to the ongoing F-15J Mid-Life Upgrade (MLU) programme that includes improvements to the aircraft's central computer, radar improvements, an electronic counter-measures system, an Integrated Electronic Warfare System (IEWS), and new weapon systems, the F-15MJ enhancement includes a new M-Scan radar and a Link 16 datalink. While Col Imaki did not say which company would provide these systems, he did say they would be sourced from abroad rather than be domestically produced.
機体の中央コンピュータ改修、レーダー向上、電子妨害システム、統合電子戦システム(IEWS)、新武器システムを含む現在進行中のF-15J中間寿命改修(MLU)とは別に、F-15MJ改修は新型MスキャンレーダーとLink16データリンクを含む。イマキ一佐はどの業者がこれらのシステムを納入するかは述べなかったが、国内生産よりも海外から供給されると述べた。

The colonel did not divulge how many of the JASDF's 156 F-15Js are being considered for this F-15MJ improvement, nor did he provide timelines.
一佐は航空自衛隊の156機のF-15Jのうち何機をF-15MJとすることを検討しているか、そして具体的なスケジュールに関して公表しなかった。

Col Imaki's revelations on the F-15J upgrade chime with comments by Jim Armington, vice-president of business development for the East Asia-Pacific Region at Boeing Defense, Space, and Security, who told IHS Jane's in late October that Boeing was "very involved" in the JASDF's F-15 upgrade programmes.
イマキ一佐のF-15J改修に関する公表は、ボーイング防衛・宇宙・安全保障部門のビジネス発展 東アジア-太平洋地域担当Jim Armington副社長による航空自衛隊によるF-15改修プログラムに「深く関わっている」との10月下旬のコメントと合致している。

"Now we are talking about a major upgrade involving some of the new technologies that are coming into the F-15 Advanced [the latest F-15 concept shown at the Seoul International Aerospace and Defense Exhibition]: the AESA [active electronically scanned array] radar, the new mission computer, the cockpit display," Armington said.
先進版F-15(ソウル国際航空機・防衛展示会で展示された最新式F-15概念)に組み込まれた新技術を含んだ大規模な改修に関して現在協議中である。 :AESA[能動電子走査配列]レーダー、新作戦コンピュータ、コックピットディスプレイ」であるとArmington氏は述べた。

(引用及び翻訳終了)
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(2)内容の検証
(a)IQPCとは

 このIQPC戦闘機会議とは何でしょう。彼らはIQPC(International Quality & Productivity Center:国際生産性本部)の一部であり、公式ホームページを持っています。

Internatinal Fighter

 このホームページによりますと、スポンサーはRaytheonBoeing、DISCOVERY AIR Defense services、Eurofighter TyphoonSAABです。このホームページの議事日程の項目のMain Conference Day 1にイマキ コオジ一佐によるプレゼンスケジュールが掲載されていました。概要のみであり具体的な内容は記載されていませんが、航空自衛隊のイマキ コオジ一佐がこの会議でプレゼンを実施したことはこれにより確認できます。

(b)F-15MJ改修内容は
 
F-15MJとは厳密には恐らくF-15 Modernized Japanの略称であり、単純にF-15J改修の英訳ではないかとする説が一部にあります。F-15J改修に関しましては以前にもこのブログで執筆したことがありました。

「米空軍のF-15改良計画に思うこと」(2011年11月25日 (金))
「ボーイングによる試験は(米空軍の)F-15C/Dの寿命が9,000時間から18,000時間に延ばすことが出来る。」

「JA2012国際航空宇宙展に於ける各メーカー表明事項-前半-ボーイング社編」(2012年10月20日 (土))
「機体のセンサー、電子機器、武器に相当な追加の改善を視野に入れる。」(またこの過去記事から上のJane'sの記事に登場したボーイング防衛・宇宙・安全保障部門のビジネス発展 東アジア-太平洋地域担当Jim Armington副社長が元F-15パイロットであることが分かります)

 上のJane'sの記事でも分かりますが、現在実施されています形態Ⅰ型、形態Ⅱ型を更に改修した機体である様です。
(下の画像は防衛省「平成20年度予算の概要」(PDF)より クリックで拡大)

F15

 この形態Ⅰ型では既にAPG-63(V)1へ換装されていますが、レーダーをさらに改修するとなりますと、このM-Scan radarを如何に解釈するかが問題となります。 Mechanically scan radar:機械式走査方式レーダーを指しているのか、それともMulti-Scan radarつまりAESAレーダーを指すのかです。形態Ⅰ型にてAPG-63(V)1に交換されており、F-15Jに搭載可能なこの次のレーダーとなりますとAPG-63(V)3のみとなりますので、ここはやはり後者のAESAレーダーと考えるのが自然と言えます。またJim Armington副社長はAESAであると明言していますので、まず間違いがないと言えるでしょう。

(下の画像はWikipedia日本語版からAPG-63(V)3の図解、そもそもはRaytheon社の配布物からの模様であるが、今はリンク切れとなっている)

Anapg63v3

 Jim Armington副社長は日本側と協議中のF-15J改修に関しましては、上のJane'sの記事に掲載されていたコメントでソウル国際航空機・防衛展示会で展示された最新式F-15概念と述べており、F-15SEがイメージ的に近いと予想することが可能でしょう。

F-15SE Silent Eagle Cockpit Mock-up

(上の写真はFlickerに投稿されたF-15SEのコクピットモックアップの埋め込み画像)

 実際のところは予算面からどの程度まで実現化されるかは分かりません。イマキ コオジ一佐が述べた通りにAPG-63(V)3とLink 16にとどまると考えるのが恐らくは妥当でしょう。またAPG-63(V)3とLink 16を加えるとするならば、レーダーがAPG-63(V)1に交換されてデータリンクを搭載したJ-MSIP機体で形態Ⅰ型以上の機体を対象とするのが現実的です。

3.今回の報道の意味合い
 この報道が事実だとしますと、航空自衛隊の今後の最終的なF-35A調達数にも若干の影響を及ぼすかもしれません。またF-15Jを予算面から長期に亘り運用するということが前提にあり、そうだとしますとやはり厳しい財政状況に影響を受けたことによるものであり、余り喜ばしいことと言えないのかもしれません。

2013年11月 4日 (月)

防衛省がMQ-8の導入を検討

1024pxfirescoutvuas

(上の写真はWikipediaからMQ-8B、 クリックで写真を拡大、著作権はPublic Domain)

1.はじめに

 防衛省の「平成26年度予算概算要求の概要」の第6頁(PDFファイル10枚目)に下記画像の記述がありました(クリックで画像拡大)。

H26_gaisan

 予算総額的には200万円と少額です。しかしここに来まして防衛省がMQ-8の導入を検討している旨をNHKが報じました。

「尖閣監視 無人ヘリ導入も視野に」(2013年10月28日 4時57分 NHK*リンク先はWebCiteによる魚拓)

 艦載型無人航空機を調査する理由に関しましては、NHKの報道では

(1). 尖閣諸島など南西地域にて有人の艦載ヘリコプターによる監視活動を行っているが、飛行できる時間が3時間程度であることから、長時間の監視が必要になる場合は給油のため着艦を繰り返す必要があり、パイロットの負担が課題となっている。

(2). 米海軍が配備を進めているMQ-8は偵察活動をおよそ8時間に亘り連続して行うことが可能であり、自衛隊の護衛艦でも使うことで飛行時間を延ばし、監視能力を向上することが可能か調査を実施する。

 としています。今回の記事ではMQ-8に関しまして調べることとしました。

このYouTube動画Northrop Grummanの公式アカウントにより投稿されたMQ-8BがLCS-1から発着艦試験を行う様子)

2. MQ-8の特徴と仕様

 Northrop Grummanの公式サイトにMQ8Bの簡単なカタログがあります(PDF注意)。下記にその本文の一部抜粋と翻訳を行います。
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With a total endurance of eight+ hours, the Fire Scout can provide more than six hours time on station with a standard payload at 110 nm (200 km) from the launch site. A system of two Fire Scouts can provide continuous coverage at 110 nm. Utilizing a payload that includes electro-optical/infrared sensor with laser rangefinder/illuminator and a maritime radar, the Fire Scout can find and identify tactical targets, track and illuminate targets, accurately provide targeting data to strike platforms and perform battle damage assessment.

八時間以上の航続時間により、ファイアスカウトは離陸地点から110nm(200km)の距離にて標準的なペイロードで六時間以上の滞空をすることが出来る。二式のファイアスカウトにより切れ目のない監視を110nmの距離で実施することが可能となる。電子光学/レーザー距離計/と組み合わさった赤外線センサー/照明器と海洋レーダーを含むペイロードを活用することにより、ファイアスカウトは戦術ターゲットを発見・識別し、ターゲットを追跡し照射し、攻撃プラットフォームにターゲットデータを正確に提供して戦闘損害評価を実施する。

Fuselage Length  (with Dual Payload Nose)
胴体全長(機種にデュアルペイロード有時)...............23.95 ft (7.3 m)

Fuselage Width
胴体幅...........................................6.20 ft (1.9 m)

Length (with Blades Folded Forward)
全長(回転翼を前方に折り畳み時) ..... 30.03 ft (9.2 m)

Rotor Diameter
回転翼直径...................................... 27.50 ft (8.4 m)

Height (Top of Tail Antenna)
全高(尾部アンテナの頂上まで).................. 9.71ft (2.9 m)

Gross Weight
総重量................................ 3,150 lbs (1428.8 kg)

Engine
エンジン.. Rolls Royce 250-C20Wターボシャフトエンジン

Speed
最高速度 ................................................................... 115ノット(213km/h)以上

Ceiling
上昇限度................................................... 20,000 ft (6.1 km)

Endurance(航続距離)
Total Flight Time with Baseline Payload
基準ペイロードでの総飛行時間.......... 8時間以上

Total Flight Time with EO/IR + Radar
EO/IR+レーダー搭載時の総飛行時間 .................7時間以上

Total Flight Time with Maximum Payload
最大ペイロード時の総飛行時間 ........5時間以上

Payloads
ペイロード
EO/IR/LRF/機雷探知機/通信中継/海洋レーダー

(引用及び翻訳終了)
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2013年11月05日(火)00:00追記:RQ-8Bカタログ詳細版 (下の画像は詳細版カタログから図面、 クリックで画像拡大)

Rq8bdrawing

(2013年11月05日(火)00:00追記:下の画像はRQ-8Bカタログ詳細版から寸法図面と搭載可能なセンサー類、クリックで拡大)

Rq8b_dimension

Rq8b_sensors

 こうしてみますとNHKの報道にありました「偵察活動をおよそ8時間、連続して行うことができる」との報道は厳密には正確ではなく、基準ペイロードのみでの最大航続時間あることが判ります。EO/IR+レーダー搭載時の総飛行時間はカタログにもあるとおりに7時間以上であり、また離陸地点から110nm(200km)の距離にて警戒監視活動を行うとなりますと、その地点まで最大速度で向かったとしまして片道約1時間弱程度でしょうか。

(このYouTube動画Northrop Grummanの公式アカウントにより投稿されたMQ-8BのEOと赤外線カメラの撮影画像、下部に高度、飛行速度、ターゲットとの距離が表示されている)

3.おわりに

 NHKの報道にもありますが、「有人のヘリコプターとの任務をどのように仕分けるのか」との課題や、また検証の結果として採用が決定した場合は何機を導入するのか、どの護衛艦に搭載するのか、も興味深いところではあります。

 RQ-4グローバルホークの導入も確定しており、また2013年5月にはBoeing社がScanEagleを陸上自衛隊に2機納入(あくまで運用研究目的ではありますが)しており、無人機によるISR能力の向上が高まっていくこととなるでしょう。

過去関連記事

「産経新聞が防衛大綱改定の概要を報じる」(2013年1月 5日 (土))

「防衛省、無人機とロボット購入へ 震災教訓、有事投入も」(2011年9月17日 (土))

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