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今日の時事英語

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2014年1月

2014年1月25日 (土)

RQ-21を海自が導入検討との報道に関して

1.はじめに

 前回の記事でも述べましたが、中期防衛力整備計画(平成26年度~平成30年度)の第5頁に「哨戒機能を有する艦載型無人機について検討の上、必要な措置を講ずる」との記述があり、また第24頁には「哨戒機能を有する艦載型無人機については、上記の哨戒ヘリコプター(SH-60K)の機数の範囲内で、追加的な整備を行い得るものとする」との注釈が見受けられます。

 防衛省の「平成26年度予算概算要求の概要」の第6頁(PDFファイル10枚目)と「平成26年度予算の概要」第4頁(PDFファイル8枚目)には下記の記述とイメージ図があり、このことからMQ-8の導入を検討していることを強く示唆するものでした。

H26_gaisan

 当ブログの過去記事でもこの動きに関して記事を執筆しています。

「防衛省がMQ-8の導入を検討」(2013年11月 4日 (月))

 しかしここに来まして全く異なる情報を一部マスコミが報じました。護衛艦に発着が可能な固定翼機型の無人機の導入を海自が検討しているというのです。

「護衛艦発着の飛行機配備へ=海自初、無人偵察機で」(2014年01月11日(金)22:48*時事通信=リンク先はWebCiteによる魚拓)

 時事通信のこの報道によりますとこの無人機とはRQ21で、Insitu社製Scan Eagleの発展型になります。「今後5年間で19機を上限に購入する見通し」と報じています。

下の写真はWikipediaからRQ-21A, 著作権はPublic Domain, クリックで写真拡大)

511pxrq21a_small_tactical_unmanned_

この動画はYouTubeに投稿されたScan Eagleの説明, 特徴がよくわかる, RQ21はScan Eagleと同じ発射装置と回収装置を使用する)

2.時事通信の記事の検証

 2014年1月20日現在の時点に於きまして、時事通信のこの記事以外のマスコミは報じていません。また2014年1月24日現在の時点で、防衛大臣の記者会見に於きましてもこの件に関する発表や質疑応答はないのが現状です。

 また中期防衛力整備計画(平成26年度~平成30年度)の第24頁の「哨戒機能を有する艦載型無人機については、上記の哨戒ヘリコプター(SH-60K)の機数の範囲内で、追加的な整備を行い得るものとする」との注釈から、「艦載型無人機」とは回転翼型を指していると考えるのが自然と思われます。そして「平成26年度予算概算要求の概要」の第6頁(PDFファイル10枚目)と「平成26年度予算の概要」第4頁(PDFファイル8枚目)に掲載されていますイメージからも回転翼機型を想定していると考えるのが妥当でしょう。

 その一方で防衛省はScan Eagleを導入しています。従いまして海自がその発展型であるRQ21を導入しましても、何ら不思議ではありません。

参考過去記事:「防衛省、無人機とロボット購入へ 震災教訓、有事投入も」(2011年9月17日 (土))

ボーイング社公式プレスリリース:「ボーイングの子会社であるインシツ・パシフィック社 陸上自衛隊向けのスキャンイーグルをデリバリー」(2013年5月14日)

3.RQ-21とは

 前述の時事通信の報道の写真下にもありますが、RQ-21はボーイング子会社であるインシツ社(Insitu)の製品です。厳密にはRQ-21A Blackjackは米海軍/米海兵隊向けのIntegratorとなります。

Integrator

RQ-21A Blackjack

(下の図はIntegratorのカタログから、クリックで拡大)

Integrator

同社のIntegratorのホームページには下記の記述があり、拡張性に富む機体であることも特徴の一つです。

"The aircraft’s six payload spaces can be customized with cameras, communication capabilities and other payloads to suit your operational needs."
機体の6か所のペイロードスペースはカメラ、通信能力、及びその他のペイロードにより、任務の必要性に合わせてカスタマイズすることが可能である。

(下の図はIntegratorのカタログから、Nose Bayには旋回式のセンサーと追加の15ポンドのペイロード、胴体下のCenter of Gravity (CG) Bayはサイズが40 x 10 x 5インチで35ポンドのペイロード、Wing/Winglet Baysをそれぞれの主翼に2か所のぺイロードスペースで3ポンドのペイロード、Wing Hardpointsはそれぞれ15ポンドまで、1ポンドは0.4536 kg、クリックで拡大)

Integrator_bay_hardpoints

ターレットの標準搭載センサー類は光学式撮像素子、中波赤外線撮像素子、赤外線マーカー、レーザー距離測定機となります。

4.Scan EagleとIntegrator/Blackjackの比較

インシツ社(Insitu)の公式ホームページからScan EagleIntegratorとそしてRQ-21A Blackjackのページを参考にして、筆者にてExcelで下記の表を作成しました(クリックで拡大)。

Scan_eagle_integrator_blackjack

こうしてみますとRQ-21はScan Eagleより大型化しており、また水平尾翼を持たないScan Eagleに対しRQ-21は2枚の垂直尾翼を結ぶ形で水平尾翼が設けられています(下の写真はWikipediaからScan Eagle)。

Scaneagle_uav_catapult_launcher_200

5.さいごに

 前述の時事通信の報道は「将来的に研究が進めば、戦闘機が発着艦する空母の保有につながる可能性もある」としていますが、圧搾空気式のランチャーで発射されてフックシステムで着艦する無人機と、有人の戦闘機では大きく差があり、私は特に関係がないと考えます。また米海軍でも低率初期生産に入ったばかりの機体を海自が導入するか否かは分かりません。しかし、新中期防と新大綱により様々な新たな試みが検討されていることは事実であり、今後の動向を注視していきます。

この動画はYouTubeに投稿されたRQ-21の発射と飛行の様子

2014年1月 2日 (木)

新防衛大綱と新中期防が発表

1.はじめに

 既にご存じと思いますが、2013年12月17日(火)付で新防衛大綱と新中期防が公開となっています。大変遅くなりましたが今回はその件に関して記事を執筆しました。

平成26年度以降に係る防衛計画の大綱について」(PDF:609KB)

中期防衛力整備計画(平成26年度~平成30年度)について」(PDF:517KB)

2.マスコミによる事前の概要報道 

 複数のマスコミが事前に「防衛計画の大綱」と「中期防衛力整備計画(中期防)」に関して概要を報じていました。

「新防衛大綱、中国念頭“離島を守る”に重点」(2013年12月11日(水)20時36分配信 NNN)

「防衛予算23兆9700億円で最終調整へ」(2013年12月13日 4時18分 NHK)

「中期防衛力整備計画 離島防衛強化のためオスプレイ17機取得へ」(2013年12月13日(金) 21時8分 FNN)

「<中期防>オスプレイ17機、18年度までに導入」(2013年12月13日(金) 22時3分 毎日新聞)

 それぞれの報道に微妙な差異はありますが、概ね下記の点で報道は一致しており、また大きな誤りはありませんでした。

中期防では、14年度から5年間の防衛力整備の所要経費を約24兆6700億円とする

日本版海兵隊の創設

水陸両用車52両の取得

オスプレイ17機の取得

陸上自衛隊の定員は現員を維持して15万9000人とする

戦車を約300両に大幅削減し北海道と九州に集中させ、機動戦闘車99両を導入

海上自衛隊の護衛艦は6隻増の54隻とする

イージス艦を2隻増やして8隻態勢、潜水艦も5隻を新たに建造

高速で航行する小型の護衛艦を新たに導入

戦闘機部隊に偵察機部隊1個飛行隊を編入して13飛行隊に

戦闘機部隊を新たに那覇基地に増やす

F-35Aを28機導入

早期警戒機か早期警戒管制機4機を導入

空中給油機3機を導入

PAC-3 MSEの導入

「弾道ミサイル発射手段等に対する対応能力の在り方についても検討の上、必要な措置を講ずる」と敵基地攻撃能力の保有も検討する方向

陸海空共通の部隊に、滞空型無人機3機を配備する

3.具体的内容の検証

 私が新防衛大綱と新中期防を読み、特に注目したのは下記の点です。

(1).防衛大綱

(a)我が国を取り巻く情勢認識と構築を目指す海外諸国との提携

 ・まず今回の防衛大綱は中国を更に強く意識したものと言えます。

「海洋においては、(中略)沿岸国が海洋に関する国際法についての独自の主張に基づいて自国の権利の権利を一方的に主張し、又は行動する事例が見られるようになっており、公海の自由が不当に侵害されるような状況が生じている。」(1頁~2頁)

「また、中国は、東シナ海や南シナ海を始めとする海空域等における活動を急速に拡大・活発化させている。特に、海洋における利害が対立する問題をめぐっては、力を背景とした現状変更の試み等、高圧的とも言える対応を示しており、我が国周辺海空域において、我が国領海への断続的な侵入や我が国領空の侵犯等を行うとともに、独自の主張に基づく「東シナ海防空識別区」の設定といった公海上空の飛行の自由を妨げるような動きを含む、不測の事態を招きかねない危険な行為を引き起こしている。」(3頁)

 ・そして今回の防衛大綱では「統合機動防衛力」との新たな概念を打ち出しました。

常時継続的な情報収集・警戒監視・偵察(ISR)活動(以下「常続監視」という。)を行うとともに、(中略)安全保障環境に即した部隊配置と部隊の機動展開を含む対処態勢の構築を迅速に行う」(6頁)

多様な活動を統合運用によりシームレスかつ状況に臨機に対応して機動的に行い得る実効的なものとしていくことが必要である。このため(中略)、高度な技術力と情報・指揮通信能力に支えられ、ハード及びソフト両面における即応性、持続性、強靱性及び連接性も重視した統合機動防衛力を構築する。」(7頁)

 ・日米同盟の強化に関しましても引き続き記載があります。日米の一体化が施設面でも、人的にも、情報面でもさらに一体化が進むかもしれません。

「共同訓練・演習、共同の情報収集・警戒監視・偵察(ISR)活動及び米軍・自衛隊の施設・区域の共同使用の拡大を引き続き推進するとともに、弾道ミサイル防衛、計画検討作業、拡大抑止協議等、事態対処や中長期的な戦略を含め、各種の運用協力及び政策調整を一層緊密に推進する。」(8頁)

「情報協力及び情報保全の取組、装備・技術面での協力等の幅広い分野での協力関係を不断に強化・拡大し、安定的かつ効果的な同盟関係を構築する。」(8~9頁)

 ・米国以外との国の安全保障協力も記載があり、明記されている国は下記の通りです。

韓国との緊密な連携を推進し、情報保護協定や物品役務相互提供協定(ACSA)の締結等、今後の連携の基盤の確立に努める。」、「また、安全保障上の利益を共有し我が国との安全保障協力が進展しているオーストラリアとの関係を一層深化させ、国際平和協力活動等の分野での協力を強化するとともに、共同訓練等を積極的に行い、相互運用性の向上を図る。」、「さらに、日米韓・日米豪の三国間の枠組みによる協力関係を強化し、この地域における米国の同盟国相互の連携を推進する。」(9頁)

ロシアに関しては、その軍の活動の意図に関する理解を深め、信頼関係の増進を図るため、外務・防衛閣僚協議(「2+2」)を始めとする安全保障対話、ハイレベル交流及び幅広い部隊間交流を推進するとともに、地域の安定に資するべく、共同訓練・演習を深化させる。」、「また、東南アジア諸国等の域内パートナー国との関係をより一層強化し、共同訓練・演習や能力構築支援等を積極的に推進するほか、この地域における災害の多発化・巨大化を踏まえ、防災面の協力を強化する。インドとは、海洋安全保障分野を始めとする幅広い分野において、共同訓練・演習、国際平和協力活動等の共同実施等を通じて関係の強化を図る。」(10頁)

(b)我が国が整備していく防衛力
 
・その上で我が国が整備していく独自の防衛力に関しましては下記の項目が記載されました。

「領空を確実に守り抜くため、平素から諸外国の軍事動向等を把握するとともに、各種兆候を早期に察知するため、我が国周辺を広域にわたり常続監視することで、情報優越を確保する。」(12頁)

島嶼部に対する攻撃に対しては、安全保障環境に即して配置された部隊に加え、侵攻阻止に必要な部隊を速やかに機動展開し、海上優勢及び航空優勢を確保しつつ、侵略を阻止・排除し、島嶼への侵攻があった場合には、これを奪回する。その際、弾道ミサイル、巡航ミサイル等による攻撃に対して的確に対応する。」(12~13頁, 中国が島嶼部に対する攻撃と同時に、弾道ミサイルや巡航ミサイルで攻撃してくることが念頭にあると思われます。)

「また、弾道ミサイル攻撃に併せ、同時並行的にゲリラ・特殊部隊による攻撃が発生した場合には、原子力発電所等の重要施設の防護並びに侵入した部隊の捜索及び撃破を行う。」(13頁, 北朝鮮が念頭にあると思われます。)

無人装備も活用しつつ、我が国周辺海空域において航空機や艦艇等の目標に対する常続監視を広域にわたって実施する」(16頁)、「人的情報、公開情報、電波情報、画像情報等に関する収集機能及び無人機による常続監視機能の拡充を図るほか、画像・地図上において各種情報を融合して高度に活用するための地理空間情報機能の統合的強化、能力の高い情報収集・分析要員の統合的かつ体系的な確保・育成のための体制の確立等を図る」(16頁~17頁)

「各自衛隊の主要司令部に所要の陸・海・空の自衛官を相互に配置し、それぞれの知識及び経験の活用を可能とするとともに、陸上自衛隊の各方面隊を束ねる統一司令部の新設と各方面総監部の指揮・管理機能の効率化・合理化等により、陸上自衛隊の作戦基本部隊(師団・旅団)等の迅速・柔軟な全国的運用を可能とする。」(17頁)

「島嶼部への攻撃に対して実効的に対応するための前提となる海上優勢及び航空優勢を確実に維持するため、航空機や艦艇、ミサイル等による攻撃への対処能力を強化する。」、「また、島嶼部に対する侵攻を可能な限り洋上において阻止するための統合的な能力を強化するとともに、島嶼への侵攻があった場合に速やかに上陸・奪回・確保するための本格的な水陸両用作戦能力を新たに整備する。」(17頁)

「北朝鮮の弾道ミサイル能力の向上を踏まえ、我が国の弾道ミサイル対処能力の総合的な向上を図る。」、「弾道ミサイル発射手段等に対する対応能力の在り方についても検討の上、必要な措置を講ずる。」(18頁)

衛星の抗たん性を高め、各種事態が発生した際にも継続的に能力を発揮できるよう、効果的かつ安定的な宇宙空間の利用を確保する。」(18頁、下の図は「我が国の防衛と予算(案)-平成26年度予算の概要」-(PDF:4.0MB) の16頁より、クリックで拡大)

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「海賊対処のために自衛隊がジブチに有する拠点を一層活用するための方策を検討する。」(19頁、2013年11月7日(木)7時55分にも「海自ジブチ拠点拡充 邦人輸送視野、政府交渉へ」との産経新聞による報道がありました。またジブチ拠点に関しては、当ブログの2011年7月23日 (土)の記事「ジブチに建設された自衛隊初の海外基地から見えるもの」も併せてご参照ください)

陸上自衛隊:「各種事態に即応し、実効的かつ機動的に対処し得るよう、高い機動力や警戒監視能力を備え、機動運用を基本とする作戦基本部隊(機動師団、機動旅団及び機甲師団)を保持するほか、空挺、水陸両用作戦、特殊作戦、航空輸送、特殊武器防護及び国際平和協力活動等を有効に実施し得るよう、専門的機能を備えた機動運用部隊を保持する。」(19頁、ここは分かりにくい部分であると思われますので、28頁にある別表を参照しますと分かりやすいです。下はその別表、クリックで拡大、「戦車及び火砲の現状(平成25 年度末定数)の規模はそれぞれ約700 両、約600 両/門であるが、将来の規模はそれぞれ約300 両、約300 両/門とする」との注釈有。)

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海上自衛隊:「多様な任務への対応能力の向上と船体のコンパクト化を両立させた新たな護衛艦等により増強された護衛艦部隊及び艦載回転翼哨戒機部隊を保持する。」(20頁)。

航空自衛隊:「増強された警戒航空部隊」、「増強された戦闘機部隊」、「増強された空中給油・輸送部隊を保持する」(21頁)

(下の表は28頁の別表 クリックで拡大、航空偵察部隊が戦闘機部隊に編入され戦闘機部隊が12飛行隊から13機飛行隊となっているのも非常に興味深い点です。)

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駐屯地・基地等の復旧能力を含めた抗たん性を高める。」(22頁)

「武器等の海外移転に関し、新たな安全保障環境に適合する明確な原則を定めることとする。」(24頁)

(c).新大綱に関する私的まとめ
 前述しました通り新大綱は全般的に中国を非常に強く念頭に置いたものと言えます。中国による海洋進出が活発化しており、また「海洋に関する国際法についての独自の主張に基づいて自国の権利の権利を一方的に主張し、又は行動する事例が見られるようになっており」、それに伴い領海・領空・離島の主権が脅かされており、そういった活動の監視を強める為にまずISR(情報収集・警戒監視・偵察)能力の向上が新大綱では唱われていると言って良いでしょう。

 「本格的な水陸両用作戦能力を新たに整備」はその一環ですが、人工衛星や駐屯地と基地の抗堪性の向上も興味深い項目です。島嶼防衛ないしは奪還の際に、我が国に対して弾道ミサイルや巡航ミサイルによる攻撃が同時に行われる事態も想定している事を考えますと、やはり懸念されている接近阻止・領域拒否、人工衛星に対する攻撃が念頭にあると考えて良いと思われます。

 「平成23年度以降に係る防衛計画の大綱」の「動的防衛力」と今回の「平成26年度以降に係る防衛計画の大綱について」の「統合機動防衛力」の違いは何でしょう。キーワード的には「迅速かつシームレスに対応するためには、即応性を始めとする総合的な部隊運用能力が重要性を増してきている」、「平素から情報収集・警戒監視・偵察活動を含む適時・適切な運用を行い(中略)重要な要素となってきている。」と共通するものが散見されます。しかし新大綱では前大綱と比較し、その手段がより具体化され統合運用の手法も明確化されている違いがあるのではと個人的には考えます。

(2).中期防衛力整備計画(平成26年度~平成30年度)

(a).構築を目指す体制

「多様な活動を統合運用によりシームレスかつ状況に臨機に対応して機動的に行い得る実効的な防衛力として統合機動防衛力を構築する。」(1頁)

「警戒監視能力、情報機能、輸送能力及び指揮統制・情報通信能力のほか、島嶼部に対する攻撃への対応、弾道ミサイル攻撃への対応、宇宙空間及びサイバー空間における対応、大規模災害等への対応並びに国際平和協力活動等への対応のための機能・能力を重視する。」(1頁~2頁)

・陸自:「各方面総監部の指揮・管理機能を効率化・合理化するとともに、一部の方面総監部の機能を見直し、陸上総隊を新編する。その際、中央即応集団を廃止し、その隷下部隊を陸上総隊に編入する。」、「2個師団及び2個旅団について、高い機動力や警戒監視能力を備え、機動運用を基本とする2個機動師団及び2個機動旅団に改編」、「沿岸監視部隊や初動を担任する警備部隊の新編」、「連隊規模の複数の水陸両用作戦専門部隊等から構成される水陸機動団を新編する」(3頁)

・海自:「1隻のヘリコプター搭載護衛艦(DDH)と2隻のイージス・システム搭載護衛艦(DDG)を中心として構成される4個の護衛隊群に加え、その他の護衛艦から構成される5個の護衛隊を保持する。また、潜水艦増勢のために必要な措置を引き続き講ずる。」(4頁)

・空自:「航空自衛隊については、南西地域における防空態勢の充実のため、那覇基地に戦闘機部隊1個飛行隊を移動させる。また、警戒航空部隊に1個飛行隊を新編し、那覇基地に配備する。」(4頁)

(b).主要事業

「イージス・システム搭載護衛艦(DDG)、汎用護衛艦(DD)、潜水艦、固定翼哨戒機(P-1)及び哨戒ヘリコプター(SH-60K)の整備並びに既存の護衛艦、潜水艦、固定翼哨戒機(P-3C)及び哨戒ヘリコプター(SH-60J)の延命を行うほか、哨戒機能を有する艦載型無人機について検討の上、必要な措置を講ずる。また、護衛艦部隊の増勢に向け、多様な任務への対応能力の向上と船体のコンパクト化を両立させた新たな護衛艦を導入する。さらに、新たな早期警戒管制機又は早期警戒機のほか、固定式警戒管制レーダーを整備するとともに、引き続き、現有の早期警戒管制機(E-767)の改善を行う。加えて、広域における常続監視能力の強化のための共同の部隊の新編に向け、滞空型無人機を新たに導入する。このほか、海上自衛隊及び航空自衛隊が担う陸上配備の航空救難機能の航空自衛隊への一元化に向けた体制整備に着手する。」(4頁~5頁、「哨戒機能を有する艦載型無人機」とは2013年11月 4日 (月)の記事でも執筆しましたMQ-8であると思われます。また滞空型無人機を運用するのが「(陸海空)共同の部隊」としているのは興味深いところです)

「「与那国島に陸上自衛隊の沿岸監視部隊を配備する。」、「移動式警戒管制レーダーの展開基盤を南西地域の島嶼部に整備する」(5頁)

「戦闘機(F-35A)の整備、戦闘機(F-15)の近代化改修、戦闘機(F-2)の空対空能力及びネットワーク機能の向上を引き続き推進するとともに、近代化改修に適さない戦闘機(F-15)について、能力の高い戦闘機に代替するための検討を行い、必要な措置を講ずる。」、「新たな能力向上型迎撃ミサイル(PAC-3MSE)を搭載するため、地対空誘導弾ペトリオットの更なる能力向上を図る。さらに、新たな空中給油・輸送機を整備するとともに、輸送機(C-130H)への空中給油機能の付加及び救難ヘリコプター(UH-60J)の整備を引き続き進める。」(5頁~6頁、この「能力の高い戦闘機に代替」とは2013年12月18日 4時37分のNHKの報道「『F35』旧型の主力機の代替に検討」によりますとF35Aであり、「将来的に100機を上回るF35を保有することで、軍事力の増強を続ける中国に対し、航空戦力を優位に保ちたい」とのことです。下の写真二枚は筆者がJA2012会場で撮影の、上からPAC-3、PAC-3MSE、THAAD クリックで写真拡大))

Dscf0416

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「護衛艦部隊が事態に応じた活動を持続的に行うために必要な多用途ヘリコプター(艦載型)を新たに導入する」(6頁)

ティルト・ローター機を新たに導入する。さらに、現有の多用途ヘリコプター(UH-1J)の後継となる新たな多用途ヘリコプターの在り方について検討の上、必要な措置を講ずる。」(6~7頁、オスプレイよりもUH-1Jの後継が私個人としましては興味深いです。UH-X問題が解決する時が来るのでしょうか?)

「海上から島嶼等に部隊を上陸させるための水陸両用車の整備や現有の輸送艦の改修等により、輸送・展開能力等を強化する。また、水陸両用作戦等における指揮統制・大規模輸送・航空運用能力を兼ね備えた多機能艦艇の在り方について検討の上、結論を得る。」(7頁、これも非常に興味深いです。)

「全国的運用を支えるための前提となる情報通信能力について、島嶼部における基盤通信網を強化するため、自衛隊専用回線を与那国島まで延伸するとともに、那覇基地に移動式多重通信装置を新たに配備する。また、各自衛隊間のデータリンク機能の充実や野外通信システムの能力向上を図るほか、引き続き、防衛分野での宇宙利用を促進し、高機能なXバンド衛星通信網を整備する」(7頁~8頁)

「弾道ミサイル発射手段等に対する対応能力の在り方についても検討の上、必要な措置を講ずる。」(8頁)

「原子力発電所が多数立地する地域等において、関係機関と連携して訓練を実施し、連携要領を検証するとともに、原子力発電所の近傍における展開基盤の在り方について検討の上、必要な措置を講ずる。」(9頁、また2013年12月22日1:03 日経新聞が「政府、原発周囲にヘリ施設検討 自衛隊の防護迅速に」と報じました。 )

「宇宙状況監視に係る取組や人工衛星の防護に係る研究を積極的に推進し、人工衛星の抗たん性の向上に努める。」(9頁)

相手方によるサイバー空間の利用を妨げる能力の保有の可能性についても視野に入れる」(9頁)

「駐屯地・基地等の抗たん性を高める。特に、滑走路や情報通信基盤の維持、燃料の安定的供給の確保を始めとして、駐屯地・基地等の各種支援機能を迅速に復旧させる能力を強化する。」(14頁)

(c).研究開発関連

「国際競争力を強化するとの観点から、我が国として強みを有する技術分野を活かした、米国や英国を始めとする諸外国との国際共同開発・生産等の防衛装備・技術協力を積極的に進める。また、関係府省と連携の上、防衛省・自衛隊が開発した航空機を始めとする装備品の民間転用を進める。」(17~18頁)

「防空能力の向上のため、陸上自衛隊の中距離地対空誘導弾と航空自衛隊の地対空誘導弾ペトリオットの能力を代替することも視野に入れ、将来地対空誘導弾の技術的検討を進めるほか、将来戦闘機に関し、国際共同開発の可能性も含め、戦闘機(F-2)の退役時期までに開発を選択肢として考慮できるよう、国内において戦闘機関連技術の蓄積・高度化を図るため、実証研究を含む戦略的な検討を推進し、必要な措置を講ずる。」(19頁)

「大学や研究機関との連携の充実等により、防衛にも応用可能な民生技術(デュアルユース技術)の積極的な活用に努めるとともに民生分野への防衛技術の展開を図る。」

(下の図は24頁に掲載された別表 クリックで拡大、「哨戒機能を有する艦載型無人機については、上記の哨戒ヘリコプター(SH-60K)の機数の範囲内で、追加的な整備を行い得るものとする」との注釈有 )

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(d).新中期防に関する私的まとめ

 F-15Jの非MSIPをF-35Aで代替することを検討することや、PAC-3MSE、新早期警戒(管制)機、空中給油機の導入などは非常に興味深いのですが、UH-X問題などは問題の根が深く簡単には解決が難しい問題です。その一方で喫緊の課題でもあります。

4.さいごに

 こうしてみますと防衛政策は中国からの考えられるほぼ全ての脅威に対して全力を振り当てていますが、予算面で限界も見られます。防衛予算を増強するのも当然ですが、やはり景気回復に全力を挙げるのが妥当と言えるでしょう。

 *あけましておめでとうございます。本年もアシナガバチを宜しくお願い申し上げます。

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