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政治

2013年5月17日 (金)

橋下大阪市長が普天間基地司令官に風俗活用を推奨したことの問題点

(この動画はYouTube維新の会公式アカウントに投稿された【2013.5.13】橋下徹 大阪市長 登庁時 ぶらさがり取材の動画)

(この動画はYouTube維新の会公式アカウントに投稿された【2013.5.13】橋下徹 大阪市長 退庁時 ぶらさがり取材の動画)

1.はじめに 

 橋下徹大阪市長が従軍慰安婦問題に関して日本のみが批判されるのはアンフェアである旨の趣旨の主張を2013年5月13日の記者会見で展開し、また2013年5月1日に米軍普天間基地を訪問した際に同基地の司令官に風俗を活用するよう推奨したと発言した事は既に皆様も報道でご存知の事と思います。橋下発言に対し、米国防総省がコメントを出す事態にまで発展しました。

「橋下提案「ばかげている」=米国防総省」(2013年05月14日01:21 時事通信)
「国防総省内で買春を禁じる法律がある。提言はありがたいが、われわれは法と米政府の政策に従う」

今回はこの橋下市長の一連の発言内容を検証し、問題点を整理することとしました。

「慰安婦は必要だった」「侵略、反省とおわびを」橋下氏(2013年5月13日(月)11時48分 朝日新聞)

「沖縄米軍に『もっと風俗活用を』 橋下氏が司令官に発言」(2013年5月13日(月)21時19分配信 産経新聞)

 またTwitterで本人がその持論や米軍司令官への発言を繰り返し投稿しており、事実関係は間違いがないと言えるでしょう。それではこのTwitterでの投稿を検証してみます。

2.Twitterに於ける橋下市長の投稿

(1).従軍慰安婦問題に関して日本のみが批判されるのはアンフェアとの主張に関して

「日本の慰安婦制度を正当化するつもりはないが、しかし、日本「だけ」が慰安婦制度を持ったレイプ国家だと言われるものではない。」(2013年5月15日00:17の投稿)

201305150017

「第二次世界大戦当時、日本国軍だけでなく、世界各国の軍もいわゆる慰安婦制度を活用していた。」、「当時はそうだった。日本国の慰安婦制度を正当化するのではない。日本だけが不当に侮辱を受けることには反論しなければならない 」(2013年5月15日00:20の投稿)

201305150020

「戦時下では世界各国もいわゆる性奴隷を活用していたのに、なぜ日本「だけ」が性奴隷を活用していたと世界から非難を受けているのか。」(2013年5月15日08:51の投稿)

201305150851

「他の国がやっていたから日本の慰安所は良いでしょなんて一言も言ってません。慰安所はダメなのは当たり前です。しかし世界は、日本だけ特殊な性奴隷を活用していたと思っているんです。そこは違う。」(2013年5月15日09:08の投稿)

201305150908

 これら一連の投稿から橋下市長は慰安婦制度は正義に反すると考えていますが、その他の諸国も同様に買春をしており、従って日本のみが批判されるのはアンフェアであるとしていることが分かります。

(2).米軍司令官に風俗の利用を推奨した事に関して

「風俗=売春業と早合点して、そんなことは法律では許されていない!と言う声。」、「今の法律では売春業は認められていない。しかしそのレベルに達しない所で、風俗業が法律上認められている。要は最後の性行為に至らないところでの風俗業。 」(2013年05月14日15:41の投稿)

201305141541

「買春なんて誰も言ってないでしょ。日本の法律で認められている風俗業は買春でないことくらい国防総省は知らないのかね。買春は日本でも認められていない。繰り返すが、日本には法律上認められている風俗業が存在する。」(2013年5月14日23:45の投稿)

201305142345

「僕が普天間の司令官に、風俗業の活用を進言したのは、法律違反のことをしろと言っているわけではない。」、「僕は、法律上認められている風俗業を活用しろと言ったんだ。建前は止めた方が良いと。」(2013年5月14日07:24の投稿)

201305140724

「米軍は、法律上認められている風俗業にも、出入り禁止としているらしい。出入り禁止としても、軍人の性的欲求が0になるわけではない。」(2013年5月14日07:27の投稿)

201305140727

「法律上認められる風俗も、買春ではない。」、「僕か現実を見据え、法律上認められる風俗業を活用したらどうだと進言した。」(2013年5月15日11:47の投稿)

201305151147

3.橋下市長の主張の要約とそれに対する私の第一印象

橋下市長の主張を要約すると下記の三点となります。

(1)太平洋戦争中の慰安婦制度は当然許されないが、日本以外の国も買春行為があったのであり、日本のみが批判されるのはアンフェアである。また戦争中にはそういったことが起きるのは当然である。

(2)在日米軍の不祥事の問題があり、そういった性欲のコントロールする為に風俗の活用を普天間基地司令官に提言したが断られた。

(3)風俗は日本では合法であり、風俗=買春ではない。米軍は活用を検討するべきだ。

 これらに関する私の第一印象としましては、なぜ(1)の主張が(2)や(3)と結び付くのかが分かりません。戦争中の人権問題と同盟国の規律の問題は全く異なる問題です。もし関連性があるとしても(1)では慰安婦制度は許されないとしながらも、(2)と(3)で風俗を推奨するというのが根本的に矛盾していると言えるでしょう。

4.米国はどのように見ているか、米国の法規はどう規定しているか

 米国がどう考えているかに関しましては私個人の見解としましては下記三点が重大なポイントではないかと考えます。

(1)橋下市長と米軍司令官の会談の際に通訳は何と翻訳したか

(2)普天間基地司令官はどう解釈したのか

(3)風俗≠売春/買春なのか。日本ではそうであったとしても米国ではどうなのか。

 (1)及び(2)に関しましては公式資料がなく、検証する事が出来ません。しかしそのヒントとなる文献は見つける事は出来ました。米軍の準公式機関誌と言っても良い星条旗新聞です。2013年5月14日の記事"Osaka mayor: ‘Wild Marines’ should consider using prostitutes"(「大阪市長:「野蛮な海兵隊」は売春婦を使うことを考慮すべきだ」)です。そこには今回の発言を下記のように報じています。(下記は記事の一部抜粋と翻訳)

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he visited with Marine Corps Air Station Futenma’s commander last month and told him that servicemembers should make more use of Japan’s legalized sex industry.

彼(橋下市長)は先月に海兵隊の普天間航空基地司令官を訪問した際に、海兵隊員達は日本の合法なセックス産業をより活用するべきだと司令官に告げた。

Hashimoto said that the commander responded with a bitter smile and told him that brothels are off-limits to U.S. servicemembers.
橋下市長によると司令官は苦笑いをし、米国軍人は売春宿が禁じられていると橋下市長に告げた。

Marine Corps officials in Okinawa were not immediately available for comment Tuesday afternoon.
沖縄の海兵隊関係者からは火曜日の午後にコメントを直ちに得ることは出来なかった。

Patronizing a prostitute is now subject to court-martial under the Uniform Code of Military Justice.
買春行為は統一軍事裁判法により今は軍法会議の対象となる。

(引用及び翻訳終了)
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 この記事によりますと普天間基地の海兵隊関係者からはコメントが得られておらず、具体的にどの様なやりとりがあったかは分かりません。そうだとしますと5月13日の橋下市長が記者会見で述べたことが事実であると推定するしかありません。

 もしそうだとしますと、5月13日の橋下市長が記者会見で述べた内容に基づき執筆された星条旗新聞のこの報道は買春と風俗の区別をしていません。実際に筆者も風俗を英訳するならばprostitution程度しか思いつきません。

 日本は売春防止法により売春を防止する一方で、風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律により浴場業の個室で「異性の客に接触する役務を提供する営業」、「個室を設け、当該個室において異性の客の性的好奇心に応じてその客に接触する役務を提供する営業」、「性的好奇心をそそるため衣服を脱いだ人の姿態を見せる興行」など一部業種に関しては公安委員会の許可により営業を許可しています。

 しかし星条旗新聞の記事にもありましたが、米軍に於きましては「買春行為」は統一軍事裁判法により軍法会議の対象となります。そしてそれは米国本土以外の米軍兵士にも当然適用となります。

 統一軍事裁判法の第十章のPunitive Articles(懲罰規定)の第134条にGeneral article(一般条項)があり、その他の違法行為ほど違法性は強くありませんが、軍の規律を乱す行為や対外的な信用を損なう行為に対しては懲罰の対象となる旨が記載されています。

参考資料:Uniform Code of Military Justice

 そして軍法会議マニュアルはこの統一軍事裁判法、134条の一般条項に抵触する行為の一つとしてpatronizing prostitution(買春)を挙げているのです。

参考資料:Manual for courts-martial (要注意;PDF、非常に重いです)

 米国軍人は休暇中であっても、国内外及び基地内外を問わず、Uniform Code of Military Justiceが適用されます。

5.さいごに

 橋下市長は弁護士でもあります(大阪弁護士会所属 登録番号25196 この情報を日弁連の公式サイトの弁護士情報検索にて検索しますと登録があることが判る。下はそのスクリーンショット)。

25196

 弁護士と言いましても当然それぞれ得意分野がありますし、ましてや米軍の統一軍事裁判法を熟知している弁護士は日本国内ではもし居るとしてもごくわずかなのではないでしょうか。しかし日本の風俗を活用することが米軍兵士にとり違法の可能性があることは、普天間基地司令官との会談時か、またはここ数日間で橋下市長は知ったのではないでしょうか。そうだとしますと、弁護士が違法の虞のある行為を推奨していることになってしまいます。そして弁護士であれば当然知っていると思われますが、悪法も法なのです。法律が如何に不条理であっても、欠陥があったとしても、改正されるまで法律は法律として遵守する必要があります。

 そして違法であるかどうか以前の問題としまして、軍人は性犯罪を起こす可能性が高い為に風俗を活用するべきと言われたらならば、米国軍人だけに限らず、軍人は人としてどの様な気分になるしょう。そう考えますと今回の発言は非常に不適切であったと言えると思います。

2012年12月28日 (金)

第2次安倍内閣発足に思うこと

この動画はYouTubeに投稿された安倍総理の首相就任会見-首相官邸公式アカウントより-)

第2次 安倍内閣が発足しました。安倍内閣の閣僚名簿は下記の通りになっています。

首相官邸公式ホームページ 第2次安倍内閣 閣僚名簿 (平成24年12月26日発足)

 安倍総理は就任記者会見の中で「全ての閣僚に対しまして、経済再生、復興、危機管理の3つに全力で取り組むよう、指示をいたしました。」、「国益を守る、主張する外交を取り戻さなければなりません。」、「総理として、国民の生命、領土、美しい海を守り抜いていくという決意を示していきたいと思います。」と述べています。

首相官邸公式ホームページ 安倍内閣総理大臣就任記者会見 (平成24年12月26日)

 安倍氏が率いる自民党は、先の衆議院選挙中に於きましてタカ派的な公約が目立ちました。

自民党政権公約(PDF)

政権公約案 J-ファイル2012

132

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(上の画像は政権公約案 J-ファイル2012より 項目132は第22頁、項目328は第54頁に)

しかし勇ましい公約とは裏腹に、実務レベルに於きましては、選挙後は尖閣・竹島・靖国神社参拝問題で安倍総理は一転して安全運転に徹しています。

「尖閣・竹島も慎重…安倍氏、靖国参拝見送り意向」(2012年12月23日(日)19時36分配信 読売新聞)

 またロシアにも特使としてプーチン大統領とも親しい森元総理を首相特使として派遣する意向の様です。

「ロシアに森元首相を派遣へ…大統領に親書」(2012年12月22日(土)23時3分配信 読売新聞)

森氏 訪ロ・大統領と会談の方向で調整(2012年12月24日 4時39分 NHK)
「プーチン大統領は、先週、北方領土問題を巡って、『日本で再び政権を担うことになった政党の指導部から平和条約を締結したいというシグナルを聞いており、高く評価する』と述べ、建設的な対話に期待を示しています。」

 外交に関しましては日米同盟を基軸に近隣諸国との関係改善していく方針であると思われます。私個人としては色々な意味で外交は今までの経緯の延長線にありますから、保守的であるべきですし、急な政策転換は避けるべきですし、またそれは困難です。それをやろうとして失速したのが鳩山政権でした。安倍政権の方針は現実的と言えます。

 その一方で上記の様に諸外国との直接的な摩擦激化は避けながらも、防衛力強化は公約通りに進める模様です。

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(上の画像は政権公約案 J-ファイル2012より 項目112は第20頁、項目133は第22頁より)

 防衛政策を担うのは防衛大臣ですが、第2次安倍内閣では小野寺 五典氏(宮城県第6区-気仙沼など)が起用される事となりました。

(下の写真は米国防総省の公式サイトより小野寺 五典氏、 東日本大震災直後のトモダチ作戦にて 国防総省の方針にて配布自由、クリックで写真拡大)

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この動画はYouTubeに投稿された小野寺防衛大臣・就任記者会見-首相官邸公式アカウントより-)

2013年1月3日(木)追記:小野寺五典氏 公式twitterアカウント 

 まず自民党から具体的な動きがありました。2012年12月26日 午前07:19:37に佐藤正久 防衛大臣政務官が「自民党国防部会は、早速、8時から防衛計画大綱・中期見直しの議論や補正予算議論を開始します。」とつぶやいています。

Satomasahisa201212260719

 これだけであれば族議員のデモンストレーションとも言えるのですが、政府内でも防衛大綱・中期防の見直しが安倍総理の指示により開始される事が決まりました。それは官邸での記者会見平成24年12月26日(26時09分~26時22分)の防衛大臣による大臣臨時会見概要でも確認が可能です。

「防衛大綱・中期防を見直し、自衛隊の体制強化」

「日米防衛協力ガイドライン等の見直しを検討」

「普天間飛行場移設を含む在日米軍再編を進める中で、抑止力の維持を図るとともに、沖縄を始めとする地元の負担軽減を実現」

「『国家安全保障会議』の設置に向けて、国家安全保障強化担当大臣に協力をする」

 こういった防衛力増強方針は私は支持します。しかしその一方で、安倍総理自身が危機管理上の問題になる可能性があると私は危惧するのです。安倍総理の健康問題が不安材料として未だにあるのではないかと私は思います。その旨は以前にも述べたことがありました。

 安倍総理は2012年秋号の雑誌で主治医との対談で潰瘍性大腸炎が新薬により「寛解状態が続き」、検査結果で「この40年間で初めての「何もない」状態です。」が続いていると述べました。即ち「寛解状態」であって「完治」とは診断されていません。恐らくまだ投薬を必要とする状態ではないかと推測します。ここは若干の不安材料であると私は感じるのです。

 しかし総理に選出されたのですから最早後戻りは出来ません。総理として最善を尽くして、公約通りに「日本を取り戻す」しかないのです。

 安倍総理は記者会見で「強い経済は、日本の国力の源であります。」、「この政権に課せられた使命は、まず、強い経済を取り戻していくことであります。」と安倍総理は述べました。私もそれが日本の最大の強みの一つであり、それを維持向上することが最大の課題であると考えます。そしてその経済力の源ともなっている製造業や技術力もです。それが結果として日本の国際的発言力を高め、税収を増やし、また最先端技術を防衛装備品にも転用する事が可能となると私は考えます。その旨は過去に当ブログでも何度か執筆したことがありました。

「ジブチに建設された自衛隊初の海外基地から見えるもの」(2011年7月23日 (土))

「再び美しい国を目指して」(2012年9月28日 (金))

「J-31中国新型ステルス戦闘機に関する考察補足」(2012年11月 9日 (金))

 方法論としては賛否両論があると思われますが、安倍総理のこの認識は賛同しており、総理となったからには是非とも日本を立て直して欲しいと思います。

 恐らくこの記事が当ブログ今年最後の記事となるでしょう。本年は皆様に大変お世話になりました。来年度もアシナガバチを宜しくお願い申し上げます。それでは良いお年を。

2012年12月30日(日)追記:「安倍首相「尖閣、交渉余地ない」=北方3.5島返還論、否定せず」((2012年12月30日(日)18:39 時事通信)

2012年9月28日 (金)

再び美しい国を目指して

(これは自民党公式アカウントによりYouTubeに投稿された2012年9月26日(水)の安倍自民党第25代新総裁の記者会見の動画

 安倍元総理が自民党第25代総裁に選出されました。総裁の再登板は1955年の自民党結党以来初めてとの事です。特に2007年9月に体調不良により総理・総裁を辞職(ソース元:「安倍氏、自民新総裁に…決選投票で石破氏を逆転」2012年9月26日14時46分  読売新聞)したことを考えますと、極めて異例と言えるでしょう。

 党員票も含めました2012年9月26日(水)第25代自民党総裁選挙の第1回投票結果は下記の通りです(ソース元:Twitter 自民党公式アカウント2012年9月26日13:45の投稿)。

石破茂 199票(議員34票/党員165票)
安倍晋三 141票(議員54票/党員87票)
石原伸晃 96票(議員58票/党員38票)
町村信孝 34票(議員27票/党員7票)
林芳正 27票(議員24票/党員3票)

 過半数を獲得した候補が居なかったことから、石破氏と安倍氏の決選投票(党所属国会議員のみによる投票)となり安倍晋三 108票、石破茂 89票との投票結果となり安倍元総理が新総裁に選出されました(ソース元:Twitter自民党公式アカウント2012年9月26日(水)14:16の投稿)。

 首相経験者が総裁に再登板することも前例がありませんが、今回の自民党総裁選の経緯自体も極めて異例づくしと言えるでしょう。そもそも今回は石破氏と石原氏の決選となると見られていました。

 安倍氏が石原氏よりも優位となったのは、石原氏が谷垣総裁を総裁選出馬断念に追い込んだと見られていること、石原氏による「中国は尖閣に攻めてこない」、「福島サティアン」等の度重なる失言や、それに加えて尖閣諸島をめぐる中国への対応など安倍氏の得意とする外交・安全保障分野が総裁選の争点となり、これが安倍・石破両氏への支持を伸ばすこととなったとの分析も一部にはあります。

「自民総裁選、安倍が逆転勝利も!決選投票で石破を制するとの見方」(2012年09月24日 ZAKZAK)

「安倍・石原氏の2位争いが焦点…自民党総裁選」(2012年9月25日10時18分 読売新聞)

 もしこれらの報道にあります分析通りだとしますと、中国と韓国は藪をつついて蛇を出してしまったことになるのです。彼等が強硬な姿勢を貫き尖閣諸島や竹島への対応を深刻化させた事により、結果としまして次期総理の最有力候補である自民党新総裁に強硬派を誕生させる結果を招いてしまったとも言えます。逆に言えば日本側もこれ以上は事態を深刻化させない自制心が要求されるのかもしれません。

 本記事冒頭の記者会見の動画にもあります通り、第一回目投票で石破氏が党員票の過半数を獲得したのにも関わらず、国会議員のみによる決選投票では安倍氏が新総裁に選出された事に対して批判があります。石破氏が党員票の過半数の支持を得たことは私も個人的には高く評価するべきであると考えていますし、また安倍氏は「重く受け止めなければならない。協力することが求められている。来たるべき総選挙を勝ち抜くことができる強力な布陣にしたい」と述べたと報道があります(ソース元:「石破氏と協力強調…安倍新総裁、早期解散要求も。」(2012年9月26日17時58分 読売新聞)。この発言を知った時に石破氏を幹事長ポストに起用する可能性が高いと私は解釈していましたが、実際にその方向性であり、本人も受け入れた模様です。

「安倍氏に敗れた石破氏、自民幹事長に起用へ」(2012年9月27日(木)10時3分配信 読売新聞)

 非常に冷徹な考えかもしれませんが、石破氏が総裁選で地方票の過半数を獲得したのも実力ですが、議員票で伸び悩んだことも彼の実力なのです。そして最終的には勝ち残ったのも安倍新総裁の実力だと言えます。

 それでは安倍新総裁・石破新幹事長の自民党政策は如何なるようなものとなるのでしょうか。読売新聞の記事「自民党総裁選、5氏の立会演説会の発言要旨」(2012年9月14日(金)23時16分)によりますと、その日に自民党本部で行われた総裁選立候補者による立会演説会では安倍氏と石破氏は下記の通り述べています。

安倍晋三氏発言要旨
「尖閣諸島海域に中国の公船が領海侵犯した。日本の領土、領海、国民の命を断固守ると宣言したい。」
「日米同盟をより対等にする。集団的自衛権の行使を認めるよう憲法解釈を変更しなければならない。」
「北朝鮮による拉致問題は、北朝鮮に国際的な圧力をかけ、対話に持ち込むしかない。」
「消費税を上げる前にデフレを脱却しなければならない。」

石破茂氏発言概要
「我が国の主権、領土が脅かされ、税と社会保障、農業、農村もこのまま行けばどうなるとの思いを大勢が持っている。」
「独立主権国家にふさわしい憲法を作る。国家安全保障基本法を作り、集団的自衛権の行使を可能にする。」

 また9月24日午前のTBSの番組では沖縄県の尖閣諸島など離島防衛を念頭に、海兵隊を自衛隊に創設すべきだとの考えを安倍氏と石破氏は示しました(ソース元:「安倍・石破氏「海兵隊を」…石原・林氏は慎重」(2012年9月24日10時55分 読売新聞))。

 安倍新総裁と石破氏では安全保障政策に限りますと非常に共通点が多いことが分かります。しかし安倍新総裁には非常に懸念材料が多いと私個人としては考えます。その旨は当ブログの2012年09月06日(木)の記事「尖閣諸島を如何に防衛すべきか」のコメント欄で2012年09月09日(日)23時39分に述べた事があります。

 特に安倍新総裁の場合は健康上の問題により総理を辞職した過去が私を含め多くの有権者の脳裏に焼き付いています。この件に関しまして安倍新総裁は09年末に国内で発売された新薬が効き、現在は「ほぼ完治した」(ソース元:「安倍新総裁、山登ってアピール「持病ほぼ完治」」(2012年9月27日09時00分 読売新聞))と説明していますが「ほぼ完治」では完治ではありませんから十分ではないかもしれません。

 また参議院に於ける自民党の議席数は過半数に遥かに達しないのです。2012年9月12日現在の参議院の議席配分(総議席:242)は下記の通りとなっています。

民主党 89議席
自民党 83議席
国民新党 3議席
公明党 19議席
新党大地・真民主 2議席
国民の生活が第一 12議席
みんなの党 11議席
共産党 6議席
社民党 4議席
たちあがれ日本 3議席
新党改革 2議席
無所属 8議席

 このデータから自民党と公明党が連立を組んだとしましても過半数には遠く及ばず、例え次期衆議院選挙で自民党が単独で過半数を獲得したとしましても、非常に厳しい政権運営となることが予想されます。それに安倍氏が精神的に耐えられるかなのです。

 今日の日本の政界の混乱の多くは与党が参議院で過半数を有しない事に起因すると私は考えます。この様な状況で首相が指導力を発揮出来る訳がないのです。安倍→福田→麻生→鳩山→菅→野田と政権が短命で変わり続ける悪循環は打ち切るべきだと言えるでしょう。尤もこの状況を生み出したA級戦犯が安倍氏なのですが。

 幸か不幸か衆院解散・総選挙の先送りを主張してきた輿石氏の民主党幹事長の再任で、野田首相が谷垣自民党総裁と交わした「近いうち」の衆院解散の合意が事実上、白紙になるとの見方が有力です(ソース元:「輿石幹事長再選、首相の解散戦略に影響も。」(2012年9月24日09時57分  読売新聞))。そうだとしますと2013年度衆参同時選挙の可能性が高まります。

 若しくは自民・民主・公明の大連立が現段階では最も現実的な選択肢であると個人的には考えます。但しそれは野田総理が旧社民党系と旧小沢派を排除すればとの条件でですが。野田総理の中国脅威論や尖閣の対応はむしろ自民党に近いと考えます。しかし民主党内には旧社民党出身の議員も少なからずおり、それが決断出来ない政治という不幸な状況を生じさせていると私は考えます。

野田首相が26日午後(日本時間27日未明)、ニューヨークで行った記者会見の要旨(2012年9月27日18時46分 読売新聞)
「【尖閣諸島】歴史上も国際法上も我が国固有の領土で、領有権の問題は存在しないというのが(日本政府の)基本だ。そこから後退する妥協はありえない。もともと日本国民が持っていたものを国が買うことにした。あくまで(国内の)所有権移転の問題だ。(日中)関係に悪影響を及ぼさないよう、理性的な、冷静な対応を堅持し、様々なレベル、チャンネルを通じて対話を図りたい。中国国内の邦人や日系企業に攻撃、略奪、破壊行為が行われており、どんな理由があろうと暴力は許されない。」

 安倍新総裁率いる自民党は政権を奪還し、そして日本の為にも安定政権を築き「美しい国」を今度こそ実現出来るか、そのチャレンジは始まったばかりと言えるでしょう。

(下の写真二枚は日本国内の某所である日に筆者にて撮影。 日本は数多くの美しい自然に恵まれている。クリックで画像拡大)120826_095401

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(下の写真はある日に筆者にて撮影した名古屋駅。クリックで拡大。日本の国力の根源は経済力にある。強い経済力と世界最先端の技術力を有していればこそ強固な防衛力を実現出来る)111009_151301(下の画像は最近ネットに流出した中国の新型ステルス機J-21かJ-31かF60? J-20より形状が洗練された印象を受ける。これも中国の経済力の賜物と言える。クリックで拡大)New_j60_17_18_212_25_fifth_generati

2012年9月26日 (水)

日米安保は尖閣諸島防衛の抑止力として機能するか

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(上の写真は米国防省の公式サイトに掲載されているErin A. Kirk-Cuomo氏により撮影された9月19日(水)に行われたパネッタ米国防長官と習近平国家副主席の会談 米国防省の方針により画像は配布自由 クリックで画像拡大)

 NHKよる2012年9月21日(金)12時10分の報道「米 中国に“尖閣は日米安保内”と説明」によりますと、アメリカのパネッタ国防長官が9月19日に訪問先の中国で習近平国家副主席と会談した際に、尖閣諸島が日米安保条約の適用範囲内だと直接説明したとのことです。

 この会談に関しましては国防総省の公式サイト掲載記事に概要が記載されているのみで、NHKの報道にあります「尖閣は日米安保内」との発言は掲載されていませんので、その発言は公式の資料では確認出来ません。下記に国防総省の公式サイト掲載記事の一部内容を抜粋し、翻訳を行います。
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Panetta said his message on the topic is consistent to any country claiming disputed territory in the East China Sea or South China Sea: while the United States doesn’t take sides in territorial disputes, “we strongly urge the parties to exercise restraint and to work together to find a peaceful resolution to these issues.”
この件に関するメッセージは東シナ海ないしは南シナ海で領土問題を主張している如何なる国に対するものと一貫しているとパネッタ氏は述べた:米国は領土問題には一方の味方をすることはないが、「我々は関係国に自制と、これらの問題に対する平和的な解決法を見付けるよう互いに努力するよう求める。」

(引用及び翻訳終了)
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 9月20日(木)のアメリカの議会上院に於ける国務省・キャンベル次官補による尖閣諸島が安保条約の適用範囲内であり、それと同時に「対話による平和的な解決を望んでいる」(「尖閣問題 米公聴会で中国の姿勢に懸念の声」日本テレビ系(NNN) 9月21日(金)10時8分配信)との発言とも、このパネッタ国防長官の発言は矛盾しません。領土問題は関係国の話し合いによる解決が最も望ましいのであり、その一方で不幸にも米国の同盟国が「施政の下にある領域」に攻撃を受けた場合はその同盟国との条約上の取り決めにより米国が「共通の危険に対処するよう行動する」のも当然のことなのです。

 この様に米国の政界でも中国の一連の動向に懸念が生じつつあります。それでは米国内の世論は中国をどの様に見ているのでしょうか。日本経済新聞の2012年9月21日10:55分の記事「米世論調査「中国は最も危険な国」」との非常に興味深い記事があります。この記事によりますと

中国は信頼できる国 26%
日本は信頼できる国 62%

「米国に対して最も危険な国」
中国 26%
イラン 16%
北朝鮮 13%

となっています。一般市民1004人と専門家305人が回答しており、沖縄県尖閣諸島を巡る日中間の摩擦が高まる前に実施したとのことです。しかしこの日経新聞この記事名には日本側の若干の願望が含まれているのかもしれません。

 日経新聞の上記記事の「米世論調査」の原本はピュー・リサーチ・センターの公式サイトよりダウンロードが可能です。

U.S. Public, Experts Differ on China Policies (PDF)

この一般市民に対する世論調査は同資料の29頁(37枚目)によりますと、2012年4月30日~2012年5月13日の間に実施され、米国50州と全米50州とコロンビア地区在住の1004人の18歳以上の成人を対象に電話にて無作為で実施されたとしています。

専門家に対する世論調査は同資料の30頁(38枚目)によりますと、2012年5月1日~2012年5月15日の間に実施され、54人の政府関係者、52人の退役軍人、74人の財界首脳、93人の学者、シンクタンク・NGO責任者、32人のマスコミ関係者を対象に実施したとの事です。

この世論調査を見ますと軍事面よりも経済面で中国を競争相手と見ているニュアンスが強いかもしれません。

その一方で日経新聞の紹介にもあります通り、米国にとっての危険な国のトップとして挙げられています。(下の表は同資料の13頁(21枚目)より 、左側の数値は一般世論、右側の数値は分野ごとの専門家の見解の割合を%で表している。中国はトップで一般世論で26%、退役軍人で50%となっている。その一方で財界関係者ではイランを最大の脅威と見る割合が50%で中国は23%となっている)

Countries_representing_greatest_dan
。(下の表は同資料の8頁(16枚目)より 、「どの国が信用出来るか」との設問で左側の数値は一般世論、右側の数値は分野ごとの専門家の見解の割合を%で表している。英国は一般世論で78%、政府関係者と退役軍人で100%となっている。日本は一般世論で62%、政府関係者で96%、退役軍人で100%、財界で94%、学者で96%、マスコミ関係者で100%となっており、政府関係者や退役軍人を含む専門家からの信頼は極めて高い。三位はフランスとなっている)

Most_in_us_trust こういった日本に対する米国の信頼は重要です。信頼関係は結果として同盟関係の強さに繋がります。

 中国は尖閣諸島が日米安保条約の対象となることに反発しており、これが意味することは中国が尖閣諸島が日米安保条約の対象となっていることを恐れていることであり、結論として米国の「尖閣諸島は日米安保条約の適用範囲内」との方針は抑止力となっているのです。

2012年8月17日 (金)

2012年8月の一連の竹島・尖閣諸島問題に思うこと

 この数日間で竹島と尖閣に関する日本と近隣諸国の問題が深刻化しました。 まず8月10日に韓国の李明博大統領が竹島に上陸したことから日韓関係が急速に悪化したものです。Dokdo_photo (上の写真はWikipediaより竹島 クリックで画像拡大 撮影者はRachouette, teacher in Seoul, SOUTH KOREA

「疑いなく韓国領土」竹島上陸の李大統領(2012年8月11日00時45分 読売新聞)

 李明博大統領が竹島上陸を強行してから、ロンドンオリンピックでは銅メダルを巡り日韓サッカー戦が行われましたが、試合終了後にも韓国側の不適切な行動が日本側の感情を逆撫でしました。韓国の朴鍾佑(パク・チョンウ)選手が、竹島(韓国名・独島)に関し、ハングルで「独島はわれわれの領土」と書かれたメッセージボードを掲げた問題です。

(これがYouTubeに投稿されたその問題の行動)

 竹島上陸を強行した理由に関しまして、李明博大統領は8月13日の大統領府での姜昌煕(カンチャンヒ)国会議長らとの昼食会で、いわゆる従軍慰安婦問題で進展が見られないことがあったと説明したと一部マスコミが報じました。

竹島上陸、背景に慰安婦問題…韓国大統領が説明(2012年8月14日01時05分 読売新聞)

今回の李明博大統領の竹島上陸の背景に関しまして、2012年08月13日 (月)のNHKの時論公論「竹島上陸 どうなる日韓関係」がより詳しく解説しています。 このNHKの報道には竹島訪問強行の要因として下記二点を列挙しました。

1.去年8月の従軍慰安婦への賠償を求めている人達が韓国政府を相手取って起こしていた裁判で、韓国の憲法裁判所が「韓国政府は解決のための努力をしていない」、「やるべきことをやっていない政府は憲法違反だという決定を下した。この判決をきっかけに韓国政府の対日政策は大きく方向転換した。

2.政権最後の年になって、大統領の兄を始め政権を支えてきた有力者が次々と逮捕されたり、引退に追い込まれた。

 更に状況を悪化させましたのが李大統領が天皇陛下の訪韓の条件としまして「心から謝罪」を要求したことです。

李大統領、天皇陛下の訪韓「心から謝罪」が条件(2012年8月15日00時25分 読売新聞)

読売新聞によりますとこの発言は「李大統領の発言は14日、忠清北道の大学で行われた教員らとの会合の席上であった」としており、公式ソースでは確認出来ませんが、その他の一部報道によりますとその際の表現が極めて不穏当であったとされています。これに対して日本側は強く反発しました。

首脳相互訪問中止も…韓国大統領発言で対抗措置(2012年8月15日21時39分 読売新聞)
野田首相は15日、首相官邸で記者団に対し、大統領の発言を「理解に苦しむ発言で遺憾だ」と批判した。

天皇謝罪要求、安倍元首相「常軌を逸している」(2012年8月14日23時48分 読売新聞) 「常軌を逸している。そもそも天皇陛下が訪韓される環境がない中にあって、大統領の発言はあまりにも礼を失している」と批判した。

政府、韓国政府に対し公式反論の方針確認(2012年8月15日13時09分 読売新聞)
松原国家公安委員長は15日午前、都内の靖国神社で記者団に「礼を失した発言だ。(大統領の)竹島の訪問も含め、一国の最高指導者として適切な行動ではない」公明党の山口代表も、都内で記者団に「李大統領は日本にも理解のある大統領だと思われてきた。どうしてああいう発言をするのか、非常に驚いている」

内閣官房長官記者会見 平成24年8月15日(水)午後 韓国側の天皇陛下等に係る発言について
「我が国政府から韓国政府に対して、天皇陛下の韓国ご訪問について取り上げたことはありません。そのような中、昨14日、李明博韓国大統領が天皇陛下について昨日のような発言をしたことは、先ほど野田総理も申し上げたかと存じますが、理解に苦しむところであり、極めて遺憾であります。」

外務大臣会見記録(平成24年8月15日(水曜日)13時58分~ 於:大臣接見室前)
「我が国政府からは,韓国政府に対して,天皇陛下の韓国ご訪問について取り上げたことはございません。そのような中で,李明博大統領が昨日のような発言をしたということは理解に苦しみますし,極めて遺憾だということであります。以上です。」

 竹島問題が深刻化する一方で、同時進行的に香港の抗議船が中国の領有権を主張する為に尖閣へ出航しました。

香港の抗議船、尖閣へ出航…中国の領有権主張(2012年8月12日22時48分 読売新聞)

8月12日の香港の民間反日団体「保釣行動委員会」によるこの抗議船出港は中国政府がほぼ容認したのではないかとの分析もあります。

香港の尖閣抗議船、中国政府が航海容認?(2012年8月13日19時38分 読売新聞)

 この香港の抗議船は8月15日午後3時51分、日本の領海内に侵入しました。 この香港の民間団体のメンバーのうち7人が尖閣諸島の魚釣島に8月15日17:30頃に上陸しましたが、島に残った5人は沖縄県警により逮捕されたとNHKが報じています。さらに海上保安本部は、魚釣島から離れようとした船を午後6時40分すぎに巡視船2隻で挟み込んで停船させ、船にいた男9人を不法入国の疑いで逮捕しました。

尖閣 領海侵犯で残る9人も逮捕(8月15日 21時25分 NHK)

 尖閣と竹島では全く異なる要因があります。それは日本側が実効支配しているか否かです。現実問題として、根本的に実効支配している国が圧倒的に優位となります。実効支配をしているのであれば、物理的な力で相手国の不法侵入を阻止し、または万が一侵入された場合におきましても、身柄を拘束する事が出来ます。

 逆に我が国が実効支配をしていなければ、たとえ相手国の首脳がその地域を訪問せんとしても、物理的にそれを阻止する事は不可能です。そして奪還するとすれば、軍事力を行使しなくてはならなくなってしまいます。しかし日韓の場合はそれは困難と言えるでしょう。日本は日米安保条約を、韓国は米韓相互防衛条約をそれぞれ米国と締結しており、日韓両国は米国の同盟国であるからです。これが相互に政治的にも軍事的にも抑止力として機能します。また日韓が衝突しますとロシア、中国、北朝鮮がどう動くかも分かりません。

 逆に言えば尖閣と沖ノ鳥はその意味で実効支配を死守しなくてはなりません。その一方で北方領土と竹島に関しても主張は継続すべきと個人的には考えます。そうすれば日本は諦めないとの印象を国際社会に与えられるからと個人的に考えるからです。

 その一方で中国の軍事的脅威は更に高まりつつあります。最近は中国海軍が一部艦艇に巡航ミサイルを搭載し始めている旨が海外の一部メディアにより報じられています。Diplomat誌2012年08月13日記事China’s Growing Long-Range Strike Capability( 中国の長距離攻撃能力の増強)はその一つです。下記にその記事の一部内容の抜粋と翻訳を行います。
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the People’s Liberation Army Navy (PLAN) may be testing a navalized version of the 4,000km-range Dong Hai-10 (DH-10) land-attack cruise missile (LACM), which relies integrated inertial navigation, GPS guidance, terrain contour mapping, and scene-matching terminal-homing to reach its target.
人民解放軍海軍(PLAN)は4000Km射程の東海-10(DH-10)対地攻撃巡航ミサイルの海洋版を試験しており、そしてそれは統合慣性航法装置、GPS誘導、地形差高線地図作成、映像判別最終誘導を目標到達に使用する。

In addition to their long range, accuracy (the DH-10 has a 10m circular error probable), and the difficulty of tracking them, LACMs give a belligerent the ability to launch multidirectional attacks to penetrate enemy air defense networks at a low altitude.
長距離、精密 (DH-10は10Mの平均誤差半径を有する)、そして追跡の困難さに加え、LACMは交戦国に低高度で敵国の防空システムに侵入する為に多方向からの攻撃を発射する能力を付与する。

Andersen Air Force Base on Guam, a key base for U.S. operations in the Asia Pacific, as well as Okinawa, would be appealing targets for a multi-directional LACM offensive, especially as both are said to be severely lacking in air defense and hardening, leaving aircraft and critical infrastructure exposed to a devastating surprise attack.
沖縄と同様にアジア太平洋地域に於ける米国の作戦の主要基地であるグアムのアンダーセン空軍基地は特に両基地とも防空と耐久性に著しく欠けるとされており、多方向からのLACM攻撃の絶好の攻撃目標となりやすく、航空機と重要な設備を壊滅的な奇襲に脆弱性を残す。

“No one, including the U.S., has ringed their countries with enough SAM [surface-to-air] batteries to defend against all the azimuths that a low-flying cruise missile might approach from,” Rear Admiral (Ret) Michael McDevitt, now a senior fellow at the Center for Naval Analyses, told The Diplomat.
「低空を飛行する巡航ミサイルが接近するかもしれない全ての方位に対して、米国を含めてどの国も十分なSAM (地対空)誘導弾部隊を国土に配備していない」と現在では海軍分析センターで上級研究員を務めるMichael McDevitt少将(退役)はDiplomat誌に述べた。

(引用及び翻訳終了)
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 この記事ではDH-10の射程が4000Kmとなっていますが、別の資料では射程を1500Km~2000Kmとしています。

日本周辺国の軍事兵器 livedoorwiki DH-10

また2008年度に米国防総省が発表した資料では2000Km以上との分析です。

ANNUAL REPORT TO CONGRESS Military Power of the People’s Republic of China 2008 (PDF ファイル第56頁)

英語版Wikipediaでは4000Kmとなっています。

 何れにしましても巡航ミサイルを軍艦に搭載することにより、陸上配備型より運用に柔軟性が増し、また更に攻撃可能となる範囲が増すことは間違いがりません。日本は巡航ミサイル対策を更に増強する必要があるかもしれません。

 中期防衛力整備計画(平成23年度~平成27年度)の第4頁には「南西地域において早期警戒機(E-2C)の整備基盤を整備し、常時継続的に運用し得る態勢を確保する」との記述が見受けられます。南西地域のこういった防空体制の強化は喫緊の課題と言えます。

(この動画はNorthrop Grummanの公式アカウントがYouTubeに投稿したE2Dの簡単な説明動画。E2Dは巡航ミサイル対処も重視している。)

2012年6月17日 (日)

朝日新聞「中国、北朝鮮に軍用車両 昨年8月 安保理決議に違反」報道の奇怪

ShipSpotting.com
© Captain Haddock

(上の写真は問題のカンボジア船籍の貨物船「HARMONY WISH」、全長 x 巾:84mX13m、総トン数:1999、 載貨重量トン:3720 t)

上の動画はYouTubeに投稿された2012年4月15日の北朝鮮軍事パレードの様子、問題の車両は1:00~1:23に登場)

 朝日新聞が2012年6月13日03時00分に「中国、北朝鮮に軍用車両 昨年8月 安保理決議に違反」と報じました(朝日新聞の記事の全文を読むには会員登録が必要となります。無料会員コースがあり、その場合は1ヶ月に3件までの記事を読むことが可能です)。

 北朝鮮の弾道ミサイル開発に中国が関与している疑惑があることは当ブログでも2012年4月22日 (日)の記事「北朝鮮の新型ICBMに関する二つの疑惑」でも執筆しており、新型弾道ミサイルの運搬に使われていた車両が中国製であることが裏付けられた事に関しては、私はそれ程は驚いていません。しかしこの朝日新聞の記事は様々な観点から大変興味深いと言えますので、今回は続報の意味も兼ねて新記事を執筆することとしました。

 この記事の概要は下記の通りです。

1.問題の車両4両を運搬したのはカンボジア船籍の貨物船「HARMONY WISH」(1999トン)。

2.この船は2011年08月01日に上海を出港し、2011年08月04日に北朝鮮の南浦に到着。日米韓の情報衛星が航路を追跡していた。(下の地図はGoogleマップより上海=A地点と南浦=B地点 )


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(下の写真はGoogleマップより北朝鮮の南浦)


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3.この船が2011年10月03日に大阪港に入港した際に、第5管区海上保安本部が任意で立ち入り検査を実施したところ、輸出の目録が発見された。車両は各専門家の分析や当ブログの過去記事の通りにWS51200。

4.この件は内閣情報調査室を通じて外務・防衛両省、首相官邸に報告された。

5.日本側はこの情報を米韓両国に提供したが、北に対して強い影響力を有する中国を刺激しない為に、米国主導で各国政府はこの事実を伏せる判断をした。

6.上記の経緯は「複数の日本政府関係者が朝日新聞の取材に明らかにした。

 この朝日新聞による報道は奇奇怪怪です。中国と北朝鮮が秘密裏に行った取引を日米韓が事前に察知可能であったこと、そしてこういったインテリジェンスの話がどういったルートで何故表面化したのかが非常に不可解であると言えます。

 この朝日新聞による報道には日米韓の情報衛星が貨物船「HARMONY WISH」を追跡していた旨の記述がありますがそうだとしますと日米韓はこの貨物船を注目していた理由があったのです。そう考えますと取引があることを事前に察知したのではないでしょうか。また別の朝日新聞の記事「金総書記称賛の手紙も発見 軍用特殊車両密輸の船から」(2012年6月14日8時6分)によりますと、「HARMONY WISH」は海上保安庁が以前からマークしていたとの事です。そして2012年06月13日10:17:26 EDTのArmy Timesの記事"Reports: N. Korea missile truck came from China"(北朝鮮のミサイル運搬トラックは中国製)では"Japanese authorities tracked the ship by satellite and searched it after it had delivered its cargo, when it transited through Japan the following month, the reports said."(「報道によると日本の当局が衛星でその貨物船で追跡し、翌月に日本を通行した際に、その貨物船を貨物配達後に捜索した」)と報じており、日本主導の情報収集・追跡・捜査であったことを示唆する報道となっていました。何れにしましても、日米韓の三か国のインテリジェンスには中国と北朝鮮の間の極秘取引を何らかのルートで察知する能力があることが分かるのです。

 そもそもこの件ですが、誰が朝日新聞にリークしたのかを考えますと非常に興味深く奇奇怪怪であると言えます。この朝日新聞による報道では「複数の日本政府関係者」となっていました。また2012年6月13日11時56分の読売新聞の記事「中国、ミサイル用特殊車両を北朝鮮に輸出」も「複数の日本政府関係者が13日、明らかにした」としいます。これ以外にも2012年06月13日10:17:26 EDTのArmy Timesの記事"Reports: N. Korea missile truck came from China"(北朝鮮のミサイル運搬トラックは中国製)では"NHK, Japan’s public broadcaster, and other media later had similar reports, also citing unnamed government sources."(「日本の公共放送であるNHKやその他の報道機関が、匿名の政府関係者を引用し同様の報道をした」)と報じました。この「複数の政府関係者」が誰を指すのかは不明です。報道機関がそれを明らかにることはないでしょうし、今後もそれが明るみに出ることはないでしょう。しかし複数の報道機関が報じており、これはソースの情報源が広範囲に亘っているか、情報源が積極的に各マスコミに広く接触しようとした様子が窺えます。

 しかしこれは機密情報である筈です。少なくとも米国政府としましては、この事実を伏せる判断をし、日韓慮両国もその方針に同意した筈ですから、これは一種の外交機密と言えます。そうだとしますと、もしこの事実を漏洩したのが公務員であった場合は、国家公務員法第100条の公務員の守秘義務違反の疑いもあるのではないかとも言えるのです。尤も判例によりますと「秘密であるためには、国家機関が単にある事項につき形式的に秘扱の指定をしただけでは足りず、非公知の事項であって、実質的にもそれを秘密として保護するに価すると認められるもの」を指すのですから、今回の情報がそれに該当するか否かは議論の余地があると言えます(少なくとも件の運搬車両が中国製であることはまず間違いがないことは各方面から指摘があった旨を当ブログ過去記事でも執筆したが、但し日米韓でこれを公表しないこととしたその方針は秘密とも言える)。もし「秘密」に該当するとしますと政府としましては漏洩元を探しているのでしょうか。少なくとも公式レベルではそうしている気配は感じられないのです。それどころか政府首脳の会見には余裕の雰囲気すら見受けられます。

平成24年6月13日(水) 内閣官房長官記者会見 午前

 この記者会見のリンク先の動画では、藤村官房長官は具体的な情報を求める記者団の質問に対し「インテリジェンスの問題」として回答を避けていますが、特に3:30~4:30頃では笑みを浮かべてすらいるのです。

 日本政府内部でも様々な意見があることがは考えられます。米国でもそれは同じです。2012年4月19日の米国務省の記者会見では下記のやりとりがありました。
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(北朝鮮に関する質問と回答はこの動画の10:30~12:00にあり)

QUESTION: Sure. And the U.S. is confident of that? The U.S. can take China at its word that there isn’t that type of cooperation?
記者からの質問:「米国としてそれ(中国が北朝鮮に弾道ミサイル開発に協力していない、国連安保理決議に違反していない)に自信はありますか?そういった協力がないという中国側の言葉を米国は信じても良いのですか?」

MR. TONER: Well, again, I think we take them at their word. There is a UN mechanism. There’s a UN sanctions committee that exists to look into these allegations.
国務省TONER報道官:「繰り返しますが、私は彼等の言葉を信じて良いと思います。国連の機能があるのです。これらの申し立てを吟味する為に国連安保理制裁委員会が存在します。」

QUESTION: Sorry, just to make sure, you do believe them?
記者からの質問:「恐れ入りますが、再度確認の意味で(質問をさせて下さい)、彼等を信用しますか?」

MR. TONER: Yes.
国務省TONER報道官:「はい」

(引用及び翻訳終了)
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 ところがパネッタ国防長官は同じ日の米下院軍事委員会の公聴会で、北朝鮮のミサイル計画には、「中国から何らかの支援があることは確かだ」と発言しました(下の動画の0:40~0:55で中国の関与を明言している)。

 しかし今回のリークの場合はその規模と官房長官の対応から考えまして、日本政府首脳が関与している可能性があると個人的には考えます。もしそうだとしますと、何故この時期なのか、野田政権の真意は何かが興味深いところです。

参考資料:

国際連合安全保障理事会決議第1718号 和訳 (官報告示外務省第598号(平成18年11月6日発行))

国際連合安全保障理事会決議第1874号 和訳 (官報告示外務省第328号(平成21年6月19日発行))

2012年6月 8日 (金)

森本敏氏の防衛大臣起用から考える防衛大臣の資質

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(上の写真はWikipediaより森本敏新防衛大臣 Joi Ito氏が2007年10月25日, 10:05に掲載 クリックで画像拡大)

森本敏・拓殖大教授が民間人で初となる新防衛大臣となりました。

防衛相に森本敏・拓殖大教授が内定・・・民間人初(2012年6月4日10時51分 読売新聞)

自衛官から外務省に、自民ともパイプ・・・森本氏(2012年6月4日13時19分 読売新聞)

 この件に関しましては数多久遠様も別途「森本新防衛相についての懸念」との記事を執筆されています。今回の人事に関する興味深い論点が執筆されていましたので、それに関しまして当ブログでも触れたいと考え、新記事を執筆することとしました。

懸念①&②文民統制の点で問題/議員ではない:これに関しましては二つの観点から論じられています。(1)森本新防衛大臣が自衛官であったことからシビリアンコントロールの観点から問題を指摘する見解(2)民間人であって政治家ではないので責任を担いきれないのではないかとの懸念

 まず(1)のシビリアンコントロールの問題を論じたいと思います。森本新防衛大臣が1965年~1979年の間に航空自衛官であったことから、日本国憲法第六六条第二項の「内閣総理大臣その他の国務大臣は、文民でなければならない。」との規定に抵触するのではないかとの指摘です。しかしこの批判は現在では本人が民間人ですので的外れです。過去にも永野茂門・法務大臣(羽田内閣)や中谷元・防衛庁長官(小泉内閣)の実例があります。

 小泉第一次内閣当時の中谷元・防衛庁長官に関します憲法第六六条第二項との兼ね合いに関する政府見解は下記の通りです。

平成13年5月22日「衆議院議員平岡秀夫君提出憲法第六六条第二項の文民規定に関する質問に対する答弁書

・「文民」は、その言葉の意味からすれば、「武人」に対する語であって、「国の武力組織に職業上の地位を有しない者」を指すものと解される。

・元自衛官は、過去に自衛官であったとしても、現に国の武力組織たる自衛隊を離れ、自衛官の職務を行っていない以上、「文民」に当たる

 またこの件に関しまして大臣臨時会見概要 平成24年6月4日(22時47分~23時10分)に於きまして、森本防衛相本人はこの問題に関しまして下記の通りに述べています。
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A:「 文民である内閣総理大臣が自衛隊の最高の指揮監督権を持っておられ、国の予算や防衛の体制は、全てが国会の審議を経て承認をいただいて国の防衛の体制が成り立っているわけで、国の防衛に任ずる国務大臣、文民である国務大臣、防衛大臣も内閣総理大臣の指揮監督の下に、自衛隊の隊務を統括するという任務が与えられているわけで、先進国の中では、国防大臣、国防長官が必ずしも国民から選ばれた議会のメンバーであるという場合でないケースも見られるわけで、そのことが必ずしもシビリアン・コントロールという本来の目的と趣旨を損なうものではないと、私は考えているわけです。」

(引用終了)
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 日本国憲法第六十七条には「内閣総理大臣は、国会議員の中から国会の議決で、これを指名する。この指名は、他のすべての案件に先だつて、これを行ふ。」とありますので、自衛隊の最高指揮官たる内閣総理大臣(自衛隊法第七条)は国会議員となります。

 次の(2)の民間人であるとの懸念に関しましては憲法第六八条第一項に「内閣総理大臣は、国務大臣を任命する。但し、その過半数は、国会議員の中から選ばれなければならない」とありますので、逆に言いますと民間からの起用は憲法上認められており、何ら問題はないのです。防衛大臣以外でも国務大臣である以上は重責を担う訳であり、防衛大臣のみを民間人の任命不可とする積極的な理由はありません。

懸念③:森本氏の持論:これに関しましてはやはり大臣臨時会見概要 平成24年6月4日(22時47分~23時10分)に於きまして、森本防衛相は記者団の指摘に下記の通り答えています。
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Q:「大臣は今まで、集団的自衛権について、その行使を容認するというような発言であったり、記述を度々されてきたかと思います。この考えについてはお変わりないのかということと、今後、集団的自衛権の行使を可能にするといったような政策の指示を行うことはあるのでしょうか。」

A:「私は、昨日まで学者というか、大学で教育に携わりつつ、一方で研究という事務を行ってきたわけです。学者とか研究者というのは、自由な発想で、自由に物を考えて、いろいろな意見を多くの人と闘わせながら、最も現実の政策を以て、どのように貢献できるのかということに従事する仕事に携わってきました。その間、今、ご指摘のように、集団的自衛権という問題についても、私は一研究者、一学者として、個人の考え方があったことは確かであり、それは認めるところです。しかし今日、大臣としての拝命を受けて、野田政権の閣僚の一員になっているわけです。我が国政府が従来から集団的自衛権という問題を、有権解釈として認めていないということは十二分に理解しているところでありますし、 私は野田政権の方針の下で、自分の大臣としての職務を全うするつもりでありますので、私の任期中、大臣としてこの問題について、集団的自衛権の考え方の変更をするという考え方は、毛頭ありません。」

(引用終了)
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 私は集団的自衛権の問題に関しまして、意見を変えたとの批判に関しましては的外れであると考えます。その組織に所属するからには、その組織のルールに従うのが社会通念的にも当然であると考えるからです。

 また憲法上も「天皇又は摂政及び国務大臣、国会議員、裁判官その他の公務員は、この憲法を尊重し擁護する義務を負う。」との憲法尊重擁護義務が日本国憲法第九九条に規定されています。尤もそれは日本国憲法第一九条には「思想及び良心の自由は、これを侵してはならない。」とあり、また同第二一条には「集会、結社及び言論、出版その他一切の表現の自由は、これを保障する。」とありますので、個人の見解や心情、言論を制限するものではありません。即ち閣僚としての立場と、個人としての立場は異なる事までを否定するものではないのです。また余談ですが、憲法尊重擁護義務は日本国憲法第九六条に憲法改正の規定が定められていますので、憲法改正の議論を封じるものではありません。

 即ち野田内閣の一員となったからには、野田内閣の憲法解釈に則って実務を遂行するのが当然なのです。その一方で野田内閣の一員としての立場と個人としての立場が異なるのは何ら問題がありません。

 法学に於きましては「悪法も法なり」との格言があります。例え悪法であったとしましても、その法律自体は現行法なのですから、国民はその法律が改正されるまでは従う義務があるのです。

 それでは次ですが海外は森本新防衛大臣の起用をどう見ているのでしょうか。読売新聞の2012年6月5日10時42分の報道「米国防総省『同盟強化を継続』・・・森本氏に好意的」によりますと「オバマ政権は、安全保障問題に詳しく、米政府当局者との人脈も深い森本氏の起用を好意的に受け止めている。」と報じられています。しかしこれに関しましては公式ソースを確認することは出来ませんでした。

 その一方で中国側の反応に関しましては、日経新聞の2012年06月04日22:47の記事「民間起用の防衛相に中国が警戒感 野田内閣改造 各国が詳報」が「中国政府系のニュースサイト、中国新聞網は森本防衛相について『日米軍事同盟を強固にして中国と対抗しようという傾向がある』と中国側は報じている旨を記事に掲載していました。

 野田総理が防衛大臣に民間人を抜擢した理由は何でしょう。森本敏・拓殖大教授の防衛相起用に関しまして野田首相は、「安全保障に関する我が国の第一人者の一人だ。我が国を取り巻く安全保障環境が不透明となる中、大いに力を発揮していただけると確信している。情報発信にも万全を尽くしてもらえる」(2012年6月4日13時51分 読売新聞報道)とその理由を述べています。この「我が国を取り巻く安全保障環境が不透明となる中」に関する言及は実は以前にもより具体的で明確な形でありました。

 野田総理は2011年10月16日に行われました平成23年度航空観閲式の内閣総理大臣訓示で「我々が踏まえなければならないのは、自然災害だけではありません。いざという時にしっかりこの国を守れる自衛隊でなくてはなりません。」、「挑発的な行動を繰り返す北朝鮮の動き、軍事力を増強し続け周辺海域において活発な活動を繰り返す中国の動き我が国を取り巻く安全保障環境は不透明さを増しております。」(リンク先は首相官邸公式ホームページ) と述べました。

この動画は防衛省公式アカウントがYouTubeに投稿したその際の訓示の動画 北朝鮮と中国を名指しした場面は7:10-7:50の間)

 そうであれば、そもそも今年1月の内閣改造で田中直紀氏を起用するべきではなかったとの指摘をすることも可能かもしれませんが。私見ですが、田中直紀氏は素人である為に批判された訳ではないと考えます。北澤俊美氏が鳩山内閣発足の時に防衛大臣に就任した際に、2009年10月01日付けの朝雲新聞でのインタビューに対してこの様に述べています。

Q.「防衛省改革の方向性について見解を。」

A.「私もまだ詳しくないので三役会議を開いて政務官の一人に精査してもらって民主党としての防衛省改革が新たにできるのか早急に対応したいと思っています。」

 この回答では北澤氏が「素人」であることを認めているのです。しかしこの受け答えが特に問題となることはありませんでした。それどころか北澤防衛相は評価が民主党政権の中では相対的に高かったことは注目に値します。即ち大臣に求められる資質は知識ではなく、政治家としての指導力が必要不可欠だと言えます。この点に関しましては森本新防衛相は未知数なのです。この防衛大臣に求められる資質に関しまして北大路機関のはるな様が2012年6月4日の記事「新防衛大臣に森本敏氏 元3佐の外交官で防衛大臣補佐官経験のある大学教授」の中で「必要なのは防衛政策を把握し代表し運用を司る人材」であり、「素人ではないかと言われつつ調整型の人材であれば知識量が能力を図るものではないという証明のような大臣もいました。」とコメントしています。 また興味深い分析としまして米国のRobert Gates前国防長官を例に「仮に総選挙が行われ自民党政権となった場合でも防衛大臣として留任させることが出来るでしょう。 」ともしているのです。それが現実になるかは兎も角(衆議院で自民党が過半数以上を獲得したとしても、参議院では議席が大幅に不足する)、森本新防衛相の自民党とのパイプに野田総理が着目したとの分析も無きにしも非ずなのです(久遠数多氏の記事はるな氏の記事にもそういった記述があり)。

 今回の内閣改造は民主党政権の一つの転換点になるかもしれません。野田総理の真意はまだ分かりませんが、自民党との連携を模索する動きも見えますし、解散・総選挙となる可能性すらあります。展開次第では2009年の政権交代の結論付けとなる民主党の佳境となるのかもしれません。

2012年4月30日 (月)

小沢裁判「無罪判決」は実質上の有罪判決

動画はANNnewsCH公式アカウントによりYouTubeに投稿された小沢氏無罪を報じる速報

皆様もご存知の通りに小沢一郎民主党元代表(69)に対する陸山会事件の判決が4月26日(木)午前10時過ぎに、東京地裁(大善文男裁判長)で無罪判決が言い渡されました。NHKのサイトに今回の判決の要旨が掲載されていますので、今回はその内容を抜粋した上で、私個人が感じた事を執筆したいと思います。斜体文字が判決の要旨から抜粋したもので、普通の文字は私の見解です。

「主文 被告人は無罪」

(上記に関する私の見解)
 まずこれが最も重要な点です。少なくとも東京地裁は小沢氏が無罪、即ち「シロ」との判断を下しました。しかしこの「シロ」の判断ですが、極めて「クロ」に近いものなのです。しかし100%「クロ」でなくてはならず、99%の「クロ」の場合は、有罪としないのが刑事事件の鉄則なのです。それでは「シロ」との結論を下した根拠に関して分析してみます。

収支報告書の記載内容〕
「平成16年分の収支報告書には、本件4億円は記載されておらず、りそな4億円のみが記載されている。 本件土地の取得及び取得費の支出は、平成16年分の収支報告書には計上されず、平成17年分の収支報告書に計上されている。」

(上記に関する私のコメント)
まずこれが客観的事実です。これが虚偽記載に該当するのか、小沢氏は共謀共同正犯となるのかが争われたのが陸山会事件です。

総務省「政治資金収支報告書の要旨(官報)」

平成16年分(平成17年 9月30日付け官報) 陸山会はPDFファイルの162頁より

平成17年分(平成18年 9月 8日付け官報) 陸山会はPDFファイルの164頁より

下の画像は総務省「(参考)収支報告関係の罰則」(PDF)よりPhoto
〔本件預金担保貸付、りそな4億円の転貸の目的〕
「石川元秘書が、本件4億円を本件売買の決済に充てず、本件預金担保貸付を受け、りそな4億円の転貸を受けた目的は、本件4億円が本件土地の取得原資として被告人の個人資産から陸山会に提供された事実が、収支報告書等の公表によって対外的に明らかとなることを避けるため、本件土地の取得原資は金融機関から調達したりそな4億円であるとの対外的な説明を可能とする外形作りをすることにあった(このような本件預金担保貸付の目的を「本件4億円の簿外処理」という)。」、「石川元秘書が、本件4億円の簿外処理を意図した主な動機は、本件土地の取得原資が被告人の個人資産から提供された事実が対外的に明らかになることで、マスメディア等から追求的な取材や批判的な報道を招く等して、被告人が政治的に不利益を被る可能性を避けるためであった。」

〔本件合意書の目的〕
石川が、本件売買契約の内容を変更し、所有権移転登記について本登記を平成17年1月7日に遅らせる旨の本件合意書を作成した目的は、陸山会が本件土地を取得し、その購入代金等の取得費を支出したことを、平成16年分の収支報告書には計上せず、1年間遅らせた平成17年分の収支報告書に計上して公表するための口実を作ることにあった(このような本件合意書の目的を、「本件土地公表の先送り」という)。

〔本件土地の所有権移転時期及び収支報告書における計上時期〕
「本件土地の所有権は、本件売買契約に従い、平成16年10月29日、陸山会に移転した。」、「石川元秘書は、本件土地公表の先送りを実現するために、本件土地の売主と交渉したが、不成功に終わり、本件土地の所有権の移転時期を遅らせるという石川元秘書らの意図は、実現しなかったというべきである。」、「陸山会は、平成16年10月29日に本件土地を取得した旨を、平成16年分の収支報告書に計上すべきであり、この計上を欠く平成16年分の収支報告書の記載は、記載すべき事項の不記載に当たり、平成17年1月7日に取得した旨の平成17年分の収支報告書の記載は、虚偽の記入に当たる。」

〔収支報告書における本件土地の取得費等の計上時期〕
「これ(平成16年10月5日および同月29日、本件土地の売買に関して陸山会から支出された合計3億5261万6788円を)を計上しない平成16年分の収支報告書の記載及びこれを平成17年の支出として計上した平成17年分の収支報告書の記載は、いずれも虚偽の記入に当たる。

〔本件4億円の収入計上の要否〕
「本件4億円は、本件土地の取得費等に費消されたものと認められ、りそな4億円は、陸山会の資金繰り等に費消されているから、このいずれも被告人からの借入金として計上する必要がある。」、「本件4億円を収入として計上していない平成16年分の収支報告書の記載は、虚偽の記入に当たる。」

(上記に関する私の見解)
 裁判所によるこれらの事実認定は非常に重大であると私は考えます。少なくとも石川元秘書による虚偽記載に実質上の「有罪判決」を出しているのです。辻褄合わせの為に様々な工作をしていた旨を裁判所は事実認定しました。またその動機を「被告人の個人資産から提供された事実が対外的に明らかになることで、マスメディア等から追求的な取材や批判的な報道を招く等して、被告人が政治的に不利益を被る可能性を避けるためであった。」としているのも注目に値します。

〔被告人の故意・共謀〕
「被告人の政治的立場や、金額の大きい経済的利害に関わるような事柄については、石川元秘書ら秘書は、自ら判断できるはずがなく、被告人に無断で決定し、実行することはできないはずであるから、このような事柄については、石川元秘書ら秘書は、被告人に報告し、了承の下で実行したのでなければ、不自然といえる。」、「本件土地公表の先送りや本件4億円の簿外処理について、石川元秘書ら秘書が、被告人に無断でこれを行うはずはなく、具体的な謀議を認定するに足りる直接証拠がなくても、被告人が、これらの方針について報告を受け、あるいは、詳細な説明を受けるまでもなく、当然のことと認識した上で、了承していたことは、状況証拠に照らして、認定することができる。」、「さらに、被告人は、平成16年分の収支報告書において、本件4億円が借入金として収入に計上されず、本件土地の取得及び取得費の支出が計上されないこと、平成17年分の収支報告書において、本件土地の取得及び取得費の支出が計上されることも、石川元秘書や池田元秘書から報告を受け、了承していたと認定することができる。」、「「しかし、被告人は(略)本件土地の取得及び取得費の支出が平成17年に先送りされたと認識していた可能性があり、本件土地の取得及び取得費の支出を平成16年分の収支報告書に計上すべきであり、平成17年分の収支報告書には計上すべきでなかったことを認識していなかった可能性がある。」、「また、被告人は、本件4億円の代わりにりそな4億円が本件土地の購入資金に充てられて借入金になり、本件4億円を原資として設定された本件定期預金は、被告人のために費消されずに確保されると認識した可能性があり、(中略)したがって、本件4億円を借入金として収支報告書に計上する必要性を認識しなかった可能性がある。」

(上記に関する私の見解)
 これは一連の流れに関して実質的に小沢氏が報告を受け、了承していたと裁判所が見ていると言うことです。しかしその一方で「収支報告書における虚偽記入ないし記載すべき事項の不記載の共謀共同正犯として、故意責任を問うために必要な要件」を「認識しなかった可能性」があった為に無罪との判断を東京地裁は下しました。ここは分かり難い部分ですので少し解説をします。

 ここで裁判所が言っているのは錯誤の問題です。即ち犯人側に事実誤認があった、想定外の出来事が起きた、法律の解釈の誤りがあったことを言います。例えば下記の様な事例です。

AはBを殺害しようとB宅に深夜に忍び込み、布団の中で睡眠中である様に見えたBを刃物で刺した。しかしBは犯人が刺す前に既に病気で死亡していた(この場合は犯人が実際に行った行為は死体損壊のみなので、死体損壊のみしか成立しません)。

Aを殺害しようとして銃を発砲したが、弾がそれてBに命中してしまった(この場合は殺意をもって銃を発射したので、誰に命中したかは論点ではなく、殺人罪は成立します)

Aは商品Bを販売することは合法であると思っていたが、実際は違法であった(この場合は違法であることを知らないことは違法性阻却事由とはならないので、違法となります)。

 しかし今回の様に故意があることを要件とした場合は、被告側に事実の錯誤があった場合は犯罪が成立しないこともあります。事実の錯誤で無罪となった有名な判例としましては、大正13年に発生した「たぬき・むじな」事件があります。これは猟師が「ムジナ」を狩ったのですが、「タヌキ」の捕獲を禁じた狩猟法に違反するとして起訴された事件です。生物学的には「ムジナ」=「タヌキ」となっています。しかしその猟師と彼の地元では「ムジナ」≠「タヌキ」との認識がありました。1925年6月9日に大審院(当時の最高裁)は無罪判決を出しています。

 これを今回のケースに当てはめますと、小沢氏が当該不動産取引は交渉が平成16年に妥結せず平成17年度に先送りされたと誤認していた可能性があること、りそな4億円が土地購入に充てられ小沢氏からの4億円は消費されないと誤認していた可能性があることから無罪となりました。

 それでは刑事事件で「可能性がある」ことのみで無罪となる理由は何でしょうか。それはまず立証責任はそれを主張する側にあるからです。刑事裁判では即ち検察側/指定弁護士側となります。それを立証出来ないのであれば無罪なのです。もし被告人側に自分が無罪である旨を立証する責任があるとすると、例えば1年前、5年前、10年前のアリバイを被告人は立証する必要があり、それはほぼ不可能に近いこととなります。今回の小沢裁判は異なりますが、刑事裁判は国家対個人の対決です。検察側が圧倒的に有利であることは言うまでもありません。

 刑事裁判で有罪となりますと、刑事罰(場合によっては行政処分も)を科せられるだけだはなく、民事裁判(損害賠償)でも不利になり(刑事事件で無罪であっても民事裁判では損害賠償を命じられることもある)、そして社会的制裁(退学・解雇、村八分、差別、いじめ、本人だけではなく家族や親戚に対しても)もあります。刑務所で懲役刑/禁固刑に服すだけではなく、場合によっては死刑で国家により生命を奪われる可能性もあるのです。刑事事件で「間違えていました。申し訳ありませんでした。」はあってはなりません。

 その一方で今回の判決は実質的には有罪判決であると私は考えます。その旨は裁判所による上記事実認定からも読み取れる部分もありました。下記の様に言及する場面もあった模様です。

「地裁判決、小沢氏の政治姿勢と法廷発言も批判」(2012年4月27日08時17分 読売新聞)「供述に変遷や不自然な点がある」、(小沢氏が)「政治資金収支報告書は一度も見ていない」と発言したことについては「全く信用できない」

 私はこの裁判に関して以前は有罪になる可能性も十分あると考えていました。その旨を私は何度かtwitter上でつぶやいたこともあります。(下は筆者の2012年04月21日(土)19:19:06のつぶやき クリックで画像拡大)

Twitter20120421
 私がそれを感じたのは読売新聞の2012年01月12日03時09分の記事「『4億円、関心ないのか』裁判官が小沢氏ただす」の部分でした。この記事を読んだ時に裁判官は小沢氏の説明に明らかに納得をしていない、そう感じたのです。それが判決での厳しい指摘に繋がったと言えるでしょう。

 しかし前述しました通り、疑わしきは罰せずが刑事裁判の大原則です。今回の裁判は虚偽記載の問題のみなのですから、その関与の立証が不十分であったので、無罪判決は当然です。それは尊重される必要があります。

 今回の無罪判決は尊重しますが、その一方で小沢氏は資金に関しては非常に問題の多い政治家だと考えます。三人の秘書が有罪となっていること、四億円の原資に関して説明が度々変わっていること(2007年2月「献金してくれた皆さまのお金」、2009年10月「銀行融資」、2010年1月「個人資産」2012年1月「両親からの相続財産。自身の本の印税や議員報酬」、「正確な記憶がなかっただけで、(原資に関する説明を)変えていない」)、そもそも不動産を多数保有した理由等です。これらは今回の裁判では直接的に問題とはなっていません。今回の裁判はあくまでも虚偽記載に関するものであった為です。また私が列挙した問題も起訴に至っていません。それは小沢氏の違法行為を立件するに足る証拠がいずれも不十分であったからです。無罪判決を歓迎している方々は、小沢氏のその他のこういった問題はどう考えるのか、そこは別の論点として考察することは出来ない事ではありません。それに関しては人によって意見は様々でしょう。不動産を幾ら所有したとしても、それ自体は何ら違法性はありません。しかし著しく不可解であると言わざるをえないのです(固定資産税、維持費やその他の管理費用もどうなっているのか、実質的にコスト)。その動機や不動産取得の過程で何かしら違法なものがある、少なくとも社会通念に照らして不適切な何かがあると考えるのが自然と言えるでしょう。

 小沢氏は裁判で無罪と言えども、それを免罪符とせず、しっかりと説明する義務があるのではないでしょうか。

2012年2月19日 (日)

イラン危機が更に高まる

 2012年1月11日にイランの首都テヘランでイランの核科学者がイラン国内で爆弾テロにより何者かにより暗殺された事件は記憶に新しいことと思います。

「イラン核科学者、車に爆弾投げ込まれ死亡」(2012年1月11日22時48分 読売新聞)

 この事件を彷彿とさせる連続爆弾テロ事件が今度はイスラエル外交官に対して発生しました。各報道等からご存知のことと思いますが、インド(ニューデリー、2月13日(月)午後3時)、グルジア(トビリシ、2月13(月))、タイ(バンコク、2月14日)の世界三カ国でイスラエル大使館の車が何者かにより爆弾を仕掛けられ、インドでは実際に爆発してイスラエル大使館関係者に負傷者が出た事件です。その旨は日本国の外務省のホームページでも確認する事が出来ます。

タイ:バンコク都内における爆発事件の発生に関する注意喚起 2012年02月14日

そして下の動画は一連の爆弾事件のCNNによる報道です。

 2012年2月13日(月)16:15:09 ESTのAirForceTimesの記事"Israeli diplomats targeted in bomb attacks"(「イスラエル外交官が爆弾攻撃で狙われる」)に詳細な情報が掲載されています。下記はその記事の内容一部抜粋と翻訳です。
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The blast in New Delhi set a car ablaze and injured four people, including an Israeli Embassy driver and a diplomat’s wife; the device in Georgia was discovered and safely defused.
ニューデリーの爆発は車を炎上させ、イスラエル大使館の運転手と外交官夫人を含む4人を負傷させた;グルジアの爆発物は発見され安全に処理された。

The attackers in India and Georgia appeared to have used “sticky bombs” attached to cars by magnets, similar to weapons used against Iran’s nuclear officials.
インドとグルジアの攻撃者は磁石により車両に付着する"引っ付き爆弾"を使用した模様であり、イランの核関係者に対して使われた武器に似ている。

The New Delhi attack took place just after 3 p.m. a few hundred yards (meters) from the prime minister’s residence as the diplomat’s wife headed to the American Embassy School to pick up her children, said Delhi Police Commissioner B.K. Gupta.
デリー警察B.K. Gupta長官は外交官夫人が米国大使館学校に彼女の子供達を迎えに行こうとした際に、ニューデリーの攻撃は午後3時ちょうどを過ぎに首相官邸から数百ヤード(メートル)離れた場所で発生したと述べた。

When the minivan approached a crossing, she noticed a motorcyclist ride up and stick something on it that appeared to be a magnetic device, he said. The car drove a short distance, there was a loud sound and then an explosion, and the car caught fire, he said.
ミニバンが交差点に近づいた時に、彼女はバイクが近づき車に磁石の装置に見える何かをくっつけたのを見たと彼は述べた。車は短距離を走り、大きな音と共に爆発があり、車が炎上したと彼は述べた。

The Israeli Defense Ministry said the woman, Tal Yehoshua-Koren, the wife of a Defense Ministry official based in New Delhi, suffered moderate shrapnel wounds and was treated at a hospital by Israeli doctors.
被害者女性であるニューデリー駐在の国防省職員夫人Tal Yehoshua-Korenが破片による中等傷を負い、イスラエルの医師により病院で治療を受けたとイスラエル国防省は述べた。

Her driver, Manoj Sharma, 42, and two people in a nearby car had minor injuries, Gupta said.
彼女の運転手、Manoj Sharma、42歳と近くの車の2名が軽症であったとGupta長官は述べた。

Authorities in the former Soviet republic of Georgia said an explosive device was planted on the car of a driver for the Israeli Embassy in the capital of Tbilisi.
旧ソ連邦の一部であったグルジアの当局者は、首都のトビリシにあるイスラエル大使館の運転手の車に爆発物が仕掛けられていたと述べた。

Shota Utiashvili, spokesman for the Georgian Interior Ministry, said the driver noticed a package on his car’s undercarriage and called police, who found and defused a grenade.
運転手は彼の車の車台の不審物に気が付き、警察に通報し、警察は手榴弾を発見し信管を取り除いたとグルジア内務省報道官のShota Utiashvili氏は述べた。

(引用及び翻訳終了)
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 そしてこの記事はイスラエル側とイラン側の双方の主張も掲載していました。イスラエル側はこの事件でイランとヒズボラが関与したと非難しており、それに対してイラン側は今回のテロ事件がイスラエルの口実であると批判しています。その箇所に関しましては私はあえて引用と翻訳をしませんでした。事実関係のみを紹介するべきだと考えた為です。しかしタイの爆弾事件で事件の構図がある程度見えて来ました。下記に2012年02月14日(火)15:50:16 ESTのMarineCorpsTimesの記事"Israel blames Iran for series of Bangkok blasts"(「イスラエルがバンコク連続爆発事件でイランを批判」)に詳しい情報がありますので、此方も内容の一部抜粋と翻訳を行います。
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The series of blasts in Bangkok wounded four Thai civilians and blew off the leg of an Iranian who had fled a house carrying what looked like grenades after a cache of explosives ignited there, apparently by mistake.
バンコクでの連続爆発はタイの4人の民間人を負傷させ、爆発物の貯蓄を隠れ家で明らかに誤って引火させた後に、手榴弾の様なものを持って家から逃げたイラン人の脚部を吹き飛ばした。

When police searched the Iranians’ home, the bomb squad found and defused two explosives, each made of three or four pounds of C-4 explosives inside a pair of radios, and National Police Chief Gen. Prewpan Damapong said the bombs were “magnetic” and could be stuck on vehicles.
警察がイラン人の自宅を捜索した際に、爆弾処理班が2つの爆弾を発見し処理していており、それぞれ3ないしは4ポンドのC-4爆薬が1ペアの無線機の中にあり、国家警察総監のPrewpan Damapong将軍は爆弾が磁石式であり車にひっつけることが出来たと述べた。

The first blast in Bangkok ripped off part of the roof of an explosives-filled house where the three Iranians were staying, police said.
最初の爆発は3人のイラン人が住んでいた爆発物満載の家の屋根の一部を破壊したと警察は述べた。

Surveillance video from just after that blast showed separate images of each of the three suspects walking down the middle of a residential street.
爆発直後の監視カメラは3人のそれぞれの容疑者が住宅街の通りの中心を歩いている映像を別々に映した。

One man — identified by police as Saeid Moradi — could be seen wearing a baseball cap and a dark jacket. He carried a large backpack over one shoulder and what appeared to be two portable transistor radios — one in each hand.
そのうちの一人-警察によりSaeid Moradiと特定-は野球帽と薄黒い色のジャケットをしているのが分かった。彼は片方の肩に大きなバックパックと、二つの携帯型無線機の様に見えるものをそれぞれの手に持っていた。

“He tried to wave down a taxi ... and the driver refused to take him,” Police Gen. Pansiri Prapawat said. Moradi responded by hurling an explosive device — possibly a grenade — that partially destroyed the taxi and wounded its driver.
「彼はタクシーを止めようとしたが、運転手は乗車拒否した」とPansiri Prapawat警察将軍は述べた。Moradiは爆発物-恐らく手榴弾-をタクシーに投げつけて仕返しをし、タクシーを破壊し運転手が負傷した。

Police then tried to apprehend Moradi on a nearby street. He hurled a grenade at them, “but somehow it bounced back” and blew off his leg, Pansiri said.
警察は近くの通りでMoradiを拘束しようとした。彼は警察に手榴弾を投げつけたが、「何故か跳ね返ってきて」彼の脚を吹き飛ばしたとPansiriは述べた。

Police said a second Iranian, Mohummad Hazaei, was detained at Bangkok’s international airport; he had been seen in the closed-circuit TV video also carrying a large backpack. He wore sunglasses, a T-shirt, pants and tennis shoes.
二人目のイラン人、Mohummad Hazaei、はバンコク国際空港で拘束された;彼はクローズドサーキットの監視テレビにやはり大きなバックパックを持っているのが映っていた。彼はサングラス、Tシャツ、パンツ、テニスシューズを着用していた。

The third Iranian, dressed in camouflage shorts, carried nothing.
三人目のイラン人は迷彩柄のショートパンツを着用し、何も持っていなかった。

Three Thai men and one Thai woman were wounded and treated at a hospital, said Dr. Suwinai Busarakamwong.
3人のタイ人男性と1人のタイ人女性は負傷し病院で治療を受けているとSuwinai Busarakamwong医師は述べた。

Authorities are trying to trace Moradi’s movements. Initial reports indicated he arrived in Thailand from Seoul, South Korea on Feb. 8, Pansiri said, landing at the southern resort of Phuket, and staying several nights in a hotel in Chonburi, a couple hours drive southeast of Bangkok.
当局はMoradiの動向を調べている。第一次報告によると彼は2月8日に韓国のソウルからタイに到着したことを示しているとPansiriは述べ、南部リゾートのプーケット着陸し、バンコクから車で2時間のチョンブリのホテルで数日間滞在した。

A bomb disposal unit checked a dark backpack near the spot where Moradi fell and police found Iranian currency, U.S. dollars and Thai money, Pansiri said.
爆弾処理班はMoradiが倒れた近くの場所で薄黒い色のバックパックを確認し、イラン通貨、米国ドル、タイ貨幣を見付けたとPansiriは述べた。

Will Hartley, head of the Terrorism & Insurgency Center at IHS Jane’s in London, said it’s “unclear why Iran would risk an attack on Israeli interests in India, when India has been broadly supportive of Iran during the recent nuclear sanctions debate, and is one of Iran’s most important trade partners.”
ロンドンのIHS Jane'sのテロリズム破壊工作センターの責任者であるWill Hartleyは「最近の核に関する制裁の議論でインドはイランを公に支持しており、最も重要な貿易パートナーであるのに、何故イランがインド国内でイスラエルの利益を攻撃するリスクを冒すのかがよく分からない」と述べた。

“The attacks in India, Georgia and now Thailand have all been highly amateurish,” he added. “And lack the sophistication that would normally be expected from an operation executed by either Hezbollah or Iran’s own external operations wing, the Quds Force.”
「インド、グルジア、そして今回のタイでの攻撃は全て非常にアマチュア的であった」と彼は付け加えた。「ヒズボラやイラン本体の海外工作部隊クドス軍により遂行される作戦に見られる通常のち密さが欠けている」

Indian Home Minister Palaniappan Chidambaram said it appeared to be a terrorist attack carried out by a “very well-trained person.”
インド内務大臣Palaniappan Chidambaramはテロリスト攻撃は「非常に訓練された人物」により遂行されたように見えると述べた。

(引用及び翻訳終了)
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この記事にあります、屋根が吹き飛んだ隠れ家の映像と防犯カメラに映った容疑者三人の画像は下のCNN報道の動画で見る事が出来ます。

この記事にある3人目のイラン人もマレーシアのクアランプールで拘束されました。

暗殺チーム…バンコク爆発事件のイラン人拘束 (2012年2月15日23時01分  読売新聞)

この三人が拘束されている事により、やがて事実関係や背後関係が明らかになるでしょう。タイでの爆発は犯行グループにとっても予想外の事故であったに間違いがありません。それにしても誤って隠れ家で爆弾を爆発させて、タクシーに乗車拒否されると逆ギレをしてタクシーに手榴弾を投げつけ、逮捕を逃れようと警察に投げた手榴弾が跳ね返ってきて自分が怪我するというのはみっともない話ではありますが。

イスラエル側は一連の爆弾事件に関してイランを批判しています。

イスラエル外務省公式ホームページ2012年2月13日"Response to terror attacks in Delhi and Tbilisi"(「デリー及びトビリシでのテロ攻撃に対する反応」)

もし万が一にもイラン側の関与があったとなれば、イスラエルが何らかの報復攻撃を行う可能性があります。イランの核施設攻撃の可能性以外にももう一つ懸案が増えたとも言えるでしょう。

そして米国は更に強硬な経済制裁を準備している旨が2012年2月14日(火)15:40:41 ESTのMarineCorpsTimesの記事"U.S., Europe consider risky penalty on Iran"(「米国と欧州が危険度の高いイランに対する制裁を考慮」)に報じられました。下記に一部抜粋と翻訳を行います。
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The United States and Europe are considering unprecedented punishment against Iran that could immediately cripple the country’s financial lifeline. But it’s an extreme option in the banking world that would come with its own costs.
米国と欧州はイランの金融ライフラインを直ちに無力化するイランに対する前例のない制裁を考慮している。しかしそれは銀行業界では極端な選択肢であり犠牲は免れないであろう。

The Obama administration wants Iran evicted from SWIFT, an independent financial clearinghouse that is crucial to the country’s overseas oil sales.
オバマ政権はイランを海外との原油販売に欠かせない独立した金融手形交換所であるSWIFTから排除を望んでいる。

But such a penalty could send oil prices soaring when many of the world’s economies are still frail. It also could hurt ordinary Iranians and undercut the reputation of SWIFT, a banking hub used by virtually every nation and corporation around the world. The organization’s full name is the Society for Worldwide Interbank Financial Telecommunications.
しかしその様な制裁は国際経済がまだ脆弱な時に原油価格を高騰させるかもしれない。そして一般のイラン国民に害を与え、実質的に全世界の全ての国と企業により使われている銀行取引ハブであるSWIFTの名声を失墜させるかもしれない。機関の正式名称はSociety for Worldwide Interbank Financial Telecommunications(国際銀行間通信協会)である。

In the financial world, the United States can’t order SWIFT to kick Iran out. But it has leverage in that it can punish the Brussels-based organization’s board of directors.
金融の世界では米国がSWIFTにイランを排除する様命令できない。しかし米国はレバレッジを有しておりブリュッセルに拠点がある組織の執行部を制裁出来る。

More than 40 Iranian banks and institutions use SWIFT to process financial transactions, and losing access to that flow of international funds could badly damage the Islamic republic’s economy.
40以上のイランの銀行と機関がSWIFTを金融業務で利用しており、その国際的ファンドの流れのアクセスを失うことはイランの経済に深刻なダメージとなるかもしれない。

SWIFT handles cross-border payments for more than 10,000 financial institutions and corporations in 210 countries. It lets users exchange financial information securely and reliably, thereby lowering costs and reducing risk. It operates on trust and neutrality — SWIFT accepts nearly all comers and does not judge the merits of the transactions passing through its secure message system. Its managers generally brush off investigators and enforcement agencies, telling them to take up suspected wrongdoing directly with nations or corporations.
SWIFTは210ヶ国の10,000の金融機関と企業の国境を越えた支払を扱う。それはユーザーに安全で確実な金融情報の交換をさせており、コストの削減とリスク軽減となっている。それは信用と中立で運用しており、SWIFTはほぼ全ての利用者を受け入れ安全なメッセージシステムを行き来する取引のメリットを判断しない。同組織のマネージャーは調査官や捜査機関を断っており、容疑の犯罪を国家と企業に直接対処する様に伝える。

SWIFT did not respond to requests for comment. In a brief statement posted on its website, the consortium said it is committed to fighting misuse of the financial system to finance terrorism and has cooperated with enforcement agencies in the U.S. and Europe.
SWIFTはコメントの要請に反応を示していない。ホームページでの簡単な声明で、共同体はテロを援助する金融システムの悪用と戦い、米国と欧州の捜査機関に協力すると述べた。

(引用と翻訳終了)
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 私は金融に関しましては専門外ですので、詳細なことは分かりません。しかしイランを国際的な金融決済システムから排除してしまうということは分かります。そうなりますとイランは海外との貿易が実質的にほぼ不可能となります。

SWIFT公式ホームページ(英語版)

SWIFT公式ホームページ(日本語版)

そしてこれらの公式ホームページを見ますと、SWIFTはイランに対する制裁に協力する決断を下した事が2012年2月17日(金)の声明で分かります。

SWIFT is ready to implement sanctions against Iranian financial institutions(「SWIFTはイラン金融機関に対する制裁を実施する準備が整いました」)

 これはイランにとっても死活問題と言えるのです。国家の生存に関わると判断した場合は、合理的な行動をとらない可能性も出てきます。

 国際社会のイランに対する包囲網は強化されつつあると言えるでしょう。2月15日(水)には野田総理大臣がバラク・イスラエル副首相兼国防相と会談しており、野田総理はイランの核問題に関し「外交的,平和的に解決することが重要であり,軍事的対応は事態をエスカレートさせるために非常に危険である旨指摘」しています。また2月16(木)の玄葉外務大臣とバラク・イスラエル副首相兼国防相との夕食会に於きましても「軍事オプションはイランに口実を与えるのみならず,アラブによる反イスラエルの団結を招くおそれがあり,イスラエルにとっても非常に危険なため慎重たるべし,この問題については制裁を効果的に実施し,外交的,平和的に解決することが重要である旨指摘」しています。しかし日本政府は最悪の事態を考慮し、対策を早急に考える必要があるかもしれません。

2012年2月13日 (月)

橋下徹大阪市長がTPP参加を公約としたことに思うこと

 

 2月12日(日)20時21分配信の読売新聞の報道によりますと、地域政党・大阪維新の会が3月24日に開講する「維新政治塾」に10日の締め切りまでに3326人の応募があったとの事です。反響の大きさが分かる数字と言えるでしょう。非常に興味深いのは「維新の会」がTPPの参加や日米同盟を基軸とした外交などを次期衆院選の公約にしていることです。

 今回のこの記事ではTPPの交渉参加の是非に関しては論じません。それは私はこの問題に関しては専門外ですし、この問題には正解がないと考えるからです。様々な勢力から賛否両論が展開されていますが、それはTPPの参加/不参加により利益を受ける勢力と不利益を被る勢力の両方がある為であると私は考えます。しかしそれが政治なのです。TPPにせよ何にせよ政策を決断しますと必ず政策の恩恵がある方々と、不利となってしまう人々が出ます。

 私が今回のこの橋下徹大阪市長のこの公約に注目したのは、今後の政界再編の動きに密接に関連する為です。特に石原新党に与える影響が大きいと考えます。石原新党の参加メンバーには国民新党の亀井静香代表が含まれる方向です。

大村知事「早く石原新党を」 亀井氏「わかっている」(2012年1月31日20時43分 朝日新聞)

石原新党構想は橋下徹大阪市長との連携も目指しています。しかし亀井氏がTPP交渉参加に関して反対していることは周知の事実です。
(下の二つの動画は国民新党の公式アカウントがYouTubeに投稿したTPP反対論を展開する亀井静香代表)

2011年11月7日 TPP交渉参加に慎重な対応を求める議員集会(亀井代表挨拶)

2011年11月8日TPP反対集会 両国国技館(国民新党 亀井静香代表挨拶)

 これから判断しましても、橋下徹大阪市長と亀井静香国民新党代表の間には国家観に非常に大きな隔たりがある様に見受けられます。橋下徹大阪市長はどちらかと言えば自由主義者であると思われるのに対し、亀井静香代表は保護主義者です。

 その一方で橋下徹大阪市長のつぶやきの数々を見ても、保守派であることは間違いがないと思われます。(下の画像は君が代斉唱に関しての2012年02年06月のtweet クリックで画像拡大)

Tishin201202062219下の画像は国と地方の役割分担に関しての2012年02月05日のtweet ここからも橋下徹大阪市長が「小さな政府」志向であることが分かる クリックで画像拡大)

Tishin201202051045 また橋下徹大阪市長が日米同盟を基軸としているのも今後は石原新党との政策の違いが表面化する可能性が高いと私は考えます。

「石原新党は“脱原発”と“核保有”狙う?」(2012年02月10日 ZAKZAK)

 もし石原新党が核武装を検討しているとしますと、それは日米同盟とは合致しない可能性があるからです。米国は核保有国が増加することは余り歓迎しないと思われます。尤も昔は核武装発言をしていたとの記述も散見されます。

 こうして見ますと橋下徹大阪市長の今の政策はむしろ野田政権やみんなの党に近いと見ることが出来るかもしれません。私はTPP参加問題、消費税増税問題を軸に政界再編を行うべきであると考えています。橋下徹大阪市長はその方向性で政界再編が起きる切っ掛けとなるかもしれません。

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